「蜂楽饅頭(ほうらくまんじゅう)」と「今川焼き」、どちらも熱々の生地にあんこがたっぷり入った、美味しい和菓子ですよね。
見た目がそっくりなこの二つ、一体何が違うのでしょうか?
結論から言うと、「今川焼き」は円盤状のあんこ入り和菓子の一般的な名称の一つであり、「蜂楽饅頭」は九州地方(特に熊本・福岡など)で展開する特定の専門店の「商品名」です。
つまり、蜂楽饅頭は「今川焼き(回転焼き・大判焼き)」の一種と言えますが、その製法には大きな違いがあります。
この記事では、九州のソウルフードとも呼ばれる蜂楽饅頭と、一般的な今川焼きの具体的な違いを、生地や歴史、呼び名の観点から詳しく解説します。
結論|蜂楽饅頭と今川焼きの違いを一言でまとめる
「今川焼き」は、小麦粉の生地であんこを挟んで焼いた円盤状の和菓子の一般的な名称(関東での呼び名)です。一方、「蜂楽饅頭」は熊本県水俣市で創業した特定の専門店の「商品名(商標名)」です。蜂楽饅頭は、生地に国産の純粋蜂蜜をたっぷり使用しているのが最大の特徴です。
簡単に言えば、「今川焼き」は「回転焼き」や「大判焼き」と同じカテゴリを指す言葉であり、「蜂楽饅頭」はそのカテゴリの中の特定のブランド・商品という関係ですね。
「御座候(ござそうろう)」が兵庫県姫路市の店舗の商品名を指すのと似ています。
| 項目 | 蜂楽饅頭(ほうらくまんじゅう) | 今川焼き(いまがわやき) | 
|---|---|---|
| 分類 | 商品名・ブランド名 | 和菓子の一般的な名称 | 
| 発祥・地域 | 熊本県水俣市(1955年創業)。 九州地方で主に展開。  | 江戸時代、江戸の今川橋付近(諸説あり)。 主に関東での呼び名。  | 
| 生地の主な特徴 | 国産純粋蜂蜜をたっぷり使用 | 小麦粉、卵、砂糖がベース | 
| 餡(あん) | 黒あん(小豆)、白あん(大手亡豆) | 小豆あん(粒・こし)、白あん、カスタードなど多彩 | 
| 製法の特徴 | 増粘剤・保存料不使用 | 店舗により異なる | 
蜂楽饅頭と今川焼きとは?定義と呼び名の違い
「今川焼き」は、小麦粉生地であんこを焼いた和菓子を指す、主に関東地方での呼び名です。一方、「蜂楽饅頭」は熊本県水俣市発祥の専門店の名前で、九州地方ではこの「蜂楽饅頭」という商品名が、今川焼き(回転焼き)の代名詞として定着しています。
今川焼きとは|全国的な呼び名の一つ
「今川焼き」は、小麦粉を水などで溶いた生地を専用の円形の型(焼き型)に流し込み、あんこを挟んで焼いた和菓子です。
このタイプのお菓子は、日本全国で様々な呼び名を持っていますよね。
- 大判焼き(おおばんやき)
 - 回転焼き(かいてんやき)
 - 二重焼き(にじゅうやき)
 - 太鼓焼き(たいこやき)
 - 御座候(ござそうろう)(※これも兵庫県の店舗の商品名)
 
「今川焼き」という呼び名は、主に関東地方で使われることが多いです。
蜂楽饅頭とは|九州の特定店舗の商品名
「蜂楽饅頭(ほうらくまんじゅう)」は、1955年(昭和30年)に熊本県水俣市で創業した「蜂楽饅頭」というお店が製造・販売している商品名です。
創業者がもともと養蜂業を営んでおり、「蜂蜜を使った商品を作りたい」という想いから生まれたのが蜂楽饅頭です。
熊本県や福岡県、鹿児島県、宮崎県といった九州地方を中心に店舗を展開しており、特に熊本県民にとっては「ソウルフード」とも言われるほど、深く愛されています。
九州地方では、「今川焼き」や「大判焼き」ではなく、この「蜂楽饅頭」という固有名詞が、この形状のお菓子の代名詞として使われることも珍しくありません。
原材料・製法・見た目の違い
蜂楽饅頭の最大の特徴は、生地に国産の純粋蜂蜜をたっぷり使用している点です。これにより、独特のしっとり感と優しい風味が生まれます。また、餡(あん)にもこだわり、保存料や増粘剤を一切使用していません。
生地の違い|蜂楽饅頭は「蜂蜜」入り
一般的な今川焼きの生地は、小麦粉、卵、砂糖、水などが基本です。
一方、蜂楽饅頭の生地は、その名の通り、高品質な国産純粋蜂蜜がふんだんに使われています。
この蜂蜜の保水効果により、生地の表面はカリッとしつつも、中は驚くほど「しっとり」「もっちもち」とした独特の食感が生まれます。また、生地自体にもほんのりと蜂蜜の優しい風味が感じられます。
餡の違い|こだわりと「黒あん・白あん」
蜂楽饅頭の餡(あん)は、「黒あん」と「白あん」の2種類のみです。
- 黒あん:北海道十勝産の厳選された小豆を使用。
 - 白あん:北海道産の「大手亡豆(おおてぼうまめ)」を使用。
 
