キクイムシとシロアリの違い!木材被害と駆除法、見分け方は?

「キクイムシ」と「シロアリ」、どちらも家の大切な木材を脅かす恐ろしい害虫です。

ですが、その正体や被害の出し方は全く異なります。

実は、シロアリはアリではなくゴキブリの仲間(ゴキブリ目)、キクイムシはカブトムシと同じ甲虫の仲間(甲虫目)なんです。この違いを知らないと、対策を間違えて被害が拡大する可能性も。

この記事では、見た目や被害の痕跡(フン)による見分け方から、生態、対策の違いまで、害虫駆除のプロ目線で徹底解説します。

【3秒で押さえる要点】

  • 分類:キクイムシは「甲虫(カブトムシの仲間)」、シロアリは「昆虫(ゴキブリの仲間)」です。
  • 被害:キクイムシは木材の表面近くに小さな穴(1〜2mm)を開け、木の粉(フン)を出します。シロアリは木材の内部を食い荒らし、表面には土の道(蟻道)を作ることがあります。
  • 対策:シロアリは建物全体への甚大な被害を防ぐため専門業者の早急な対応が必須です。キクイムシは被害箇所が限定的ならDIYも可能ですが、広がると専門的駆除が必要です。
「キクイムシ」と「シロアリ」の主な違い
項目 キクイムシ(木食い虫) シロアリ(白蟻)
分類・系統 昆虫綱・甲虫目(カブトムシやカミキリムシの仲間) 昆虫綱・ゴキブリ目(ゴキブリの仲間)
形態的特徴 硬い外骨格。触角は短く棍棒状。 柔らかい体(職蟻)。触角は数珠状。羽アリは胴にくびれなし。
サイズ(成虫) 2〜8mm程度(種による) 4〜10mm程度(職蟻・兵蟻)
行動・生態 幼虫が木材(主にデンプン)を食害。単独生活。 職蟻が木材(主にセルロース)を食害。社会性昆虫でコロニーを形成。
被害の痕跡 直径1〜2mmの小さな丸い穴。サラサラした粉状のフン(木くず)。 木材内部の空洞化。土で作った蟻道(ぎどう)。粒状のフン(イエシロアリ等はフンを外に出さない)。
危険性・衛生 木材(特に建材・家具)への食害。美観・資産価値の低下。 建物(土台・柱)への甚大な構造的食害。家の倒壊リスク

【3秒見分け法!被害の痕跡で判断】

  • 穴で見分ける:1〜2mmの小さな丸い穴がポツポツ空き、下に粉が落ちていればキクイムシ
  • フンで見分ける:サラサラした粉(小麦粉や木の粉)状ならキクイムシ。砂粒のような硬い粒状ならシロアリ(※ただし、日本の主要なシロアリはフンを外に出さず蟻道などに使います)。
  • 道で見分ける:基礎や壁、木材の表面に「土のトンネル(蟻道)」があればシロアリ

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

最大の違いは、キクイムシが「硬い甲虫」である一方、シロアリ(職蟻)は「柔らかく白っぽい」ことです。キクイムシはカブトムシのように硬い前翅(ぜんし)を持ちますが、シロアリの体は柔らかく、光や乾燥に弱いためです。羽アリの見た目も全く異なります。

まず、見た目が根本的に違います。

「キクイムシ」は、その名の通り「木を食う虫」ですが、分類上はカブトムシやカミキリムシと同じ「甲虫目」の昆虫です。代表的なヒラタキクイムシ類は、体長2〜8mm程度で、赤褐色から黒褐色をしています。体は細長い筒状で、硬い外骨格に覆われています。触角は短く、先端が膨らんだ棍棒(こんぼう)状なのが特徴です。

一方、「シロアリ」は名前に「アリ」と付いていますが、クロアリ(ハチの仲間)とは全く異なり、なんと「ゴキブリ目」に分類されます。つまりゴキブリの親戚です。
日本で家屋被害を出す主なヤマトシロアリやイエシロアリの職蟻(しょくぎ:働きアリ)は、体長4〜6mm程度。体は白く柔らかく、光や乾燥に非常に弱いのが特徴です。触角はビーズを連ねたような数珠(じゅず)状です。

