「リカバリー」と「リカバー」の違いとは?回復・復旧の正しい使い方

「リカバリー」と「リカバー」、どちらも何か悪い状態から元の状態に戻る、あるいは失ったものを取り戻すといった意味で使われるカタカナ語ですよね。

響きも意味も似ているので、「どっちを使えばいいんだっけ?」と混乱してしまう方もいるかもしれません。実はこの二つ、最も大きな違いは「リカバリー」が名詞、「リカバー」が動詞であるという点なんです。

この記事を読めば、「リカバリー」と「リカバー」の明確な品詞の違い、それぞれのニュアンス、具体的な使い分け、さらにはIT分野でよく聞く「リストア」との違いまで、スッキリ整理できます。もう迷うことはありませんよ。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「リカバリー」と「リカバー」の最も重要な違い

【要点】

基本的には「リカバリー(recovery)」が名詞で「回復・復旧」という状態やプロセスを、「リカバー(recover)」が動詞で「回復する・復旧する」という行為を指します。品詞の違いを意識すれば、使い分けは難しくありません。

まず、結論として「リカバリー」と「リカバー」の最も重要な違いを一覧表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 リカバリー (recovery) リカバー (recover)
品詞 名詞 動詞
中心的な意味 回復、復旧、回収、取り戻すこと(状態・プロセス) 回復する、復旧する、取り戻す(行為・動作)
焦点 元の状態に戻ること、失ったものを取り戻すこと自体やその過程 元の状態に戻るための行動、失ったものを取り戻すための行動
使われ方 「リカバリーが早い」「リカバリーを図る」「データリカバリー」 「病気からリカバーする」「データをリカバーする」「損失をリカバーする」
語源イメージ 取り戻された状態 取り戻す行為

ご覧の通り、最大の違いは品詞です。「リカバリー」は名詞として、「リカバー」は動詞として使うのが基本ルールですね。

「早いリカバリーですね」とは言いますが、「早いリカバーですね」とは通常言いません。「病気から完全にリカバーした」とは言いますが、「病気から完全にリカバリーした」は少し不自然に聞こえます(「リカバリーが完了した」ならOK)。

なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む

【要点】

どちらもラテン語の「取り戻す」を意味する言葉が語源です。「recovery」は名詞形として「取り戻すこと」という状態や結果を、「recover」は動詞形として「取り戻す」という行為そのものを表すようになりました。

この二つの言葉が似ているのは、元々の語源が同じだからなんです。由来を知ると、名詞と動詞の使い分けがより自然に感じられますよ。

「リカバリー」「リカバー」共通の由来:「取り戻す」

「リカバリー(recovery)」も「リカバー(recover)」も、その語源はラテン語の “recuperare”(レクペラーレ)に遡ります。これは「再び(re-)」と「手に入れる(capere)」が合わさった言葉で、「取り戻す」「回復する」といった意味を持っています。

この “recuperare” が、古フランス語の “recovrer” を経て、英語に入ってきました。

「リカバリー」:「回復」という状態やプロセス(名詞)

英語の “recovery” は、動詞 “recover” に名詞を作る接尾辞 “-y” が付いた形です。

これにより、「取り戻すこと」「回復すること」という状態、結果、あるいはそのプロセス全体を指す名詞となりました。

病気からの回復過程、失われたデータの復旧作業、経済の回復局面など、ある程度の時間や手順を含む「回復」という概念を示すのに使われます。

「リカバー」:「回復する」という行為(動詞)

一方、英語の “recover” は、「取り戻す」「回復する」という行為そのものを表す動詞として使われています。

病気が治る、失った物を見つける、損失を取り返す、意識を取り戻すなど、具体的な「回復する」アクションを示す場合に用いられます。

語源は同じでも、英語になる過程で名詞と動詞として役割が分かれたわけですね。この基本を押さえておけば、使い分けは難しくないはずです。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

プロジェクトの遅れを取り戻すのは「遅延をリカバーする」、そのための計画は「リカバリープラン」。健康状態が元に戻ることは「健康をリカバーする」、その過程は「順調なリカバリー」。行為か状態かで使い分けましょう。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスシーン、日常会話やIT分野、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

プロジェクトの遅延回復や業績回復などの文脈で使われます。

【OK例文:リカバリー(名詞)】

  • プロジェクトの遅延に対し、早急なリカバリー策が求められる。
  • わが社の業績は、緩やかなリカバリー基調にある。
  • 災害からのリカバリーには、まだ時間がかかりそうだ。
  • 万が一のためのリカバリープランを準備しておく必要がある。

