英語の「these」と「those」、どちらも複数のものを指す言葉ですが、使い分けに迷うことはありませんか?
「これら」と「あれら」、日本語にすると似ているようで、咄嗟にどちらを使うべきか悩んでしまう…。
実はこの二つの単語、指し示すものが話し手から「近い」か「遠い」かという、とてもシンプルなルールで使い分けられるんです。この記事を読めば、「these」と「those」の基本的な違いから、具体的な使い方、さらには「this」「that」との関係までスッキリ理解でき、英会話やライティングで迷うことはもうありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「these」と「those」の最も重要な違い
基本的には、指し示す複数のものが話し手の近くにあれば「these」、遠くにあれば「those」を使います。物理的な距離だけでなく、心理的な距離感や時間的な隔たりを示す場合もあります。
まず、結論からお伝えしますね。
「these」と「those」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | these | those | 
|---|---|---|
| 基本的な意味 | これら(話し手の近くにある複数のもの・人) | あれら(話し手から遠くにある複数のもの・人) | 
| 単数形 | this(これ) | that(あれ) | 
| 距離感 | 近い (near) | 遠い (far) | 
| 対象 | 複数のもの・人(可算名詞の複数形) | |
| 品詞 | 指示代名詞、指示形容詞 | |
| 具体例(物) | These books are interesting. (これらの本は面白い) | Those mountains are beautiful. (あれらの山は美しい) | 
| 具体例(人) | These are my friends. (こちらは私の友人たちです) | Who are those people over there? (あそこにいる人たちは誰ですか?) | 
一番大切なポイントは、話し手からの距離ですね。「these」は手が届く範囲や目の前にあるような「近さ」、「those」は少し離れた場所や遠くに見えるような「遠さ」を表します。単数形の「this(これ)」と「that(あれ)」の関係と同じですね。
なぜ違う?「these」と「those」が示す「距離感」
「these」と「those」は、英語の指示詞(demonstratives)です。指示詞の主な役割は、聞き手が特定の対象を識別できるように「指し示す」ことであり、その際に「話し手からの距離(近いか遠いか)」と「数(単数か複数か)」が重要な区別となります。「these」は「近くの複数」、「those」は「遠くの複数」を指し示します。
なぜ英語では、「これら」「あれら」をわざわざ「these」と「those」で区別するのでしょうか?それは、これらの単語が持つ「指し示す」という基本的な役割と、「距離感」という概念が深く関わっています。
「these」と「those」は、文法的には「指示詞(demonstratives)」と呼ばれます。その名の通り、特定の物や人を「指し示す」ときに使われる言葉です。日本語の「これ」「それ」「あれ」「どれ」(こそあど言葉)に近い働きをしますね。
英語の指示詞は、主に2つの軸で使い分けられます。
- 話し手からの距離:近い (near) か 遠い (far) か
- 指し示すものの数:単数 (singular) か 複数 (plural) か
この2つの軸で整理すると、以下のようになります。
- this: 近い・単数 (これ)
- that: 遠い・単数 (あれ)
- these: 近い・複数 (これら)
- those: 遠い・複数 (あれら)
つまり、「these」と「those」の違いは、単に「複数形である」というだけでなく、指し示す対象が話し手にとって「近い」のか「遠い」のかを示す重要な情報を含んでいるわけです。聞き手は、話し手が「these」を使ったのか「those」を使ったのかによって、どの対象について話しているのかをより正確に理解することができます。
この「距離感」は、物理的な距離だけでなく、会話の中での心理的な距離や、時間的な隔たり(例: these days / those days)を表すこともあります。英語において、対象との「距離」を明確にすることは、コミュニケーションを円滑にする上で非常に大切な要素なのですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
