カツレツととんかつ、どちらもサクサクの衣とジューシーな肉が魅力ですが、この二つの違いを正確に説明できますか?
洋食屋さんで「ポークカツレツ」と「とんかつ」が両方メニューに並んでいると、迷ってしまいますよね。名前は似ていますが、実はルーツ、肉の種類、調理法、そして食べ方のスタイルまで、多くの点で異なる料理なんです。
簡単に言えば、カツレツは肉の種類を問わない「洋食」の揚げ焼き料理であり、とんかつは豚肉を使った「和製洋食(または和食)」の揚げ物料理です。
この記事を読めば、二つの料理の明確な違いが分かり、もうメニュー選びで迷うことはありません。まずは、その違いが一目でわかる比較表からご覧ください。
結論|カツレツととんかつの違いが一目でわかる比較表
カツレツととんかつの決定的な違いは、「肉の種類」と「調理法」です。カツレツは肉の種類を問わず(仔牛、鶏、豚など)、薄切りの肉を少なめの油で「揚げ焼き」にする洋食です。一方、とんかつは「豚肉」専用で、厚切りの肉をたっぷりの油で「揚げる(ディープ・フライ)」、日本で独自の進化を遂げた和製洋食(和食)です。
二つの料理の主な違いを表にまとめました。
| 項目 | カツレツ (Cutlet) | とんかつ (Tonkatsu) |
|---|---|---|
| 発祥 / ルーツ | フランスの「コートレット」 | 日本の「ポークカツレツ」 |
| 料理分類 | 洋食 | 和製洋食 / 和食 |
| 主な肉の種類 | 種類を問わない(仔牛、豚、鶏など) | 豚肉のみ |
| 肉の厚さ | 薄切り / 薄く叩き伸ばす | 厚切り |
| 調理法 | 揚げ焼き(少量の油) | 揚げる(たっぷりの油) |
| 食べ方 | ナイフとフォーク(切らずに提供) | 箸(あらかじめ切って提供) |
| 主なソース | デミグラスソース、トマトソースなど | とんかつソース(ウスターソースベース) |
| 付け合わせ | 温野菜など | 千切りキャベツ、ご飯、味噌汁 |
定義と起源|カツレツは「洋食」、とんかつは「和製洋食」
カツレツはフランス料理の「コートレット」が語源の西洋料理です。とんかつは、そのカツレツを明治時代に日本人がアレンジし、昭和期にご飯と味噌汁に合う「和食」のスタイルとして確立させた、日本生まれの料理です。
カツレツ(Cutlet)とは?
カツレツは、フランス語の「コートレット(côtelette)」が語源です。これは仔牛や羊、豚などの骨付き背肉を指す言葉でしたが、次第にそれにパン粉をつけて調理したものも指すようになりました。
英語では「カットレット(cutlet)」となり、これが日本で「カツレツ」と呼ばれるようになったのです。
日本では明治時代に西洋料理店で提供され始め、当時はナイフとフォークで食べる高級な「洋食」として認識されていました。ウィーン風カツレツ(シュニッツェル)やミラノ風カツレツが有名で、これらは伝統的に仔牛肉が使われます。
とんかつ(Tonkatsu)とは?
とんかつは、カツレツを日本人の食文化に合わせて独自に進化させた「和製洋食」または「和食」です。
その名前は、日本語の「豚(とん)」とカツレツの略である「カツ」を組み合わせたものです。
歴史の転換点となったのは、明治32年(1899年)に東京・銀座の洋食店「煉瓦亭」が、高価な仔牛肉の代わりに豚肉を使った「ポークカツレツ」をメニューに加えたこととされています。
さらに昭和初期(1930年代)に入ると、東京・上野の「ぽん多本家」が、ポークカツレツを天ぷらのようにたっぷりの油で揚げる調理法(ディープ・フライ)を考案。あらかじめ包丁で切り分けて箸で食べられるようにし、ご飯、味噌汁、漬物とセットで提供する「和定食」のスタイルを確立しました。これが現在の「とんかつ」の原型です。
調理法と肉の種類の決定的違い
カツレツは仔牛・鶏・豚など肉の種類を問いませんが、とんかつは豚肉限定です。また、カツレツは薄い肉を少量の油で「揚げ焼き」にするのに対し、とんかつは厚い肉を大量の油で「揚げる」という根本的な調理法の違いがあります。
肉の種類と厚さの違い
カツレツ
カツレツは、肉の種類を特定しません。
ヨーロッパの伝統的なレシピでは仔牛肉が使われますが、日本では豚肉(ポークカツレツ)や鶏肉(チキンカツレツ)も一般的です。さらに広義には、メンチカツ(挽肉)やハムカツ、エビカツレツなどもカツレツのバリエーションとして扱われることがあります。
肉の厚さは、薄切り、または肉叩きで薄く伸ばして使うのが特徴です。
とんかつ
とんかつは、その名の通り「豚肉」専用の料理です。
肉の部位は主に、脂身の旨味が楽しめる「ロース」と、脂身が少なく柔らかい「ヒレ」の2種類が使われます。
カツレツとは対照的に、肉は厚切りのまま使われ、そのジューシーさを楽しみます。
衣と調理法の違い(揚げ焼き vs 揚げる)
この二つの料理を決定づけるのが、調理法(火の通し方)です。
カツレツ
カツレツは、フライパンに少なめ(または多め)の油を熱し、「揚げ焼き(ソテー)」にするのが伝統的な調理法です。衣は細かいパン粉を薄くまぶすことが多いです。
