「シルキーテリア」と「ヨークシャテリア(ヨーキー)」、どちらも絹のように美しく輝く被毛を持ち、見た目が非常によく似ているため、混同されがちですよね。
しかし、実はサイズ(犬種分類)、作出された歴史的背景、そして色濃く残る気質が異なる、明確な別犬種です。シルキーテリアは小型犬(テリアグループ)ですがヨークシャテリアより大きく、ヨークシャテリアは超小型犬(愛玩犬=トイグループ)に分類されます。
このサイズと歴史の違いが、彼らの性格や飼いやすさにも影響を与えています。この記事を読めば、専門的な見分け方から、それぞれの性格に合った飼い方、注意点までスッキリ理解できますよ。
【3秒で押さえる要点】
- 大きさ:シルキーテリアは「小型犬」で体重約3.5〜5kg。ヨークシャテリアは「超小型犬」で体重約2〜3kgと、シルキーの半分〜2/3程度のサイズです。
- 性格:シルキーテリアは典型的なテリア気質(活発・頑固・猟犬の本能)が強く残っています。ヨークシャテリアもテリア気質はありますが、より愛玩犬としての性質が強く、甘えん坊で繊細な面が目立ちます。
- 歴史:シルキーテリアはオーストラリアで猟犬(ネズミ捕りなど)能力も重視して作出されました。ヨークシャテリアはイギリスで愛玩犬として小型化が進められました。
| 項目 | オーストラリアン・シルキー・テリア | ヨークシャー・テリア |
|---|---|---|
| 分類・系統 | 小型犬(テリアグループ) | 超小型犬(トイグループ/愛玩犬) |
| サイズ(体高) | オス:約23〜26cm / メス:やや小さい | 約18〜23cm |
| サイズ(体重) | 約3.5〜5kg | 約2〜3kg(最大3.2kg) |
| 行動・性質 | 活発、勇敢、頑固、好奇心旺盛。猟犬の本能が強い。 | 活発、勇敢、頑固。甘えん坊で繊細、飼い主への依存心が強い。 |
| 飼育難易度 | 中級者向け。テリア気質の理解と多くの運動量が必要。 | 初心者〜中級者向け。頑固だが愛玩犬として飼いやすい。 |
| 寿命 | 12〜15年程度 | 12〜15年程度 |
| かかりやすい病気 | レッグ・ペルテス病、糖尿病、皮膚疾患 | 膝蓋骨脱臼(パテラ)、気管虚脱、低血糖症、歯周病 |
| 原産国・作出 | オーストラリア(19世紀末〜20世紀初頭) | イギリス・ヨークシャー地方(19世紀中頃) |
見た目とサイズの違い(最大の違いはサイズと毛並み)
最大の違いはサイズです。シルキーテリアはヨークシャテリア(ヨーキー)よりも一回り大きく、体重は約2倍になることもあります。シルキーは小型犬(テリア)、ヨーキーは超小型犬(愛玩犬)に分類されます。どちらも絹のような毛並みですが、ヨーキーは床まで届くフルコートが特徴的です。
道で出会ったとき、この2犬種を見分けるのは至難の業です。特に子犬の時期はそっくりです。しかし、成犬になると明確な違いが出てきます。
最大の違いは「サイズ(体格)」です。
ジャパンケネルクラブ(JKC)の分類では、ヨークシャー・テリアは第9グループ「トイ・グループ(愛玩犬)」に属する超小型犬です。標準体重は最大でも3.2kgと定められており、非常に華奢でコンパクトです。
一方のオーストラリアン・シルキー・テリアは、第3グループ「テリア」に属する小型犬です。標準体重は約3.5〜5kgと、ヨークシャテリアの約1.5倍から2倍近く大きくなることもあります。体高もシルキーテリアの方が高く、骨格もしっかりしています。並べてみると、シルキーテリアの方が明らかに「大きい」または「がっしりしている」と感じるはずです。
毛並みは、どちらも「シルキーコート」と呼ばれる絹糸のような光沢のある美しい被毛(シングルコート)を持っています。毛色も「スチールブルー&タン(青みがかった鋼色と黄褐色)」が基本でよく似ています。
ただし、ヨークシャテリアは「動く宝石」とも呼ばれ、ショードッグでは床まで届く「フルコート」が特徴的です。シルキーテリアも毛は伸びますが、ヨーキーほど長く引きずるスタイルにすることは一般的ではなく、体に沿って流れる適度な長さでカットされることが多いです。
