発泡酒と「第三のビール」、どちらも家飲みの強い味方ですよね。
長年、私たちは「ビールは高い、発泡酒は中間、第三のビールが一番安い」という感覚でお酒を選んできました。
しかし、2023年10月1日の酒税法改正により、この常識は完全に覆りました。
結論から言うと、これまで「第三のビール（新ジャンル）」と呼ばれていたカテゴリーは酒税法上「発泡酒」に統合され、税率も一本化されました。
この記事を読めば、なぜ「第三のビール」が生まれたのかという歴史的背景から、最新の法律によってその区分が実質的になくなった現在の状況、そしてこれから私たちがどう選べば良いのかまで、すべてがスッキリ理解できます。
結論｜発泡酒と第三のビールの違いを一言でまとめる
かつて、発泡酒と第三のビール（新ジャンル）の最大の違いは「酒税の安さ」と「原材料」にありました。しかし、2023年10月の酒税法改正で両者の税率が一本化されたため、税金面での区別は実質的になくなりました。「第三のビール」という分類も法律上「発泡酒」に統合されています。
この二つの違いを理解するには、「2023年10月以前」と「それ以降」で分けて考える必要があります。
私たちが長年親しんできた「第三のビール」という呼び名も、今や法律上のものではなく、商品ブランドの愛称（通称）としてのみ残っている状態なのです。
【重要】2023年10月の酒税法改正による歴史的変化
2023年10月1日、ビール系飲料の酒税が改正されました。ビールの税率は下がり、第三のビール（新ジャンル）の税率は引き上げられました。その結果、第三のビールと発泡酒（麦芽25%未満）の税率（350mlあたり46.99円）は完全に同一になりました。
今回のテーマで最も重要なのが、この法改正です。
「第三のビール」の税率が発泡酒と一本化
2023年10月の改正で行われた主な変更点（350mlあたり）は以下の通りです。
- ビール：70円 → 63.35円 （引き下げ）
- 発泡酒（麦芽25%未満）：46.99円 → 46.99円 （据え置き）
- 第三のビール（新ジャンル）：37.8円 → 46.99円 （引き上げ）
ご覧の通り、これまで最も安かった第三のビールが大幅に増税され、発泡酒と全く同じ税額になりました。これにより、メーカーが税金を安くするために「第三のビール」という規格で商品を造る意味がなくなったのです。
「第三のビール（新ジャンル）」という分類が実質消滅
この税率一本化に伴い、酒税法上の「新ジャンル（第三のビール）」という品目は廃止され、「発泡酒」に統合されました。
もちろん、「クリアアサヒ」や「金麦」、「のどごし〈生〉」といった人気ブランドが消えるわけではありません。これらの商品は今後、法律上は「発泡酒②」（麦芽を使用せず発酵させたものなど）として分類されますが、消費者にとっては「旧・第三のビール」の味わいを持つ商品として販売が継続されます。
（改正前）発泡酒と第三のビールの根本的な違い
かつての違いは明確でした。「発泡酒」は麦芽使用率を50%未満に抑えたもの。一方、「第三のビール」は、さらに税金を安くするため、(1)麦芽を一切使わない（豆などを使用）もの、または(2)発泡酒にスピリッツ（蒸留酒）を混ぜたものでした。
では、なぜ私たちは長年この二つを区別してきたのでしょうか。その歴史的な定義を見てみましょう。
発泡酒とは？（麦芽使用率50%未満）
日本の酒税法では、「ビール」は麦芽使用率が50%以上である必要があります。
「発泡酒」は、この麦芽使用率を50%未満に抑えることで、ビールよりも低い税率を適用された商品です。麦芽の比率が下がるため、味わいはビールに比べてスッキリ、軽快になる傾向があります。
第三のビールとは？（麦芽以外 or スピリッツ添加）
「第三のビール」は、発泡酒よりもさらに税率が低く設定されていた「新ジャンル」の通称です。
