くるみ餅とずんだ餅の違いとは?餡の原料(くるみ・枝豆)が決め手!

くるみ餅とずんだ餅、どちらも美味しいお餅の和菓子ですが、見た目も味も全く違いますよね。

東北地方、特に仙台名物として一緒に語られることも多い両者ですが、その違いは餡(あん)の主原料にあります。

くるみ餅は「胡桃(くるみ)」を、ずんだ餅は「枝豆」をすり潰して餡にしています。この原料の違いが、色、香り、味、そして文化的な背景のすべてを決定づけているんです。

この記事では、くるみ餅とずんだ餅の明確な違いを、製法から食べ方、地域の文化まで徹底的に比較解説します。

読み終える頃には、あなたが今日食べたいのはどちらかがハッキリとわかるようになりますよ。それでは、まず両者の決定的な違いから見ていきましょう。

結論|くるみ餅とずんだ餅の違いを一言でまとめる

【要点】

くるみ餅とずんだ餅の最大の違いは「餡の原料」です。くるみ餅は「胡桃(くるみ)」をすり潰し、香ばしいコクのある餡(地域により醤油味も)を使います。一方、ずんだ餅は「枝豆」をすり潰し、鮮やかな緑色と爽やかな香りの餡を使います。

どちらもお餅に甘い餡を絡めた和菓子ですが、その個性は全く異なります。くるみ餅はずんだ餅に比べて歴史が古く、食べられている地域も広い傾向があります。

両者の違いを一覧表にまとめました。

項目くるみ餅ずんだ餅
餡の主原料胡桃(くるみ)(ナッツ類)枝豆(未成熟な大豆)
見た目(色)ベージュ色、薄茶色鮮やかな緑色、黄緑色
味・香りナッツ特有の香ばしさと濃厚なコク。醤油ベースの甘じょっぱい味もある。枝豆の爽やかで青々しい香り。さっぱりとした優しい甘さ(塩で引き立てる)。
主な地域東北地方(岩手、宮城、山形など)、長野県など広い範囲。宮城県(仙台市)が圧倒的に有名。山形県、岩手県など。
旬(伝統的)秋(くるみの収穫期)夏(枝豆の収穫期)のお盆
保存性生菓子。常温または冷蔵。非常に傷みやすい(要冷蔵)

特に注目すべきは「味付け」と「保存性」ですね。くるみ餅には砂糖だけの甘いタイプと、醤油が加わった甘じょっぱいタイプが存在します。一方、ずんだ餅は枝豆の風味を活かすため、砂糖と少量の「塩」で味を整えるのが基本です。

また、ずんだ餅は枝豆(野菜)が原料のため、くるみ餅以上に日持ちがしないデリケートな和菓子なんです。

原材料・製法の違い|餡(あん)の主役が決定的な差

【要点】

くるみ餅は、乾物である「くるみ」をすり潰し、砂糖や醤油を加えます。ずんだ餅は、旬の「枝豆」を茹で、薄皮をむき、すり潰して砂糖と塩で味を調えます。特にずんだ餡は、薄皮をむく工程に多大な手間がかかります。

どちらも「すり潰す」という工程は共通していますが、主役が全く異なります。

くるみ餅:主役は「胡桃(くるみ)」

くるみ餅の餡は、もちろん「胡桃(くるみ)」です。

製法は比較的シンプルで、殻から取り出したくるみの実を、油分が出て滑らかになるまですり鉢などですり潰します。そこに砂糖(白砂糖、黒糖、和三盆など様々)を加えて甘い餡にします。

最大の特徴は、地域によって「醤油」を加えることです。特に仙台周辺や岩手県南部(一関市など)では、くるみ餡に醤油を加えるのが伝統的で、ナッツのコクと醤油の塩味、砂糖の甘さが一体となった「甘じょっぱい」味が親しまれています。

お餅にそのまま絡めるタイプが主流ですが、くるみを餅生地に練り込む「くるみゆべし」とはまた別のお菓子ですね。

ずんだ餅:主役は「枝豆(えだまめ)」

ずんだ餅の餡は、鮮やかな緑色の「枝豆」です。この餡のことを「ずんだ」と呼びます。

製法は非常に手間がかかります。

  1. 新鮮な枝豆を茹でます。
  2. さやから豆を取り出します。
  3. 豆一粒一粒の薄皮を、手作業で丁寧に取り除きます。(この作業が味と舌触りを左右する最も重要な工程です)
  4. 薄皮をむいた豆を、すり鉢ですり潰します。(「ずんだ」という名前は、豆を打つ「豆打(ずだ)」が訛ったもの、という説が有力です)
  5. 砂糖を加え、最後に少量の「塩」を加えて味を引き締めます。

