おせちの栗きんとんと和菓子の栗きんとんの違い!黄金の餡か、栗の茶巾絞りか

「栗きんとん」と聞いて、あなたはどちらを思い浮かべますか?

お正月に食べる、あの黄金色でねっとり甘い「おせち料理」でしょうか?

それとも、秋になると和菓子屋さんに並ぶ、茶巾絞り(ちゃきんしぼり)の「和菓子」でしょうか?

実はこの二つ、名前は同じ「栗きんとん」ですが、原材料も製法も、そして見た目や食感も全く異なる食べ物なんです。

結論から言うと、おせちの「栗きんとん」はさつまいも餡で栗の甘露煮を和えたもの和菓子の「栗きんとん」は栗と砂糖だけを炊き上げて茶巾絞りにしたものを指します。

この記事を読めば、二つの「栗きんとん」の決定的な違いがスッキリとわかります。

結論|おせちの栗きんとんと和菓子の栗きんとんの違いが一目でわかる比較表

【要点】

最大の違いは「主原料」と「見た目」です。おせちの「栗きんとん(栗金団)」は、さつまいもをベースにした黄金色の餡に栗の甘露煮を混ぜたものです。一方、和菓子の「栗きんとん」は、栗と砂糖のみを原料とし、栗を炊いて裏ごししたものを茶巾絞りにした、素朴な栗色のお菓子です。

まずは、二つの「栗きんとん」の決定的な違いを、一覧表で比較してみましょう。

項目栗きんとん(おせち)栗きんとん(和菓子)
分類おせち料理(口取り)和菓子(生菓子)
主な原材料さつまいも、栗の甘露煮、砂糖、みりん、クチナシの実栗、砂糖
見た目・色鮮やかな黄金色、ねっとりした餡素朴な栗色(淡い黄色)、茶巾絞りの筋
食感ねっとり、滑らか(餡)、栗はホクホクほろほろ、しっとり、栗の粒感が残る
主な産地・文化全国(おせち料理として)岐阜県中津川市、長野県小布施町など
旬・時期正月(おせち)秋(新栗の季節)
名前の漢字栗金団(金の団子)栗金飩(栗のきんとん)、栗きんとん

「栗きんとん」という言葉が指す二つの食べ物

【要点】

一般的に「栗きんとん」と言うと、地域によって指すものが変わります。全国的にはおせち料理の「栗金団」を指すことが多いですが、岐阜県中津川市などでは栗と砂糖で作る和菓子の「栗金飩」を指します。

同じ名前でありながら、なぜ二つの異なる食べ物が存在するのでしょうか。その背景を見ていきましょう。

「おせちの栗きんとん」は全国区の正月料理

一般的に、特に東京近郊など多くの地域で「栗きんとん」と言えば、お正月に食べるおせち料理の一品を指します。

漢字では「栗金団」と書きます。「金団」とは「金の団子」または「金の布団」を意味し、その鮮やかな黄金色から金銀財宝を連想させます。

「今年も豊かな一年になりますように」という金運上昇や商売繁盛の願いが込められた、縁起物です。

「和菓子の栗きんとん」は岐阜県中津川市が有名な銘菓

一方、もう一つの「栗きんとん」は、高級和菓子として知られています。

特に有名なのが、岐阜県中津川市で、「栗きんとん発祥の地」とも言われています。

江戸時代後期、茶の湯が盛んになる中で、この地域で豊富に採れる良質な栗を使い、菓子職人たちが腕を競い合って生み出したとされています。

こちらは漢字で「栗金飩」と書くこともあり、おせちのものとは明確に区別されています。

【核心】原材料と製法の違い

【要点】

原材料が根本的に異なります。おせちの栗きんとんは「さつまいも」をクチナシの実で黄金色に着色し、栗の甘露煮を混ぜ込みます。一方、和菓子(中津川式)の栗きんとんは「栗」と「砂糖」のみを使い、栗本来の色と風味を活かして作られます。

二つの「栗きんとん」の最大の違いは、主原料と製法にあります。

おせちの栗きんとん:さつまいも餡(またはクチナシ)+栗の甘露煮

おせち料理の「栗金団」は、さつまいもを茹でて裏ごししたものがベースの「餡」です。

あの鮮やかな黄金色は、さつまいも自体の色に加え、多くの場合「クチナシの実」を使って着色されています。

この甘いさつまいも餡の中に、栗の甘露煮が丸ごと、あるいは割れたものが入っています。主役はあくまで黄金色の「餡」であり、栗は「具材」としての側面が強いです。

和菓子の栗きんとん:栗+砂糖のみ

和菓子の「栗きんとん」(特に岐阜・中津川スタイル)は、非常にシンプルです。

原材料は「栗」と「砂糖」のみ。さつまいもやクチナシの実は一切使いません。

収穫した新栗を蒸して中身を取り出し、少量の砂糖を加えて炊き上げます。それを裏ごしし、一粒一粒の栗の粒感をあえて残しながら、濡らした布巾で「茶巾絞り」にして形を整えます。

まさに、栗そのものの風味を最大限に活かしたお菓子と言えますね。

味・食感・見た目の違い

【要点】

おせちの栗きんとんは、さつまいもと水飴(みりん)による鮮やかな黄金色で、ねっとりとした甘い餡が特徴です。和菓子の栗きんとんは、栗本来の素朴な黄色で、水分が少なく、ほろほろと崩れる繊細な食感と上品な甘さが特徴です。