性格・行動特性としつけやすさの違い
どちらもテリア気質(活発・勇敢・頑固)を持ちますが、シルキーテリアはより猟犬としての本能が強く、エネルギッシュで頑固です。ヨークシャテリアは愛玩犬としての改良が長いため、より甘えん坊で繊細、飼い主への依存心が強い傾向があります。
見た目はそっくりな両者ですが、性格(気質)には作出された歴史の違いが色濃く反映されています。
どちらも「テリア」の血を引いているため、活発で、勇敢、好奇心旺盛、そして頑固というテリア気質は共通しています。見知らぬ人や物音に対しては警戒心が強く、勇敢に(時に無謀に)立ち向かおうとするため、番犬としても優秀です。
シルキーテリアは、オーストラリアでネズミや時にはヘビなどの害獣駆除の猟犬としても活躍してきた歴史があります。そのため、ヨークシャテリアと比べても、より猟犬としての本能(狩猟本能)や独立心、頑固さが強く残っています。非常にエネルギッシュで遊び好きですが、納得しない指示は聞かない頑固さがあるため、しつけには根気が必要です。
ヨークシャテリアは、作出の初期こそネズミ捕り犬でしたが、すぐにその美しさからイギリスの貴婦人たちに愛される愛玩犬として小型化が進みました。そのため、テリア気質は持ちつつも、飼い主への依存心が非常に強く、甘えん坊で繊細な面が際立ちます。飼い主のそばにいることを好み、「抱っこして!」と要求することも多いでしょう。
しつけの難易度は、どちらも頑固なため簡単ではありませんが、より猟犬気質が強いシルキーテリアの方が難易度は高い(中級者向け)と言えます。ヨークシャテリアは体が小さく、愛玩犬として人と暮らすことに適応しているため、初心者でもテリア気質を理解し、一貫した態度で接することができれば飼育しやすい(初心者〜中級者向け)でしょう。
寿命・健康リスク・病気の違い
平均寿命はどちらも12〜15年程度です。ヨークシャテリアは超小型犬特有の「膝蓋骨脱臼(パテラ)」や「気管虚脱」に特に注意が必要です。シルキーテリアは比較的丈夫ですが、「レッグ・ペルテス病」などに気をつけましょう。
平均寿命は、シルキーテリア、ヨークシャテリアともに12〜15年程度とされており、小型犬としては平均的です。
しかし、かかりやすい病気には、そのサイズと犬種特性の違いが表れます。
ヨークシャテリアは超小型犬であるため、骨や関節が非常に華奢です。特に注意したいのが「膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)」、通称「パテラ」です。後ろ足の膝のお皿がずれてしまう病気で、滑りやすい床での生活や高い場所からのジャンプは大きな負担となります。
また、興奮した際などに「ガーガー」とアヒルのような咳をする「気管虚脱」や、空腹時に血糖値が下がりすぎる「低血糖症」(特に子犬期)も、超小型犬ならではのリスクです。
シルキーテリアは、ヨークシャテリアよりは骨格がしっかりしていますが、小型犬に好発する「レッグ・カルベ・ペルテス病(大腿骨頭壊死症)」に注意が必要です。これは大腿骨の先端(骨頭)への血流が悪くなり壊死してしまう病気で、足を引きずるなどの症状が出ます。
共通の注意点としては、どちらもシングルコートのため寒さに非常に弱いです。冬場の温度管理は欠かせません。また、どちらも顎が小さいため歯が密集しやすく、「歯周病」になりやすいため、毎日の歯磨きケアが重要です。
「シルキーテリア」と「ヨークシャテリア」の共通点
見た目の美しさ(絹のようなシングルコートの被毛)と、テリアグループの血を引く気質(活発・勇敢・頑固・警戒心)が最大の共通点です。どちらも抜け毛は少ないですが、毛が絡まりやすいため毎日のブラッシングが欠かせません。
多くの違いがある両者ですが、もちろんよく似ているのには理由があり、多くの共通点も持っています。
- 絹のような被毛:最大の特徴である「シルキーコート」。光沢があり、非常に手触りの良い美しい毛並みを持っています。
- シングルコート:アンダーコート(下毛)のないシングルコートのため、犬特有の体臭が少なく、抜け毛も比較的少ないとされています。ただし、毛玉ができやすいため、毎日のブラッシングは必須です。