【OK例文:リカバー(動詞)】

  • 遅れたスケジュールをリカバーするために、人員を増強した。
  • 前半の損失を後半でなんとかリカバーできた。
  • 競合に奪われたシェアをリカバーするのは容易ではない。
  • システム障害から無事にリカバーし、サービスを再開した。

「リカバリー」は回復策や回復基調といった「状態」や「プロセス」を、「リカバー」は取り戻す、回復させるという具体的な「行動」を表していますね。

日常会話・IT分野での使い分け

健康、スポーツ、そしてパソコン関連でよく使われます。

【OK例文:リカバリー(名詞)】

  • 彼は怪我からのリカバリーが驚くほど早い。
  • 疲労リカバリーには、質の高い睡眠が重要だ。
  • パソコンが起動しなくなったため、OSのリカバリーを行った。
  • 誤って削除したファイルのリカバリー方法を調べている。

【OK例文:リカバー(動詞)】

  • 彼は大病から完全にリカバーした。
  • 試合の後半で見事に点差をリカバーした。
  • フリーズしたパソコンを再起動してリカバーさせた。
  • バックアップからデータをリカバーする必要がある。

ここでも、「リカバリー」は回復状態や復旧作業、「リカバー」は回復する・復旧させるという動作を示しています。

これはNG!間違えやすい使い方

特に動詞として「リカバリーする」と言ってしまうケースに注意しましょう。

  • 【NG】 体調が完全にリカバリーした。
  • 【OK】 体調が完全にリカバーした。
  • 【OK】 体調の完全なリカバリー

「リカバリー」は名詞なので、「~する」を付けて動詞のようには使えません。「回復した」と言いたい場合は動詞の「リカバー」を使います。

  • 【NG】 削除したデータをリカバリーしてください。
  • 【OK】 削除したデータをリカバーしてください。
  • 【OK】 削除したデータのリカバリーをお願いします。

これも同様で、「復旧してください」という依頼(動詞)なので「リカバー」が適切です。「復旧をお願いします」という依頼(名詞)なら「リカバリー」ですね。

ただし、口語では「リカバリーする」という表現も耳にすることがあります。厳密には誤用ですが、意味が通じないわけではありません。とはいえ、ビジネス文書などでは避けた方が無難でしょう。

【応用編】似ている言葉「リストア」との違いは?

【要点】

IT分野で使われる「リストア(restore)」は、バックアップなどからデータを「元の状態に戻す」ことを指します。「リカバリー」は失われたデータを取り戻すニュアンスが強いのに対し、「リストア」は正常な状態へ復元するイメージです。

特にIT分野では、「リカバリー」と似た言葉として「リストア(restore)」もよく使われます。この違いも押さえておきましょう。

「リストア」は、バックアップなどを使って、データやシステムを以前の正常な状態に「復元する」「元に戻す」という意味で使われます。

「リカバリー」が、削除や破損によって失われたデータを取り戻す、あるいはシステム障害から復旧するという、「失われたものを取り戻す」ニュアンスが強いのに対し、「リストア」は「正常な状態に戻す」というニュアンスが強いです。

例えば、

  • 誤って削除したファイルを復元するのは「リカバリー
  • パソコンを初期状態に戻すのは「リカバリー」(工場出荷時の状態に戻す)とも「リストア」(バックアップイメージから戻す)とも言えます。
  • システム障害発生前の状態にサーバーを戻すのは「リストア

という使い分けになります。

「リカバリー」は問題発生後の「復旧」、「リストア」は計画的な「復元」と考えると分かりやすいかもしれませんね。

「リカバリー」と「リカバー」の違いを改めて整理

【要点】

最も重要な違いは品詞です。「リカバリー」は名詞で「回復・復旧」という状態やプロセス、「リカバー」は動詞で「回復する・復旧する」という行為を指します。話している内容が「状態」なのか「行為」なのかを考えれば、自然と使い分けられます。

ここまで見てきたように、「リカバリー」と「リカバー」の最も大きな違いは品詞(名詞か動詞か)です。

「リカバリー(recovery)」は名詞であり、「回復」「復旧」「回収」といった状態やプロセス、あるいはそれ自体を指します。「景気のリカバリー」「データリカバリー」「疲労からのリカバリー」のように使います。「リカバリーが早い」「リカバリーを図る」といった表現になりますね。

一方、「リカバー(recover)」は動詞であり、「回復する」「復旧する」「取り戻す」といった行為や動作を表します。「病気からリカバーする」「データをリカバーする」「損失をリカバーする」のように使います。

