クリスマスシーズンになると、パン屋さんやお菓子屋さんで見かける「ベラベッカ」と「シュトーレン」。
どちらもヨーロッパの伝統的なお菓子で、見た目も似ているため「何が違うの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、この二つは出身地も主役も全く異なる別物です。
最大の違いは、ベラベッカは「果物」が主役で、シュトーレンは「パン生地」が主役という点です。ベラベッカはフランス・アルザス地方、シュトーレンはドイツ発祥と、生まれ故郷も違います。
この記事では、二つの伝統菓子の発祥から食感、食べ方まで、その明確な違いを詳しく解説します。これで、今年のクリスマス選びはもう迷いませんよ。
結論|ベラベッカとシュトーレンの違いを一言でまとめる
ベラベッカとシュトーレンは、どちらもクリスマスを待つ間に食べられる伝統菓子ですが、中身は全く異なります。ベラベッカはフランス・アルザス地方発祥で「洋梨」などのドライフルーツが主役の、ねっとりとしたお菓子です。一方、シュトーレンはドイツ発祥で「パン生地」が主役の、しっとりとした菓子パンです。
シュトーレンはパン生地にフルーツを「練り込む」のに対し、ベラベッカはぎっしりのフルーツを少量のパン生地で「つなぐ」というイメージですね。
見た目も、シュトーレンが粉糖で真っ白なのに対し、ベラベッカはフルーツが凝縮した濃い茶色をしています。
| 項目 | ベラベッカ (Berawecka) | シュトーレン (Stollen) | 
|---|---|---|
| 発祥 | フランス・アルザス地方 | ドイツ(ドレスデンなど) | 
| 名前の意味 | 「洋梨のパン」 | 「幼子イエスのおくるみ」(諸説あり) | 
| 主役(ベース) | 洋梨などのドライフルーツ、ナッツ | パン生地(イースト生地) | 
| 食感 | ねっとり、みっしり、濃密 | しっとり、ほろり、パンの食感 | 
| 主な風味 | 洋梨、キルシュ(さくらんぼの蒸留酒) | ラム酒漬けフルーツ、スパイス | 
| 見た目(仕上げ) | フルーツが凝縮した濃い茶色 | 粉糖で真っ白にコーティング | 
ベラベッカとシュトーレンとは?発祥と定義の違い
ベラベッカはフランス・アルザス地方で生まれた「洋梨のパン」と呼ばれるお菓子です。一方、シュトーレンはドイツのドレスデンで15世紀に生まれたとされる、クリスマスを代表する菓子パンです。
この二つ、実は「兄弟」と呼ばれることもあるほど、クリスマス菓子として近い存在ですが、そのルーツは異なります。
ベラベッカ (Berawecka) |フランス・アルザス地方の「洋梨のパン」
ベラベッカ(Berawecka)は、フランスのアルザス地方で伝統的にクリスマスに作られるお菓子です。
アルザス語で「ベラ=洋梨」「ベッカ=パン」を意味し、その名の通り「洋梨のパン」と呼ばれます。「パンドポワール」と呼ばれることもあります。
いつ生まれたかは定かではありませんが、19世紀頃にはクリスマスのお菓子として親しまれていたようです。
その最大の特徴は、主役があくまでもフルーツであること。乾燥させた洋梨やイチジク、ナッツ類を、キルシュ(さくらんぼの蒸留酒)に漬け込み、それらを「つなぐ」ためだけにごく少量のパン生地を使って焼き上げます。
シュトーレン (Stollen) |ドイツ発祥の「おくるみ」菓子パン
シュトーレン(Stollen)は、ドイツ発祥の伝統的な菓子パンです。特にドレスデンで15世紀に生まれたとされ、長い歴史を持っています。
ドイツでは、クリスマスを待つアドベント(待降節)の期間中、毎日少しずつスライスして食べる習慣があります。
こちらはベラベッカとは対照的に、イーストを使ったパン生地が主体です。生地にはラム酒漬けのレーズンやオレンジピール、シトロンピール、ナッツ類がたっぷりと練り込まれています。
その白い粉糖に包まれた形は、「幼子イエスを包むおくるみ」を模しているとも言われていますよ。
原材料・製法・仕上げ(見た目)の違い
最大の違いは「生地」と「具材」の比率です。ベラベッカはほぼフルーツの塊で、生地は「つなぎ」。シュトーレンはパン生地が主体です。また、仕上げも異なり、ベラベッカはフルーツの濃い茶色、シュトーレンはバターと粉糖で真っ白に仕上げます。
主役は「果物」か「パン生地」か
二つの最大の違いは、生地と具材の比率にあります。
- ベラベッカ:主役は洋梨をはじめとするフルーツ類です。全重量のほとんどがフルーツとナッツで占められ、パン生地(ブリオッシュ生地などが使われることも)は、それらをまとめる「つなぎ」の役割しか持ちません。
 - シュトーレン:主役はパン生地です。生地そのものの味と、練り込まれたフルーツやナッツとの調和を楽しみます。具材は多いですが、あくまでも「パン」であることが前提です。
 
仕上げの違い|粉糖の「白」と果実の「黒」
見た目も対照的です。
シュトーレンは、焼き上がった熱いうちに溶かしバターをたっぷりと染み込ませ、粉糖で真っ白になるまでコーティングします。これは日持ちをさせるためと、前述の「おくるみ」を表現するためです。
ベラベッカは、フルーツが凝縮されているため、焼き上がりは濃い茶色や黒っぽい見た目になります。表面にツヤ出しのナパージュ(ジャム)を塗ることはあっても、シュトーレンのように粉糖で覆われることはありません。
