「唐揚げ」と「フライドチキン」、どちらも食卓やお弁当、パーティーで大人気の鶏肉の揚げ物ですよね。
でも、いざその違いを説明しようとすると、意外と難しいものです。
実はこの二つ、最大の違いは「調理工程」、特に「味付けの順番」と「衣の種類」にあります。簡単に言えば、唐揚げは「肉に味を染み込ませた」和風の揚げ物、フライドチキンは「衣に味をつけた」西洋風の揚げ物なんです。
この記事を読めば、それぞれの定義から調理法、味、食感、さらには竜田揚げやナゲットとの違いまで明確に理解でき、その日の気分やシーンに合わせて正しく選べるようになりますよ。
それでは、まず結論となる比較表から見ていきましょう。
結論|「唐揚げ」と「フライドチキン」の違いが一目でわかる比較表
「唐揚げ」は鶏肉に醤油や酒などで「下味」をしっかりつけてから、小麦粉や片栗粉を「まぶして」揚げます。一方、「フライドチキン」は鶏肉自体には味をつけず、スパイスやハーブを混ぜた衣(バッター液など)を「つけて」揚げるのが根本的な違いです。
「唐揚げ」と「フライドチキン」の主な違いを、以下の表にまとめました。
| 項目 | 唐揚げ | フライドチキン | 
|---|---|---|
| 起源 | 日本(大正時代以降) | アメリカ南部 | 
| 味付けの主体 | 肉(下味) | 衣(スパイス&ハーブ) | 
| 主な下味 | 醤油、酒、みりん、生姜、ニンニクなど | ほぼしない(塩コショウ程度) | 
| 衣 | 小麦粉、片栗粉(またはブレンド) | 小麦粉+スパイス、バッター液など | 
| 衣の厚さ | 薄め | 厚め・クリスピー | 
| 主な風味 | 和風(醤油・生姜) | 洋風(スパイス・ハーブ) | 
| 主な部位 | 骨なし(もも肉) | 骨付き(ドラム、サイなど) | 
| 食感 | サクサク、カリカリ、ジューシー | ザクザク、クリスピー | 
このように、味付けを「肉」にするか「衣」にするかが、両者を分ける最大のポイントと言えますね。
「唐揚げ」と「フライドチキン」の定義と起源の違い
「唐揚げ」は、鶏肉に下味をつけ粉をまぶして揚げた日本発祥の料理です。一方、「フライドチキン」は、アメリカ南部発祥で、スパイスを効かせた衣で鶏肉を揚げる料理を指します。
唐揚げとは?(日本の揚げ物料理)
「唐揚げ(からあげ)」は、食材(主に鶏肉)に醤油や酒、生姜などで下味をつけ、小麦粉や片栗粉を薄くまぶして油で揚げた日本料理です。
「唐揚げ」という言葉自体は、江戸時代に中国から伝わった精進料理「普茶料理(ふちゃりょうり)」で、豆腐などを揚げた「唐揚げ(からあげ)」に由来すると言われています。当時は鶏肉ではなく、豆腐や野菜を使ったものでした。
現在のような鶏肉の唐揚げが広まったのは、大正時代以降、食肉文化が普及してからとされています。農林水産省の「うちの郷土料理」では、大分県中津市や宇佐市の「鶏の唐揚げ」が紹介されており、戦後の食糧難の時代に養鶏場が多かったことから、ご当地グルメとして発展した背景があります。
フライドチキンとは?(アメリカ発祥の揚げ物料理)
「フライドチキン(Fried chicken)」は、鶏肉にスパイスやハーブなどで味付けした衣をつけて油で揚げた、アメリカ発祥の料理です。
その起源はアメリカ南部にあり、スコットランド移民が持ち込んだ「油で揚げる」調理法と、西アフリカから奴隷として連れてこられた人々が持ち込んだ「スパイスを効かせる」食文化が融合して誕生したと言われています。
特に、圧力鍋を使って高温で揚げる調理法が開発されたことで、骨付き肉でも中まで火が通り、ジューシーに仕上がるようになり、世界的なファストフードとして広まりました。
【重要】調理法と味付け(下味・衣)の違い
調理工程が決定的に異なります。唐揚げは「肉に味付け → 粉をまぶす → 揚げる」という順番で、肉自体に味が染みています。フライドチキンは「肉(下味なし) → スパイス入りの衣をつける → 揚げる」という順番で、衣の味が決め手となります。
