洋食の定番、ハンバーグやビーフシチューにかかっているあの濃厚な茶色いソース。
「デミグラスソース」と呼ぶ人もいれば、「ドミグラスソース」と呼ぶ人もいますよね。
結論から言うと、この二つは「同じもの」を指しており、優劣や違いはありません。
どちらもフランス語の「demi-glace(ドゥミグラス)」が語源であり、「デミ」と「ドミ」は日本語のカタカナ表記における「表記揺れ」なんです。
この記事を読めば、なぜ二つの呼び名が併用されているのか、その歴史的背景や語源、そしてデミグラスソースがどのように作られるのかまで、スッキリと理解できますよ。
結論|「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」の最も重要な違い
「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」に、料理やソースとしての意味の違いは全くありません。どちらも「demi-glace」というフランス語を語源とするカタカナ表記の違い(表記揺れ)です。現代の日本では「デミグラスソース」という表記がより一般的ですが、「ドミグラスソース」も間違いではなく、歴史ある洋食店や一部のメーカー(ハインツなど)で伝統的に使用されています。
どちらを使っても間違いではありませんが、その背景を知っておくと少し事情通になれるかもしれませんね。両者の特徴を比較表にまとめます。
| 項目 | デミグラスソース | ドミグラスソース |
|---|---|---|
| 意味・指すもの | 同じ(西洋料理の基本的な茶色いソース) | 同じ(西洋料理の基本的な茶色いソース) |
| 語源 | フランス語の「demi-glace(ドゥミグラス)」 | |
| 違い | カタカナ表記の違い(表記揺れ) | |
| 一般的な使用頻度 | 現代では主流・一般的 | やや少数派だが、伝統的に使われる |
| 主な使用例 | 多くの食品メーカー、レストラン、メディア | 老舗洋食店、一部の食品メーカー(ハインツなど) |
「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」の定義・語源の違い
語源はフランス語の「demi-glace(ドゥミグラス)」です。「demi」は「半分」、「glace」は「煮詰めたもの(だし汁やソース)」を意味し、直訳すると「半分に煮詰めたもの」となります。この発音が日本語に伝わる過程で、「デミ」と「ドミ」という二通りの表記が生まれ、併用されるようになりました。
二つの言葉の定義(結論:同じもの)
まず、辞書などで調べても、「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」は区別されておらず、同じものとして扱われています。
- デミグラスソース(ドミグラスソース):西洋料理の基本となるソースの一つ。ブラウンソース(ソース・エスパニョール)をベースに、さらにフォン(だし汁)を加えて煮詰め、マデラ酒などを加えて仕上げた濃厚な茶色のソース。
つまり、ハンバーグやビーフシチューにかかっている、あのソースの呼び名が2種類ある、というだけなんですね。
語源はフランス語の「demi-glace」
この言葉は、フランス料理のソース「demi-glace(ドゥミグラス)」に由来しています。
- demi(ドゥミ):フランス語で「半分」を意味します。
- glace(グラス):フランス語で「氷」や「鏡」を意味しますが、料理用語では「煮詰めたもの、煮こごり」を指します。(例:グラス・ド・ヴィアンド = 仔牛のだし汁を煮詰めたもの)
つまり、「demi-glace」とは「半分に煮詰めたもの」という意味になります。これは、ベースとなるブラウンソースをさらに半分になるまで煮詰めて作る、その製法に由来しているんですね。
「デミ」と「ドミ」なぜ表記が揺れるのか?
フランス語の「demi」の「e」の発音は、日本語の「エ」と「オ」の中間のような曖昧な音に聞こえます。そのため、この言葉が日本に伝わった際、耳にした人によって「デミグラス」と表記する人と、「ドミグラス」と表記する人に分かれたと考えられています。
どちらも間違いではなく、どちらかが訛ったというわけでもありません。単なる「表記揺れ」です。
現代のメディアや一般的なスーパーの商品では「デミグラスソース」という表記を見かけることの方が多いかもしれません。一方で、ハインツ(Heinz)のように歴史のあるメーカーは、商品名として「ドミグラスソース」という表記を伝統的に使い続けています(近年は「デミグラスソース」と併記することも増えています)。
デミグラスソースとは?(主な材料と調理法)
デミグラスソースは、西洋料理の基本ソースである「ブラウンソース(ソース・エスパニョール)」をさらに煮詰めて作る、非常に手間のかかるソースです。小麦粉とバター(ルー)でとろみをつけ、フォン(だし汁)や香味野菜、トマトなどを長時間煮込んで作られます。
「ドミ」も「デミ」も同じもの、ということは分かりましたが、ではその「デミグラスソース」とは一体どのように作られるのでしょうか。
ブラウンソース(ソース・エスパニョール)との関係
デミグラスソースを語る上で欠かせないのが、その「親」とも言えるブラウンソース(ソース・エスパニョール)の存在です。
フランス料理の伝統的なソースは、大きく分けていくつかの基本ソースに分類されますが、その一つがブラウンソースです。これは、仔牛の骨やスジ肉から取ったフォン(だし汁)に、炒めた香味野菜、トマト、そして焦がし気味に作ったルー(バターと小麦粉)を加えて長時間煮込んだものです。
そして、デミグラスソースは、このブラウンソースをさらにフォン(だし汁)で伸ばし、それが半分(demi)になるまで煮詰めて作る、より濃厚で洗練されたソースなのです。
非常に手間と時間がかかるため、家庭で作るのは困難であり、だからこそ市販の缶詰やレトルトソースが重宝されるわけですね。
