世界最小の犬種として愛される「チワワ」。その魅力の一つは、驚くほど多彩な毛色のバリエーションです。
中でも「フォーン」と「レッド」は、どちらも人気の高い茶系のカラーですが、「具体的にどう違うの?」と疑問に思う方も多いでしょう。
結論から言うと、「フォーン」は“子鹿”を意味する淡い黄褐色、「レッド」はそれより濃い赤褐色(茶色)を指します。
しかし、チワワの毛色選びを面白く、そして難しくさせている最大の要因は、「子犬から成犬になる過程での劇的な毛色変化」です。
この記事を読めば、フォーンとレッドの単純な色の違いから、チワワならではの毛色変化の不思議、そして毛色と性格の関係性まで、スッキリと理解できます。
【3秒で押さえる要点】
- 色の違い:「フォーン」は黄褐色(子鹿色)で、クリーム色に近い淡い色合い。「レッド」は濃い赤褐色(茶色)で、はっきりとした色合い。
- 毛色変化:チワワは成長過程で毛色が大きく変わる犬種です。子犬の頃にフォーンでも成長してレッドに近くなったり、その逆もあります。
- 性格の違い:毛色によって性格が決まるという科学的根拠はありません。性格は個体差や育った環境によります。
| 項目 | フォーン(Fawn) | レッド(Red) |
|---|---|---|
| 色の定義 | 淡い黄褐色(子鹿色)、クリーム色系 | 濃い赤褐色(茶色)、マホガニー系 |
| 色の濃淡 | 淡い | 濃い |
| 与える印象 | 優しい、柔らかい、穏やか | 活発、明るい、はっきりしている |
| 主なバリエーション | フォーン&ホワイト、フォーンセーブル、イザベラ(薄いフォーン) | レッド&ホワイト、レッドセーブル |
| 子犬からの毛色変化 | どちらも非常に変化しやすい(濃くなる・薄くなる両方あり) | |
| 性格 | 毛色による違いは科学的に証明されていない(個体差による) | |
| JKC公認カラー | どちらも公認されているスタンダードカラー | |
「フォーン」と「レッド」の見た目と色合いの違い
最大の違いは色の濃さです。「フォーン(Fawn)」は英語で「子鹿」を意味し、その名の通り優しく淡い黄褐色やクリーム色のような色調です。一方、「レッド(Red)」は、よりはっきりとした赤みがかった濃い茶色(赤褐色)を指します。
チワワの毛色「フォーン」と「レッド」を見分ける最大のポイントは、色の「濃淡」と「色調」です。
フォーン(Fawn)
「フォーン」とは、英語で「子鹿」を意味する言葉です。その名の通り、子鹿の毛のような淡く優しい黄褐色やクリーム色を指します。色の幅は広く、かなり白に近いクリーム色から、やや濃いめの黄褐色まで様々です。全体的に柔らかく、穏やかな印象を与えます。
※非常に淡い(薄い)フォーンは「イザベラ」と呼ばれることもあります。
レッド(Red)
「レッド」は、フォーンよりもはるかに濃く、はっきりとした赤褐色(茶色)を指します。マホガニー(赤褐色)のような色合いで、活発で明るい印象を与えます。フォーンが「淡い」のに対し、レッドは「濃い」と覚えておけば間違いありません。
どちらの色も、単色(ソリッド)であることは珍しく、胸やお腹、手足の先が白い「フォーン&ホワイト」や「レッド&ホワイト」といった「パーティーカラー(2色以上の毛色)」や、毛先に黒い差し毛が入る「セーブル」として現れることが一般的です。
性格や行動特性に違いはある?
