「スプマンテ」と「シャンパン」、どちらもお祝いの席を彩る華やかな泡のお酒ですよね。
レストランのメニューで「スプマンテ（Spumante）」と書かれているのを見て、「これはシャンパンと何が違うんだろう？」と迷ったことがあるかもしれません。
結論から言うと、「シャンパン」はフランスの特定の“地名”であり厳格な基準を満たしたお酒を指すのに対し、「スプマンテ」はイタリア語で“発泡性ワイン”を意味する「総称」です。
つまり、「シャンパン」は「スパークリングワイン」という大きな枠の中の、フランスの特定の高級ブランド（地名）です。一方、「スプマンテ」は、イタリアにおける「スパークリングワイン」そのものを指す言葉なのです。
この記事を読めば、フランスとイタリアの「泡」の違い、製法、味わい、そして代表的な種類（プロセッコやアスティ）まで、スッキリと理解できますよ。
結論｜スプマンテとシャンパンの違いを一言でまとめる
「スプマンテ」と「シャンパン」の最大の違いは、「言葉の定義」と「産地」です。スプマンテは、イタリア語で「発泡性ワイン」を意味する「総称」であり、イタリア全土で造られます。一方、シャンパンは、フランスの「シャンパーニュ地方」で、法律で定められた厳格な製法（瓶内二次発酵）で造られたものだけが名乗れる「特定の名称」です。
まずは、この二つの違いを表で比較してみましょう。
| 項目 | シャンパン (Champagne) | スプマンテ (Spumante) |
|---|---|---|
| 分類 | 特定の原産地呼称（フランス） | イタリアの発泡性ワイン（総称） |
| 主な産地 | フランス・シャンパーニュ地方 | イタリア全土（ヴェネト州、ピエモンテ州など） |
| 主な製法 | 伝統方式（瓶内二次発酵）が必須 | 多様（シャルマ方式、伝統方式など） |
| 主なブドウ品種 | シャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエ | 多様（グレラ、モスカート、シャルドネなど） |
| 味わい | 複雑で芳醇、熟成香（イースト香） | フレッシュ、フルーティー（製法による） |
| 泡 | きめ細かく、持続性が高い | 製法や品質により様々 |
| 価格帯 | 高価な傾向 | 手頃なものから高価なものまで様々 |
決定的な違い：「シャンパン」は“地名”、「スプマンテ」は“総称”
シャンパンは、フランスのシャンパーニュ地方で造られたもののみを指す「特定の名称（原産地呼称）」です。一方、スプマンテは、イタリア語で「発泡性（＝Foaming）」を意味する言葉で、イタリア産スパークリングワイン全体の名前です。
スプマンテ（Spumante）とは？（イタリアの発泡性ワインの総称）
「スプマンテ（Spumante）」は、イタリア語で「発泡性の」という意味の言葉です。
これは特定のお酒の名前ではなく、イタリアで造られるスパークリングワインの「総称」として使われます。（EUの基準では、20℃で3気圧以上のガス圧を持つものを指します）
私たちが「スパークリングワイン」と英語で呼ぶものを、イタリアでは「スプマンテ」と呼ぶ、と考えると分かりやすいですね。
スペインでは「カヴァ（Cava）」、ドイツでは「ゼクト（Sekt）」と呼ばれるのと同じ関係です。
シャンパン（Champagne）とは？（フランスの特定の高級発泡性ワイン）
一方、「シャンパン（Champagne）」は、スパークリングワインという大きな枠の中の、特定の“地名”であり、ブランドです。
フランスのワイン法（AOC：原産地呼称管理）によって厳格に保護されており、以下の条件をすべて満たさなければ「シャンパン」と名乗ることはできません。
- 産地：フランスのシャンパーニュ地方で収穫されたブドウのみを使用すること。
- ブドウ品種：主にシャルドネ、ピノ・ノワール、ピノ・ムニエなど、定められた品種のみ。
- 製法：伝統方式（トラディショナル方式）、いわゆる「瓶内二次発酵」で造られること。