デミグラスソースの主な材料
市販のデミグラスソースの原材料を見ると、その複雑さがわかります。
- 小麦粉、ラード(またはバター):ルー(とろみとコクの元)
- トマトペースト、ソテードオニオン、ニンニク、セロリなど:野菜の旨味
- ビーフエキス、チキンブイヨン、フォンドボー:肉の旨味(フォン)
- 赤ワイン、香辛料、砂糖、食塩:味付けと香り
これら多くの材料が溶け合って、あの深いコクが生まれています。
味・色・濃度の違い
「ドミグラスソース」も「デミグラスソース」も、指すものが同じであるため、味、色、濃度に違いはありません。どちらの表記であっても、色は「深い焦げ茶色」、味は「濃厚なコクと旨味、ほのかな苦味と酸味」、濃度は「とろりとしている」のが特徴です。
「ドミグラス」と「デミグラス」は表記が違うだけで、指し示すソースは同じものです。したがって、両者に味、色、濃度の違いはありません。
デミグラスソースの特徴は以下の通りです。
- 色:深い焦げ茶色。ルーや野菜をじっくり炒め、煮詰めることでこの色が出ます。
- 味:肉や野菜の旨味が凝縮された「濃厚なコク」が最大の特徴です。トマトの酸味、炒めた玉ねぎの甘み、そしてルー由来のほのかな苦味が複雑に絡み合います。
- 濃度:小麦粉(ルー)と、煮詰めることで生まれる「とろみ」があります。
料理での使い分け・相性の良い料理
「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」は同じものなので、料理による使い分けはありません。どちらの名称のソースも、ハンバーグ、ビーフシチュー、ハヤシライス、オムライス、ビーフカツレツなど、コクを加えたい定番の洋食全般と相性抜群です。
「ドミグラス」と「デミグラス」は同じものですから、料理によって使い分ける必要はありません。
どちらの表記が使われていても、以下の料理に最適です。
- ハンバーグ:ソースとしてかける
- ビーフシチュー:煮込むベースとして使う
- ハヤシライス:ベースとなるソース
- オムライス:上からかけるソースとして
- ビーフカツレツ(ビフカツ)
- メンチカツ
ウスターソースやトマトソースとの違いは、その「コク」と「とろみ」です。デミグラスソースは、小麦粉とバター(ルー)を使い、フォン(だし)を長時間煮詰めて作られるため、他のソースにはない圧倒的な深みと満足感があります。
体験談|「ドミグラス」表記の缶詰を探して洋食店を巡った日
僕が学生時代にアルバイトしていた老舗の洋食店では、シェフが頑として「ドミグラスソース」という言葉を使っていました。
ある日、僕は市販のソースとの違いに興味を持ち、スーパーでソース缶を探したのですが、棚にあるのは「デミグラスソース」ばかり。当時の僕は「ドミグラスとデミグラスは、もしかしたら違うものなのか?」と本気で思い込んでしまったんです。
「シェフが使っている『ドミグラス』は、もっと特別なソースに違いない!」
そう信じ込んだ僕は、休日にいくつかの輸入食材店や高級スーパーを巡り、「ドミグラスソース」と表記された缶詰を探しました。そして、ついにハインツの大きな缶詰に「DOmi-glace Sauce」と書かれているのを発見し、意気揚々と購入しました。
家で開けてみると、それはもちろん、アルバイト先で使っていたソースと同じ、あの濃厚な茶色いソースでした。後でシェフにその話をしたら、「呼び方が違うだけで、どっちも同じドゥミグラスだよ」と笑われました。
「デミ」でも「ドミ」でも、美味しければそれでいいんだ、と。あの時探し回った経験は、言葉の揺れと、食文化の奥深さを知る良いきっかけになりましたね。
「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」に関するよくある質問
「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」の違いについて、よくある質問をまとめました。
結局、「ドミグラス」と「デミグラス」、どっちが正しいんですか?
どちらも間違いではありません。語源はフランス語の「demi-glace」であり、その発音をカタカナでどう表記したかの違い(表記揺れ)に過ぎません。ただし、現代の日本では「デミグラスソース」の方が一般的に多く使われる傾向があります。
ハヤシライスとデミグラスソースの違いは何ですか?
デミグラスソースは「ソース(材料)」の名称で、ハヤシライスは「料理名」です。ハヤシライスは、デミグラスソース(またはその原型であるブラウンソース)をベースにして、玉ねぎや牛肉を煮込み、ご飯に合うように味を調えた料理のことを指します。
ブラウンソースとデミグラスソースは同じものですか?
違います。ブラウンソース(ソース・エスパニョール)は、デミグラスソースを作るための「親ソース(ベース)」です。このブラウンソースをさらに煮詰めて(半分=demiにして)、より濃厚に仕上げたものが「デミグラスソース」です。デミグラスソースの方が、より手間がかかり、味が凝縮されています。
まとめ|「ドミグラスソース」も「デミグラスソース」も同じ美味しいソース
「ドミグラスソース」と「デミグラスソース」の違い、これでスッキリしましたね。
結論は、どちらも「同じもの」を指す「表記揺れ」であり、優劣や使い分けはありませんでした。
- 語源はフランス語の「demi-glace(ドゥミグラス)」(半分に煮詰めたもの)。
- 発音の聞き取り方によって「デミ」と「ドミ」の表記が生まれた。
- 現代では「デミグラス」が主流だが、「ドミグラス」も伝統的に使われる正しい表記。
これで、レストランのメニューやスーパーの商品棚でどちらの表記を見ても、迷うことはありませんね。どちらも洋食を格上げしてくれる、あの美味しいソースのことです。
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