「フォーンはおっとり」「レッドは活発」といったイメージを持つ方もいますが、毛色と性格に関連性があるという科学的根拠はありません。チワワの性格は、あくまでその個体が持つ個性や、育った環境によって形成されます。
チワワの毛色について話すとき、「フォーンの子は穏やかで大人しい」「レッドの子は活発で気が強い」といった「毛色による性格診断」を耳にすることがあります。
しかし、結論から言うと、毛色と性格を結びつける明確な科学的根拠はありません。
チワワは犬種として、「勇敢」「飼い主に忠実」「警戒心が強い」「愛情深い(甘えん坊)」といった基本的な気質を持っていますが、これには非常に大きな個体差があります。活発なフォーンの子もいれば、非常に大人しいレッドの子もいます。
私たちが抱くイメージは、おそらく色の印象(フォーン=優しい色、レッド=情熱的な色)からくる先入観が影響している可能性が高いです。愛犬の性格は、毛色で決まるのではなく、その子が生まれ持った個性と、飼い主さんとの生活やしつけによって育まれていくものだと理解しましょう。
最大の特徴!子犬から成犬への毛色変化
チワワは「毛色が7回変わる」と言われるほど、成長過程で毛色が劇的に変化しやすい犬種です。子犬の頃に淡いフォーンだった子が、成長するにつれて色が濃くなりレッドに近くなるケースや、逆に黒っぽかった子がフォーンになるケースも頻繁に起こります。
チワワを家族に迎える上で、最も理解しておくべき特徴が、この「毛色の変化」です。
チワワは全犬種の中でも特に、子犬の時期と成犬になった時とで毛色が大きく変わることで知られています。「毛色が7回変わる」という有名なフレーズがあるほどです。
これはフォーンやレッドに限った話ではありませんが、特にこの2色は変化が顕著です。
- 淡い色が濃くなるケース
子犬の頃は真っ白に近かったり、非常に淡いクリーム色やフォーンだったりした子が、成長(特に生後半年から1歳半頃)するにつれて、背中や耳の付け根からだんだんと濃い色が差し込んできて、成犬時にははっきりとしたフォーンやレッド、あるいは「レッドセーブル」になることがあります。 - 濃い色が薄くなるケース
逆に、子犬の頃は黒っぽい毛(差し毛)が多く、「セーブル」や「ブラックタン」のように見えていた子が、成長と共に黒い毛が抜け、下から明るいフォーンやレッドの毛が生えてきて、全く違う印象になることもあります。
「子犬の時の色がそのまま続くとは限らない」というのが、チワワの毛色選びの最大のポイントです。子犬を選ぶ際は、親犬の毛色も参考にしつつ、この「変化の可能性」も楽しみの一つとして受け入れる覚悟が必要です。
「フォーン」と「レッド」の共通点
どちらもチワワの代表的なスタンダードカラー(公認色)である点が最大の共通点です。また、単色(ソリッド)は比較的珍しく、多くの場合「パーティーカラー(白との組み合わせ)」や「セーブル(黒い差し毛)」として現れます。
色の濃淡は異なりますが、もちろん多くの共通点があります。
- 公認された毛色:どちらもJKC(ジャパンケネルクラブ)をはじめ、世界の多くの犬種団体で公認されている、チワワのスタンダードな毛色です。(※チワワで公認されていないのは「マール」のみです)
- バリエーションの多さ:どちらも単色(ソリッド)であることは少なく、「フォーン&ホワイト」「レッド&ホワイト」のように白い模様が入るパーティーカラーや、毛先に黒い差し毛が入る「セーブル」など、他の色や模様と組み合わさって現れることがほとんどです。
- 毛色変化の可能性:前述の通り、どちらの色も子犬から成犬にかけて色が変化する可能性を秘めています。
歴史・ルーツと毛色の関係
チワワのルーツはメキシコの古代犬「テチチ」とされています。その後、ヨーロッパの小型犬(パピヨンなど)と交配されたとも言われ、その過程でフォーンやレッドを含む、非常に多彩な毛色の遺伝子が組み合わさったと考えられています。
チワワの正確なルーツは謎に包まれていますが、最も有力な説は、メキシコに存在したアステカ文明などで神聖な犬として飼われていた「テチチ(Techichi)」という小型犬が祖先であるというものです。
このテチチは、現在のチワワよりも少し大きかったとされています。その後、メキシコがスペインに征服された際や、19世紀にアメリカの愛犬家たちによって改良される過程で、中国のチャイニーズ・クレステッド・ドッグや、ヨーロッパの小型犬(パピヨンなど)が交配されたのではないか、という説があります。
この複雑な交配の歴史こそが、チワワが「マール」以外のほぼ全ての色を許容される、非常に多彩な毛色のバリエーションを持つ理由だと考えられています。フォーンもレッドも、その多様な歴史の中で生まれ、固定化されていった人気のカラーなのです。
どっちを選ぶべき?色の魅力と選び方のポイント