- テリア気質:どちらもルーツにテリア(ヨークシャテリア自身やオーストラリアン・テリアなど)を持つため、活発で、勇敢、好奇心旺盛、頑固、警戒心が強いといった気質を共通して持っています。
- 寒さに弱い:シングルコートのため、皮膚を保護する下毛がなく、寒さに非常に弱いです。冬の散歩や室温管理には注意が必要です。
歴史・ルーツと作出の違い(テリアとしての背景)
ヨークシャテリアは19世紀中頃にイギリスの工業地帯でネズミ捕り犬として生まれ、すぐに愛玩犬として小型化されました。シルキーテリアは19世紀末にオーストラリアで、そのヨークシャテリアとオーストラリアン・テリアなどを交配させ、猟犬の能力も維持する目的で作出されました。
この2犬種の決定的な違いは、その「歴史と作出の目的」にあります。
ヨークシャー・テリア(ヨーキー)の歴史は、19世紀中頃のイギリス・ヨークシャー地方の工業地帯に遡ります。当時の織物工場や炭鉱では、ネズミによる被害が深刻でした。そのネズミを捕獲するために、スコットランドから持ち込まれた様々なテリア系の犬(スカイ・テリア、クライズデール・テリアなど諸説あり)を交配して作出されたのが始まりとされています。
しかし、その美しい被毛がすぐに上流階級の目に留まり、ネズミ捕り犬としてよりも、貴婦人たちの抱き犬(愛玩犬)として爆発的な人気を博しました。その結果、より小さく、より美しくなるように小型化の改良が進められ、現在の「動く宝石」と呼ばれる姿になりました。
オーストラリアン・シルキー・テリアの歴史は、それより少し後の19世紀末から20世紀初頭のオーストラリア・シドニーです。オーストラリアに入植した人々が連れてきたヨークシャテリアと、オーストラリア原産の「オーストラリアン・テリア」などを交配させて作出されました。
シルキーテリアの作出目的は、愛玩犬としての美しさを持ちつつも、オーストラリアの開拓地で役立つ猟犬(ネズミやヘビの駆除)としての能力を維持・強化することでした。そのため、ヨーキーよりも大きく、よりエネルギッシュで頑丈な体格と、強いテリア気質が保持されたのです。
つまり、ヨーキーは「猟犬→愛玩犬(小型化)」、シルキーは「愛玩犬(ヨーキー)×猟犬→美しさと猟犬能力の両立(小型だが頑丈)」という歴史の違いが、現在の彼らの姿と気質に直結しているのです。
犬種の登録やスタンダードは、ジャパンケネルクラブ(JKC)のような公的な機関によって管理されています。また、ペットとしての飼育に関しては、農林水産省などが定める動物愛護管理法に基づいた適切な飼育が求められます。
どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ
活発なテリア気質を理解し、しつけや運動にしっかり時間を割けることが前提です。初心者や集合住宅、甘えん坊な犬が好みなら「ヨークシャテリア」が向いています。テリアの扱いに慣れた中級者以上で、より多くの運動をさせたいなら「シルキーテリア」がおすすめです。
見た目の好みはありますが、飼育環境やあなたのライフスタイル、犬の飼育経験によって、どちらがより適しているかは大きく異なります。
【シルキーテリアがおすすめな人】
- 犬の飼育経験があり、特にテリア気質の扱いに慣れている「中級者」
- ヨーキーよりも一回り大きいサイズ感を求めている
- 犬と活発に遊び、ドッグスポーツなども楽しみたい
- 毎日の散歩や運動に十分な時間を確保できる(体力がある)
- 犬の頑固さや独立心を受け入れ、根気強くしつけができる
シルキーテリアは非常にエネルギッシュで猟犬の本能が強いため、運動不足やしつけの失敗は問題行動につながりやすいです。初心者にはハードルが高い犬種です。
【ヨークシャテリアがおすすめな人】
- 初めて犬を飼う人(ただし、テリア気質の理解と勉強は必須)
- 集合住宅(アパート・マンション)での飼育を考えている
- 超小型犬の華奢さを理解し、怪我や病気(パテラなど)に十分配慮できる
- 犬とべったり一緒に過ごし、甘えん坊なパートナーを求めている
- 毎日の被毛ケア(ブラッシング)と歯磨きを欠かさず行える