見た目は似ていますが、作る工程を見てみると、全く異なる料理であることがわかります。
調理工程(味付けの順番)
最大の違いは、味付けのタイミングです。
- 唐揚げ:肉に味を染み込ませるのが前提です。鶏肉をカットした後、醤油、酒、みりん、生姜、ニンニクなどを合わせた調味液に一定時間漬け込み、肉自体にしっかりと和風の下味をつけます。
 - フライドチキン:衣に味をつけるのが基本です。肉自体には味付けをしないか、塩コショウを振る程度です。味の決め手は、衣に混ぜ込むスパイスとハーブにあります。
 
衣の種類(粉 vs スパイス入りバッター液)
衣の作り方と付け方にも大きな違いがあります。
- 唐揚げ:下味をつけた肉の水分を軽く切り、小麦粉や片栗粉(またはその両方をブレンドしたもの)を薄く「まぶし」ます。衣は素材の旨味を閉じ込める役割が中心です。片栗粉が多いとサクサク、小麦粉が多いとカリッとした食感になりますね。
 - フライドチキン:小麦粉に、パプリカ、ガーリックパウダー、オレガノ、タイム、ブラックペッパーなど十数種類のスパイスやハーブを混ぜ込んだ「衣用の粉」を使います。さらに、牛乳や卵を使った「バッター液」と呼ばれる液体にくぐらせてから粉をつける、という工程を繰り返すことも多く、衣が厚く、ザクザクとした(クリスピーな)食感を生み出します。
 
味・食感・見た目の違い
唐揚げは、醤油や生姜が香る「和風」の味わいで、衣が薄く肉のジューシーさが特徴です。一方、フライドチキンは、様々なスパイスとハーブが効いた「洋風」の味わいで、衣が厚くザクザクとした食感が楽しめます。
調理法が違うため、当然ながら味や食感も全く異なります。
唐揚げは、肉に染み込んだ醤油や生姜、ニンニクの風味が口の中に広がる、いわゆる「和風」の味わいが特徴です。衣は薄付きで、サクサク、あるいはカリッとしており、主役である鶏肉のジューシーさを引き立てます。
フライドチキンは、口に入れた瞬間に感じる、複雑なスパイスとハーブの香りが特徴的な「洋風」の味わいです。衣は厚く、ザクザク、ガリガリとしたクリスピーな食感が強く、肉の味よりも衣のスパイシーさが前面に出ています。見た目もゴツゴツとしていることが多いですね。
使われる部位・骨の有無の違い
唐揚げは、日本ではジューシーな「もも肉」を使い、食べやすい「骨なし」の一口大サイズが主流です。一方、フライドチキンは、アメリカ本国では「骨付き」のドラム(脚)やサイ(腰)といった大きな部位で提供されるのが伝統的です。
使われる鶏肉の部位や形状にも、それぞれの食文化が反映されています。
唐揚げは、日本では特にジューシーさが好まれるため、「もも肉」が使われるのが主流です。また、お弁当や食卓のおかずとして食べやすいよう、「骨なし」の一口大にカットされているのが一般的です。(もちろん、手羽先唐揚げや骨付きもも肉の唐揚げなど、例外もあります)
フライドチキンは、発祥地のアメリカでは「骨付き」が伝統的です。ドラム(脚)、サイ(腰)、ウイング(手羽)、リブ(あばら)など、部位ごとにカットされた大きな塊のまま揚げられます。骨から出る旨味もフライドチキンの美味しさの一部とされています。
ただし、日本のコンビニエンスストアなどで売られているフライドチキン(ファミチキやLチキなど)は、食べやすさを重視して骨なしのもも肉(フィレ)を使っている場合も多いですね。
カロリー・栄養・健康面の違い
どちらも高カロリーな揚げ物ですが、フライドチキンは衣が厚く油を吸いやすいため、一般的に唐揚げよりも高カロリー・高脂質・高糖質になる傾向があります。唐揚げは、部位(もも肉かむね肉か)や衣の量によってカロリーを調整しやすいです。
どちらも油で揚げているため、高カロリー・高脂質な料理であることは共通しています。