とんかつ
とんかつは、日本の「天ぷら」の技術を応用しています。たっぷりの油が入った鍋で「揚げる(ディープ・フライ)」のが特徴です。
これにより、厚切りの肉にも中までじっくりと火を通すことが可能になり、衣もカツレツより厚く、ふっくらとサクサクした食感に仕上がります。
食べ方・味付け・付け合わせの違い
カツレツはナイフとフォークで切りながら、デミグラスソースなどで食べる「洋食」スタイルです。とんかつは、あらかじめ切られたものを箸で食べ、ご飯・味噌汁と共に「和食」の定食スタイルで食べるのが一般的です。
カツレツの食べ方(ソース・付け合わせ)
カツレツは洋食皿に盛られ、ナイフとフォークを使って自分で切り分けながら食べるのが基本です。
ソースも洋食のスタイルが主流で、デミグラスソースやトマトソース、バジルソースなどが使われます。付け合わせには、温野菜やマッシュポテトなどが添えられることが多いです。
とんかつの食べ方(ソース・付け合わせ)
とんかつは、提供される時点であらかじめ食べやすい大きさに包丁で切り分けられています。
これを箸で食べるのが日本のスタイルです。
付け合わせの定番は、山盛りの千切りキャベツ(煉瓦亭発祥とされます)で、ご飯、味噌汁、漬物と一緒に「とんかつ定食」として提供されるのが最もポピュラーな形です。
ソースは、ウスターソースをベースに野菜や果物を加えてとろみをつけた、日本独自の濃厚な「とんかつソース」が主流です。
さらに、カツ丼、カツカレー、カツサンドなど、多様な派生料理を生み出しているのも、和食として定着したとんかつならではの特徴と言えるでしょう。
【体験談】洋食屋で気づいた「カツレツ」と「とんかつ」の本質的な差
僕も昔は、洋食屋さんで「ポークカツレツ」と「とんかつ」が両方メニューにあると、何が違うんだろうと本気で悩んでいました。
名前も似ていますし、どちらも豚肉を揚げたものですからね。
ある日、老舗の洋食店で思い切って「ポークカツレツ」を注文してみたんです。いつも頼む「とんかつ定食」のイメージで待っていたら、運ばれてきたのは全くの別物でした。
お皿の上に乗っていたのは、薄く叩き伸ばされた大きな一枚肉。衣は薄く、デミグラスソースがたっぷりかかっています。ご飯と味噌汁ではなく、パン(またはライス)とポタージュスープがセットでした。もちろん、箸ではなくナイフとフォークで切って食べます。
その時、ハッとしました。
カツレツは、ソースと絡めて食べることを前提にした「洋食の一皿」なんです。一方、僕が知っているとんかつは、分厚い肉の旨味とサクサクの衣を主役に、ご飯と味噌汁と共にかきこむ「和食」なんだと。
同じ「豚肉を揚げる」という行為でも、調理法(揚げ焼きか、揚げるか)と食べ方のスタイル(洋食か、和食か)が、二つを全く別の料理に分けているんだと実感した瞬間でした。
カツレツととんかつに関するよくある質問
メンチカツやチキンカツはカツレツの一種ですか?
はい、広い意味でカツレツのバリエーション(仲間)と言えます。
カツレツはもともと肉の種類を問いません。そのため、鶏肉を使った「チキンカツレツ」 や、挽肉(ミンスミート)を使った「メンチカツ(ミンスミートカツレツの略)」 も、カツレツから派生した料理とされていますよ。
とんかつにロースとヒレがあるのはなぜですか?
豚肉の中で、とんかつの調理法(厚切り・ディープフライ)に最も適しており、それぞれの美味しさが際立つ部位だからです。
「ロース」は背中側の肉で、赤身と脂身のバランスが良く、ジューシーな味わいが特徴です。一方、「ヒレ」はロースの内側にある希少部位で、脂身がほとんどなく、非常に柔らかい肉質が特徴です。どちらを選ぶかは、脂の旨味を求めるか、赤身の柔らかさを求めるか、という好みの違いですね。
ミラノ風カツレツとは何ですか?
イタリア・ミラノ発祥の伝統的なカツレツです。
本来は仔牛肉を使い、肉を骨付きのまま薄く叩き伸ばし、チーズ(パルミジャーノ・レッジャーノなど)を混ぜた細かいパン粉をつけて、バターとオリーブオイルで揚げ焼きにします。レモンを絞って食べるのが一般的で、日本のとんかつとは全く異なる、軽やかで風味豊かな料理ですよ。
まとめ|似て非なる二つの揚げ物料理
カツレツととんかつの違い、明確にご理解いただけたでしょうか。
最後に、二つの料理の決定的な違いをまとめておきます。
- ルーツと分類:カツレツはフランス料理が起源の「洋食」。とんかつはカツレツを日本でアレンジした「和製洋食(和食)」。
- 肉:カツレツは仔牛・豚・鶏など種類を問わない。とんかつは豚肉(ロースかヒレ)限定。
- 調理法:カツレツは薄い肉を「揚げ焼き」。とんかつは厚い肉を「揚げる(ディープ・フライ)」。
- 食べ方:カツレツはナイフとフォークで食べる。とんかつは箸で、定食スタイルで食べることが多い。
これで、洋食店で「ポークカツレツ」と「とんかつ」が並んでいても、自信を持ってその日の気分に合う一皿を選べますね。
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