ニホンリスとタイワンリスの違い!特定外来生物と在来種の見分け方

森や公園で愛らしい姿を見せるリス。日本では古くから「ニホンリス」がお馴染みですが、近年、特に都市部や観光地で目撃されるリスは「タイワンリス」かもしれません。

これら二種、見た目は似ていますが、実は生態系における立場と法律上の扱いが全く異なる動物です。

最も簡単な答えは、ニホンリスは守るべき日本の在来種であり、タイワンリス(クリハラリス)は生態系に被害を及ぼす「特定外来生物」に指定されている点。この記事を読めば、その見た目の簡単な見分け方から、なぜタイワンリスが問題視されているのか、その深刻な理由までスッキリと理解できます。

【3秒で押さえる要点】

  • 見た目:ニホンリスのお腹は真っ白。タイワンリスのお腹は栗色(茶色)または灰色です。
  • 法律:ニホンリスは日本の在来種として保護対象。タイワンリス(クリハラリス)は「特定外来生物」に指定され、飼育・運搬・放出が原則禁止されています。
  • 生態:タイワンリスはニホンリスより雑食性が強く、鳥の卵や昆虫も捕食し、在来生態系に影響を与えます。
「ニホンリス」と「タイワンリス(クリハラリス)」の主な違い
項目ニホンリスタイワンリス(クリハラリス台湾亜種)
分類・系統ネズミ目齧歯目) リス科 リス属ネズミ目齧歯目) リス科 クリハラリス属
法的位置づけ在来種(保護対象)特定外来生物
サイズやや小さいニホンリスより一回り大きい
腹部の色真っ白栗色(淡褐色・赤褐色)または灰色
冬毛耳の先端に房毛(ふさげ)が生える耳の房毛は生えず、毛色の季節変化もない
食性植物食(オニグルミ、松の実など)雑食性(種子、果実、鳥類の卵、昆虫など)
生息地本州、四国、九州の森林台湾原産。日本国内の定着地域(神奈川県、静岡県など)
飼育の可否原則不可(鳥獣保護管理法)原則禁止(特定外来生物法)

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

最も簡単で見分けやすい違いは「お腹の色」です。ニホンリスのお腹は一年中真っ白ですが、タイワンリス(クリハラリス)のお腹は栗色(茶色)や灰色です。また、冬のニホンリスは耳の先にフサフサした毛が生えますが、タイワンリスには生えません。

森の中でリスを見かけたとき、それがどちらの種かを見分けるのは非常に簡単です。以下の2点に注目してください。

1.お腹の色(最も確実な見分け方)

  • ニホンリス:お腹の毛は真っ白です。背中が茶色でも、お腹が白ければニホンリスです。
  • タイワンリス:お腹の毛は栗色(淡褐色や赤褐色)または灰色をしています。背中からお腹まで色が続いているように見えます。「クリハラリス(栗腹栗鼠)」という名前も、このお腹の色に由来しています。

2.冬の耳(冬毛)

  • ニホンリス:冬になると、耳の先端に長くてフサフサした毛(房毛:ふさげ)が生えます。これは冬のニホンリスの大きな特徴です。
  • タイワンリス:耳は短く丸いのが特徴で、冬になっても耳に房毛は生えません。一年を通して毛色が大きく変わることもありません。

3.サイズ
両者を直接比較するのは難しいですが、一般的にタイワンリスの方がニホンリスよりも一回り大きいとされています。タイワンリスは体重が300g〜400g程度になる個体もいます。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

ニホンリスは主にオニグルミや松の実などを食べる植物食性です。一方、タイワンリスは雑食性が非常に強く、植物の種子や果実だけでなく、昆虫や鳥類の卵・ヒナまで捕食してしまうため、生態系への影響が深刻です。

見た目以上に、彼らの生態、特に「食性」には大きな違いがあり、これがタイワンリスが問題視される理由の一つとなっています。

ニホンリスは、主に植物食です。森の中でオニグルミやマツボックリ(松の実)などを好んで食べます。彼らの食性は、日本の森林生態系の中でバランスが取れたものです。

一方、タイワンリス(クリハラリス)雑食性が非常に強いのが特徴です。
森林総合研究所などの調査によると、彼らは植物の種子や果実、樹皮だけでなく、昆虫類、カタツムリ、そして鳥類の卵やヒナまで捕食します。この強い捕食圧が、在来の野鳥(メジロなど)の減少を引き起こす一因として懸念されています。

また、どちらのリスも特定の巣を持たず、樹上に木の枝や葉を集めて球形の巣を作ります。冬眠はせず、一年中活動します(シマリスは冬眠します)。

生息域・分布・環境適応の違い

【要点】

ニホンリスは本州、四国、九州(*注)の森林に生息する日本の在来種です。タイワンリスは、台湾原産のクリハラリスの亜種であり、日本では「特定外来生物」です。動物園やペットから逃げ出した個体が野生化し、特に神奈川県や静岡県などで定着しています。

両者の生息域は、彼らの「出自」によって明確に分けられます。

ニホンリスは、その名の通り日本古来の在来種です。本州、四国、九州の平地から亜高山帯の森林にかけて生息しています(*注:九州では生息域が限定的、あるいは絶滅した可能性も指摘されています)。彼らは日本の自然環境の構成員です。

タイワンリスは、本来日本にはいなかった外来種です。
彼らの正体は、アジア広域に分布する「クリハラリス」という種のうち、台湾固有の亜種(*Callosciurus erythraeus taiwanensis*)を指す通称です。

環境省の資料によれば、日本に持ち込まれた経緯は、1930年代に観光目的で伊豆大島の動物園に導入された個体群が逃げ出したり、ペットとして飼われていたものが逃げたり放たれたりしたことによります。

これらの個体が野生化して繁殖し、2023年の調査時点で少なくとも12都府県37市町で生息が確認されています。特に神奈川県(鎌倉市など)や静岡県伊東市周辺、伊豆大島などで高密度に定着しています。

危険性・衛生・法規制の違い

【要点】

タイワンリス(クリハラリス)は、2005年に「特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律」に基づき「特定外来生物」に指定されました。これにより、飼育、保管、運搬、輸入、野外への放出が原則として固く禁止されています。

ここが両者を区別する上で最も重要なポイントです。

ニホンリスは在来種であり、日本の自然の一部です。地域によっては準絶滅危惧種に指定されるなど、むしろその生息環境が脅かされており、長野県軽井沢町などでは「リスの橋(ロードキル防止)」を設置するなどの保護活動も行われています。

一方で、タイワンリス(クリハラリス)は、「特定外来生物」として法律で厳しく規制されています。

「特定外来生物」とは、もともといなかった地域に人間の活動によって持ち込まれ、生態系、人の生命・身体、農林水産業へ被害を及ぼす(またはその恐れがある)生物のことです。
タイワンリス(クリハラリス)は、2005年にこの特定外来生物に指定されました。これにより、愛玩目的(ペット)での飼育、保管、運搬、輸入、そして野外への放出が原則として法律で禁止されています。

彼らが引き起こす被害は深刻です。

  1. 生態系への被害:前述の通り、雑食性で鳥の卵やヒナを襲うため、在来の野鳥の減少が懸念されます。また、ニホンリスと食べ物(クルミや松の実)や営巣場所を奪い合う「競合」が発生し、ニホンリスの生息を脅かすとされています。
  2. 農林業への被害:ミカンやカキなどの果樹、野菜、シイタケなどを食害します。また、木の樹皮を剥がすため、森林が枯死する被害も報告されています。
  3. 生活環境への被害:電線や光ファイバーケーブルをかじる習性があり、停電や通信障害といったインフラ被害を頻繁に引き起こします。鎌倉市などでは、雨戸や戸袋、寺社の建物がかじられる被害も発生しています。

もし特定外来生物を許可なく飼育したり、野外に放ったりした場合は、法律に基づき厳しい罰則(懲役や罰金)が科される可能性があります。

文化・歴史・人との関わりの違い

【要点】

ニホンリスは古くから日本の森の住人として親しまれ、保護の対象となっています。タイワンリスは1930年代以降に人為的に持ち込まれた外来種であり、現在は生態系やインフラに被害を与える「害獣」として、自治体による防除(駆除)の対象となっています。

ニホンリスは、古くから日本の森林生態系の一員として存在し、文化的には森の豊かさの象徴とも言える動物です。現在、多くの地域でその生息数が減少し、彼らを守るための環境保全活動や研究が進められています。

対照的に、タイワンリス(クリハラリス)と日本の関わりは、人為的な導入から始まりました。1930年代に台湾から持ち込まれたのが最初とされ、動物園での飼育個体が逃げ出したり、ペットが遺棄されたりして全国に分布を広げたとされています。

当初は愛らしい姿から観光資源として扱われた地域もありましたが、その旺盛な繁殖力と雑食性、ケーブルをかじる習性などが深刻な被害を引き起こすことが判明。2005年の特定外来生物指定以降は、「害獣」および「生態系への脅威」として、鎌倉市神奈川県をはじめとする多くの自治体で、専門家による計画的な防除(駆除)の対象となっています。

