プリミティーヴォとジンファンデルの違い!実は同じブドウ?

「プリミティーヴォ(Primitivo)」と「ジンファンデル(Zinfandel)」、どちらも濃厚な赤ワインの代表格ですよね。

ワインショップで「ジンファンデル」を探していたら、隣にそっくりな味わいとして「プリミティーヴォ」が並んでいた、なんて経験はありませんか?

結論から言うと、この二つはDNA鑑定によって「遺伝的に同一のブドウ品種」であることが証明されています。

では、なぜ名前が違い、そして味わいの印象も異なるのでしょうか?

最大の違いは、育った「産地(テロワール)」と「ワイン造りのスタイル」にあります。プリミティーヴォはイタリア(オールドワールド)の、ジンファンデルはアメリカ(ニューワールド)の個性が色濃く反映されているのです。

この記事を読めば、その興味深い歴史的背景から、具体的な味の違い、料理との相性までスッキリと理解できますよ。

結論|プリミティーヴォとジンファンデルの違いを一言でまとめる

【要点】

プリミティーヴォとジンファンデルは、遺伝的に同一のブドウ品種です。最大の違いは「産地とワインのスタイル」です。プリミティーヴォは主にイタリア(プーリア州)で造られ、比較的土っぽさやスパイス感があり、味わい深い「オールドワールド」スタイルです。一方、ジンファンデルは主にアメリカ(カリフォルニア)で造られ、果実味が凝縮された(ジャミーな)「ニューワールド」スタイルが特徴です。

まずは、この二つの違いを表で比較してみましょう。

項目プリミティーヴォ (Primitivo)ジンファンデル (Zinfandel)
ブドウ品種同一品種同一品種
主な産地イタリア(プーリア州など)アメリカ(カリフォルニア州など)
ワインスタイルオールドワールド・スタイルニューワールド・スタイル
主な香りダークチェリー、プラム、土、スパイスブラックベリージャム、ラズベリー、バニラ
味わい果実味は豊かだが、酸味やタンニン(渋み)がしっかりしている果実味が爆発的(ジャミー)、アルコール度数が高め
代表的なワインプリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリアオールド・ヴァイン・ジンファンデル、ホワイト・ジンファンデル

決定的な違い:「同じブドウ品種」だが「育った場所(テロワール)」が違う

【要点】

同じブドウ品種でも、育つ土地の気候や土壌、そしてワイン造りの伝統(テロワール)によって、完成するワインの個性は全く異なります。プリミティーヴォはイタリアの地中海性気候を、ジンファンデルはカリフォルニアの太陽を反映した味わいになります。

プリミティーヴォ(Primitivo)とは?(イタリアの「オールドワールド」スタイル)

プリミティーヴォは、イタリア南部、特に「かかと」の部分にあたるプーリア州で主に栽培されている黒ブドウ品種です。

名前はイタリア語の「Primo(最初の、一番目の)」に由来し、他のブドウよりも「早く(プリモ)熟す」ことから名付けられました。

ワインのスタイルは、豊かな果実味を持ちつつも、オールドワールド(ヨーロッパ)のワインらしく、土の香りやスパイス、しっかりとした酸味とタンニン(渋み)を感じさせる、バランスの取れた味わいのものが多いのが特徴です。

ジンファンデル(Zinfandel)とは?(カリフォルニアの「ニューワールド」スタイル)

ジンファンデルは、アメリカ・カリフォルニア州を象徴する黒ブドウ品種です。19世紀にイタリア(またはオーストリア経由)から持ち込まれたと考えられています。

カリフォルニアの乾燥した太陽の光をたっぷりと浴びて完熟するため、非常に糖度が高くなります。その結果、アルコール度数が高く(15%を超えることも珍しくない)、「ジャミー」と表現されるような、煮詰めたブラックベリーやラズベリージャムのような、凝縮された果実味が特徴です。