- 熟成期間：瓶内で最低でも15ヶ月以上（ヴィンテージは3年以上）熟成させること。
これらの厳しい基準が、シャンパン独自の高い品質と価格を支えています。
原材料・製造工程の違い
シャンパンは、シャルドネなど特定のブドウを使い、手間のかかる「瓶内二次発酵（伝統方式）」が義務付けられています。スプマンテは、ブドウ品種も製法も多様です。代表的な「プロセッコ」は「シャルマ方式（タンク方式）」で造られ、フレッシュな果実味を活かします。
シャンパンの厳格な条件（伝統方式・特定ブドウ）
シャンパンの製法は「瓶内二次発酵（伝統方式）」が必須です。これは、ベースとなるワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加えて密閉し、瓶の中で二度目の発酵を起こさせて炭酸ガスを閉じ込める、非常に手間とコストのかかる製法です。
この製法と、瓶内で酵母の澱（おり）と共に長期熟成させることにより、きめ細かな泡と、トーストやイースト、ナッツのような複雑で香ばしい熟成香が生まれます。
スプマンテの多様な製法（シャルマ方式など）
スプマンテは「総称」なので、製法は一つではありません。
もちろん、「フランチャコルタ」のようにシャンパンと全く同じ「瓶内二次発酵（イタリアではメトド・クラッシコと呼ぶ）」で造られる高級スプマンテも存在します。
しかし、世界的に有名な「プロセッコ」や「アスティ」の多くは、「シャルマ方式（タンク方式）」で造られています。これは、密閉された巨大なステンレスタンクの中で二次発酵させる方法で、瓶内二次発酵に比べてコストを抑えられ、ブドウ本来のフレッシュでフルーティーな香りを保ちやすいのが特徴です。
味・香り・泡・価格の違いを比較
シャンパンは、長期熟成による複雑な香りと、きめ細かく持続する泡が特徴で、高価な傾向があります。スプマンテ（特にシャルマ方式のもの）は、果実のフレッシュな香りが立ち、泡は爽やかで、価格も手頃なものが多いのが特徴です。
味わい（シャンパン：複雑／スプマンテ：フルーティー）
シャンパン：
瓶内での長期熟成を経ているため、単なる果実味だけでなく、パン生地、イースト、トースト、ナッツ、ハチミツのような、複雑で芳醇な「熟成香」が特徴です。深いコクと長い余韻が楽しめます。
スプマンテ：
シャルマ方式で造られるもの（プロセッコなど）は、ブドウ本来のフレッシュでフルーティーな香り（青リンゴ、洋ナシ、白い花など）が前面に出ています。味わいも、果実味が豊かで、爽やかで飲みやすいタイプが主流です。
泡の質（シャンパン：きめ細かい／スプマンテ：様々）
シャンパンは、瓶内二次発酵によってガス圧が非常に高くなり（5～6気圧）、時間をかけて熟成されるため、泡が非常にきめ細かく、ビロードのようになめらかで、長く持続するのが特徴です。
スプマンテは、製法によります。シャルマ方式のものは泡が力強く爽快なタイプが多く、伝統方式のものはシャンパンのようにきめ細かくなります。
価格帯の違い
シャンパンは、限られた産地、厳格な製法、長期熟成という手間とコストがかかるため、価格は高価になる傾向があります。安いものでも4,000円以上、高級品は数万円以上します。
スプマンテは、シャルマ方式など効率的な製法で造られるものが多く、1,000円台から2,000円台の手頃な価格のものが豊富にあります。（ただし、シャンパンと同じ製法で造られる「フランチャコルタ」などは、シャンパン同様に高価です。）
スプマンテの代表格「プロセッコ」と「アスティ」
「スプマンテ」と注文すると「プロセッコ」か「アスティ」のどちらかを勧められることが多いです。「プロセッコ」は主にグレラ種から造られる辛口～中辛口のタイプ。「アスティ・スプマンテ」はモスカート種から造られる甘口のタイプです。
「スプマンテ」は総称なので、具体的な銘柄を選ぶ必要があります。特に有名な2種類を知っておくと便利です。
プロセッコ（Prosecco）