「ニホンリス」と「タイワンリス」の共通点

【要点】

全く異なる立場にある両者ですが、生物学的には同じ「ネズミ目(齧歯目)リス科」に属する動物です。どちらも主に樹上で生活し、昼行性で、冬眠をしないという点は共通しています。

生態系での扱いは正反対の両者ですが、もちろん共通点もあります。

最大の共通点は、どちらも「ネズミ目(齧歯目)リス科」に属する哺乳類であることです。(時折イタチの仲間と間違われますが、ネズミの仲間です)。

また、どちらの種も以下の生態的特徴を共有しています。

  • 樹上性:生活のほとんどを木の上で過ごします。
  • 昼行性:主に日中に活動します。
  • 冬眠しない:シマリスとは異なり、ニホンリスもタイワンリスも冬眠はしません。冬でも活動しますが、ニホンリスは冬毛として耳に房毛が生えます。
  • 巣作り:樹上に木の枝や葉を集めて、球形の巣を作ります。

鎌倉で見たのはニホンリスじゃなかった?衝撃の体験談

僕が数年前に鎌倉の大きな公園を散歩していた時のことです。木々の間を猛烈なスピードで駆け抜ける、活発なリスの群れに出会いました。

「うわ、野生のニホンリスだ!鎌倉は自然が豊かだなあ」と感動し、夢中で写真を撮りました。その時、一匹が木の幹に止まり、こちらをじっと見つめました。……何か違和感があります。体がガッシリしていて、何よりお腹が茶色いのです。

「あれ?ニホンリスってお腹白くなかったっけ?」

その場でスマートフォンで検索して、僕は衝撃を受けました。僕が「ニホンリスだ」と喜んで見ていたのは、実は特定外来生物の「タイワンリス(クリハラリス)」だったのです。
彼らが電線をかじったり、農作物や在来の鳥に被害を与えたりしている「害獣」に指定されていると知り、感動は一転、複雑な気持ちになりました。

彼ら自身に罪はないのです。元はと言えば、人間の都合で台湾から連れてこられ、人間の管理不行き届きで野外に定着してしまったのですから。在来種のニホンリスを守るため、そして人間の生活インフラを守るために、彼らは駆除の対象となっ
ています。この「かわいい」と「深刻な問題」のギャップこそが、ニホンリスとタイワンリスを隔てる最も大きな違いなのだと痛感した体験でした。

「ニホンリス」と「タイワンリス」に関するよくある質問

Q: タイワンリス(クリハラリス)をペットとして飼うことはできますか?

A: できません。タイワンリス(クリハラリス)は「特定外来生物」に指定されているため、特定外来生物法により、愛玩(ペット)目的での新規の飼育、保管、運搬、販売、譲渡、輸入、野外への放出は原則として固く禁止されています。違反すると重い罰則が科されます。

Q: シマリスとの違いは何ですか?

A: シマリスは、背中に特徴的な「縞模様」があるため、ニホンリスやタイワンリスとは簡単に見分けがつきます。また、シマリスはニホンリスやタイワンリスと違って冬眠をする点も大きな違いです。

Q: ニホンリスはどこで見ることができますか?

A: ニホンリスは、本州や四国、九州の比較的自然が豊かな森林に生息しています。都市部ではなかなか見られませんが、例えば長野県の軽井沢や、東京都でも多摩地域の森林公園、丹沢山地などで目撃情報があります。

Q: タイワンリスを見かけたらどうすればいいですか?

A: まず、絶対にエサを与えないでください。餌付けは、彼らの繁殖を助け、生態系への被害やインフラ被害を拡大させる原因となります。もし被害(電線がかじられる、家屋に侵入されるなど)を受けている場合は、お住まいの自治体(市役所など)の環境保全課や農林課にご相談ください。

「ニホンリス」と「タイワンリス」の違いのまとめ

ニホンリスとタイワンリス。見た目が似ているこの2種ですが、その違いは「生態系の保護」という観点から非常に重要です。

  1. 見た目の違い:お腹が「白い」のがニホンリス。お腹が「茶色(栗色)」なのがタイワンリス
  2. 立場の違い:ニホンリスは守るべき「在来種」。タイワンリスは生態系に脅威を与える「特定外来生物」
  3. 法律の違い:タイワンリス(クリハラリス)は、飼育・運搬・放出が法律で原則禁止されています。
  4. 生態の違い:タイワンリスは雑食性が強く、鳥の卵も捕食し、電線などもかじって被害を出します。

もしあなたが公園や森でリスを見かけたら、まずはお腹の色をチェックしてみてください。それが在来のニホンリスなのか、それとも外来種のタイワンリスなのか。その違いを知ることは、日本の自然や私たち哺乳類の仲間について深く理解する第一歩となります。

参考文献(公的一次情報)

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