春から夏にかけて見かける「羽アリ」は、シロアリとクロアリで見分けが必要です。シロアリの羽アリは黒っぽいですが、胴にくびれがなく、4枚の羽がほぼ同じ大きさです。クロアリの羽アリは、腰がキュッとくびれており、前の羽が後ろの羽より明らかに大きいので、ここで見分けられます。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

キクイムシは「幼虫」が木材を食害し、成虫になると穴を開けて脱出・繁殖する「単独生活」です。シロアリは「職蟻」が木材を食害し、女王を頂点としたコロニー(集団)で生活する「社会性昆虫」で、一年中被害が進行します。

両者の生き方と被害の出し方は、決定的に違います。

キクイムシ(ヒラタキクイムシ類)の被害は、主に「幼虫」によって引き起こされます。成虫は木材の表面や導管内に産卵します。孵化した幼虫が、木材内部に含まれるデンプン質を食べて成長します。この幼虫期間が非常に長く、数ヶ月から、場合によっては数年に及ぶこともあります。

やがて蛹(さなぎ)になり、成虫になると、春から初夏(主に5〜6月)にかけて、あの小さな丸い穴(1〜2mm)を開けて木材から脱出してきます。私たちが目にする穴は、彼らが育った「出口」なのです。脱出した成虫の寿命は短く、新たな繁殖相手を見つけて産卵することが唯一の目的です。彼らは単独で生活します。

一方、シロアリは社会性昆虫です。女王アリと王アリを頂点に、兵蟻(へいぎ:兵隊アリ)や職蟻(しょくぎ:働きアリ)といった階級(カースト)に分かれ、一つの巨大なコロニー(集団)を作って生活します。

木材を食べるのは、主に「職蟻」の役目です。彼らはコロニーを維持するために、一年中、昼夜問わず活動し、木材の主成分であるセルロースを栄養源にします。女王は数年〜十数年という長寿で、毎日数百〜数千個の卵を産み続けます。

そして、コロニーが成熟すると、春〜初夏(ヤマトシロアリは4〜5月、イエシロアリは6〜7月頃)に新しい女王・王候補となる「羽アリ」が一斉に飛び立ち、新しい巣を作る場所を探します。

生息域・被害(食性)・環境適応の違い

【要点】

キクイムシは「乾燥した木材」に含まれるデンプンを好み、特にラワン材などの広葉樹を使った家具や床材(フローリング)、合板に被害が出やすいです。シロアリは「湿った木材」のセルロースを好み、土壌から建物に侵入し、土台や柱など家の構造自体を食害します。

好む「木材の状態」と「栄養源」が異なります。

キクイムシ(ヒラタキクイムシ類)は、乾燥した木材を好みます。彼らの主な栄養源は、木材に含まれる「デンプン」です。そのため、デンプンをあまり含まない針葉樹(ヒノキ、スギ、マツなど)よりも、デンプンを多く含む広葉樹(ラワン、ナラ、タモなど)を好みます。
被害は、輸入木材や家具、フローリング、合板(ベニヤ板)に集中することが多いです。特に新しい建材(築数年〜10年程度)はデンプンが豊富で狙われやすいと言われています。

一方、シロアリ(ヤマトシロアリ、イエシロアリ)は、湿った木材を好みます。彼らの栄養源は、木材の主成分である「セルロース」です。(これはデンプンとは異なります)
彼らは地中に巣を作り、そこから蟻道(ぎどう)と呼ばれる土や排泄物で作ったトンネルを伸ばして、湿気の多い床下や水回り(浴室、キッチン、トイレ)から建物に侵入します。そして、土台や柱、壁の内部など、建物の構造上重要な部分を内部から食い荒らしていきます。被害が表面化しにくい、非常に厄介な害虫です。

危険性・衛生・対策(駆除)の違い

【要点】

シロアリの危険性は建物の倒壊リスクに直結し、被害が甚大になるため、発見次第、専門業者による早急な駆除が必須です。キクイムシの被害は家具や床材が中心で、家の構造への危険度はシロアリより低いですが、放置すれば資産価値を大きく損ねます。

どちらも害虫ですが、その「危険度」は桁違いです。

キクイムシの危険性は、主に「資産価値の低下」と「美観の損失」です。大切な家具や新築のフローリングに穴が開くのは精神的ショックも大きいですが、家の土台や柱がすぐに崩れるといった構造的な危険性はシロアリに比べて低いです。

