ピルスナーとラガーの違い!ビール好きなら知っておきたい分類のナゾを徹底解説

「ピルスナー」と「ラガー」。

どちらもビール好きなら一度は耳にしたことがある言葉ですが、この二つの違いを正確に説明するのは意外と難しいですよね。

「とりあえずビール」で頼むあのビールは、ラガーなのでしょうか? それともピルスナーなのでしょうか?

結論から言うと、「ラガー」はビールの製造方法による大きな分類(総称)であり、「ピルスナー」はそのラガーという分類に含まれる、数あるビアスタイル(種類)の一つを指します。

例えるなら、「飲み物」と「緑茶」のような関係です。「緑茶」は「飲み物」の一種ですよね。それと同じで、「ピルスナー」は「ラガー」の一種なのです。

この記事を読めば、なぜそのような分類になるのか、味や香りにはどのような違いがあるのか、そして私たちが日本で普段飲んでいるビールの正体まで、スッキリと理解できます。

まずは、両者の関係性が一目でわかる比較表からご覧ください。

ピルスナーとラガーの違い結論|一言でまとめるなら?

【要点】

「ラガー(Lager)」は、「下面発酵」という製法で造られるビールの「総称」です。一方、「ピルスナー(Pilsner)」は、そのラガーという大きなカテゴリーに含まれる、ホップの苦味が効いた黄金色の「ビアスタイル(種類)の一つ」を指します。

この二つの関係は、「ラガー」という大きな家族のなかに、「ピルスナー」という名前の子どもがいる、とイメージすると分かりやすいでしょう。

つまり、すべてのピルスナーはラガーですが、すべてのラガーがピルスナーというわけではありません

両者の関係性を表にまとめます。

項目ラガー(Lager)ピルスナー(Pilsner)
分類ビールの大きな分類(総称)ラガーに含まれるビアスタイル(種類)
発酵方法下面発酵(低温で長時間熟成)下面発酵(ラガーの一種のため同じ)
主なスタイルピルスナー、ヘレス、デュンケル、ボックなど多数(スタイル名そのもの)
味の傾向スッキリ、クリア、キレがある(スタイルによる)ホップの爽やかな香りと苦味、クリアなのどごし
代表的なビール日本の大手ビール全般、世界中の多くのビール日本の大手ビールの大半、ピルスナー・ウルケルなど

驚くべきことに、私たちが日本で「ビール」として親しんでいる商品のほとんどは、この「ラガー」に分類され、さらにその中でも「ピルスナー」というスタイルに該当します。

この複雑な関係を理解するために、まずはビール全体の大きな分類から見ていきましょう。

ビールの大きな分類|「ラガー」と「エール」

【要点】

ビールは、製造工程で使われる酵母の種類と発酵温度によって、大きく「ラガー」と「エール」の2種類に分類されます。低温で発酵し酵母が沈むのが「ラガー」、常温に近い温度で発酵し酵母が浮き上がるのが「エール」です。

世界中に存在する無数のビールですが、その製造方法、特に「発酵」の違いによって、大きく2つのタイプに分類することができます。

それが「ラガー」と「エール」です。

下面発酵の「ラガー」

  • 酵母の種類:下面発酵酵母(サッカロマイセス・パストリアヌス)
  • 発酵温度:低温(約5〜10℃)
  • 特徴:発酵が進むと、酵母がタンクの底に沈んでいくのが特徴です。低温で長期間(ラガー=ドイツ語で「貯蔵」の意味)熟成させるため、雑味が少なく、クリアでスッキリとした味わいと「キレ」が生まれます。

上面発酵の「エール」

  • 酵母の種類:上面発酵酵母(サッカロマイセス・セレビシエ)
  • 発酵温度:常温に近い温度(約15〜25℃)
  • 特徴:発酵中に、酵母が麦汁の表面に浮き上がってくるのが特徴です。短期間で発酵が進み、フルーティーで華やかな香り(エステル香)と、豊かなコクが生まれます。