話している内容が「回復という状態・こと」なのか、「回復するという行為」なのかを意識すれば、自然と使い分けることができるでしょう。

日本語では「回復」という言葉が名詞としても動詞(回復する)としても使えるため混同しやすいですが、英語由来のカタカナ語として使う際は、品詞の違いを意識することが大切ですね。

僕がデータ消失で「リカバリー」と「リカバー」を使った体験談

僕も以前、パソコンのデータが突然消えてしまい、この「リカバリー」と「リカバー」という言葉を必死で使った(調べた)苦い経験があります。

ある日、いつものようにパソコンで作業をしていたら、突然画面が真っ暗に…! 再起動してもOSが立ち上がらず、保存していた大切なファイルに一切アクセスできなくなってしまったんです。まさに血の気が引く思いでしたね。

まずは状況を把握しようと、「パソコン データ 消えた リカバリー」といったキーワードで検索しました。ここでは、「データの復旧(というプロセスや方法)」について知りたかったので、名詞の「リカバリー」を使いました。

調べていくうちに、データ復旧ソフトを使えば、失われたファイルを取り戻せる可能性があることが分かりました。そこで、「データ復旧ソフト おすすめ」「削除ファイル リカバー 方法」といったキーワードでさらに検索。ここでは、「ファイルを取り戻す(という行為)」に焦点があったので、動詞の「リカバー」を意識して調べました。

幸い、評価の高い復旧ソフトを見つけ、なんとか大部分のデータをリカバーすることに成功しました。あの時の安堵感は今でも忘れられません。

この一連の作業を通じて、「データのリカバリー(復旧作業全体)」のために、「データをリカバーする(取り戻す行為)」ソフトを使ったんだな、と二つの言葉の違いを身をもって体験しました。

切羽詰まった状況で言葉の意味を正確に捉えようとすると、その違いがより明確に感じられるものですね。皆さんは、僕のような事態になる前に、しっかり使い分けをマスターしてください!

「リカバリー」と「リカバー」に関するよくある質問

ここでは、「リカバリー」と「リカバー」について、よくある質問にお答えしていきますね。

Q1: 「リカバリーする」という言い方は完全に間違いですか?

A1: 英語の文法としては、「recovery」は名詞なので「recoveryする」という動詞の使い方は正しくありません。しかし、日本語のカタカナ語としては「サボる(sabotageする)」のように、名詞や形容詞に「~する」を付けて動詞化する用法が広く見られます。そのため、日常会話やくだけた場面で「リカバリーする」という言い方を耳にすることはあります。意味は通じますが、ビジネス文書やフォーマルな場では、「リカバーする」または「リカバリーを行う」「リカバリーを図る」といった正確な表現を使う方が望ましいでしょう。

Q2: 名詞として「リカバー」を使うことはありますか?

A2: 基本的に「リカバー(recover)」は動詞として使われます。名詞形は「リカバリー(recovery)」です。英語でも、 recover を名詞として使うことは通常ありません。

Q3: 迷ったときはどちらを使えばいいですか?

A3: まずは、文脈の中で「回復・復旧」という状態やプロセスを指しているのか、「回復する・復旧する」という行為を指しているのかを考えてみてください。状態やプロセスなら名詞の「リカバリー」、行為なら動詞の「リカバー」です。どうしても迷う場合や、より自然な日本語を使いたい場合は、無理にカタカナ語を使わず、「回復」「復旧」「取り戻す」といった日本語で表現するのが最も分かりやすいでしょう。

「リカバリー」と「リカバー」の違いのまとめ

「リカバリー」と「リカバー」の違い、これでバッチリですね!

最後に、この記事のポイントをまとめておきましょう。

  1. 最大のポイントは品詞「リカバリー」は名詞(回復・復旧という状態・プロセス)、「リカバー」は動詞(回復する・復旧するという行為)。
  2. 語源は同じ:どちらもラテン語の「取り戻す」が由来。
  3. 使い方:「~のリカバリー」「リカバリーを図る」、「~からリカバーする」「~をリカバーする」。
  4. 「リカバリーする」は注意:口語では使われることもあるが、フォーマルな場では避けた方が無難。
  5. IT分野の「リストア」との違い:「リカバリー」は失ったものを取り戻す、「リストア」は正常な状態に復元するニュアンス。

基本的な品詞の違いを意識すれば、使い分けはそれほど難しくありません。

カタカナ語は便利ですが、元の英語の意味や品詞を理解しておくと、より正確で自信を持ったコミュニケーションにつながりますね。

これから「リカバリー」と「リカバー」を使う場面があったら、ぜひこの記事を思い出してください。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。