手元にある複数のペンなら「These pens」、部屋の向こう側にある複数の椅子なら「Those chairs」のように使います。「These people here(ここにいるこの人たち)」と「Those people over there(あそこにいるあの人たち)」のように、場所を示す言葉と一緒に使われることも多いです。
ルールを理解したら、次は実際の使い方を例文で見ていきましょう。具体的な場面をイメージすると、感覚が掴みやすくなりますよ。
「these」を使う場合(近くの複数のもの・人)
話し手のすぐ近くにある、あるいは今まさに話題の中心になっている複数の物や人を指します。
- These apples look delicious. (これらのリンゴは美味しそうだね。) ※目の前にあるリンゴ
- Are these your keys on the table? (テーブルの上にあるこれらはあなたの鍵ですか?) ※手元や近くのテーブル
- These shoes feel comfortable. (この靴(両足)は履き心地がいい。) ※今履いている靴
- These are the documents you asked for. (これらがあなたがお求めになった書類です。) ※手渡しながら
- Let me introduce you to these gentlemen. (こちらの紳士方をご紹介します。) ※すぐそばにいる人たち
「here(ここに)」や「right now(今まさに)」といった言葉と相性が良いことが多いですね。
「those」を使う場合(遠くの複数のもの・人)
話し手から少し離れた場所にある、あるいは過去の出来事など、時間的・心理的に隔たりのある複数の物や人を指します。
- Look at those birds flying in the sky. (空を飛んでいるあれらの鳥を見て。) ※遠くに見える鳥
- Can you pass me those books on the shelf? (棚にあるあれらの本を取ってくれませんか?) ※少し離れた棚
- Those houses across the river are new. (川の向こうのあれらの家は新しい。) ※対岸の家
- Who are those people talking by the door? (ドアのそばで話しているあれらの人たちは誰ですか?) ※離れた場所にいる人たち
- I remember those happy days from my childhood. (子供時代のあれらの楽しかった日々を覚えている。) ※時間的に遠い過去
「over there(あそこに)」や「in the distance(遠くに)」、「back then(当時は)」といった言葉と一緒に使われることがよくあります。
これはNG!間違えやすい使い方
距離感や単数・複数を間違えると、不自然な英語になってしまいます。
- 【NG】 Look at these stars! They are so bright tonight. (これらの星を見て!今夜はとても明るいね。) ※星は遠くにある
- 【OK】 Look at those stars! They are so bright tonight. (あれらの星を見て!今夜はとても明るいね。)
夜空の星は明らかに遠いので、「those」を使うのが自然です。
- 【NG】 Can you see those building right in front of us? (目の前にあるあれらの建物が見えますか?) ※建物は目の前にある
- 【OK】 Can you see this building right in front of us? (目の前にあるこの建物が見えますか?)
- 【OK】 Can you see these buildings right in front of us? (目の前にあるこれらの建物が見えますか?)
目の前にある場合は「this」(単数)または「these」(複数)を使います。「those」を使うと混乱を招きます。
- 【NG】 These is my favorite T-shirt. (これらは私のお気に入りのTシャツです。) ※Tシャツは単数
- 【OK】 This is my favorite T-shirt. (これは私のお気に入りのTシャツです。)
- 【OK】 These are my favorite T-shirts. (これらは私のお気に入りのTシャツです。)
「these」「those」は必ず複数の名詞、または複数のものを指す代名詞として使います。単数の場合は「this」「that」を使いましょう。
【応用編】似ている言葉「this」「that」との違いは?