蜂楽饅頭のこだわりは、これらの餡を作る際に、保存料や増粘剤(あんこを短時間で仕上げるための添加物)を一切使用していない点です。
じっくりと時間をかけて豆を炊き上げ、砂糖と練り上げる昔ながらの製法を守っているため、豆本来の風味が生きた、絶妙な甘さの餡に仕上がっています。
一方、一般的な今川焼きは、こうした黒・白あんに加え、カスタードクリームやチョコレート、季節限定の餡など、多様なバリエーションがあるのが違いですね。
見た目の違いと焼き印
どちらも円盤状の金属型で焼くため、基本的な形は同じです。
蜂楽饅頭は、表面に「蜂」のマークが焼き印されているのが特徴です。
味・食感・風味の違い
蜂楽饅頭は、蜂蜜入りの生地による「表面カリッ、中しっとり・もっちり」とした食感と、上品な蜂蜜の風味が特徴です。一般的な今川焼きは、お店によって「ふわふわ系」や「もちもち系」など生地の食感が様々です。
今川焼きは、お店によって生地の配合が異なり、ふんわりとカステラのような食感のものから、もちもち感を強調したものまで多岐にわたります。
蜂楽饅頭の味は、この蜂蜜入りのしっとりした生地と、たっぷり詰まった(びっしり入った)餡との一体感が最大の特徴です。
黒あんは小豆の風味がしっかりと感じられ、白あんは大手亡豆の上品な甘さと、蜂蜜生地のコクが合わさり、まるで「上質な生キャラメル」のようだと評されることもあります。
食べ方・入手性・価格の違い
今川焼きは全国のスーパーや催事などで広く購入できますが、「蜂楽饅頭」は九州地方(熊本、福岡、宮崎、鹿児島)の直営店での店頭販売のみで、お取り寄せはできません。賞味期限は購入日当日中です。
蜂楽饅頭が買える場所
一般的な今川焼き(大判焼き)は、スーパーの冷凍食品や、全国各地のお祭り、デパートの催事などで手軽に購入できます。
しかし、「蜂楽饅頭」は、熊本、福岡、宮崎、鹿児島にある直営店に行かなければ購入できません。
通信販売やお取り寄せは一切行っておらず、店頭でのみ、できたてを提供することにこだわっています。これが、九州のソウルフードと言われる所以(ゆえん)でもありますね。
価格と賞味期限
蜂楽饅頭は、これだけ素材にこだわっていながら、価格が非常に手頃なことでも知られています(2024年時点では1個110円(税込)など)。
ただし、保存料を一切使用していないため、賞味期限は購入日当日中と非常に短いです。お土産にする際は渡すタイミングに注意が必要ですね(冷めても美味しいと評判ですが)。
体験談|熊本で愛される「蜂楽饅頭」の黒と白
僕が初めて蜂楽饅頭を食べたのは、熊本を旅行した時でした。地元の方が「熊本に来たらこれを食べないと」と、上通アーケードのお店に連れて行ってくれたんです。
平日にもかかわらず行列ができていて、その人気ぶりにまず驚きました。目の前で次々と焼かれていく様子を見ながら、「黒あんと白あん、どっち派?」と聞かれ、迷った末に両方をお願いしました。
焼きたてをその場で頬張ると、まず生地の香ばしさに驚きました。ほんのり甘い、蜂蜜の香りがするんです。そして、薄皮の生地の中には、これでもかというほど餡がぎっしり。
黒あんは、小豆の粒がしっかりしていながらも滑らかで、豆の味が濃い。白あんは、ねっとりと上品な甘さで、生地の蜂蜜の風味と合わさって、本当に「生キャラメルみたい」という表現がぴったりでした。
これは今川焼きや大判焼きとは似て非なるもの。「蜂楽饅頭」という、独立した食べ物だなと強く感じた瞬間でしたね。
蜂楽饅頭と今川焼きに関するFAQ(よくある質問)
蜂楽饅頭は「回転焼き」や「大判焼き」と何が違うのですか?
「回転焼き」や「大判焼き」は、そのお菓子(今川焼き)の一般的な呼び名(特に西日本)です。「蜂楽饅頭」は、その回転焼きの一種ですが、生地に蜂蜜が使われている点と、九州地方の特定の専門店の「商品名」であるという点が大きな違いです。
蜂楽饅頭には黒あんと白あん、どっちが人気ですか?
これは「きのこの山」対「たけのこの里」論争のように、熊本県民や福岡県民の間でも「黒餡派」と「白餡派」で人気が二分する永遠のテーマです。どちらも同じくらい人気がありますよ。
蜂楽饅頭のお店では、かき氷も有名って本当ですか?
はい、本当です。特に夏季限定で販売される「コバルトミルク」という蜂蜜ミルク味のコバルトブルー色のかき氷は、蜂楽饅頭と並ぶ名物として非常に人気があります。
まとめ|蜂楽饅頭と今川焼きの違いを理解して楽しもう
蜂楽饅頭と今川焼きの違い、明確になりましたでしょうか?
どちらも日本の素晴らしい和菓子ですが、その背景には大きな違いがありました。
- 今川焼き:小麦粉ベースの生地であんこを焼いた和菓子の総称(主に関東圏での呼び名)。
 - 蜂楽饅頭:生地に国産純粋蜂蜜を使い、保存料不使用の餡にこだわった、九州の専門店の「商品名」。
 
「今川焼き」や「回転焼き」は全国どこでも楽しめますが、「蜂楽饅頭」はその土地でしか味わえない、特別な「ご当地ソウルフード」です。
九州を訪れる機会があれば、ぜひそのこだわりの味を試してみてくださいね。
ほかにも様々な「スイーツ・お菓子の違い」を紹介していますので、ぜひご覧ください。
和菓子の文化や歴史について詳しく知りたい方は、農林水産省の食育に関するページなども参考になりますよ。