味・食感・香りの違い
食感は、ベラベッカが「ねっとり」と濃密なフルーツの塊であるのに対し、シュトーレンは「しっとり」としたパンの食感です。風味も異なり、ベラベッカは洋梨とキルシュ、シュトーレンはラム酒とスパイスが香ります。
食感:ねっとり濃密なベラベッカ、しっとりパンのシュトーレン
主役が違うため、食感も全く異なります。
ベラベッカは、パン生地がごく少量のため、食感はパンとはほど遠く、「ねっとり」「みっしり」とした、まるでフルーツの塊や濃密なドライフルーツバーのようです。シュトーレン以上に食べ応えがあると感じる人も多いですね。
シュトーレンは、パン生地が主体なので、「しっとり」「ほろり」とした、目の詰まったパウンドケーキやリッチなパンに近い食感です。日が経つにつれてフルーツの風味が生地に移り、熟成されていく味わいの変化も楽しめます。
風味:洋梨とキルシュのベラベッカ、スパイスとラムのシュトーレン
香りも異なります。
ベラベッカは、洋梨の甘酸っぱい香りと、漬け込みに使われるキルシュ(さくらんぼの蒸留酒)のエレガントな香りが特徴です。スパイスが効いていることもあります。
シュトーレンは、ラム酒に漬け込んだレーズンや柑橘ピールの香りに加え、シナモンやカルダモンなどのスパイスが効いており、より複雑で重厚な香りを楽しめます。
食べ方・保存方法・日持ちの違い
どちらも日持ちするお菓子で、クリスマスを待ちながら薄くスライスして少しずつ食べます。シュトーレンはそのまま、またはコーヒー/紅茶と。ベラベッカは、チーズや赤ワインとの相性が抜群なのが大きな特徴です。
どちらもクリスマスを待つ間に食べるお菓子ですが、楽しみ方や保存方法に少し違いがあります。
シュトーレンは、アドベントの期間中、毎日1~2切れずつ薄くスライスして食べ進めるのが伝統です。バターと砂糖でコーティングされているため日持ちが良く、冷暗所で保存すれば数週間かけて熟成が進みます。
ベラベッカも同様に日持ちがし、かなり薄く切って少しずつ楽しみます。フルーツが凝縮されているため、一切れでも非常に満足感があります。
食べ方の最大の違いは、相性です。
シュトーレンはコーヒーや紅茶と合わせるのが一般的ですが、ベラベッカはチーズ(特にブルーチーズ)や赤ワインとの相性が抜群なのが特徴です。お酒のお供としても非常に優秀なお菓子なんですね。
体験談|クリスマスに食べ比べた二つの「待つお菓子」
僕も毎年クリスマスシーズンになると、シュトーレンとベラベッカの両方を購入して楽しんでいます。
シュトーレンは、「ああ、今年もこの季節が来たな」と感じさせてくれる、スパイスとラム酒の香りがたまりません。コーヒーや紅茶と一緒に、毎日少しずつ味が変わっていくのを確かめるのが冬の密かな楽しみです。
一方、ベラベッカは、初めて食べた時の衝撃が忘れられません。「これがパン?」と思うほど、ほぼ果物で、洋梨の芳醇な香りとナッツの歯ごたえが口の中で爆発するようでした。
僕にとってシュトーレンは「朝食や午後のティータイムに楽しむ菓子パン」、ベラベッカは「夜に赤ワインやハードリカーと合わせてじっくり味わう、大人のデザート」という明確な使い分けがあります。どちらもクリスマスの主役ですが、楽しみ方は全く違いますね。
ベラベッカとシュトーレンに関するFAQ(よくある質問)
ベラベッカとシュトーレン、どっちが甘いですか?
甘さの種類が違いますね。ベラベッカはドライフルーツが凝縮された「果実の甘さ」が主体です。シュトーレンは、パン生地自体の甘みに加え、表面の粉糖の「砂糖の甘さ」が特徴です。どちらも甘いですが、ベラベッカの方がより自然な甘みに感じられるかもしれません。
クリスマス以外でも買えますか?
どちらも伝統的なクリスマス菓子のため、多くのパン屋や洋菓子店では11月下旬から12月末までの期間限定販売が一般的です。ただ、専門店や通年で製造しているお店もありますよ。
カロリーが高いのはどっちですか?
一概には言えませんが、シュトーレンはパン生地にバターを練り込み、さらに仕上げに大量のバターと粉糖を使うため、一般的にシュトーレンの方が高カロリーになる傾向があります。ベラベッカもナッツやドライフルーツが多いため低カロリーではありませんが、脂質量はシュトーレンより少ないことが多いです。
まとめ|ベラベッカとシュトーレン、あなたはどっち?
ベラベッカとシュトーレン、二つの似て非なるクリスマス菓子の違い、お分かりいただけたでしょうか。
どちらもクリスマスを豊かに彩るお菓子ですが、その個性は全く異なります。
- シュトーレン:パン生地とスパイス、ラム酒漬けフルーツの調和を楽しむ、ドイツの伝統的菓子パン。
 - ベラベッカ:洋梨とキルシュ漬けフルーツがぎっしり詰まった、フランス・アルザスの贅沢なフルーツ菓子。
 
パンのしっとり感を味わいたい日はシュトーレン、果物の凝縮感をチーズと楽しみたい夜はベラベッカ、というように使い分けるのがおすすめです。
今年のクリスマスは、ぜひ二つの違いを楽しみながら、素敵なアドベントを過ごしてみてくださいね。
ほかにも様々な「スイーツ・お菓子の違い」を紹介していますので、ぜひご覧ください。
ヨーロッパの伝統菓子や食文化について詳しく知りたい方は、日本政府観光局(JNTO)などで各国の観光情報を調べてみるのも面白いですよ。