「this」と「that」は「these」と「those」の単数形です。「this」は「近くの単数」、「that」は「遠くの単数」を指します。使い分けの基準となる「距離感(近い/遠い)」は共通していますが、「数(単数/複数)」が異なります。
「these」と「those」の違いを理解する上で、切っても切り離せないのが単数形の「this」と「that」ですよね。これらの関係性を整理しておきましょう。
すでにお気づきかもしれませんが、「these」は「this」の複数形、「those」は「that」の複数形にあたります。使い分けのルールは、距離感(近いか遠いか)と数(単数か複数か)の組み合わせで決まります。
| 近い (Near) | 遠い (Far) | |
|---|---|---|
| 単数 (Singular) | this (これ) | that (あれ) | 
| 複数 (Plural) | these (これら) | those (あれら) | 
例文で確認してみましょう。
- This pen is mine. (このペンは私のです。) – 近くにある1本のペン
- These pens are mine. (これらのペンは私のです。) – 近くにある複数のペン
- That car is expensive. (あの車は高価だ。) – 遠くにある1台の車
- Those cars are expensive. (あれらの車は高価だ。) – 遠くにある複数の車
このように、「this/that」と「these/those」はセットで覚えるのが効果的です。指し示したいものが単数なのか複数なのか、そして話し手から近いのか遠いのか、この2点を意識すれば、4つの指示詞を正しく使い分けることができますね。
「these」と「those」の違いを言語学的に解説
言語学では、「these」「those」などの指示詞は「直示(deixis)」という現象の一部として説明されます。これらは、発話の状況(誰が、どこで、いつ話しているか)に依存して指示対象が決まる言葉です。「these」は近称(proximal)、 「those」は遠称(distal)と呼ばれ、話し手からの空間的、時間的、心理的な距離を示します。
少し専門的な視点になりますが、「these」と「those」の使い分けは、言語学の世界では「直示(ちょくじ)」または「ダイクシス(deixis)」という概念で説明されます。
直示とは、言葉の意味や指示対象が、その言葉が発せられた具体的な状況(文脈)に依存する現象のことです。「私」「あなた」といった人称代名詞、「ここ」「そこ」といった場所の副詞、「昨日」「明日」といった時間の副詞、そして「this」「that」「these」「those」のような指示詞が、直示表現の代表例です。
例えば、「these books」が具体的にどの本を指すかは、「these」という言葉が誰によって、どこで、いつ使われたかによって決まりますよね。話し手の目の前にある本かもしれないし、今読んでいる本かもしれません。
指示詞における「these」と「those」の区別は、この直示の中でも特に「距離」に関わる区別です。
- these: 話し手に近い対象を指す【近称 (proximal)】
- those: 話し手から遠い対象を指す【遠称 (distal)】
この「近称」と「遠称」の区別は、多くの言語に見られる普遍的な特徴の一つです。日本語の「これ/あれ」、スペイン語の「este/ese/aquel」なども同様の区別を持っています。
英語の「these/those」が示す距離は、単なる物理的な空間的距離だけでなく、以下のような距離感も含むことがあります。
- 時間的距離:
- These days, many people work from home. (近頃は、多くの人が在宅勤務をしている。) – 現在に近い時間
- In those days, we didn’t have smartphones. (当時は、私たちはスマートフォンを持っていなかった。) – 現在から遠い過去の時間
 
- 心理的・感情的距離:
- I like these ideas you suggested. (あなたが提案してくれたこれらのアイデア、気に入ったよ。) – ポジティブで心理的に近い
- I don’t agree with those stupid remarks. (あんな馬鹿げた発言には同意できない。) – ネガティブで心理的に遠ざけたい
 
このように、言語学的な視点を取り入れると、「these」と「those」の使い分けが、単なる文法ルールではなく、人間が世界を認識し、他者とコミュニケーションをとる上での基本的な仕組みに基づいていることが見えてきますね。
僕が買い物で「these」と「those」を混同した失敗談
僕自身も、昔、買い物中に「these」と「those」を混同して、店員さんを困らせてしまった苦い経験があります。
あれは、海外旅行で訪れたお土産物屋さんでのことでした。棚に並べられた、色とりどりのマグカップに目を奪われ、いくつか手に取って見ていました。すると、少し離れた別の棚にも素敵なデザインのマグカップがあることに気づきました。
近くにいた店員さんに、両方のマグカップの値段を尋ねようとしたのですが、その時、僕は混乱してしまったんです。手元にあるマグカップ(複数)と、少し離れた棚にあるマグカップ(複数)をどう指し示せばいいのか…。
焦った僕は、手元のマグカップを指しながら、こう言ってしまいました。
「Excuse me, how much are those?」 (すみません、あれらはいくらですか?)