人を直接刺したり咬んだりすることもありません。ただし、キクイムシの幼虫に寄生する「シバンムシアリガタバチ」という別のハチが発生すると、このハチが人を刺すことがあるため、間接的な衛生害虫となる可能性はあります。
対策としては、被害が局所的(穴が数個)であれば、市販のキクイムシ用殺虫剤(ノズルで穴に直接噴射するタイプ)でDIY対応が可能な場合もあります。しかし、被害が広範囲に及ぶ場合は、専門業者による薬剤処理(燻蒸など)が必要になります。

一方、シロアリの危険性は、「建物の倒壊リスク」に直結します。

家の土台や柱といった構造躯体を内部からスカスカにしてしまうため、地震や台風などへの耐震性が著しく低下します。被害が甚大になるまで気づきにくいのが最も恐ろしい点です。

シロアリの被害を発見した場合、DIYでの完全駆除は非常に困難です。コロニー(巣)ごと全滅させなければ再発するため、必ず専門の駆除業者に調査と駆除を依頼してください。信頼できる業者の目安として、公益社団法人日本しろあり対策協会の会員かどうかを確認するのも一つの手です。シロアリ対策は「予防」が非常に重要で、新築時や前回の処理から5年ごとを目安に、予防的な薬剤散布を行うのが一般的です。

文化・歴史・人との関わりの違い

【要点】

シロアリは、日本の湿潤な気候と木造建築の歴史において、古くから家屋を倒壊させる「天敵」として恐れられてきました。一方、キクイムシは、戦後の輸入木材や新しい建材(合板など)の普及に伴い、近年被害が目立つようになった「現代的な害虫」という側面があります。

人との関わりの歴史も、この二者では大きく異なります。

シロアリは、日本の木造建築史において、古来からの「最大の敵」の一つでした。高温多湿な日本の気候はシロアリの活動に非常に適しており、歴史的建造物(寺社仏閣など)も、常にシロアリの被害と戦ってきました。春から夏に羽アリが一斉に飛び立つ(群飛する)様子は、昔から季節の風物詩であり、同時に「家に巣くわれたかもしれない」という恐怖の象徴でもありました。

一方、キクイムシ、特にヒラタキクイムシ類の被害が日本で深刻化したのは、比較的最近のことです。
戦後、海外からの木材輸入が活発になり、それらの木材に卵や幼虫が付着して侵入した外来種が多いとされています。また、合板(ベニヤ板)が安価な建材として広く普及したことも、デンプンを含む接着剤や安価なラワン材を好むキクイムシにとって、生息域を広げる一因となりました。そういう意味では、「現代の建材が生んだ害虫」とも言えるかもしれません。

「キクイムシ」と「シロアリ」の共通点

【要点】

最大の共通点は、どちらも「木材を食害する害虫」であることです。また、被害が進行するまで人間が気づきにくい点、そして春から夏にかけての暖かく湿った時期に活動が活発になる点も似ています。

もちろん、多くの違いがある一方で、私たち人間にとって厄介な共通点も持っています。

  1. 木材を食害する害虫であること:どちらも家の建材や家具など、人間の生活に欠かせない木製品を主食(あるいは生育場所)としています。
  2. 発見が遅れがちであること:キクイムシは幼虫期、シロアリは職蟻が、主に木材の内部で活動します。そのため、被害が表面化(キクイムシは成虫の脱出穴、シロアリは木材の空洞化や蟻道)するまで、人間が気づきにくいという恐ろしい共通点があります。
  3. 活動が活発になる時期:どちらも暖かく湿度の高い春から夏(特に梅雨時期)にかけて活動が最も活発になります。(ただし、シロアリは冬でも木材内部や地中で活動を続けます)
  4. 羽アリ(成虫)が飛び立つこと:キクイムシは成虫が繁殖のために穴から飛び立ちます。シロアリも新しい巣を作るために羽アリが群飛します。時期や見た目は異なりますが、どちらも「飛ぶ」ステージがある点は共通です。

体験談:恐怖!あの小さな穴はどっちだ?