また、ロゼワインである「ホワイト・ジンファンデル」(通称ホワジン)も、このブドウから造られる世界的な人気商品です。

なぜ同じブドウ?DNA鑑定で判明した歴史的背景

【要点】

長年、その起源は謎に包まれていましたが、1990年代にカリフォルニア大学デイヴィス校などのDNA鑑定により、プリミティーヴォとジンファンデルが遺伝的に同一であることが判明しました。さらに、両者のルーツはクロアチアの土着品種(ツルリェナック・カシュテランスキ)であることも特定されています。

この二つのブドウが同じものであることは、ワイン界の大きなミステリーの一つでした。

1990年代、カリフォルニア大学デイヴィス校のキャロル・メレディス博士を中心としたチームが、DNAフィンガープリンティング技術を用いてこの謎を解き明かしました。

イタリアのプーリア州から取り寄せた「プリミティーヴォ」の樹と、カリフォルニアの「ジンファンデル」の樹のDNAを比較したところ、完全に一致したのです。

さらに研究が進み、このブドウの真の起源はクロアチアのダルマチア地方にある「ツルリェナック・カシュテランスキ(Crljenak Kaštelanski)」または「トリビドラグ(Tribidrag)」と呼ばれる土着品種であることが突き止められました。

つまり、クロアチアからイタリアへ渡ったものが「プリミティーヴォ」となり、同じくクロアチアから(おそらくオーストリア帝国を経由して)アメリカへ渡ったものが「ジンファンデル」と呼ばれるようになった、というのが歴史の真相のようです。

味・香り・アルコール度数の違いを比較

【要点】

味わいの傾向は明確に異なります。プリミティーヴォは「土っぽさ、スパイス、控えめな果実味」が特徴。ジンファンデルは「ジャム、バニラ、爆発的な果実味」が特徴です。

プリミティーヴォの味と香り(オールドワールド・スタイル)

プリミティーヴォは、イタリアの伝統的なワイン造りの影響を受けています。

  • 香り:ダークチェリーやプラムといった黒系果実の香りをベースに、ドライハーブ、タバコ、なめし革、土といった、オールドワールド特有の複雑な香りが混ざります。
  • 味わい:豊かな果実味はありますが、ジンファンデルほど「甘い」とは感じさせません。しっかりとした酸味と、ザラつきを感じるタンニン(渋み)が味わいを引き締めており、食事との相性を強く意識した造りになっています。

ジンファンデルの味と香り(ニューワールド・スタイル)

ジンファンデルは、カリフォルニアの太陽と、アメリカンオーク樽(新樽)を使った熟成の影響を強く受けます。

  • 香りブラックベリージャム、ラズベリージャム、そして焦がしたアメリカンオーク樽由来のバニラ、ココナッツ、甘いスパイスの香りが爆発的に感じられます。
  • 味わい:非常に「ジャミー(Jammy)」で、果実の甘みが凝縮されています。タンニンは滑らかで、アルコール度数の高さ(15%以上)が、リッチで濃厚な口当たりを生み出しています。

アルコール度数と価格帯

アルコール度数
どちらも温暖な地域で育ち、糖度が上がりやすいため、アルコール度数は高くなる傾向があります。14%~15%以上になることも珍しくありません。

価格帯
プリミティーヴォは、プーリア州で大量に生産されていることもあり、1,000円台から2,000円台で楽しめる、コストパフォーマンスに優れたワインが多いのが魅力です。

ジンファンデルは、価格帯が非常に広いです。1,000円台で買えるカジュアルなもの(特にロゼのホワイト・ジンファンデル)から、「オールド・ヴァイン(樹齢の高い木)」から造られる、数万円クラスの高級なものまで存在します。

飲み方・シーン・料理との相性(ペアリング)

【要点】

フルーティーで土の香りを持つプリミティーヴォは、イタリア料理(特にトマトベース)と相性抜群です。一方、甘くスパイシーで濃厚なジンファンデルは、アメリカンBBQ(バーベキュー)など、濃い味付けの肉料理と最高のペアリングを見せます。

