ジェラートとアイス、どちらも冷たくて美味しいスイーツですよね。
夏の暑い日にはもちろん、冬に暖かい部屋で食べるのも格別です。
でも、いざ注文しようとすると「この二つ、何が違うんだろう?」と疑問に思ったことはありませんか?
実は、ジェラートとアイス(アイスクリーム)の主な違いは「乳脂肪分の割合」「空気の含有量」「食べ頃の温度」にあります。日本では、ジェラートの多くが法律上「アイスミルク」に分類されるんです。
この記事を読めば、二つの明確な定義から、味や食感、歴史的な背景までスッキリ理解できます。もうお店で迷うことなく、自信を持って選べるようになりますよ。
それでは、二つの違いを詳しく見ていきましょう。
結論|ジェラートとアイスの違いを一言でまとめる
ジェラートとアイス(アイスクリーム)の最大の違いは、乳脂肪分と空気の含有量です。ジェラートは乳脂肪分が低く、空気含有量も少ないため「さっぱりしつつも濃厚でなめらかな食感」になります。一方、アイスクリームは乳脂肪分が高く、空気含有量も多いため「濃厚でクリーミー、ふんわりとした食感」が特徴です。
「ジェラート」と、私たちが一般的に「アイス」と呼ぶ「アイスクリーム」は、似ているようで全く異なる特徴を持っています。
ジェラート (Gelato) はイタリア語で「凍った」という意味で、乳脂肪分が低め(約4%〜8%)です。空気の含有量(オーバーラン)も少ない(約20%〜40%)ため、密度が濃く、ねっとりとなめらかな口当たりと、素材そのものの風味が強く感じられるのが特徴です。
一方、アイスクリーム (Ice Cream) は、日本の法律(乳等命令)で乳脂肪分8.0%以上と厳密に定義されています。空気の含有量が多い(約60%〜100%)ため、ふんわりと軽い食感で、乳脂肪リッチなクリーミーさが際立ちます。
この二つの違いを、比較表で確認してみましょう。
| 項目 | ジェラート | アイスクリーム(日本の規格) |
|---|---|---|
| 主な分類(日本) | アイスミルク | アイスクリーム |
| 乳脂肪分 | 低い(約4%〜8%) | 高い(8.0%以上) |
| 空気含有量 | 少ない(約20%〜40%) | 多い(約60%〜100%) |
| 味・食感 | さっぱり、ねっとり濃厚、なめらか | 濃厚クリーミー、ふんわり軽い |
| 食べ頃温度 | 高め(-10℃〜-8℃) | 低め(-14℃〜-8℃) |
| 発祥・文化 | イタリア(職人の手作り) | アメリカ(工業生産) |
ジェラートとアイスの定義と法律(規格)上の違い
イタリアでは「ジェラート」が凍ったお菓子全般を指しますが、日本では法律で厳密に分類されます。日本の規格で「アイスクリーム」と呼べるのは乳脂肪分8.0%以上のものだけです。ジェラートの多くは乳脂肪分が4%〜8%程度のため、「アイスミルク」に分類されます。
イタリアの「ジェラート」とアメリカの「アイスクリーム」
まず言葉の定義から見ていきましょう。
「ジェラート(Gelato)」は、イタリア語で「凍った」という意味の言葉です。イタリア本国では、実はアイスクリームやシャーベットなど、凍ったお菓子全般を総称して「ジェラート」と呼んでいます。イタリアでは職人による手作り(アルティジャナーレ)の文化が根付いています。
一方、「アイスクリーム(Ice Cream)」は、19世紀のアメリカで乳業メーカーによって工業的に生産されるようになり、世界中に広まったスタイルです。
日本の法律による「アイスクリーム類」の分類
日本では、「アイスクリーム」と名乗るためには、食品衛生法に基づく「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等命令)」で定められた厳しい基準をクリアする必要があります。
「アイスクリーム類」は、含まれる乳固形分と乳脂肪分の割合によって、以下の4種類に分類されます。
- アイスクリーム:乳固形分15.0%以上(うち乳脂肪分8.0%以上)
- アイスミルク:乳固形分10.0%以上(うち乳脂肪分3.0%以上)
- ラクトアイス:乳固形分3.0%以上
- 氷菓(ひょうか):上記以外のもの(乳固形分3.0%未満)
この分類は、商品のパッケージに「種類別」として必ず表示されています。
ジェラートは「アイスミルク」に分類される
では、イタリア生まれのジェラートは、日本の規格ではどこに当てはまるのでしょうか?