おせちの栗きんとん:黄金色でねっとり、非常に甘い

見た目は、クチナシの実で着色された鮮やかな黄金色。水飴やみりんも多く使われるため、光沢があり、ねっとりとした粘度の高い「餡」です。

味わいは非常に甘く、さつまいもの風味が土台にあり、そこに甘露煮の栗の食感が加わります。

和菓子の栗きんとん:素朴な栗色、ほろほろ、栗本来の繊細な甘み

見た目は、栗を炊き上げたそのままの素朴な淡い黄色(栗色)です。表面には茶巾絞りの筋が入っています。

食感は、おせちのものとは全く異なり、水分が少ないため「ほろほろ」「しっとり」としています。

味わいは、砂糖の甘さよりも栗本来の風味が主役。口の中でほろりと崩れ、栗の繊細な香りと上品な甘さが広がります。

文化・旬・食べ方の違い

【要点】

おせちの栗きんとんは、金運を願う「縁起物」として正月に食べられます。一方、和菓子の栗きんとんは、新栗の収穫を祝う「秋の味覚」であり、旬は9月~10月です。

おせちの栗きんとん:正月の縁起物(金運)

おせちの「栗金団」は、その黄金色の見た目から、金運や商売繁盛を願う縁起物として、お正月に食べられます。

また、栗は「搗ち栗(かちぐり)」とも呼ばれ、「勝ち」に通じることから勝負運向上の意味も込められています。

和菓子の栗きんとん:秋の味覚(新栗)

和菓子の栗きんとんは、「秋の風物詩」です。

栗の旬である9月〜10月になると、中津川などの和菓子店が一斉に「新栗」を使った栗きんとんの販売を開始します。

その年の新栗の風味を味わう、季節限定の贅沢な生菓子として愛されており、お正月のイメージは全くありません。

体験談|名前が同じで驚いた記憶

僕が和菓子の「栗きんとん」を初めて知ったのは、社会人になってからです。

岐阜県中津川市出身の同僚が、秋の帰省土産として職場で配ってくれたのがきっかけでした。

「栗きんとんです」と渡された時、僕の頭の中は「?」でいっぱいでした。なぜなら、僕にとって「栗きんとん」とは、お正月に食べる、あの黄色くてベタッと甘い「さつまいもの餡」だったからです。

目の前にあるのは、茶色く素朴な、茶巾絞りのお菓子。「これが栗きんとん…?」と半信半疑で口に運びました。

その瞬間、衝撃が走りました。

「これは…栗だ!栗そのものだ!」と。

おせちの栗きんとんの味を想像していた僕の口に広がったのは、さつまいもの味ではなく、栗の上品で繊細な香りと、ほろほろと崩れる食感でした。砂糖の甘さはごく控えめで、主役は完全に「栗」。

「同じ名前なのに、全くの別物じゃないか!」と感動し、同僚にその違いを熱心に聞いたのを覚えています。

おせちの「栗金団」が金運を願うハレの日の「料理」なら、中津川の「栗金飩」は秋の収穫を祝う「お菓子」なのだと、その時初めて知りました。今では、毎年秋になると自分でお取り寄せするほどの大好物です。

「栗きんとん」に関するよくある質問(FAQ)

二つの栗きんとんに関して、よくある疑問にお答えします。

なぜ二つとも同じ「きんとん」という名前なのですか?

「きんとん(金団)」とは、もともと金色の団子、あるいは金色の布団という意味を持つ言葉です。

おせちのものは、その黄金色の見た目から「栗金団」と呼ばれるようになりました。和菓子のものも、栗の黄色を金色に見立てて「栗金飩(きんとん)」と呼ばれるようになったと考えられます。また、和菓子の技法として、そぼろ状の餡で芯を包む「きんとん」という仕上げ方もあり、京都などではそちらを指す場合もあります。

おせちの栗きんとんに、なぜ「さつまいも」が使われるようになったのですか?

もともとは栗を裏ごしして作られていたようですが、さつまいもを使うようになった明確な記録は残っていません

一説には、栗は高価であったため、より安価でボリュームを増やすことができ、かつクチナシの実で美しく着色できるさつまいもが、縁起物であるおせち料理に最適だったのではないか、と考えられています。

和菓子の栗きんとんは中津川以外でも作られていますか?

はい、作られています。

岐阜県中津川市が「発祥の地」として最も有名ですが、お隣の岐阜県恵那市や、長野県の小布施町(おぶせまち)なども栗の産地として有名で、独自の栗きんとん(栗あんのお菓子)を製造・販売しています。

まとめ|おせちの「餡」と和菓子の「栗そのもの」

「栗きんとん」という二つの食べ物の違い、スッキリしましたでしょうか?

どちらも日本の食文化を代表する素晴らしい食べ物ですが、その個性は全く異なります。

  • おせちの栗きんとん(栗金団)
    さつまいもベースの黄金色の餡に、栗の甘露煮が入ったもの。
    正月金運を願って食べる縁起物。
  • 和菓子の栗きんとん(栗金飩)
    栗と砂糖だけを使い、茶巾絞りにしたもの。
    新栗の風味を味わう季節の銘菓。

おせちの栗きんとんが「さつまいも餡を楽しむ」料理なら、和菓子の栗きんとんは「栗そのものを楽しむ」お菓子と言えますね。

この違いを知っていれば、お正月に和菓子屋さんの栗きんとんを探したり、秋に「おせち用のきんとんが食べたい」と間違うこともなくなります。

「食べ物の違い」カテゴリでは、他にも様々なスイーツ・お菓子の違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧になってください。