「再試験(さいしけん)」と「追試験(ついしけん)」、特に学生時代や資格取得の際に耳にする言葉ですよね。
どちらも「もう一度受ける試験」というイメージがありますが、その対象者や実施される理由には大きな違いがあります。
試験に落ちてしまった人が受けるのが「再試験」、病気などやむを得ない理由で受けられなかった人が後日受けるのが「追試験」です。この「誰が」「なぜ」受けるのかという点を理解すれば、使い分けは簡単です。
この記事では、「再試験」と「追試験」の核心的な意味の違いから、それぞれの目的、具体的な使われ方、そして関連する言葉との比較まで、分かりやすく解説していきます。これを読めば、二つの言葉の違いを正確に理解し、混同することはもうありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「再試験」と「追試験」の最も重要な違い
基本的には、一度受けた試験で不合格または基準点に満たなかった人が、再度同じ試験を受けるのが「再試験」、病気や事故など正当な理由で本試験を受けられなかった人が、後日特別に受ける代替試験が「追試験」です。「再試験」は成績不良者向け、「追試験」は欠席者向けの措置という点が大きな違いです。
まず、結論からお伝えしますね。
「再試験」と「追試験」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | 再試験 (さいしけん) | 追試験 (ついしけん) |
|---|---|---|
| 対象者 | 本試験で不合格・成績不良だった人 | 本試験をやむを得ない理由で欠席した人 |
| 実施理由 | 成績不良者への再挑戦・救済措置 | 欠席者への受験機会の確保・代替措置 |
| 時期 | 本試験の後(結果発表後など) | 本試験の後(別日程) |
| 試験内容 | 本試験と同じか、同等レベルの内容が多い | 本試験と同等レベルの内容(問題は異なる場合が多い) |
| 一般的な呼称 | 再試(さいし) | 追試(ついし) |
| ニュアンス | もう一度チャンスを与える | 後から追いかけて試験を行う |
一番大きな違いは、「再試験」は一度結果が出た(そして悪かった)人が対象であるのに対し、「追試験」はまだ結果が出ていない(受けてすらいない)人が対象である、という点ですね。
学生時代に「再試だ…」と落ち込んだ経験がある方も、「追試でなんとか単位取れた!」と安堵した経験がある方もいるのではないでしょうか。
なぜ違う?言葉の定義と目的からイメージを掴む
「再試験」は「再び」試験を行うことで、不合格者にもう一度チャンスを与える、あるいは最低限の基準達成を確認する目的があります。「追試験」は「追いかけて」試験を行うことで、本試験を受けられなかった人に公平な受験機会を提供する目的があります。言葉に含まれる「再」と「追」が、それぞれの目的の違いを示唆しています。
なぜこの二つの言葉が異なる意味を持つのか、それぞれの言葉の定義や実施される目的から考えてみると、そのイメージがより掴みやすくなりますよ。
「再試験」の定義:不合格者への再挑戦の機会
「再試験」は、文字通り「再び(再)試験を行う」ことです。
これは、一度行われた試験(本試験)の結果、合格基準に達しなかった、あるいは成績が著しく不良だった人に対して、もう一度同じ(または同等の)試験を受ける機会を与える制度です。
主な目的は、
- 学習内容の理解が不十分な学生・生徒に、再度学習を促し、最低限の知識・能力の定着を図る。
- 一度の失敗で完全に機会を失うのではなく、再挑戦のチャンスを与える(救済措置)。
といった点にあります。教育的な配慮や、進級・卒業・資格取得のための最終確認といった意味合いが強いと言えるでしょう。
「追試験」の定義:欠席者への代替措置
一方、「追試験」は、「後から追いかけて(追)試験を行う」ことです。
これは、病気、事故、忌引き、交通機関の大幅な遅延など、本人に責任のないやむを得ない理由によって、定められた日時の本試験を受けることができなかった人に対して、後日特別に実施される代替の試験を指します。
主な目的は、
- 不測の事態によって受験機会を失った人に対して、公平な評価の機会を保障する。
- 本試験と同等の条件で成績評価を行うための代替措置を提供する。
といった点にあります。受験者の権利を守り、公平性を担保するための制度的な意味合いが強いと言えるでしょう。
このように、「再」びチャンスを与える「再試験」と、「追」いかけて機会を与える「追試験」では、その対象者も目的も根本的に異なるわけですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
学校では「期末試験の再試験」のように成績不良者向けに、「インフルエンザで欠席したため追試験を受ける」のように欠席者向けに使います。資格試験でも同様です。「欠席したのに再試験」や「不合格なのに追試験」という使い方は基本的に誤りです。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
学校生活や資格試験など、それぞれの言葉がよく使われる場面を見ていきましょう。
「誰が」「なぜ」受けるのかを考えれば、迷うことはありません。
学校(大学・高校など)での使い分け
学生にとっては馴染み深い言葉かもしれませんね。
【OK例文:再試験】
- 期末試験で赤点を取ってしまい、再試験を受けることになった。
- この科目は、合格点に満たない場合、一度だけ再試験のチャンスがある。
- 再試験でも不合格だと、単位を落としてしまう。
- 夏休み中に、数学の再試験対策の補習が行われる。
【OK例文:追試験】
- インフルエンザで期末試験を欠席したため、後日追試験を受ける予定だ。
- 事故による電車の遅延で試験に間に合わなかった学生には、追試験が認められた。
- 追試験の申請には、医師の診断書などの証明書類が必要となる。
- 大学入試共通テストでは、病気などで本試験を受けられなかった受験生のために追試験が設けられている。
成績が悪くて受けるのが「再試験(再試)」、やむを得ず休んでしまって受けるのが「追試験(追試)」という使い分けですね。
資格試験・検定などでの使い分け
資格試験や検定試験などでも、同様の使い分けがされます。
【OK例文:再試験】
- 運転免許の学科試験に落ちたので、後日再試験を受ける。
- この資格試験は、実技で不合格だった場合、一定期間内であれば再試験が可能だ。
- 何度も再試験に挑戦し、ようやく合格を掴み取った。
【OK例文:追試験】
- 台風の影響で会場に来られなかった受験者のために、別日程で追試験が実施されることになった。
- 体調不良により本試験を欠席したため、追試験の申請手続きを行った。
- 追試験の問題は、本試験とは異なるものが出題された。
ここでも、不合格者向けが「再試験」、欠席者向けが「追試験」という基本は同じです。
これはNG!混同しやすい使い方
対象者や理由を取り違えると、意味が通らなくなってしまいます。
- 【NG】病気で休んだので、来週再試験を受けます。
- 【OK】病気で休んだので、来週追試験を受けます。
病気での欠席は「追試験」の対象です。「再試験」は不合格だった場合に受けるものです。
- 【NG】試験に落ちたけど、追試験があるから大丈夫だ。
- 【OK】試験に落ちたけど、再試験があるから大丈夫だ。
試験に落ちた(不合格だった)人が受けるのは「再試験」です。「追試験」は受けられなかった人のための試験です。
【応用編】似ている言葉「再テスト」「補習」との違いは?
「再テスト」は「再試験」とほぼ同じ意味で、より口語的な表現です。「補習」は授業内容を補うための授業や学習活動を指し、再試験対策として行われることもありますが、試験そのものではありません。
「再試験」「追試験」と関連して使われる言葉に、「再テスト」や「補習」があります。これらの違いも確認しておきましょう。
| 言葉 | 意味 | 「再試験」「追試験」との違い |
|---|---|---|
| 再試験 | 不合格者が再度受ける試験 | (基準) |
| 追試験 | 欠席者が後日受ける代替試験 | 対象者と理由が異なる |
| 再テスト | 再度行うテスト | 「再試験」とほぼ同義。より口語的。小テストなどにも使う。 |
| 補習 (ほしゅう) | 正規の授業以外に、学業を補うために行う授業や学習 | 試験そのものではない。再試験対策などで行われることがある。 |
- 再テスト:「テスト」を「再び」行うことで、「再試験」とほぼ同じ意味で使われます。特に学校現場などで、「期末試験の再試験」というよりも「小テストの再テスト」のように、より頻繁に行われる確認テストに対して使われることが多いかもしれません。やや口語的な響きがあります。
- 補習(ほしゅう):正規の授業だけでは不十分な点を補うための授業や学習活動を指します。成績不振者に対して行われることもあれば、希望者向けの発展的な内容を扱うこともあります。「再試験」の対象者に対して、合格点を取るための対策として「補習」が行われることはありますが、「補習」自体は試験ではありません。
「再テスト」はほぼ「再試験」と同じ、「補習」は試験ではなく授業、と覚えておけば良いでしょう。
「再試験」と「追試験」の違いを教育評価の観点から解説
教育評価において、「再試験」は学習到達度の最低基準(ミニマム・エッセンシャルズ)の確認や、形成的評価(学習改善のための評価)の一環として位置づけられます。一方、「追試験」は、評価の公平性・機会均等を担保するための制度的措置であり、総括的評価(最終的な成績判定)において本試験と同等に扱われることを目指します。実施目的と評価上の位置づけが異なります。
教育の場面における成績評価という観点から「再試験」と「追試験」を捉えると、それぞれの制度が持つ意味合いや課題がより深く見えてきます。
「再試験」は、教育評価論において、いくつかの異なる目的で実施されます。
- 最低基準の保証:進級や卒業に必要な最低限の知識・技能(ミニマム・エッセンシャルズ)が習得されているかを確認するための最終関門として。
- 形成的評価:本試験の結果を踏まえ、学習が不十分だった学生に再度学習機会を提供し、理解度を確認することで、学習改善を促す(Formative Assessment)プロセスの一部として。
- 救済措置:一度の試験結果だけで不可とするのではなく、努力次第で挽回できる機会を与える教育的配慮として。
ただし、再試験の評価を本試験と同等に扱うか、上限点を設けるかなどは、その目的や教育機関の方針によって異なります。安易な救済措置は、学習意欲の低下や評価の信頼性低下を招く可能性も指摘されます。
一方、「追試験」は、評価の公平性と機会均等を確保するための制度的な措置としての性格が強いです。