今回注目する「ピルスナー」は、この「ラガー」ファミリーの一員ということになります。

「ラガー」とは?|下面発酵で造られるビールの総称

【要点】

「ラガー(Lager)」は、ドイツ語で「貯蔵する(Lagern)」を語源とします。下面発酵酵母を使い、低温でゆっくりと発酵させた後、さらに低温で長期間「貯蔵・熟成」させて造られるビールの総称(カテゴリー名)です。

「ラガー」という言葉は、特定のビール製品の名前ではなく、あくまで「下面発酵・低温熟成」という製造方法を指すカテゴリー名です。

15世紀のドイツ・バイエルン地方で、寒い冬の間にビールの品質を保つために洞窟などで低温貯蔵したことが、ラガービールの始まりとされています。

低温でじっくりと熟成させることで、酵母の活動が穏やかになり、エールのようなフルーティーな香りは抑えられ、代わりに麦芽やホップの風味がストレートに感じられる、クリアでキレのある味わいに仕上がります。

私たちが日本で「とりあえず生!」と頼むビールの、あのゴクゴク飲める爽快なのどごしは、まさにこのラガー製法の特徴なのです。

「ピルスナー」とは?|ラガーの中の特定のスタイル

【要点】

「ピルスナー(Pilsner)」は、ラガービールという大きな分類の中の、特定のビアスタイル(種類)を指します。1842年にチェコのピルゼン(プルゼニ)市で誕生しました。淡い黄金色、ホップの爽やかな香りとしっかりとした苦味、そしてクリアなのどごしが特徴です。

では、「ピルスナー」とは何でしょうか?

ピルスナーは、ラガーという大きな枠組みの中にある、具体的なビールの「スタイル(種類)」の名前です。

1842年、当時のオーストリア帝国領(現在のチェコ)のピルゼン市で、それまで主流だった色の濃いビールとは一線を画す、世界で初めての「黄金色のラガービール」として誕生しました。これが「ピルスナー・ウルケル(元祖ピルスナー)」です。

その革命的な美味しさと美しい黄金色が瞬く間に世界中を席巻し、現在では世界で最も普及しているビアスタイルとなりました。

つまり、日本の大手メーカーが製造・販売しているビールのほとんどは、「ラガー」製法で造られた「ピルスナー」スタイルのビールなのです。

「キリンラガービール」や「サッポロラガービール」のように商品名に「ラガー」と付いていても、スタイルとしてはピルスナーに分類されます。

ピルスナーとラガーの厳密な違い(原材料・製法)

【要点】

「ラガー」は下面発酵・低温熟成という「製法」の総称です。一方、「ピルスナー」はそのラガーの製法を用いつつ、さらに使用する原材料(特に淡色麦芽やノーブルタイプのホップ)や味わいのバランス(ホップの苦味が効いている)といった「スタイル」を定義する言葉です。

ラガーは「製法」、ピルスナーは「スタイル」

ここまでを整理すると、違いは明確ですね。

  • ラガー:ビールの「製法」による大きな分類。(例:自動車)
  • ピルスナー:ラガー製法で造られた特定の「ビアスタイル」。(例:セダン)

「ラガービールをください」という注文は、「自動車をください」と言うようなもので、非常に広い範囲を指してしまいます。もちろん、日本では「ラガー=ピルスナー」という認識が強いため問題なく通じますが、厳密には「どのラガースタイルにしますか?」と聞き返されてもおかしくないのです。

原材料と樽の違い

ピルスナースタイルを確立するためには、ラガー製法であることに加え、伝統的に特定の原材料が使われます。

  • 淡色麦芽(ピルスナーモルト):あの美しい黄金色を生み出すために、低温で乾燥させた明るい色の麦芽を使用します。
  • ノーブルホップ:主に「ザーツ」に代表される、上品で爽やかな香りを持つホップが使われ、これがピルスナー特有の心地よい苦味を生み出します。
  • 軟水:ピルゼン市の水が軟水であったことが、クリアで雑味のない味わいを生み出すのに適していました。

一方、ピルスナー以外のラガー(後述するデュンケルなど)では、黒くなるまで焙煎した「濃色麦芽(ローストモルト)」を使ったり、異なる種類のホップを使ったりするため、同じラガーでも全く違う色や味わいのビールが完成します。

味・香り・色・アルコール度数の違い

【要点】

ピルスナーは淡い黄金色で、ホップの爽やかな香りと心地よい苦味、スッキリしたのどごしが特徴です。一方、「ラガー」は総称であるため、スタイルによって様々です。例えば「デュンケル」のような濃色ラガーは濃い茶色で、麦芽の甘く香ばしい香りがします。

「ラガー」はあくまで総称なので、ここでは「ピルスナー」と「ピルスナー以外のラガースタイル」の味わいを比較してみましょう。

ピルスナーの味わい(黄金色・苦味・キレ)

  • :輝くような淡い黄金色
  • 香り:ホップ由来の爽やかな花のよう、またはハーブのような香り。麦芽の香りはクリーンで控えめ。
  • 爽快なホップの苦味がはっきりと感じられ、後味はドライでキレが良い
  • アルコール度数:一般的に4.5%〜5.5%程度。

まさに私たちが「日本のビール」としてイメージする、あの味わいですね。

ラガー(ピルスナー以外)の味わい

同じラガーでも、スタイルが変われば味わいも一変します。

  • へレス(Helles)ドイツ・ミュンヘン発祥の黄金色ラガー。ピルスナーよりもホップの苦味は穏やかで、麦芽のふくよかな甘みや旨味が主役です。
  • デュンケル(Dunkel)ローストした麦芽を使った、濃い茶色(暗色)のラガー。コーヒーやチョコレート、トーストのような麦芽の香ばしい香りと、まろやかな甘みが特徴です。
  • ボック(Bock)アルコール度数が高め(6%以上)のラガー。麦汁濃度が高く、濃厚でリッチな麦芽の風味と強い甘みを持ちます。

これらも全て「ラガー(下面発酵・低温熟成)」の仲間ですが、ピルスナーとは全く異なる個性を持っていることがわかります。

ピルスナー以外の代表的なラガースタイル

【要点】

ラガービールにはピルスナー以外にも多様なスタイルがあります。ドイツ・ミュンヘン発祥で麦芽の旨味を重視した「ヘレス」、濃色麦芽を使った香ばしい黒ビール風の「デュンケル」、アルコール度数が高く濃厚な「ボック」などが代表的です。

ピルスナーがあまりにも有名なため、「ラガー=ピルスナー」と誤解されがちですが、ラガーの世界は非常に奥深いものです。代表的なスタイルをいくつか知っておくと、ビールの楽しみ方が格段に広がりますよ。

ヘレス(Helles)

ドイツ語で「明るい」を意味する、ミュンヘン発祥の黄金色ラガーです。ピルスナーがホップの「苦味」を特徴とするのに対し、ヘレスはホップの苦味を抑え、麦芽(モルト)の「甘みや旨味」をしっかりと感じられるように設計されています。食事にも合わせやすい、優しい味わいのラガーです。

デュンケル(Dunkel)

ドイツ語で「暗い」を意味する、ミュンヘン発祥の伝統的な濃色ラガーです。ピルスナーが誕生する以前は、ラガーといえばこのデュンケルのような濃い色のビールが主流でした。ローストした麦芽の香ばしさ、パンのような甘い香り、まろやかな口当たりが特徴で、「黒ビール」の元祖の一つとも言われます。

ボック(Bock)

ドイツのアインベック市が発祥とされる、アルコール度数が高めのラガーです(6%以上)。春の訪れを祝うためなどに、栄養価の高いビールとして醸造されてきた歴史があります。麦汁濃度が非常に高いため、口当たりはとろりとしており、麦芽の濃厚な甘みとリッチなコクが特徴です。「ボック」はドイツ語で雄ヤギを意味し、ラベルにヤギが描かれることも多いですね。

