あらごしトマトとトマト缶の決定的な違い|形状・用途・保存法を徹底解説

トマト料理を作ろうとして、スーパーで「あらごしトマト」と「トマト缶」を前に悩んだことはありませんか?

どちらもトマトの加工品ですが、実は「あらごしトマト」は滑らかなピューレ状(裏ごしタイプ)、「トマト缶」は果肉が残る「ホール」や「カット」タイプを指すことが多く、料理の仕上がりが全く変わってきます。

この記事を読めば、それぞれの定義、味や食感の違い、最適な料理での使い分けが明確に分かります。

もうレシピの前で迷わないよう、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

結論|あらごしトマトとトマト缶の違いを一言でまとめる

【要点】

「あらごしトマト」と「トマト缶」の最も大きな違いは、果肉の形状と加工度です。「あらごしトマト」は主にトマトを裏ごしして種や皮を取り除いた滑らかなピューレ状(パッサータ)を指し、短時間でソースやスープに使うのに適しています。一方、「トマト缶」は果肉が丸ごと入った「ホールトマト」や角切りの「カットトマト」が主流で、果肉感を残したい煮込み料理やパスタソースに向いています。

イタリア料理の必需品であるトマト加工品ですが、日本では「トマト缶」という言葉がホールトマトやカットトマトの総称として使われることが多いですよね。そこに「あらごしトマト」という製品(主に紙パック)が登場し、使い分けが少し複雑になりました。

まずは、それぞれの特徴を比較表で整理してみましょう。

あらごしトマトとトマト缶(ホール・カット)の比較表

項目あらごしトマト(パッサータ)ホールトマト缶カットトマト缶
主な形状滑らかなピューレ状(裏ごし)トマトが丸ごとトマトがサイコロ状(角切り)
種・皮基本的に取り除かれている皮は湯むき済み(種はあり)皮は湯むき済み(種はあり)
食感非常に滑らか、均一果肉感が最も強い、崩れやすい果肉感が残る
主な容器紙パック(主流)、瓶
得意な料理スープ、滑らかなソース、短時間調理煮込み料理、トマトソース(長時間)パスタ、炒め物、ラタトゥイユ

あらごしトマトとトマト缶の定義・分類・原材料の違い

【要点】

「トマト缶」は、その名の通り缶詰にされたトマト加工品で、主に「ホールトマト」と「カットトマト」の2種類を指します。一方、「あらごしトマト」は特定の規格名ではなく、多くの場合、トマトを裏ごしして滑らかにした「パッサータ」と呼ばれる製品を指します。

この2つの言葉、実は分類の仕方が少し異なります。「トマト缶」は容器の形態を指す言葉ですが、一般的には中身の「ホール」や「カット」を含めた総称として使われていますね。

「トマト缶」とは?主に2種類(ホール・カット)

スーパーで「トマト缶」として売られている製品のほとんどは、以下の2種類に分けられます。

  • ホールトマト缶:トマトの皮を湯むきし、果肉を丸ごと(Whole)缶詰にしたものです。トマトの旨味が詰まったジュース(トマト汁)に浸かっています。果肉が柔らかく、手やフォークで簡単に潰すことができます。
  • カットトマト缶:トマトの皮を湯むきし、サイコロ状(Diced)にカットして缶詰にしたものです。ホールトマトに比べて加工度が高く、形が整っているのが特徴です。

どちらも原材料はトマトとトマトジュースが基本で、クエン酸や塩が添加されている場合があります。缶詰であるため、長期保存性に優れています。

「あらごしトマト」とは?裏ごしタイプ(パッサータ)が主流

一方、「あらごしトマト」は、特定の法的な定義や規格があるわけではありませんが、市場では主にイタリア語で「パッサータ(Passata)」と呼ばれる製品を指すことが多いです。

パッサータは、トマトを丸ごと裏ごしし、種や皮を丁寧に取り除いて滑らかなピューレ状(または非常に細かい果肉)にしたものです。「あらごし」という名前がついていますが、実際にはホールやカットよりも滑らかな製品であることがほとんどですね。