ヨークシャテリアも頑固で警戒心が強い一面はありますが、体が小さく、愛玩犬として人と暮らすことに適応しているため、シルキーテリアに比べれば飼いやすいと言えます。
僕が出会った「シルキー」と「ヨーキー」の“気質”の違い(体験談)
僕はドッグカフェや公園で、両方の犬種と触れ合ったことがあります。その時の印象は、まさに彼らの歴史を物語るものでした。
ヨークシャテリアの「ココちゃん」は、飼い主さんの膝の上から一瞬も離れませんでした。僕が「かわいいね」と手を伸ばすと、最初は警戒して小さく「ウーッ」と唸りましたが、飼い主さんが「大丈夫よ」と声をかけると、恐る恐る匂いを嗅ぎに来てくれました。しかし、その視線は常に飼い主さんを追っており、「私はこの人が一番!」という強い依存心と繊細さを感じました。まさに「愛玩犬」の姿です。
一方、公園で出会ったシルキーテリアの「ダッシュくん」は、名前の通り、ボールを追いかけて猛然と走り回っていました。飼い主さんがボールを投げると、他の大型犬にも臆することなく、一番にボールに飛びついていきます。その動きはしなやかで、まさに小さな猟犬そのもの。飼い主さんの指示は聞きますが、どこか「今は遊びに集中してるんだ!」という独立した意志の強さを感じさせました。
ヨーキーの魅力が「飼い主だけに見せるデレデレな甘え」だとすれば、シルキーの魅力は「飼い主と対等に遊ぶエネルギッシュな魂」にあるのかもしれない、と感じた体験です。
「シルキーテリア」と「ヨークシャテリア」に関するよくある質問
Q: シルキーテリアは、ヨークシャテリアの大きい版(サイズ違い)ですか?
A: いいえ、違います。ルーツは近く、ヨークシャテリアの血は入っていますが、シルキーテリアはオーストラリアン・テリアなどとも交配され、オーストラリアで作出された独立した別の犬種です。サイズだけでなく、気質や歴史も異なります。
Q: どちらが抜け毛が多いですか?お手入れは大変ですか?
A: どちらもシングルコートのため、抜け毛は少ない犬種です。ただし、毛が非常に細く絹糸のようで絡まりやすいため、毛玉を防ぐために毎日のブラッシングが欠かせません。お手入れの手間はどちらも同じくらいかかります。
Q: 初心者でも飼いやすいのはどっちですか?
A: どちらもテリア特有の頑固さや警戒心があるため、全くの初心者には簡単ではありません。しかし、どちらかを選ぶならば「ヨークシャテリア」の方が、愛玩犬としての歴史が長く、サイズも小さいため、比較的飼いやすいと言えます。
Q: どちらがよく吠えますか?
A: どちらもテリアの血を引き、警戒心が強いため、吠えやすい傾向にあります。見知らぬ人や物音に対して敏感に反応しやすいです。シルキーテリアは猟犬気質から、ヨークシャテリアは繊細さと警戒心から吠えることがあり、どちらもしっかりとした社会化としつけが必要です。
「シルキーテリア」と「ヨークシャテリア」の違いのまとめ
シルキーテリアとヨークシャテリア、見た目はそっくりでも、実はサイズも性格も異なる魅力的な犬種であることがお分かりいただけたかと思います。
- サイズと分類が違う:シルキーは小型犬(テリア)、ヨーキーは超小型犬(愛玩犬)。シルキーの方が一回り大きい。
- 歴史と気質が違う:シルキーは豪州で猟犬能力も残して作出され、より活発で頑固。ヨーキーは英国で愛玩犬として小型化され、より甘えん坊で繊細。
- 飼育難易度が違う:シルキーはテリア気質が強く中級者向け。ヨーキーも頑固だが、体が小さく初心者でも比較的飼いやすい。
- 注意すべき病気が違う:ヨーキーは超小型犬特有のパテラや気管虚脱に、シルキーはレッグ・ペルテス病などに注意が必要。
もし家族として迎えることを検討するなら、どちらの犬種があなたのライフスタイルや経験に合っているか、その「テリア気質」を生涯愛し続けられるかを最優先に考えてくださいね。日本犬の魅力や、他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。
参考文献(公的一次情報)
- 環境省「動物の愛護と適切な管理」(https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/)