イタリア北東部のヴェネト州などで造られる、世界で最も売れているスプマンテです。「グレラ種」というブドウを使い、シャルマ方式で造られます。青リンゴや洋ナシのようなフレッシュな香りが特徴で、辛口（Brut）から中辛口（Extra Dry）が主流です。食前酒（アペリティーボ）として、また「アペロール・スプリッツ」のカクテルベースとしても欠かせません。
アスティ（Asti）
イタリア北西部のピエモンテ州のアスティ地区で造られるスプマンテです。「モスカート（マスカット）」種を100%使用し、シャルマ方式で造られます。マスカットの華やかで甘い香りが特徴の「甘口」で、アルコール度数も7%～9%程度と低めなのが特徴です。デザートワインとして最適です。
体験談｜アスティ・スプマンテとシャンパンを飲み比べて
僕が初めて「スプマンテ」と「シャンパン」の違いを意識したのは、友人の家でのパーティーでした。
乾杯用に、ある友人が「アスティ・スプマンテ」を持ってきました。「スプマンテって何？」と言いながら飲むと、「甘い！美味しい！ジュースみたい！」と皆で盛り上がりました。マスカットの香りが華やかで、アルコールも低く、お酒が苦手な人でもゴクゴク飲める美味しさでした。
その後、別の友人が「お祝いだから」と取り出したのが、箱入りの「シャンパン（ブリュット＝辛口）」でした。
グラスに注ぐと、まず泡の細かさに驚きました。そして香り。アスティのような甘い果実の香りではなく、トーストやナッツのような、香ばしくて複雑な香りがしました。味わいは全く甘くなく、キリッとした酸味と深いコク。「これが本物のシャンパンか…」と、その格の違いを感じたのを覚えています。
この体験で、「スプマンテ」という言葉には、アスティのような「甘口」もあれば、プロセッコのような「辛口」もあること、そして「シャンパン」はそれらとは全く異なる「熟成」の香りを楽しむお酒なのだと理解しました。
スプマンテとシャンパンに関するよくある質問
結局、スプマンテとスパークリングワインは同じものですか？
はい、基本的には同じものですが、使う言語が違います。「スパークリングワイン（Sparkling Wine）」は英語での「総称」、「スプマンテ（Spumante）」はイタリア語での「総称」です。イタリア産のスパークリングワインを指す場合は「スプマンテ」と呼ぶのが一般的です。
シャンパンと同じ製法（瓶内二次発酵）のスプマンテはありますか？
はい、あります。イタリアでは「メトド・クラッシコ（Metodo Classico）」と呼ばれます。代表的なものに、ロンバルディア州の「フランチャコルタ（Franciacorta）」や、トレンティーノ＝アルト・アディジェ州の「トレントDOC（Trento DOC）」などがあります。これらはシャンパン同様、高価で複雑な味わいを持ちます。
プロセッコとシャンパンの違いは何ですか？
プロセッコは「スプマンテ」の一種です。シャンパンとの違いは、産地（イタリア・ヴェネト州など）、主なブドウ品種（グレラ種）、そして主な製法（シャルマ方式＝タンク内二次発酵）です。シャンパン（瓶内二次発酵）に比べ、フレッシュでフルーティーな味わいと、手頃な価格が特徴です。
まとめ｜目的別に選ぶ「ハレの日」と「日常の乾杯」
スプマンテとシャンパンの違い、スッキリ整理できたでしょうか。
「シャンパン」は、フランス・シャンパーニュ地方という限られた場所で、厳格なルールに基づき造られた「特別な日のための一本」です。
「スプマンテ」は、イタリア全土で造られる「発泡性ワインの総称」であり、その中にはプロセッコのような日常的なものから、フランチャコルタのような高級品まで様々です。
- 人生の特別なハレの日、大切な贈り物に → シャンパン
- 気軽なパーティーや食前酒として、フルーティーさを楽しみたい時 → スプマンテ（プロセッコ）
- デザートワインとして、甘いお酒を楽しみたい時 → スプマンテ（アスティ）
このように覚えておけば、シーンや予算に合わせて最適なお酒を選べますよ。