当然、店員さんは僕が指している手元のマグカップではなく、僕の視線の先にある、離れた棚のマグカップの値段を教えてくれました。僕が知りたかったのは手元のマグカップの値段だったので、「いや、こっちです!」ともう一度手元を指さして言い直す羽目に…。
店員さんは親切に対応してくれましたが、僕は自分の英語の下手さに顔が赤くなるのを感じました。近くにある複数のものを指すときは「these」、遠くにある複数のものを指すときは「those」。頭では分かっていたはずなのに、実際の会話では、距離感を正しく言葉にできなかったのです。
この小さな失敗を通じて、指示代名詞の使い分けは、単語の意味を知っているだけでは不十分で、実際に「指し示す」という行為と連動させて、体で覚える必要があるんだと実感しました。
それ以来、英会話の練習をするときは、実際にジェスチャーを交えながら、「This is a pen.」「These are pens.」「That is a window.」「Those are windows.」のように、距離と数を意識して声に出すようにしています。あなたも、もし使い分けに自信がなければ、ぜひ試してみてください。意外と効果がありますよ!
「these」と「those」に関するよくある質問
Q1: 「these」や「those」だけで使うことはできますか?(名詞なしで)
A1: はい、できます。文脈から何を指しているかが明らかな場合は、「these」や「those」を代名詞として単独で使うことができます。
- A: Which shoes do you like? (どの靴が好きですか?)
- B: I like these. (これらが好きです。) ※話し手の近くにある靴を指して
- A: What are those? (あれらは何ですか?) ※遠くにあるものを指して
- B: Those are traditional crafts. (あれらは伝統工芸品です。)
Q2: 時間について話すとき、「these days」と「those days」はどう違いますか?
A2: 時間的な距離感で使い分けます。「these days」は「近頃、最近」という意味で、現在を含む比較的近い期間を指します。一方、「those days」は「当時は、あの頃は」という意味で、現在から離れた過去の特定の期間を指します。
- These days, I often feel tired. (近頃、よく疲れを感じる。)
- Life was simpler in those days. (あの頃は、生活はもっとシンプルだった。)
Q3: 人について話すときに「those people」と言うのは失礼にあたりますか?
A3: 必ずしも失礼ではありませんが、文脈によっては心理的な距離や否定的なニュアンスを含むことがあります。「those people」が単に「あそこにいる人たち」を指す場合もあれば、「(自分たちとは違う)ああいう人たち」という区別や軽蔑の意味合いで使われることもあるため、注意が必要です。特に、特定のグループを否定的に語る際に使われやすい表現なので、誤解を招かないよう、使う場面や言い方には配慮した方が良いでしょう。
「these」と「those」の違いのまとめ
「these」と「those」の違い、これでバッチリですね!
最後に、この記事のポイントをもう一度確認しましょう。
- 基本は距離感:話し手に近い複数のものは「these」、遠い複数のものは「those」を使う。
- 複数形であること:どちらも複数の名詞(または複数のものを指す代名詞)に使う。「this」(近い単数)と「that」(遠い単数)の複数形。
- 物理的距離以外も:時間的な隔たり(these days/those days)や心理的な距離感を示すこともある。
- セットで覚える:「this/that」(単数)と「these/those」(複数)をセットで、「近い/遠い」の軸で整理すると分かりやすい。
指示詞は英語の基本的な要素ですが、正確に使い分けることで、より自然で誤解のないコミュニケーションが可能になります。日常会話や文章で、指し示す対象との「距離」と「数」を意識する習慣をつけてみてください。
言葉の使い分けについてさらに詳しく知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひチェックしてみてくださいね。