「二枚目」と「イケメン」の違いとは?語源とニュアンスで解説

「二枚目」と「イケメン」。

どちらも「かっこいい男性」を指す言葉として、日常的に使われますよね。

ですが、「あの俳優は二枚目だ」「あの店員さんイケメンだ」と言う時、私たちは無意識に違うタイプの「かっこよさ」を思い浮かべていないでしょうか?

実はこの二つ、言葉が生まれた時代背景が全く違い、「かっこよさの系統」や「使われる範囲」が異なります。

この記事を読めば、歌舞伎に由来する「二枚目」と、平成の流行語「イケメン」の核心的な違いから、正しい使い分けまでスッキリ理解できますよ。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「二枚目」と「イケメン」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「二枚目」は歌舞伎由来の言葉で「優男・色男」という特定の役柄・タイプを指します。一方、「イケメン」は平成生まれのスラングで「イケてる面(顔)」を意味し、現代的なかっこいい男性全般を指す、より幅広い言葉です。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目二枚目(にまいめ)イケメン
中心的な意味容姿が整った男性。
特にロマンチックな色男役
容姿が整った男性。
イケてる」かっこいい男性。
語源・由来歌舞伎の「二枚目の看板
(色男役の俳優が載ったことから)
平成のスラング
(「イケてる」+「(メン=顔)」または「メンズ」)
ニュアンス優男、色男、ロマンチスト、
少し影がある、伝統的な美男子。
クール、スタイリッシュ、爽やか、可愛い系など、現代的なかっこよさ全般
時代性江戸時代~昭和(伝統的)平成~令和(現代的・流行的)
対象範囲主に「役柄・タイプ・雰囲気主に「容姿・ファッション

一番大切なポイントは、「二枚目」はかっこいい男性の中でも特定の「タイプ(優しくロマンチックな色男)」を指すのに対し、「イケメン」は塩顔、ソース顔、クール系、可愛い系など、系統を問わず「見た目がかっこいい男性」全般に使えるという点ですね。

「二枚目」は「イケメン」の一種と言えますが、「イケメン」が必ずしも「二枚目」とは限らないわけです。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「二枚目」は、江戸時代の歌舞伎小屋で2番目に掲げられた看板が「色男役」だったことに由来します。対して「イケメン」は、1990年代~2000年代に「イケてる面(顔)」または「イケてるメンズ」の略として生まれた流行語です。

この二つの言葉は、生まれた時代も背景もまったく異なります。語源を知ると、ニュアンスの違いがハッキリと見えてきますよ。

「二枚目」の語源:歌舞伎の看板

「二枚目」という言葉は、江戸時代の歌舞伎の世界で生まれました。

当時、芝居小屋の前には、出演する役者の名前と序列を書いた看板(番付)が掲げられていました。その看板の枚数と順番には、以下のような決まりがあったんです。

  • 一枚目:主役、一座の看板役者(座長)
  • 二枚目色男役(恋愛シーンを担当する、美男子の役)
  • 三枚目:道化役(笑いを取る、ひょうきんな役)

この2番目の看板に名前が載る「色男役」のことを、そのまま「二枚目」と呼ぶようになりました。

このため、「二枚目」という言葉には、単に顔がかっこいいだけでなく、「優男」「ロマンチック」「色気がある」「少し影がある」といった、特定の役柄(キャラクター性)のイメージが強く含まれているんですね。

「イケメン」の語源:平成の流行語(スラング)

一方、「イケメン」は、1990年代後半から2000年代初頭にかけて広まった、比較的(「二枚目」に比べれば)新しい言葉です。

その語源には諸説ありますが、最も有力なのは以下の二つです。

  1. イケてる」+「(めん=顔)」
  2. イケてる」+「メンズ」

どちらにせよ、「イケてる(=かっこいい、クールな、魅力的な)」という現代的な価値観がベースになっています。語源に「顔」が入っていることからもわかるように、役柄や内面性よりも、純粋に「容姿」や「雰囲気」がかっこいい男性全般を指す言葉として定着しました。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「二枚目」は「あの俳優は二枚目役が似合う」のように、役柄やタイプを指して使います。「イケメン」は「あのカフェの店員、イケメンだよね」のように、容姿そのものを指して使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

「タイプ」を指す「二枚目」と、「見た目」を指す「イケメン」の違いを見ていきましょう。

「二枚目」を使うシーン(色男・ロマンチックな役柄)

昭和のスターや、優しく紳士的な雰囲気を持つ人、または劇中の役柄に対して使うと、しっくりきます。

【OK例文:二枚目】

  • うちの部長は、若い頃は相当な二枚目だったらしい。
  • 彼は二枚目俳優として、多くの恋愛ドラマで主役を務めた。
  • 彼は普段は三枚目だけど、いざという時に二枚目な一面を見せる。
  • あんな二枚目に口説かれたら、断れないかもしれない。

「イケメン」を使うシーン(現代的な”いい男”全般)

K-POPアイドル、爽やかなスポーツ選手、おしゃれなカフェ店員など、現代的な「かっこよさ」全般に使えます。

【OK例文:イケメン】

  • 「ねえ、今の店員さん、すごくイケメンじゃなかった?」
  • 最近の若手俳優はイケメンなだけでなく、演技力も高い。
  • 彼はイケメンな上に性格も良いなんて、完璧すぎる。
  • 「イケメンですね」は、韓国ドラマのタイトルにもなりましたよね。

これはNG!間違えやすい使い方

二つの言葉が持つ「時代感」や「系統」を間違えると、少し不自然な響きになります。

  • 【NG】(K-POPアイドルを見て)「彼、すごく二枚目だね!」
  • 【OK】(K-POPアイドルを見て)「彼、すごくイケメンだね!」

→ K-POPアイドルのような現代的・中性的なかっこよさを「二枚目」と表現すると、少し古風な印象を与えてしまいます。「イケメン」が最適ですね。

  • 【NG】(昭和の映画スターを見て)「昔の俳優ってイケメンだよね」
  • 【OK】(昭和の映画スターを見て)「昔の俳優って二枚目だよね」

→ 間違いではありませんが、「イケメン」は平成以降の言葉なので、昭和の美男子を評するには「二枚目」の方が時代考証としてしっくりきます。「ハンサム」なども使われますね。

【応用編】似ている言葉「三枚目」との違いは?

【要点】

「三枚目(さんまいめ)」は、「二枚目」と同じく歌舞伎の看板に由来します。3番目の看板に載った「道化役(どうけやく)」を指し、ひょうきんな人、お調子者、コメディアンタイプの人を意味します。「二枚目」の対義語的な存在です。

「二枚目」の話をすると、必ずセットで出てくるのが「三枚目(さんまいめ)」ですよね。

これも語源は「二枚目」と同じ、歌舞伎の看板です。

  • 二枚目:色男役、ロマンチック担当
  • 三枚目道化役、コメディ担当

3番目の看板に名前が載る役者が、笑いを取る「道化役」だったことから、「三枚目」は「ひょうきんな人、お調子者、ムードメーカー」といった意味で使われるようになりました。

【例文】

  • 彼は二枚目の顔立ちなのに、いつも三枚目な役ばかり演じている。
  • 「イケメンなのに三枚目」というのが、彼の人気の秘密だ。

このように、「二枚目(色男)」と「三枚目(道化)」は、歌舞伎の役柄として対になる言葉なんですね。

「二枚目」と「イケメン」の違いを社会文化史的に解説

【要点】

「二枚目」は、江戸~昭和にかけての「理想の男性像(色男)」を反映した言葉です。一方「イケメン」は、1990年代以降の価値観の多様化を背景に生まれ、「かっこよさ」の基準が容姿やファッションなど多岐にわたる現代を象徴する言葉と言えます。

少し専門的な視点になりますが、この二つの言葉は、それぞれの時代が求める「男性の魅力」を象徴していると言えます。

二枚目」が生まれた江戸時代、そしてそれが一般的に使われた昭和の時代まで、「かっこいい男」の代表格は、物語の恋愛パートを担う「色男」でした。そこには、優しさ、色気、時にははかなさといった、物語の「役柄」としての魅力が求められました。

一方、「イケメン」が生まれた1990年代後半~2000年代は、雑誌のストリートスナップやテレビの普及により、人々の関心が「物語」から「リアルな容姿・ファッション」へと移行した時代です。