これは、メーカー各社が酒税法を研究し、知恵を絞って生み出した節税カテゴリーで、主に2種類ありました。
- 麦芽以外を原料とするタイプ
麦芽を一切使わず、代わりにエンドウ豆（サッポロ「ドラフトワン」）や大豆、コーンなどを原料として発酵させたもの。「その他の醸造酒（発泡性）」に分類されました。 - スピリッツ添加タイプ
安価な発泡酒（麦芽使用率が低い）に、麦やトウモロコシから造った「スピリッツ（蒸留酒）」を加えたもの。「リキュール（発泡性）」に分類されました。キリン「のどごし〈生〉」やアサヒ「クリアアサヒ」など、市場の主流はこのタイプでした。
どちらも「ビール」でも「発泡酒」でもない扱いにすることで、最も安い税率を実現していたのです。
味・香り・価格の違いを比較（2023年改正後）
2023年10月以降、発泡酒と旧第三のビール（新ジャンル）の店頭価格はほぼ同じになりました。味わいは、発泡酒が「スッキリ・軽快」なのに対し、旧第三のビールは「キレ・刺激・飲みごたえ」を重視する傾向があり、現在は純粋に味の好みで選べるようになっています。
味わいと香りの傾向
税率が同じになった今、味わいの違いは純粋な「商品の個性」となりました。
発泡酒：
麦芽を使っているため、比較的ビールに近い麦の風味やホップの爽やかな香りを感じられます。全体的にスッキリとしたライトな飲み口が特徴です。（例：キリン「淡麗」、アサヒ「スタイルフリー」）
旧・第三のビール：
スピリッツ添加タイプが主流だったため、麦芽の風味は控えめな一方、炭酸の刺激やアルコール感を強めに設計し、「キレ」や「のどごし」「飲みごたえ」を追求した商品が多いのが特徴です。（例：キリン「本麒麟」、サントリー「金麦」）
価格の違い（税率一本化の影響）
かつては「第三のビール ＜ 発泡酒 ＜ ビール」という明確な価格差がありました。
しかし、2023年10月の改正で発泡酒と旧・第三のビールの税率が統一されたため、スーパーやコンビニでの店頭価格も、ほぼ同じ価格帯に並ぶようになりました。
消費者にとっては、「安いから第三のビールを選ぶ」という理由はなくなり、純粋に「キレが好きなだから本麒麟」「スッキリしたいから淡麗」といった、ブランドや味の好みで選ぶ時代になったと言えます。
健康面（糖質・プリン体・カロリー）の違い
健康機能については、発泡酒も旧第三のビールも優劣はありません。どちらのカテゴリーにも「糖質ゼロ」「プリン体ゼロ」「カロリーオフ」といった機能性商品が豊富にラインナップされており、消費者のニーズに合わせて選ぶことができます。
ビール系飲料を選ぶ上で、糖質やプリン体を気にする方は多いですよね。
この点については、発泡酒も旧第三のビールも、長年の開発競争により、どちらのカテゴリーにも「糖質ゼロ」や「プリン体ゼロ」といった機能性商品が非常に充実しています。
例えば、アサヒ「スタイルフリー」は発泡酒の糖質ゼロですし、キリン「のどごし ZERO」は旧第三のビール（現在は発泡酒扱い）の糖質・プリン体・カロリーゼロです。
したがって、「発泡酒だからヘルシー」といったカテゴリーによる優劣は存在しません。購入時に各商品のパッケージに記載されている栄養成分表示を確認し、ご自身のニーズに合ったものを選びましょう。
さらなる一本化へ（未来の展望）
この酒税改正はまだ途中です。最終段階として今後はビールの税率がさらに引き下げられ、発泡酒（旧第三のビール含む）の税率が引き上げられます。その結果、「ビール」「発泡酒」「旧第三のビール」の税率が350mlあたり54.25円に完全に一本化されます。
今回の税制改正は、2026年に向けてのステップの途中に過ぎません。
最終目標は、この複雑なビール系飲料の税率を完全に一つにまとめることです。2026年10月には、以下の変更が予定されています。
- ビール：63.35円 → 54.25円（さらに引き下げ）
- 発泡酒（旧第三のビール含む）：46.99円 → 54.25円（さらに引き上げ）
今後は、税率が完全に同じになるため、「発泡酒」や「第三のビール」といった区分は、価格面では全く意味を持たなくなります。
この動きを受け、サントリーは「金麦」ブランドの一部を、麦芽使用率を50%以上に引き上げた「ビール」としてリニューアルするなど、メーカー各社は「税率」ではなく「味」での競争に舵を切っています。
体験談｜酒税改正で「安さ」から「味」で選ぶ時代へ
僕はずっと、家で飲むのは「第三のビール」と決めていました。理由はシンプルで、「一番安かったから」です。発泡酒はそれより数十円高く、ビールなんてもってのほか、という感覚でした。
2023年10月が近づいた頃、ニュースで「第三のビールが値上げされる」と知り、改正前夜に慌ててケースで買いだめしたのを覚えています。
そして改正後、スーパーのお酒売り場に行って驚きました。いつも買っていた第三のビール（新ジャンル）と、発泡酒の「淡麗」が、全く同じ値段で並んでいたのです。
「うわ、本当に同じ値段になったんだ…」と。
価格差がなくなった今、あえて旧第三のビールを選び続ける理由もありません。そこで、その日は試しに「発泡酒」を買ってみました。
飲んでみると、いつも飲んでいた第三のビールのガツンとくるキレ味とは違い、スッキリした中にも麦の香りが感じられ、「これも美味しいな」と素直に思いました。
「安いからコレ」という呪縛が解けて、「今日はキレが欲しいからこっち」「今日はスッキリしたいからそっち」と、純粋に味で選べるようになったわけです。
メーカー間の税金をめぐるイタチごっこが終わった今、消費者としてはいよいよ「本当の味」で選べる時代が来たと実感した瞬間でした。
発泡酒と第三のビールに関するよくある質問
「第三のビール」という名前はもう使われないのですか？
2023年10月の酒税法改正により、法律上・税制上の「第三のビール（新ジャンル）」という区分は廃止され、「発泡酒」に統合されました。ただし、スーパーなどの店頭POPや、消費者の間の通称としては、しばらく使われ続ける可能性があります。商品はそのまま「発泡酒」として販売され続けます。
なぜ税率を一本化する必要があったのですか？
最大の理由は、税制の簡素化と公平性の確保です。麦芽使用率や原料の違いだけで税率が細かく分かれている複雑な状況は、国際的に見ても稀でした。メーカーが税率の抜け道を探すような開発競争 を終わらせ、品質や味で競争してもらう環境を整える狙いがあります。
今後、発泡酒や第三のビールはなくなりますか？
なくなりません。税率がビールと全く同じになるだけです。ただし、税率が同じ（＝価格が同じ）になるなら、麦芽を増やして「ビール」としてリニューアルする商品（例：サントリー「金麦」の一部）や、逆に発泡酒ならではの「スッキリ感」や「機能性（糖質ゼロなど）」を追求する商品など、各ブランドの個性がより明確になっていくと考えられます。
まとめ｜結局、今はどう選ぶべきか？
発泡酒と第三のビールの違い、スッキリ整理できたでしょうか。
かつて両者を分けていた「税金」という名の壁は、2023年10月になくなりました。私たちは今、「発泡酒」という大きなカテゴリーの中で、様々な個性を持つブランドを選べる時代にいます。
- ビール：麦芽の深いコクと味わいを楽しみたい時。（価格は今後さらに下がる）
- 発泡酒／旧・第三のビール：スッキリとした軽快さ、キレやのどごし、あるいは糖質ゼロなどの機能性を求める時。
これからは価格や分類名に惑わされず、ご自身の「好み」を信じて、その日の気分や食事に合う一本を選ぶのが、最も賢い選び方と言えるでしょう。
日本のビール系飲料は、飲み物・ドリンクの中でも特に技術の進化が著しい分野です。ぜひ様々なアルコール類を飲み比べて、お気に入りを見つけてください。