ずんだ餡は枝豆の青々しい香りと風味が命。そのため、醤油のような香りの強い調味料は使わず、塩で甘さを引き立てるのが特徴です。この繊細な風味が、くるみ餅との大きな違いを生んでいます。

味・食感・香り・見た目の違い

【要点】

くるみ餅はベージュ色で、ナッツの香ばしい香り濃厚なコクが特徴です。対照的に、ずんだ餅は鮮やかな緑色で、枝豆の爽やかな香りさっぱりした甘さが特徴です。

原料が違えば、もちろん五感で感じるすべてが異なります。

見た目の違い:香ばしい茶色 vs 鮮やかな緑色

見た目は一目瞭然ですね。

  • くるみ餅:くるみの実と皮、そして醤油(入る場合)の色が合わさり、落ち着いたベージュ色(薄茶色)をしています。
  • ずんだ餅:枝豆(葉緑素)の色がそのまま出た、鮮やかな緑色(黄緑色)です。この鮮やかさが、夏の季節感を演出します。

味と香りの違い:濃厚なコク vs 爽やかな青い香り

香りと味も対照的です。

くるみ餅は、ローストしたナッツのような香ばしい香りと、くるみ特有の油分がもたらす濃厚なコクが口いっぱいに広がります。醤油入りの場合は、甘さの中に塩味がキリッと効いた、後引く「甘じょっぱい」味わいが楽しめます。

ずんだ餅は、まず枝豆の爽やかで青々しい香り(よく「スイカのような香り」と表現されます)が鼻に抜けます。味は非常に繊細で、砂糖の甘さの奥に豆本来の旨味を感じ、塩味が全体をさっぱりとまとめています。

食感の違い:くるみの粒感 vs 枝豆の舌触り

餡の食感も、お店や家庭によって個性が出るところです。

くるみ餅は、くるみの歯ごたえを残すため、あえて粗めにすり潰し、粒々感(つぶつぶ感)をアクセントにすることが多いです。滑らかタイプもありますが、くるみの存在感を感じるものが多い印象ですね。

ずんだ餅は、滑らかな舌触りを追求するタイプと、あえて枝豆の粒感を残すタイプに分かれます。滑らかタイプは、薄皮を丁寧に取り除いた証拠であり、高級品とされることが多いです。どちらも、くるみ餅の油分のあるコクとは異なり、水分を多く含んだみずみずしい食感が特徴です。

保存方法・賞味期限・日持ちの違い

【要点】

最も注意すべきはずんだ餅です。枝豆(野菜)を原料とする生菓子であり、非常に傷みやすく、日持ちしません。必ず冷蔵保存し、当日中(長くても翌日)に食べきるのが原則です。くるみ餅も生菓子ですが、ずんだ餅ほど足は早くありません。

お土産として購入する際に最も注意すべき点かもしれません。

ずんだ餅の「ずんだ餡」は、生の枝豆から作られており、水分も豊富です。そのため、常温放置は絶対に避けるべきで、すぐに食べない場合は必ず冷蔵庫で保存する必要があります。伝統的なお店では、今でも「本日中にお召し上がりください」と言われることがほとんどです。

くるみ餅も、お餅と生の餡を合わせているため、もちろん日持ちはしません。しかし、主原料のくるみは乾物であり、ずんだ餡ほど水分が多くないため、ずんだ餅に比べれば保存性はやや高いと言えます。

最近では、急速冷凍技術の進歩により、どちらのお菓子も冷凍状態で販売・お土産として流通しています。冷凍であれば数週間〜数ヶ月持ちますが、解凍後はやはり生菓子ですので、すぐに食べきる必要があります。

文化・地域・季節の違い

【要点】

ずんだ餅は宮城県(仙台)の郷土菓子として圧倒的な知名度を持ち、伝統的に夏(お盆)に食べられてきました。一方、くるみ餅は東北(岩手・山形など)や長野県といったより広い地域で食べられており、旬は(くるみの収穫期)とされています。

両者はしばしば「東北名物」として一括りにされますが、その文化的背景には違いがあります。

ずんだ餅:仙台(宮城)が誇る夏の郷土菓子

「ずんだ」と言えば、誰もが「仙台」を思い浮かべるほど、宮城県の郷土菓子として強く根付いています。

伊達政宗が陣太刀の柄で枝豆を砕いて食べたのが始まり、といった伝説も残るほど、その歴史は古いとされています。伝統的に、枝豆が収穫できる夏、特にお盆の時期に、神様へのお供え物として各家庭で作られてきました。