唐揚げは、使う部位によってカロリーが変わります。脂質の多い「もも肉」を使えば高カロリーになりますが、脂質の少ない「むね肉」を使えばカロリーを抑えることができます。衣が比較的薄いため、吸油率はフライドチキンより低い傾向があります。
一般的なもも肉の唐揚げは、100gあたり約280kcal〜320kcal程度が目安です。
フライドチキンは、衣が厚いのが特徴です。バッター液を使い、粉を二度付けすることもあるため、衣が油を多く吸い込みます。その結果、唐揚げに比べて脂質や炭水化物(糖質)が高くなり、総カロリーも高くなる傾向があります。
骨付きのフライドチキン(ドラム)は100gあたり約250kcal〜300kcal程度ですが、衣の量や部位によって大きく変動します。
体験談:コンビニチキン食べ比べで気づいた「衣」の重要性
ある日、無性に揚げ物が食べたくなり、コンビニエンスストアでホットスナックを眺めていました。
そこには「からあげ棒」と、いわゆる「ファミチキ」や「Lチキ」のような「フライドチキン」が並んでいます。ふと「これって、どう違うんだ?」と疑問に思い、両方買って食べ比べてみることにしたんです。
まず「からあげ棒」。これはまさしく「唐揚げ」の味です。醤油と生姜の味が肉にしっかり染みていて、衣は薄くサクッとしています。主役はあくまで肉の味でした。
次に「フライドチキン」。一口食べると、まずザクッ!という衣の強烈な食感と、ペッパーやハーブのスパイシーな香りが口に広がりました。肉自体はジューシーですが、味付けはほとんど衣が担っています。
この時、僕は明確に違いを認識しました。「あ、唐揚げは『肉料理』で、フライドチキンは『衣とスパイスを楽しむ料理』なんだな」と。
同じ鶏肉の揚げ物でも、味付けの主体が「肉」か「衣」かで、ここまで満足感が変わるのかと驚きました。それ以来、和風のジューシーな肉が食べたい時は「唐揚げ」、ジャンキーでスパイシーな衣が食べたい時は「フライドチキン」と、明確に選ぶようになりましたね。
「唐揚げ」と「フライドチキン」に関するよくある質問
唐揚げとフライドチキンの違いに関して、特によくある質問をまとめました。
唐揚げと竜田揚げの違いは何ですか?
「竜田揚げ(たつたあげ)」も唐揚げと非常に似ていますが、一般的に「醤油とみりんで下味をつけ、片栗粉のみをまぶして揚げたもの」を指します。唐揚げは小麦粉も使いますが、竜田揚げは片栗粉だけを使うため、衣が白っぽく仕上がり、よりサクサクとした食感が強くなるのが特徴です。
チキンナゲットとの違いは何ですか?
チキンナゲットは、「鶏ひき肉(ミンチ)」に繋ぎ(卵や小麦粉)や調味料を加えて成形し、衣をつけて揚げた「加工品」です。唐揚げやフライドチキンが「鶏肉(一枚肉)」をそのまま使うのに対し、ナゲットはひき肉であるという点が最大の違いですね。
結局、日本のコンビニのチキンはどっちですか?
商品名によりますが、「からあげクン」や「からあげ棒」のような商品は、肉に下味がついているため「唐揚げ」に分類されます。一方、「Lチキ」「ファミチキ」「ななチキ」などは、スパイスを効かせた衣を特徴としており、調理法としては「フライドチキン」に分類されますね。
まとめ|唐揚げとフライドチキンの使い分け
「唐揚げ」と「フライドチキン」の違い、明確にご理解いただけたでしょうか。
どちらも魅力的な鶏肉の揚げ物ですが、その背景や調理法は全く異なります。
- 唐揚げ:日本発祥。肉に下味(醤油・生姜など)をつけ、粉(小麦粉・片栗粉)をまぶして揚げる。和風の味で、肉のジューシーさが主役。
 - フライドチキン:アメリカ発祥。衣に味(スパイス・ハーブ)をつけ、肉にまとわせて揚げる。洋風の味で、衣のザクザク感が主役。
 
ご飯のおかずやお弁当には、味がしっかり染みた「唐揚げ」を。
スパイシーな香りとザクザク食感をジャンキーに楽しみたい時は、「フライドチキン」を。
このように、その日の気分やシーンで使い分けて、奥深い鶏肉の揚げ物文化を楽しんでみてくださいね。
他にも様々な料理・メニューの違いについて解説していますので、ぜひご覧ください。