色の好みで選ぶのが一番ですが、「毛色が変わる可能性」を必ず念頭に置いてください。優しく柔らかな印象が好みならフォーン、活発ではっきりした印象が好みならレッドがおすすめです。ただし、色以上に健康や相性を重視しましょう。
「フォーン」と「レッド」、どちらも非常に魅力的ですが、どちらを選ぶかは最終的には飼い主さんの好みになります。
【フォーンがおすすめな人】
- 優しく、柔らかく、穏やかな色合いが好きな人
- クリーム色やベージュ系の淡いトーンに魅力を感じる人
- 色が濃くなっていく変化も含めて楽しみたい人
【レッドがおすすめな人】
- 活発で、明るく、はっきりとした色合いが好きな人
- アプリコットやマホガニーのような濃い茶系に魅力を感じる人
- 子犬の頃の色が薄くても、「将来濃くなるかも」と期待したい人
どちらを選ぶにしても、最も重要な心構えは「子犬の時の毛色が、成犬になっても同じとは限らない」と理解しておくことです。
「この淡いフォーンが気に入ったのに、どんどん濃くなってレッドみたいになった…」
「濃いレッドだと思って迎えたら、成長したら色が抜けてフォーンっぽくなった…」
これらはチワワでは日常茶飯事です。毛色を選ぶ際は、その子の健康状態、性格(親犬や兄弟犬の様子)、そして飼い主さんとの相性を最優先し、毛色の変化は「その子だけの個性的なチャームポイント」として楽しむくらいの余裕を持つことが大切です。
僕が出会った「フォーン」と「レッド」の“印象”の違い(体験談)
僕はこれまで多くのチワワと触れ合ってきましたが、フォーンとレッドでは第一印象が全く違いますね。
友人が飼っているロングコートチワワの「きなこ」ちゃんは、名前の通りの美しいフォーンです。子犬の頃はもっと白っぽいクリーム色だったそうですが、1歳を過ぎたあたりから背中に淡い黄褐色が差し込んできて、今では見事なカフェオレ色。その柔らかい毛色は、彼女のおっとりした(ように見える)性格と相まって、見ているだけで癒されます。
一方、以前ペットショップで出会ったスムースコートチワワのレッドの子は、衝撃的でした。本当に「燃えるような赤」で、毛足が短いこともあり、その小さな体に詰まったエネルギーが弾けんばかりでした。ガラス越しに人間を見つけると、全身で「遊んで!」とアピールしてくる姿は、フォーンの子が持つ「優しさ」とは対極の、「情熱」を感じさせました。
もちろん性格は個体差ですが、フォーンの魅力が「柔らかな日だまり」だとすれば、レッドの魅力は「燃える小さな炎」のようだと感じた体験です。
チワワの「フォーン」と「レッド」に関するよくある質問
Q: フォーンとレッド、どちらが人気ですか?
A: どちらもチワワの毛色の中では常に上位の人気を誇る「定番カラー」です。レッドの方が色の印象がはっきりしているため目立ちやすいかもしれませんが、フォーンの淡く優しい色合いも根強い人気があります。優劣はありません。
Q: フォーンが成長してレッドになることはありますか?
A: はい、十分にあり得ます。チワワは毛色が変化しやすい犬種です。子犬の頃に非常に淡いフォーンだった子が、成長するにつれて色が濃くなり、飼い主さんが「これはもうレッドだ」と感じる色合いに変化することは珍しくありません。
Q: 「フォーンセーブル」や「レッドセーブル」の「セーブル」って何ですか?
A: 「セーブル」とは、毛先(先端)に黒い色が差し込む毛色パターンを指します。ベースがフォーンで毛先が黒ければ「フォーンセーブル」、ベースがレッドで毛先が黒ければ「レッドセーブル」と呼ばれます。子犬の頃は黒い毛が多くても、成長と共に薄くなることが多いです。
Q: JKC(ジャパンケネルクラブ)で認められていない色はありますか?
A: チワワは非常に多くの毛色が認められていますが、唯一「マール(斑模様)」だけは、遺伝的な健康リスク(聴覚障害など)と関連するため、スタンダードとして認められていません。フォーンもレッドも全く問題のない公認カラーです。
「フォーン」と「レッド」の違いのまとめ
チワワの「フォーン」と「レッド」、どちらも魅力的な毛色ですが、その違いは色の濃淡にありました。
- 色の濃淡が違う:「フォーン」は子鹿のような淡い黄褐色。「レッド」は濃い赤褐色(茶色)。
- 毛色変化が激しい:どちらの色も、子犬から成犬になる過程で色が大きく変わる可能性があるのがチワワの最大の特徴。
- 性格に違いはない:毛色と性格の間に科学的な関連性はなく、個体差によるものが全て。
- 選び方のポイント:色の好みで選んでも良いが、それ以上に健康や相性を優先し、毛色の「変化」を受け入れる心構えが重要。
毛色の変化も含めて「うちの子だけの色!」として愛せるのが、チワワという犬種の醍醐味かもしれませんね。ぜひ、ペット・飼育に関する他の犬種の記事もご覧ください。