ハワイ土産の定番として人気の「マラサダ」と、世界中で愛される「ドーナツ」。
どちらも揚げ菓子で見た目も似ていますが、その違いを正確に説明できますか?
これらは、食感、製法、そして文化的な背景まで全く異なるスイーツなんです。
この記事では、マラサダとドーナツの決定的な違いを、原材料、製法、歴史、そして食べ方の観点から徹底的に比較解説します。
読み終える頃には、あなたが今日食べたいのはどちらなのか、明確になっているでしょう。
結論|マラサダとドーナツの違いを一言でまとめる
マラサダとドーナツの最も大きな違いは、「発祥地」と「生地」です。
マラサダはポルトガル発祥(ハワイで人気)のパンに近い生地(強力粉・イースト)で、穴がなく「ふわもち」食感が特徴です。一方、ドーナツはアメリカ発祥で、ケーキ生地(薄力粉・ベーキングパウダー)やイースト生地など種類が豊富で、リング状(穴あき)が多く食感も多彩です。
まずは、両者の違いを比較表でご覧ください。
| 項目 | マラサダ (Malasada) | ドーナツ (Doughnut) |
|---|---|---|
| 発祥地 | ポルトガル(ハワイで大衆化) | アメリカ(オランダ起源説など諸説あり) |
| 主な生地 | パン生地(強力粉、イースト、卵、バター) | ケーキ生地(薄力粉、ベーキングパウダー)またはイースト生地 |
| 食感 | 外はカリッ、中は「ふわふわ」「もちもち」 | しっとり(ケーキ)、ふわっと軽い(イースト)など多彩 |
| 形状 | 穴なしの円形が基本 | リング状(穴あき)が象徴的だが、穴なしも多数 |
| 仕上げ | 揚げたてに砂糖、シナモンシュガーをまぶす | グレーズ、チョコ、トッピング、クリーム充填など非常に多彩 |
| 食べ頃 | 揚げたてが命 | 種類による(揚げたて、冷やしても美味しいものも) |
原材料・製法・発祥地の違い
マラサダはポルトガルの移民がハワイに伝えた「パン生地」ベースの揚げ菓子です。イースト(酵母)で発酵させるため、パンに近い製法で作られます。一方、ドーナツはアメリカ発祥とされ、ベーキングパウダーで膨らませる「ケーキ生地」と、イーストで発酵させる「イースト生地」の2種類が主流です。
マラサダ(ポルトガル発祥・ハワイ経由)
マラサダのルーツは、ポルトガルにあります。
もともとは、カトリックの「告解(ゆるしの秘跡)の火曜日」(四旬節の前日)に、ラードや砂糖などの贅沢品を使い切るために作られた家庭のお菓子でした。
このお菓子がハワイに伝わったのは19世紀後半。ポルトガルからの移民がサトウキビ農園で働くためにハワイへ渡った際、この伝統菓子を持ち込んだのです。
マラサダの生地は、基本的にパン生地です。強力粉、イースト(酵母)、卵、バター、砂糖などを使い、しっかりと発酵させてから油で揚げます。
パンと同様にイーストで膨らませるため、独特の「ふわふわ」「もちもち」とした食感が生まれるわけですね。
ドーナツ(アメリカ発祥)
ドーナツの発祥には諸説ありますが、一般的にはアメリカで発展したお菓子とされています。
オランダからの移民が持ち込んだ「オリークック(油で揚げたケーキ)」が原型とも言われていますね。
ドーナツの生地は、大きく分けて2種類あります。
- ケーキドーナツ:薄力粉を主原料に、ベーキングパウダー(膨張剤)を使って生地を膨らませます。短時間で作れ、食感は「しっとり」「ほろり」としたケーキに近いものになります。オールドファッションなどがこれに当たります。
- イーストドーナツ:強力粉や中力粉を主原料に、イースト(酵母)を使って発酵させます。マラサダと同様に発酵時間が必要ですが、食感は「ふわっと」「軽い」仕上がりになるのが特徴です。グレーズド(砂糖がけ)ドーナツの多くがこのタイプです。
最大の違いは「生地」と「揚げ方」
マラサダは、ほぼ例外なく「イースト発酵させたパン生地」です。
一方、ドーナツは「ベーキングパウダーで膨らませるケーキ生地」と「イーストで発酵させるパン生地」の2系統が存在します。
つまり、「マラサダはドーナツの一種」ではなく、マラサダは「パン生地系」、ドーナツは「ケーキ生地系とイースト生地系」という異なるカテゴリーとして捉えるのが正しいでしょう。
また、マラサダは生地を発酵させた後、成形せずにそのまま油に投入(あるいは軽く丸める程度)することが多く、自然な丸い形になります。揚げた後に、熱いうちに砂糖をまぶすのが伝統的な仕上げです。
味・食感・見た目の違いを比較
マラサダは表面がカリッとして中は「ふわふわ・もちもち」の食感が最大の特徴です。形状は穴がなく、仕上げも砂糖やシナモンシュガーが基本。ドーナツは種類により「しっとり」から「ふわ軽」まで食感が異なり、リング状の穴あきが象徴的で、トッピングも非常に多彩です。
食感(マラサダは「ふわもち」、ドーナツは多彩)
両者の違いが最も顕著に現れるのが食感でしょう。
マラサダの魅力は、揚げたての「外側はカリッと香ばしく、中は驚くほどふわふわで、少しもっちり」とした食感のコントラストです。パン生地ベースで、卵やバターを多く使うため、リッチで風味豊かな味わいがあります。
対してドーナツの食感は、生地の種類によって大きく異なります。
- ケーキドーナツ:密度が高く、水分を含んだ「しっとり」「ほろり」とした食感。食べ応えがあります。
- イーストドーナツ:発酵によって空気を多く含み、「ふわっと軽い」食感。いくつでも食べられそうな軽やかさがあります。
形状(穴の有無)
ドーナツといえば、中央に穴が開いた「リング状」を思い浮かべる方が多いですよね。
この穴は、生地の中心まで均一に火を通すために開けられたと言われています。もちろん、穴のない球状や棒状のドーナツもたくさんあります。
一方、伝統的なマラサダには穴がありません。
生地を丸めてそのまま揚げるため、ふっくらとした丸い形(あるいは少し不定形)に仕上がります。ハワイの有名店でも、穴なしが主流です。
仕上げ(シンプル vs 多彩なトッピング)
マラサダの仕上げは非常にシンプルです。
揚げたての熱い生地に、グラニュー糖やシナモンシュガーをたっぷりとまぶすのが基本。最近では、中にクリーム(カスタードやハウピア=ココナッツ)を詰めたものも人気ですが、表面の装飾は控えめです。
ドーナツは、その仕上げの多彩さが魅力です。
砂糖の蜜をかけた「グレーズド」、チョコレートコーティング、ナッツやスプリンクルのトッピング、中にジャムやクリームを詰めたものなど、バリエーションは無限大と言えるでしょう。
この見た目の華やかさも、ドーナツが世界中で愛される理由の一つですよね。
保存方法とおいしい食べ方
マラサダの命は「揚げたて」です。時間が経つと油が回り、食感が著しく落ちるため、購入後すぐに食べるのが鉄則です。ドーナツは種類によりますが、ケーキタイプなどは翌日でもリベイク(温め直し)すれば美味しく食べられるものが多いです。
賞味期限(マラサダは揚げたてが命)
これは僕の経験上、最も強調したい違いかもしれません。
マラサダは、何をおいても「揚げたて」を食べるべきお菓子です。
揚げてから30分も経つと、あの「カリッ、ふわもち」の魔法のような食感は失われはじめます。生地が油を吸って重くなり、硬くなってしまうのです。
ハワイの有名店で常に行列ができているのは、皆が揚げたてを求めているからです。マラサダをお土産にする場合も、できるだけ早く食べるのが鉄則ですね。
ドーナツの保存と温め直し
ドーナツは、種類によって保存方法や食べ頃が異なります。
イーストドーナツも揚げたてが美味しいですが、グレーズドタイプなどは少し時間が経っても美味しく食べられます。
ケーキドーナツ(特にオールドファッションなど)は、翌日になってもオーブントースターなどで軽くリベイク(温め直し)すると、表面のカリッと感が戻り、美味しく食べられることが多いです。
ただし、クリームやフルーツが乗ったものは日持ちしないため、当日中に食べるのが基本です。
文化的な位置づけと人気の背景
マラサダはハワイの「ローカルフード」や「B級グルメ」として深く根付いており、専門店やベーカリーで揚げたてを味わうのが一般的です。一方、ドーナツはアメリカ文化の象徴の一つであり、世界的なチェーン店を通じて日常的なおやつやコーヒーの供としてグローバルに普及しています。
ハワイにおけるマラサダ
マラサダは、今やハワイを代表するローカルスイーツです。
観光客はもちろん、地元の人々(ロコ)にも深く愛されています。「レナーズ・ベーカリー」のような有名専門店では、揚げたてを求める人々で常に行列ができています。