病気など、本人の責に帰さない理由で本試験を受けられなかった学生に対して、不利にならないように代替の評価機会を提供することが主目的です。そのため、試験の難易度や評価基準は、原則として本試験と同等であることが求められます。本試験と追試験で難易度に差があれば、不公平が生じてしまうからです(ただし、全く同じ問題を使うわけにはいかないため、完全な同等性の確保は難しいという課題もあります)。
追試験の結果は、通常、本試験の結果と同じように扱われ、最終的な成績評価(総括的評価:Summative Assessment)に反映されます。
このように、教育評価の観点からは、「再試験」が学習成果の確認や改善プロセスの一部としての意味合いを持つのに対し、「追試験」は評価制度の公平性を担保するための調整措置としての意味合いが強い、と言うことができますね。
僕が「追試験」と「再試験」を勘違いして慌てた大学時代
僕自身の大学時代にも、「再試験」と「追試験」を勘違いして、危うく単位を落としそうになった苦い思い出があります。
それは、必修科目の期末試験でのこと。試験期間中に運悪く高熱を出してしまい、どうしても試験会場に行くことができませんでした。すぐに大学の教務課に連絡し、医師の診断書を提出して、後日「試験」を受けられることになりました。
僕はその時、「ああ、これで『再試験』を受けられる。しっかり勉強し直して、今度こそ合格点を取ろう!」と勝手に思い込んでいたのです。本試験を受けられなかったのに、なぜか頭の中で「再試験」に変換されていました。
そして迎えた試験当日。会場に行くと、同じように本試験を受けられなかった数名の学生が集まっていました。試験官の教授が問題用紙を配りながら、こう言いました。「これは本試験を受けられなかった人のための『追試験』です。内容は本試験と同レベルですが、問題は変えてあります。本試験と同じ評価基準で採点しますので、頑張ってください」
「えっ!?『追試験』?『再試験』じゃないの??」
僕はその時初めて、自分が受けるのが「追試験」であり、それは本試験と同じ基準で評価される、つまり「合格点が取れて当たり前」の試験なのだと気づきました。「再試験」なら、多少難易度が下がったり、合格ラインが調整されたりするかもしれない…なんて甘い期待をしていた自分が恥ずかしくなりました。
しかも、問題が本試験と違うとなると、ヤマを張っていた箇所が全く役に立たない可能性も…。一気に冷や汗が出てきました。
幸い、熱で寝込んでいる間も少しは勉強していたおかげで、なんとか合格点を取ることができましたが、もし「再試験だから、まあ何とかなるだろう」と高を括っていたら、間違いなく単位を落としていたでしょう。
この経験から、言葉の定義を正確に理解すること、そして制度の仕組みをきちんと確認することの重要性を痛感しました。「再試験」と「追試験」では、その位置づけも評価基準も全く違う。それを知っているかどうかで、その後の行動や結果が大きく変わってしまうのだと、身をもって学んだ出来事でした。
「再試験」と「追試験」に関するよくある質問
どちらも有料の場合がありますか?
はい、どちらも有料となる場合があります。特に資格試験などでは、「再試験」に別途受験料が必要となるケースが多いです。「追試験」についても、実施にコストがかかるため、受験料や手数料が必要となる場合があります。ただし、学校の定期試験などでは、教育的配慮から無料で行われることもあります。実施機関の規定を確認する必要があります。
成績(評価)は同じように扱われますか?
扱いは異なることが多いです。「追試験」は本試験の代替措置であるため、原則として本試験と同じ評価基準で扱われます(例:100点満点)。一方、「再試験」は救済措置としての意味合いが強いため、合格点(例:60点)を上限としたり、評価を一段階下げるなどの措置が取られることが一般的です。これも実施機関の方針によります。
入試にも再試験や追試験はありますか?
入学試験においては、一度不合格になった人が同じ試験をもう一度受ける「再試験」は、基本的にありません(次年度の入試を再挑戦することは可能です)。しかし、病気や事故、あるいは大規模災害などで本試験を受けられなかった受験生に対して、「追試験」が実施されることはあります。大学入学共通テストや、一部の大学の個別学力検査などで追試験制度が設けられています。
「再試験」と「追試験」の違いのまとめ
「再試験」と「追試験」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は対象者で使い分け:不合格・成績不良者が受けるのが「再試験」、やむを得ない理由での欠席者が受けるのが「追試験」。
- 目的が違う:「再試験」は再挑戦・救済、「追試験」は機会確保・代替。
- 漢字のイメージが鍵:「再」び受ける再試験、「追」いかけて受ける追試験。
- 評価の扱いが異なる:「追試験」は本試験と同等評価が多いが、「再試験」は上限点が設けられることが多い。
- 類語との違い:「再テスト」は再試験とほぼ同義、「補習」は試験ではなく学習活動。
どちらも「もう一度試験を受ける」という点では共通していますが、その背景や意味合いは大きく異なります。この違いを理解しておけば、学生生活や資格取得の場面で混乱することもなくなるでしょう。
これから自信を持って、「再試験」と「追試験」を使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、社会・関係の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。
スポンサーリンク