「かっこよさ」の基準も多様化し、従来の「二枚目」的な濃い顔立ちだけでなく、爽やか系、かわいい系、クール系、中性的なK-POP系など、様々なタイプが「イケメン」と呼ばれるようになりました。

つまり、「二枚目」はその人の「タイプ・役柄」を指す言葉であり、「イケメン」はその人の「見た目・雰囲気」そのものを指す言葉、という違いは、こうした社会文化的な背景から生まれているんですね。

僕が祖母に「イケメン」と言ってポカンとされた体験談

僕がまだ中学生だった頃、祖母と一緒にテレビの歌番組を見ていた時のことです。

当時大人気だった、ファッションも髪型も最先端の男性アイドルグループが登場しました。僕は興奮して、祖母にこう言いました。

「おばあちゃん、見て!あの人たち、超イケメンじゃない?」

すると祖母は、きょとんとした顔で僕を見て、一言。

「……いけめん? 池のそばにいるの?」

僕はズッコケました(笑)。祖母にとっては「イケメン」という言葉が全く未知の単語だったのです。「あ、えっと、かっこいい男の人のことだよ!」と慌てて説明しました。

すると祖母は納得したように頷き、テレビ画面をじっと見つめて、こう言いました。

「ふぅん。今どきはこういうのが二枚目なのかい。私の若い頃とはずいぶん違うねぇ」

僕はその時、ハッとしました。僕が「イケメン」と呼ぶものを、祖母は「二枚目」という言葉で理解しようとしたのです。

世代によって、「かっこいい男性」を指す標準的な言葉が違うんだ、と強烈に感じた瞬間でした。「イケメン」は僕たちの時代の言葉で、「二枚目」は祖母の時代の言葉。でも、どちらも「かっこいい男」を褒める素敵な言葉なんだな、と思いましたね。

「二枚目」と「イケメン」に関するよくある質問

ここでは、「二枚目」と「イケメン」について、皆さんが疑問に思いがちな点にお答えしますね。

質問1:「イケメン」だけど「二枚目」ではない、とはどういうことですか?

回答:はい、あり得ます。例えば、ワイルド系やヤンチャ系のかっこいい男性は「イケメン」ですが、「優男・色男」という「二枚目」のイメージとは異なります。また、見た目はかっこいい(イケメン)けれど、中身はひょうきんでお調子者(三枚目)という人も、典型的な「二枚目」とは言えませんね。

質問2:「二枚目」はもう死語ですか?

回答:いいえ、死語ではありません。日常会話で「イケメン」ほど頻繁には使われないかもしれませんが、演劇や映画、小説の世界では「二枚目俳優」「二枚目役」といった形で現役で使われています。また、「正統派の美男子」「紳士的なかっこよさ」を持つ人を指す言葉として、今でも十分通じますよ。

質問3:「一枚目」はなぜ使われないのですか?

回答:語源である歌舞伎の看板では「一枚目」は「主役」を意味していました。しかし、「主役」という言葉が一般的に使われるようになると、「一枚目」という言葉は「主役」という意味では使われなくなり、次第に日常会話から消えていったと考えられます。一方で、「二枚目(色男)」や「三枚目(道化)」は、他にしっくりくる言葉がなかったため、タイプを表す言葉として残ったんですね。

「二枚目」と「イケメン」の違いのまとめ

「二枚目」と「イケメン」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 語源が違う:「二枚目」は歌舞伎の「色男役」の看板、「イケメン」は平成の「イケてる面(顔)」というスラング。
  2. 対象範囲が違う:「二枚目」は「優男・色男」という特定のタイプ・役柄を指す。
  3. 対象範囲が違う:「イケメン」は系統を問わず、現代的な「かっこいい容姿」全般を指す。
  4. 時代感が違う:「二枚目」は伝統的・昭和的、「イケメン」は現代的・流行的。
  5. 「三枚目」は対義語:「二枚目(色男)」に対し、「三枚目」は「道化役・ひょうきん者」を指す。

これで、あなたも「かっこいい男性」を見かけた時、その人が伝統的な「二枚目」タイプなのか、現代的な「イケメン」なのか、自信を持って使い分けられるはずです。

言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、スラング・俗語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。