伝統的なジェラートの乳脂肪分は、約4%〜8%(または5%前後)が一般的です。これは、日本の「アイスクリーム」の規格である「乳脂肪分8.0%以上」を満たさない場合がほとんどです。
そのため、日本で販売されているジェラートの多くは、規格上「アイスミルク」に分類されます。これが、ジェラートとアイスクリームの法律上・規格上の大きな違いとなります。
原材料と製法の違い
アイスクリームは乳脂肪分が多く、空気含有量(オーバーラン)が60%〜100%と高いため、ふんわりします。ジェラートは乳脂肪分が少なく、空気含有量が20%〜40%と低いため、密度が濃くなります。また、ジェラートは植物油脂を使いません。
味わいや食感の根本的な違いは、原材料と製造工程から生まれます。
乳脂肪分と植物油脂の有無
前述の通り、アイスクリームは乳脂肪分が8.0%以上と高いのが特徴です。また、日本の規格では、「アイスクリーム」には風味原料(チョコレートなど)由来以外の植物油脂(ヤシ油やパーム油など)を加えることは原則として認められていません。
ジェラートは乳脂肪分が4%〜8%程度と低めです。そして、ジェラートの伝統的な製法では、植物油脂を加えるという考え方自体がありません。素材の風味をそのまま活かすことを重視しているためです。
ちなみに、ラクトアイス規格では、乳脂肪分の不足を補うために植物油脂が使われることがよくあります。
空気含有量(オーバーラン)の違い
アイスやジェラートを作る際、材料をかき混ぜながら空気を含ませて凍らせます。この空気の含有率を専門用語で「オーバーラン」と呼びます。
アイスクリームは、製造工程で多くの空気を含ませます。オーバーランは60%〜100%にも達することがあります。空気の泡が多いため、ふんわりとした軽い食感が生まれます。
ジェラートは、ゆっくりと撹拌(かくはん)するため、含まれる空気の量が少なくなります。オーバーランは20%〜40%程度と低めです。空気の含有量が少ないため、密度が濃く、ねっとりとした独特のなめらかさが生まれるのです。
味・食感・食べ頃の温度の違い
ジェラートは空気含有量が少なく密度が高いため、ねっとりと濃厚な舌触りと、素材本来の味がダイレクトに感じられます。アイスクリームは空気を多く含むため、ふんわりと軽い口当たりと乳脂肪のクリーミーな味わいが特徴です。
味と食感(濃厚クリーミー vs さっぱり濃厚)
これらの製法と原材料の違いが、そのまま味と食感の違いに直結します。
アイスクリームは、高い乳脂肪分と多くの空気によって、濃厚でクリーミー、かつ、ふんわりと軽い口当たりを楽しめます。
ジェラートは、乳脂肪分が少ないため口当たりはさっぱりしていますが、空気含有量が少なく密度が高いため、ねっとりとしたなめらかな食感と、素材の味がダイレクトに伝わる濃厚さ(乳脂肪の濃厚さとは異なる)を両立しています。果物なら果汁感、ナッツならその香ばしさが際立ちます。
食べ頃の温度(提供温度)
美味しく食べるための「温度」も異なります。
アイスクリームは、カチカチに凍った状態(-20℃前後で保存)から少し戻した、-14℃〜-8℃あたりが食べ頃とされます。
ジェラートは、アイスクリームよりも少し高めの温度、-10℃〜-8℃程度が最適な食べ頃です。ジェラート専門店(ジェラテリア)のショーケースが、アイスクリームの冷凍庫ほど冷たくないのはこのためです。少し温度を上げることで、ジェラート特有のなめらかな食感と風味が最大限に引き出されます。
起源・歴史・文化の違い
ジェラートの起源は古く、中国からイタリアへ製法が伝わったとされ、ルネサンス期にフランスで進化しました。イタリアでは職人の手作り文化として発展。一方、アイスクリームは19世紀のアメリカで機械による工業生産が始まり、世界的に普及しました。
二つの冷たいお菓子は、その生まれ育った文化も対照的です。
ジェラートの発祥と歴史
ジェラートの起源は非常に古く、旧約聖書に乳と蜜を氷雪で冷やした記述があるとも言われています。
有名な説としては、マルコ・ポーロが中国から乳を凍らせる製法をイタリアに持ち帰り、ヴェネツィアで広まったというものがあります。また、アラブからシチリア島に伝わった「シャルバート」が「ソルベット(シャーベット)」の原型になったとも言われます。
ルネサンス期には、フィレンツェのメディチ家からフランス王家へ嫁いだカテリーナ妃のお抱え料理人によって、現在のジェラートのレシピがフランスで進化しました。1686年にはシチリア出身者がパリで初のジェラテリアを開業し、一般の人々にも提供されるようになりました。