体験談|日本のビールがピルスナーだと知った衝撃

僕が「ラガー」と「ピルスナー」の違いを痛感したのは、初めてドイツのビアホールに行った時のことです。

学生時代から日本のビール(もちろんピルスナー)に慣れ親しんでいた僕は、本場ドイツでも同じ感覚で「とりあえずラガー(ビール)を一杯!」と威勢よく注文しました。

すると、店員さんにきょとんとした顔で、「ピルスナーか?ヘレスか?デュンケルか?」と真顔で聞き返されたのです。

当時の僕は「ラガー=日本のあのスッキリしたビール」という固定観念しかなく、頭が真っ白になりました。「え、ラガーにも種類があるの?」と。

慌てて一番聞き馴染みのあった「ピルスナー」を頼むと、いつもの黄金色でホップの効いた、僕が「ビール」として知っている味が運ばれてきました。

しかし、隣のテーブルの人が飲んでいた、まるでコーラのような黒いビール(後でそれがデュンケルだと知りました)も「ラガー」だと知り、僕は大きな衝撃を受けました。

僕が日本で「ビール」として愛飲していたもののほとんどは、「ラガー」という広大なビール世界の中の、「ピルスナー」というたった一つのスタイルに過ぎなかったのです。

この経験から、僕は「ラガー」や「エール」といった大きな分類だけでなく、「IPA」や「スタウト」、「ヴァイツェン」といった、より具体的な「ビアスタイル」を意識して選ぶようになり、ビールの世界が一気に広がったのを覚えています。

ピルスナーとラガーに関するFAQ(よくある質問)

日本の大手ビールの「ラガー」と「ピルスナー」はどう違うのですか?

日本の大手メーカーが製造するビールのほとんどは、「ラガー」(下面発酵)製法で造られた「ピルスナー」スタイルのビールです。したがって、商品名として「ラガー」(例:キリンラガービール)が使われている場合でも、ビアスタイルとしては「ピルスナー」に分類されます。ただし、各社・各ブランドでホップの種類や苦味の強さ、キレの度合いなど、味わいに独自の工夫がされていますよ。

「エール」と「ラガー」の最大の違いは何ですか?

「酵母の種類」と「発酵温度」です。エールは「上面発酵酵母」を使い、15〜25℃程度の常温に近い温度で発酵させます。これにより、フルーティーで華やかな香りが生まれます。ラガーは「下面発酵酵母」を使い、5〜10℃程度の低温で発酵・熟成させ、スッキリとしたキレのある味わいになります。

ピルスナー以外のビールにはどんな種類がありますか?

ビールには世界で100種類以上のスタイルがあると言われています。ラガー系なら、今回ご紹介した「ヘレス」「デュンケル」「ボック」など。エール系なら、強い苦味と香りが特徴の「IPA(インディア・ペールエール)」、ロースト麦芽を使った黒ビールの「スタウト」、小麦を使ったフルーティーな「ヴァイツェン(白ビール)」などが有名です。

まとめ|ピルスナーとラガーの違いを理解して楽しもう

ピルスナーとラガーの違い、スッキリと整理できたでしょうか。

この二つの関係をもう一度まとめます。

  1. ラガー(Lager):ビールの「製法」による大きな分類。「下面発酵」で造られ、低温で「貯蔵・熟成」させる。スッキリした味わいが特徴。
  2. ピルスナー(Pilsner):ラガーという分類に含まれる、「ビアスタイル(種類)」の一つ。チェコのピルゼン発祥で、淡い黄金色とホップの爽やかな苦味が特徴。
  3. 関係性:「ピルスナーはラガーの一種」だが、「ラガーにはピルスナー以外のスタイル(ヘレス、デュンケル等)も沢山ある」。

私たちが日本で日々楽しんでいるビールの多くは、「ピルスナースタイル」の「ラガービール」です。

この違いがわかれば、ビアバーや海外のレストランでビールメニューを見たときに、「ラガー」の項目に黒いビール(デュンケル)やアルコール度数の高いビール(ボック)が並んでいても、もう驚くことはありません。

「今日はいつものピルスナーじゃなくて、別のラガー(ヘレス)を試してみよう」と選ぶことができれば、あなたのビールライフは格段に豊かになるはずです。

ビールの分類や定義についてさらに詳しく知りたい方は、ビールの表示に関する公正競争規約を定めている「ビール酒造組合」のサイトもぜひ参考にしてみてください。

ビール以外にも、世の中には様々な飲み物・ドリンクの違いがあります。それぞれの個性を知って、日々の飲食をさらに楽しんでいきましょう。