現在では仙台駅を中心に、ずんだシェイクやずんだプリンなど、多様な関連商品が開発され、季節を問わず楽しめる観光資源となっています。

くるみ餅:東北や信州など広い地域で愛される

くるみ餅も、東北地方で広く愛されている郷土菓子です。岩手県の一関市や平泉、山形県の各地でも名物となっています。

また、くるみは東北だけでなく、長野県(特に東御市)も日本有数の産地です。そのため、長野県でも「くるみおはぎ」や「くるみだれ」として、餅や団子と一緒に食べる文化が深く根付いています。

くるみが収穫できるが本来の旬であり、貴重な栄養源として冬の保存食にもされてきました。

体験談|仙台で出会った二つの「ご当地餅」

僕が初めて「くるみ餅」と「ずんだ餅」の違いを強烈に意識したのは、仙台に出張した時でした。

仙台駅でお土産を選んでいると、当然「ずんだ餅」が目に入ります。鮮やかな緑色で、いかにも美味しそうです。もちろん購入したのですが、その隣に、地味なベージュ色の「くるみ餅」も並んでいました。「仙台でくるみ餅?」と少し不思議に思いつつ、食べ比べのために両方買ってみたんです。

ホテルに戻り、まずは「ずんだ餅」から。一口食べると、枝豆の想像以上に爽やかな香りがフワッと鼻に抜けました。「甘い枝豆」という背徳感と、さっぱりした甘さが最高でしたね。

そして次に「くるみ餅」を食べた瞬間、衝撃が走りました。「あれ、しょっぱい!?」

僕が知っていた「くるみ和え」は砂糖だけの甘いものでしたが、仙台のくるみ餅は醤油ベースの甘じょっぱい味だったんです。しかし、それがクルミの濃厚な油分とコクに驚くほどマッチしていて、ずんだ餅とは全く違う方向性の「止まらない美味しさ」がありました。

同じ「餅」というキャンバスに、「枝豆+塩」と「くるみ+醤油」という全く違う絵を描く。この奥深さこそ、郷土料理の魅力なんだと痛感した体験でした。どちらも甲乙つけがたい、素晴らしいお菓子ですよね。

くるみ餅とずんだ餅に関するFAQ(よくある質問)

くるみ餅に醤油が入っているのは普通ですか?

はい、地域によりますが普通です。特に宮城県や岩手県南部などでは、くるみ餡に醤油を加えて「甘じょっぱい」味付けにするのが伝統的なスタイルです。砂糖だけの甘いくるみ餅も、もちろん存在しますよ。

「ずんだ」ってどういう意味ですか?

語源には諸説ありますが、枝豆をすり潰す際に豆を打つ音「豆打(ずだ)」が訛って「ずんだ」になったという説が最も有力とされています。伊達政宗が陣太刀の柄(ずんた)で叩いたから、という説もありますね。

ずんだ餅はなぜ日持ちしないのですか?

主原料が茹でた「枝豆(野菜)」であり、水分を非常に多く含んでいるためです。タンパク質も豊富なため、常温ではすぐに雑菌が繁殖し、風味が落ちてしまいます。生ものとして扱い、必ず冷蔵庫で保存し、できるだけ早く食べきる必要があります。

まとめ|くるみ餅とずんだ餅、どちらを選ぶべきか?

くるみ餅とずんだ餅の違い、明確になりましたでしょうか。

どちらも日本の素晴らしい餅菓子ですが、その個性は正反対とも言えます。

  • くるみ餅:ナッツの香ばしさと濃厚なコク、あるいは「甘じょっぱい」複雑な味わいを求める時におすすめです。
  • ずんだ餅:枝豆の爽やかな香りとさっぱりした甘さ、鮮やかな緑色の見た目を楽しみたい時におすすめです。(ただし、持ち帰りや保存には細心の注意を!)

もし仙台などで両方を見かけたら、ぜひ食べ比べて、その奥深い味の違いを楽しんでみてください。

こうした郷土料理や食文化について、農林水産省のウェブサイト「うちの郷土料理」などで調べてみるのも、新しい発見があって面白いですよ。

他にもたくさんの「スイーツ・お菓子の違い」に関する記事がありますので、ぜひチェックしてみてください。