イタリアでは、その後もジェラートは職人による手作りの文化として深く根付いていきました。
アイスクリームの発祥と歴史
一方、アイスクリームは、19世紀に入ってからアメリカで大きな発展を遂げます。
アメリカでは、乳業メーカーがジェラートよりも生クリームを多く含む(=乳脂肪分が高い)配合を開発し、それを機械で大量生産(工業生産)する技術を確立しました。
この工業化により、アイスクリームは安価で安定的に供給されるようになり、アメリカ文化と共に世界中へと急速に普及していったのです。
体験談|ジェラートとアイス、僕の楽しみ方
僕がジェラートとアイスクリームの違いを最も強く意識したのは、やはりイタリア旅行での体験でしたね。
ローマの街角で食べた本場のジェラート、特にピスタチオとヘーゼルナッツのフレーバーは衝撃的でした。「凍っているのに、なぜこんなに味が濃いんだ?」と。
日本の一般的なアイスクリームとは明らかに違う、ねっとりとした密度と、口に入れた瞬間に広がるナッツそのものの強烈な香りに驚きました。これが空気含有量が少なく、素材の味を活かすジェラートの世界かと感動したのを覚えています。
帰国後、日本のコンビニでアイスクリームを買ってみると、それはそれで美味しいのですが、食感は「ふんわり」「クリーミー」。乳脂肪のコクと甘さが主役だと感じます。
それ以来、僕の中での使い分けは明確になりました。
「今日は素材の味を濃厚に、さっぱりと楽しみたい」という日は、ジェラテリアに足を運びます。
「今日は疲れたから、濃厚な乳脂肪分の甘さで癒されたい」という日は、コンビニやスーパーで「種類別:アイスクリーム」と書かれたカップアイスを選びます。
どちらが優れているということではなく、それぞれの個性と歴史を知ることで、気分に合わせて選ぶ楽しみが格段に増えましたね。
ジェラートとアイスに関するよくある質問
ここでは、ジェラートとアイスクリームに関するよくある疑問についてお答えします。
シャーベット(ソルベ)との違いは?
シャーベット(フランス語ではソルベ)は、乳固形分が3.0%未満か、全く含まない「氷菓」に分類されます。主な原材料は果汁やシロップ、砂糖です。乳脂肪分を含まないため、ジェラートやアイスクリームよりもさらにさっぱりとしており、シャリシャリとした氷の食感が特徴ですね。
ジェラートはアイスクリームよりヘルシー(低カロリー)?
一般的に、ジェラートはアイスクリームよりも乳脂肪分が低い(4%〜8%)ため、その分カロリーも控えめになる傾向があります。ただし、砂糖の量や、ナッツ系・チョコレート系などのフレーバーによってはカロリーが高くなる場合もあるので、一概にヘルシーとは言い切れません。とはいえ、乳脂肪分が少ない分、さっぱりと食べられるのは確かです。
通販で買ったジェラートの美味しい食べ方は?
ご家庭の冷凍庫(約-18℃)は、ジェラートの食べ頃(-10℃〜-8℃)よりも低すぎます。カチカチの状態で食べると、本来のなめらかさや風味が損なわれてしまいます。
冷凍庫から出したら、常温で5分から10分ほど置き、スプーンが少し入るくらいの柔らかさになってから食べるのがおすすめです。少し溶けかけた部分と中心部をスプーンで練るように混ぜると、より滑らかな食感を楽しめますよ。
まとめ|どちらを選ぶべきか?
ジェラートとアイスクリームの違い、明確にご理解いただけたでしょうか。
どちらも「凍ったお菓子」ですが、その成り立ちや成分、食感には大きな違いがありました。
- ジェラート:乳脂肪分が低く、空気も少ない。「さっぱり、でも素材の味は濃厚で、ねっとり」が特徴。日本の規格では「アイスミルク」が多い。
- アイスクリーム:乳脂肪分が高く、空気も多い。「濃厚でクリーミー、そしてふんわり」が特徴。日本の規格で「アイスクリーム」を名乗れる。
どちらを選ぶべきか、もう迷う必要はありませんね。
素材本来のフレッシュな風味を濃厚に味わいたい時は、ジェラートを。
乳脂肪リッチな甘さと、ふんわりとした口溶けで癒されたい時は、アイスクリームを選ぶのがおすすめです。
これらの違いを知って食べ比べてみると、いつものスイーツタイムがさらに楽しくなるはずです。
ジェラートやアイスクリームのように、似ているけれど実は違うスイーツは他にもたくさんあります。さらに詳しい情報は「スイーツ・お菓子の違い」のまとめ記事でも解説していますので、ぜひご覧ください。
また、日本のアイスクリーム類の分類については、日本乳業協会のウェブサイトや、消費者庁の食品表示に関するページも公式な情報源として参考になります。