日本ではカゴメ株式会社などが紙パックで販売していることが多く、「トマト缶」と区別して「紙パックのトマト」として認識している方も多いでしょう。

味・香り・食感・見た目の違い

【要点】

「あらごしトマト」は種や皮がないため口当たりが非常に滑らかで、味が均一です。一方、「トマト缶」のホールやカットは果肉感が強く、特にホールトマトは煮込むことでトマト本来の旨味とフレッシュな香りが引き立ちます。

あらごしトマト:滑らかで均一な口当たり

あらごしトマト(パッサータ)の最大の特徴は、その滑らかなテクスチャーです。裏ごしされているため、ソースやスープにした時に均一な仕上がりになります。

種や皮の雑味がなく、トマトの旨味と穏やかな酸味が凝縮されています。加熱時間が短くても味がまとまりやすいのがメリットですね。

トマト缶(ホール・カット):果肉感と自然なトマトの風味

ホールトマトは、果肉が丸ごと入っているため、最も果肉感を楽しめます。加熱して煮崩れることで、トマト本来のフレッシュな香りと酸味、そして深い旨味がソースに溶け出します。

カットトマトは、すでにカットされているため便利ですが、ホールトマトに比べると加熱処理の影響で風味がやや弱く、水っぽさを感じる製品もあります。ただし、調理時間を短縮したい時には非常に便利です。

栄養・成分・健康面の違い

【要点】

あらごしトマトもトマト缶も、原材料はトマトであるため、栄養価に大きな差はありません。どちらも抗酸化作用が期待される「リコピン」を豊富に含みます。リコピンは加熱することで吸収率が高まるため、これら加工品は効率的に栄養を摂取できる優れた食材と言えます。

どのタイプのトマト加工品も、栄養面での大きな違いはありません。トマトはビタミンC、ビタミンE、カリウムなどを豊富に含みます。

特に注目されるのが、赤い色素成分である「リコピン」です。

リコピンは、生で食べるよりも加熱したり油と一緒に調理したりすることで、体内への吸収率が格段に上がるとされています。そのため、あらごしトマトやトマト缶を使った料理は、効率よくリコピンを摂取するのに非常に適していると言えるでしょう。

ただし、製品によっては塩分が添加されている場合があるため、使いすぎには注意が必要ですね。

使い方・料理での扱い方の違い|おすすめレシピ

【要点】

使い分けの最大のポイントは「求める食感」「調理時間」です。滑らかさや時短を求めるなら「あらごしトマト」、果肉感や深い旨味を求めるなら「トマト缶(ホール/カット)」を選びましょう。

この違いを知っていると、料理のクオリティが格段に上がりますよ。

あらごしトマトが活躍する料理(短時間・滑らか)

種や皮を取り除く手間がなく、すでに滑らかな状態なので、短時間で仕上げたい料理に最適です。

  • トマトスープ:ミキサーにかける必要がなく、温めるだけですぐに滑らかなスープが完成します。
  • ピザソース:煮詰めるだけで、簡単に均一なピザソースが作れます。
  • カレーやハヤシライスの隠し味:少量加えるだけで、料理全体にトマトの旨味と酸味を均一にプラスできます。

トマト缶(ホール)が活躍する料理(煮込み・果肉感)

トマトを潰す手間はかかりますが、煮込むほどに旨味が出るため、じっくり時間をかける料理に向いています。

  • トマトソース(煮込み系):ミートソースやラグーソースなど、30分以上煮込む料理に最適です。果肉が崩れてソースに深みを与えます。
  • 煮込み料理:ビーフシチューやカポナータ、トリッパの煮込みなど、トマトの形を残しつつ、旨味をじっくり引き出したい料理に。

トマト缶(カット)が活躍する料理(汎用性・食感)

すでにカットされている手軽さと、果肉感が残るバランス型です。

  • パスタソース(短時間系):アラビアータやボンゴレ・ロッソなど、短時間で仕上げるパスタソースに。
  • 炒め物:ラタトゥイユや鶏肉のトマト煮など、具材としてトマトの形を残したい料理に便利です。

保存・価格・入手性の違い

【要点】

「トマト缶」はスチール缶が主流で長期保存に優れ、価格も安価です。「あらごしトマト」は紙パックが主流で、開封後の保存や廃棄が容易ですが、価格はトマト缶よりやや高めな傾向があります。

容器の違い(紙パックと缶)