あれは数年前、僕が住んでいたアパートでの話です。床のフローリング(今思えば典型的なラワン材でした)に、ポツポツと小さな穴がいくつか空いているのを、ある日見つけてしまったんです。

「え、何これ?」。

穴の大きさは直径1mmほど。その真下の床に、小麦粉か、きな粉のような、とにかく非常に細かい粉がこぼれていました。「まさか…シロアリ!?」と、一瞬で血の気が引きました。賃貸アパートでシロアリなんてことになったら、一体どうなるんだと。

慌ててスマホで「フローリング 穴 粉」と調べまくりました。そこで知ったのが、シロアリのフンは「粒状」で、僕が見た「粉状」のフンはキクイムシのものらしい、ということでした。
シロアリなら即刻業者と大家さんに連絡ですが、キクイムシなら局所的かも…と淡い期待を抱き、その足でホームセンターへ。キクイムシ用の、細いノズルが付いた殺虫スプレーを購入しました。

帰宅後、穴という穴にノズルを差し込み、薬剤を噴射。正直、木材内部の幼虫に届いているか不安でしたが、祈るような気持ちでした。

幸い、その後は新たな穴も粉も増えず、被害は止まったようでした。もしあれがシロアリだったら、アパート中が大騒ぎになっていたはず。あの時の「粉か、粒か」を見極めた数分間は、本当に生きた心地がしませんでしたね。

「キクイムシ」と「シロアリ」に関するよくある質問

Q: 羽アリが出たらシロアリ確定ですか?

A: いいえ、クロアリの羽アリである可能性も高いです。シロアリの羽アリは、胴にくびれがなく、4枚の羽がほぼ同じ大きさです。クロアリの羽アリは、腰がキュッとくびれており、前の羽が後ろの羽より大きいのが特徴です。見かけたら捕獲して、専門家に見てもらうのが一番です。

Q: キクイムシは人を刺しますか?

A: キクイムシ自体は人を刺しません。しかし、キクイムシの幼虫に寄生する「シバンムシアリガタバチ」という別の虫(ハチ)が、キクイムシの穴から発生することがあります。このハチは非常に小さく、人を刺すことがあるため、間接的な衛生被害に注意が必要です。

Q: 新築でもシロアリやキクイムシは出ますか?

A: シロアリは、新築時に行う薬剤処理(防蟻処理)によって、通常5年程度は保証されています。しかし、処理が不十分だったり、周辺環境に巣があったりすると侵入する可能性はゼロではありません。キクイムシは、むしろ新築〜築数年で被害が出ることが多いです。これは、建材(特にラワン材などの広葉樹)に卵や幼虫が付着したまま建てられ、入居後に成虫が脱出してくるケースがあるためです。

Q: 被害を見つけたら、まず何をすべきですか?

A: まずは被害の痕跡(穴、フン、蟻道など)の写真を撮ってください。そして、シロアリの可能性がある場合(蟻道がある、木材がフカフカする、羽アリが大量発生した等)は、絶対に市販の殺虫剤をまかずに、すぐに専門業者に調査を依頼してください。薬剤をまくとシロアリが警戒して移動し、被害が拡大する恐れがあります。キクイムシで穴が数個なら、前述のDIYスプレーも手ですが、広範囲なら業者相談が賢明です。

「キクイムシ」と「シロアリ」の違いのまとめ

キクイムシとシロアリ、どちらも木材を食害する厄介な害虫ですが、その正体と対策は全く異なります。

  1. 分類が違う:キクイムシは「甲虫(カブトムシの仲間)」、シロアリは「ゴキブリの仲間」。
  2. 被害箇所が違う:キクイムシは主に乾燥した建材や家具の表面近く。シロアリは湿った土台や柱など構造部分の内部。
  3. 痕跡が違う:キクイムシは1〜2mmの穴と「粉状」のフン。シロアリは土の道(蟻道)や、種によっては「粒状」のフン(※日本の主要種はフンを外に出しにくい)。
  4. 危険度が違う:シロアリは家の倒壊リスクがあり危険度が非常に高い。キクイムシは主に美観と資産価値の低下。

特にシロアリの被害は、素人判断が最も危険です。羽アリを見たり、床がきしむ、蟻道を見つけたりしたら、迷わず専門業者に相談してください。
他にも厄介な害虫はたくさんいます。このサイトの生物その他のカテゴリで、他の害虫との違いも知っておくと、いざという時に役立ちますよ。