プリミティーヴォに合う料理

イタリア・プーリア州の郷土料理が最高のパートナーです。酸味と渋みがしっかりしているため、脂っこい料理やトマトソースとよく合います。

  • トマトソースのパスタ(アマトリチャーナ、プッタネスカ)
  • ピッツァ・マルゲリータ
  • ラザニア
  • 豚肉や鶏肉のグリル、ソーセージ

ジンファンデルに合う料理

アメリカ・カリフォルニアのソウルフードと合わせるのが王道です。ワインの甘く濃厚な果実味が、料理の甘辛いソースやスパイス感と見事に調和します。

  • BBQ(バーベキュー)スペアリブ
  • プルドポーク・サンドイッチ
  • スパイシーなチリコンカン
  • 熟成チェダーチーズを使ったハンバーガー

体験談|プーリアのプリミティーヴォとカリフォルニアのジンファンデルを飲み比べて

僕がワインにハマり始めた頃、この二つのブドウが同じだと聞いて、信じられませんでした。「だって、味が全然違うじゃないか!」と。

そこで、同じ価格帯(約2,500円)の「プリミティーヴォ・ディ・マンドゥーリア(イタリア)」と「オールド・ヴァイン・ジンファンデル(カリフォルニア・ロダイ)」を、同じ日に抜栓して飲み比べたことがあります。

まずジンファンデル。グラスに注いだ瞬間から、煮詰めたジャムとバニラの甘い香りが部屋に充満しました。一口飲むと、「濃い!甘い!パワフル!」。アルコールの強さと、凝縮された果実の甘さが口の中で爆発するようで、これだけで完結するような満足感がありました。

次にプリミティーヴォ。香りは確かに同じ黒系果実なのですが、ジャムというよりはドライプルーンや、少し土っぽい香りがしました。飲むと、果実味は豊かなのに、ジンファンデルのような直接的な甘さはなく、しっかりとした酸味とタンニンの渋みが感じられます。「あ、これは何か食べたくなる味だ」と直感しました。

同じブドウなのに、片や「太陽の爆弾(ジンファンデル)」、片や「大地の恵み(プリミティーヴォ)」という印象。テロワール(産地特性)とワイン造りの哲学が、これほどまでにブドウの個性を変えるのかと、ワインの奥深さに感動した瞬間でした。

プリミティーヴォとジンファンデルに関するよくある質問

結局、どっちが同じブドウなんですか?

プリミティーヴォとジンファンデルは、どちらも同じブドウ品種です。DNA鑑定によって、遺伝的に同一であることが証明されています。ルーツはクロアチアの「ツルリェナック・カシュテランスキ」という品種です。

「ホワイト・ジンファンデル」とは何ですか?

ジンファンデル(黒ブドウ)を使って造られる、ロゼ(ピンク色)の甘口ワインです。黒ブドウの皮をすぐに取り除くため、色は薄く、発酵を途中で止めるため、甘口でアルコール度数が低くなります。私たちがイメージする「赤ワイン」のジンファンデルとは全く異なるタイプのワインです。

どっちが初心者におすすめですか?

どちらも初心者におすすめしやすいです。「フルーティーで分かりやすい甘さ」が好みならジンファンデル、「甘すぎず、食事(特にパスタやピザ)と合わせたい」ならプリミティーヴォを選ぶと失敗が少ないでしょう。

まとめ|プリミティーヴォとジンファンデル、どちらを選ぶべきか?

プリミティーヴォとジンファンデルの違い、スッキリ整理できたでしょうか。

どちらも「同じブドウ品種」から造られますが、育った土地と造り手の哲学によって、全く異なる個性を持っています。

BBQやハンバーガーと合わせたい時、あるいはワイン単体で、濃厚でジャミーな果実味とバニラの甘い香りを楽しみたい時は「ジンファンデル(Zinfandel)」。

パスタやピザなどのイタリアンと合わせたい時、豊かな果実味の中にも、土やスパイスの香り、しっかりとした酸味と渋みを楽しみたい時は「プリミティーヴォ(Primitivo)」。

このように覚えておけば、気分や料理に合わせて最適なお酒を選べますよ。

ぜひ、同じブドウが変身する二つのスタイルを飲み比べて、その奥深い飲み物・ドリンクの世界を楽しんでみてください。どちらも素晴らしいアルコール類です。

(参考:一般社団法人日本ソムリエ協会