最大の違いが容器ですね。トマト缶はスチール缶、あらごしトマトは紙パック(または瓶)が主流です。

紙パック(あらごしトマト)は、開けやすく、使い終わった後も小さく畳んで捨てられる手軽さが魅力です。缶切りが不要で、缶の縁で手を切る心配もありません。

開封後の保存方法

これはどちらも共通の注意点です。

トマト缶は、開封後に中身が残った場合、缶のまま保存してはいけません。

缶が空気に触れると内側のスズが溶け出し、金属臭がトマトに移ったり、風味が損なわれたりする原因になります。必ずガラス容器やプラスチックの密閉容器に移し替えて冷蔵庫で保存し、2〜3日以内に使い切りましょう。

あらごしトマト(紙パック)も、開封後は注ぎ口をしっかり閉じて冷蔵庫で保存し、早めに使い切るのが基本です。

価格と入手性

一般的に、価格はホールトマト缶やカットトマト缶の方が安価な傾向があります。特売の対象にもなりやすいですよね。

あらごしトマト(パッサータ)は、加工に手間がかかることや紙パックのコストもあり、トマト缶より少し高めの価格設定になっていることが多いです。

入手性については、トマト缶はほぼ全てのスーパーで手に入りますが、あらごしトマト(紙パック)は店舗によっては取り扱いがない場合もあります。

体験談|ホールトマトを潰す手間から解放された「あらごし」との出会い

僕も昔は、トマトソースを作るときは「ホールトマト缶一択!」と思い込んでいました。

「その方が本格的だ」と信じ、ボウルの中で手でベチャベチャとトマトを潰す作業を毎回やっていたんです。美味しいのですが、正直なところ、手が汚れるし、種のプチプチとした食感が残るのが少し気になっていました。

ある日、時間がない中でミネストローネを作ろうとした時、たまたまスーパーで見かけたのが紙パックの「あらごしトマト」でした。

「裏ごし済み?」「種も皮もない?」

半信半疑で使ってみたところ、その手軽さと仕上がりの滑らかさに衝撃を受けました。鍋に野菜と一緒に入れて煮込むだけで、まるでレストランのような均一で口当たりの良いスープが完成したのです。

それ以来、我が家では料理によって明確に使い分けるようになりました。

「じっくり煮込むミートソースはホール缶」「すぐに食べたいスープやピザソースはあらごしトマト」

この使い分けができるようになってから、トマト料理のレパートリーが格段に広がった気がします。手軽さを求めることも、時には料理の質を高めるんですね。

あらごしトマトとトマト缶に関するよくある質問

あらごしトマトはカットトマトで代用できますか?

はい、代用は可能です。ただし、仕上がりの食感が変わります。カットトマトで代用する場合、滑らかなソースにしたい時はミキサーにかけるか、煮込む時間を長くして木べらなどで潰しながら調理すると近くなりますよ。

ホールトマトを潰したらあらごしトマトになりますか?

ホールトマトを潰しただけでは、種や皮の一部が残るため、あらごしトマト(パッサータ)のような完全な滑らかさにはなりません。より近づけたい場合は、ホールトマトを潰した後に目の細かいザルなどで「裏ごし」する作業が必要になりますね。

トマトピューレやトマトペーストとの違いは?

これは「濃縮度」の違いです。トマトピューレは、トマトを裏ごしして水分を少し煮詰めたもの(濃縮度2〜3倍程度)。トマトペーストは、さらに水分を飛ばして高濃度(5〜6倍程度)にしたものです。あらごしトマト(パッサータ)は、基本的に「濃縮していない」裏ごしトマトジュースに近いもの、と区別すると分かりやすいでしょう。

まとめ|あらごしトマトとトマト缶、どちらを選ぶべきか?

あらごしトマトとトマト缶(ホール・カット)の違い、明確になりましたでしょうか。

どちらが良い・悪いではなく、作りたい料理のイメージに合わせて使い分けることが大切です。

  • 滑らかさ・時短・手軽さを求めるならあらごしトマト(紙パック)
  • 果肉感・煮込み料理の深みを求めるならホールトマト缶
  • 手軽さと果肉感のバランスを求めるならカットトマト缶

それぞれの特徴を理解して、日々のトマト料理をさらに美味しく楽しんでくださいね。トマト加工品の世界は奥深く、知るほどに料理の幅が広がります。

当サイトでは、他にも様々な調理法・食文化の違いについて詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。