ハワイでは、マラサダは「特別な日のお菓子」というよりは、日常的に愛される「B級グルメ」「ソウルフード」として確固たる地位を築いていますね。
世界に広がるドーナツ文化
ドーナツは、アメリカ文化の象徴とも言える存在です。
コーヒーとの相性が抜群であることから、朝食や休憩時間の定番として定着しました。クリスピー・クリーム・ドーナツやミスタードーナツ(日本発祥でアジア展開)のような世界的なチェーン店を通じて、その文化は各国に広まっています。
近年では、カラフルで独創的なトッピングを施した「グルメドーナツ」も登場し、単なるおやつを超えて、スイーツとしての地位も高めています。
体験談|ハワイの行列と日常のドーナツ
僕がマラサダの本当の美味しさに衝撃を受けたのは、やはりハワイのオアフ島、カパフル通りにある「レナーズ・ベーカリー」でした。
朝早くから行列に並び、ようやく手にした熱々のマラサダ。紙袋越しに伝わる熱気と、甘い砂糖の香り。一口食べると、表面はサクッと軽いのに、中は信じられないくらいフワフワで、噛むともっちりとした弾力がありました。
「これはパンだ。僕が知っているドーナツとは全く違う!」と感動したのを覚えています。口の周りが砂糖だらけになるのも構わず、夢中で食べたあの味は忘れられませんね。
それ以来、日本でもマラサダ専門店を見かけるとつい買ってしまいますが、あの「揚げたて」の感動を超えるものにはなかなか出会えません。それほどマラサダは鮮度が命なのだと痛感します。
一方のドーナツは、僕にとっては日常の風景です。
仕事中の休憩に、コーヒーチェーンでイーストドーナツを買うこともありますし、休日に家族とショッピングモールで、カラフルなケーキドーナツを選ぶ楽しみもあります。
マラサダが「ハレの日」の特別な揚げたて体験だとしたら、ドーナツは「ケの日(日常)」の多彩な選択肢を与えてくれる存在。どちらも甲乙つけがたい魅力がありますよね。
マラサダとドーナツに関するFAQ(よくある質問)
マラサダとドーナツの違いについて、よくいただく質問をまとめました。
マラサダに穴が開いていることはありますか?
伝統的なマラサダに穴はありません。生地を丸めて揚げるのが基本です。ただ、最近はアレンジとして、ドーナツのように穴を開けたり、形を変えたりしているお店もゼロではないかもしれませんね。でも、基本は「穴なし」と覚えておけば間違いないでしょう。
マラサダとサーターアンダギーの違いは何ですか?
これは全く別のお菓子ですね!サーターアンダギーは沖縄の伝統的な揚げ菓子です。生地はマラサダのように発酵させず、小麦粉、砂糖、卵を使い、ベーキングパウダーなどで膨らませます。食感は「サクサク」「ずっしり」としていて、クッキーやスコーンに近いです。マラサダの「ふわもち」とは対極にある食感ですよ。
結局、イーストドーナツとマラサダは同じものですか?
非常に近いですが、厳密には違います。どちらもイーストで発酵させた生地を揚げますが、マラサダは卵やバターをより多く配合したリッチなパン生地に近いことが多いです。そのため、イーストドーナツの「ふわっと軽い」食感よりも、マラサダは「ふわもち」で、より食べ応えのあるリッチな風味を感じることが多いですね。
まとめ|マラサダとドーナツ、シーン別のおすすめは?
マラサダとドーナツの違い、スッキリ整理できたでしょうか。
どちらも魅力的な揚げ菓子ですが、その特性を知ることで、より美味しく楽しむことができます。
- マラサダを選ぶべき時:
揚げたての「カリッ、ふわもち」食感を体験したい時。ハワイアンスイーツの気分を味わいたい時。専門店で、その場で食べるのがベストです。 - ドーナツを選ぶべき時:
多彩な味、食感、トッピングから選びたい時。コーヒーのお供として手軽に楽しみたい時。持ち帰って翌日にリベイクして食べることも可能です。
マラサダは「揚げたての瞬間芸」を楽しむスイーツ、ドーナツは「多彩なバリエーション」を楽しむスイーツと言えるかもしれませんね。
あなたの好みやシーンに合わせて、ぜひ両方の美味しさを楽しんでみてください。
当サイト「違いのラボ」では、他にも様々なスイーツ・お菓子の違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。