「鉱水」と「硬水」の違いとは?定義・成分・使い分けを専門家が徹底解説

「鉱水」と「硬水」、どちらも読み方は「こうすい」ですよね。

この二つの言葉、音が同じなだけに、意味も同じだと混同されがちですが、実は全く異なる分類基準で分けられた水の呼び名なんです。

「鉱水」は採水された「水源」による分類であり、「硬水」は水に含まれる「成分量(硬度)」による分類を指します。

この記事を読めば、二つの「こうすい」の明確な定義の違いから、味の特徴、健康や料理における賢い使い分けまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な「分類軸の違い」から詳しく見ていきましょう。

結論|「鉱水」と「硬水」の違いは分類の「軸」

【要点】

「鉱水」と「硬水」の最大の違いは、分類の「軸」です。「鉱水」は農林水産省のガイドラインに基づく水源による分類(水の種類)を指すのに対し、「硬水」は水に含まれるミネラル量(硬度)に基づく成分による分類(水の性質)を指します。したがって、「鉱水でありながら硬水」の水も存在します。

多くの方が混乱するポイントですが、「鉱水」と「硬水」は対立する概念ではありません。「りんご」と「赤い(色)」の関係に似ています。「鉱水」という種類(りんご)の中に、「硬水」という性質(赤い)を持つものがある、というイメージですね。

この2つの言葉の違いを、まずは一覧表で比較してみましょう。

「鉱水」と「硬水」の違い早わかり比較表

項目鉱水(こうすい)硬水(こうすい)
分類の軸水源・製法による分類(水の種類)成分(硬度)による分類(水の性質)
根拠となる基準農林水産省「品質表示ガイドライン」WHO(世界保健機関)の基準など
定義特定の水源(鉱水)から採水した地下水カルシウムやマグネシウムの含有量が多い水
対義語・比較語ナチュラルウォーター、湧水など軟水(なんすい)
関係性「鉱水であり、かつ硬水」「鉱水であり、かつ軟水」が存在する

このように、分類の「土俵」が全く違うことがお分かりいただけるでしょうか。

日本のスーパーで売られている「鉱水」は軟水であることが多いですが、ヨーロッパ産の「鉱水」(例:エビアン、コントレックスなど)は硬水であることがほとんどです。この違いが、少しややこしく感じる原因かもしれませんね。

「鉱水(こうすい)」とは?農林水産省の定義に基づく「水の種類」

【要点】

「鉱水」とは、農林水産省が定める「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」に基づく4つの分類のうちの一つです。具体的には、ポンプなどで汲み上げた地下水のうち、溶存鉱物質(ミネラル)等により特徴付けられる水を指します。

私たちが普段「ミネラルウォーター」と呼んでいるものには、実は厳密な分類があるんです。

ミネラルウォーター類の4つの分類

農林水産省は、容器入りの飲料水について、その原水や製造方法によって以下の4つに分類しています。

  1. ナチュラルウォーター:特定の水源から採水された地下水で、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理をしていないもの。
  2. ナチュラルミネラルウォーター:ナチュラルウォーターのうち、地層中のミネラルが溶け込んだ地下水。(例:日本の多くのミネラルウォーター)
  3. ミネラルウォーター:ナチュラルミネラルウォーターの原水に、品質安定のためにミネラル調整や複数の原水の混合などを行ったもの。(例:ヨーロッパ産の一部)
  4. ボトルドウォーター(または飲用水):上記3つ以外のもの。水道水や純水、蒸留水などが含まれます。(例:RO水など)

この分類、少しややこしいですよね。では、「鉱水」はどこに含まれるのでしょうか?

「鉱水」の具体的な定義

上記の分類とは別に、原水(採水したそのままの水)の種類として、以下のような定義があります。

  • 湧水(ゆうすい):自ら地表に湧き出た地下水。
  • 鉱水(こうすい):ポンプなどで人工的に汲み上げた地下水で、溶存鉱物質(ミネラル)などによって特徴づけられるもの。
  • 鉱泉水(こうせんすい):「鉱水」のうち、水温が25℃未満で、ミネラルや特定のガスが溶け込んでいる地下水。(温泉法における「温泉」の定義から外れるもの)
  • 温泉水(おんせんすい):水温が25℃以上、または特定の物質が規定値以上含まれる地下水(温泉法の定義)。

つまり、「鉱水」とは、ミネラルなどを含む地下水をポンプで汲み上げたものを指す言葉なんですね。

そして、この「鉱水」を原水として使い、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理をしていないものが「ナチュラルミネラルウォーター」として販売されることが多いのです。(※日本では「鉱泉水」を原水とするものも多いです)

「硬水(こうすい)」とは?硬度に基づく「水の性質」

【要点】

「硬水」とは、水の「硬度」が高い水のことです。硬度とは、水1リットルあたりに含まれるカルシウムイオンとマグネシウムイオンの量を数値化したもので、WHO(世界保健機関)の基準では硬度が120mg/L以上の水を「硬水」と呼んでいます。

一方で、「硬水」の「硬」は、硬度(こうど)を意味します。これは水源や製法による分類ではなく、純粋に「水の性質」を表す言葉です。

WHO(世界保健機関)による硬度の分類

硬度の基準は国や機関によって多少異なりますが、一般的にWHO(世界保健機関)の基準がよく用いられます。

  • 軟水:0〜60mg/L 未満
  • 中程度の軟水(中硬水):60〜120mg/L 未満
  • 硬水:120〜180mg/L 未満
  • 非常な硬水:180mg/L 以上

(※日本では一般的に100mg/L以下を軟水、101mg/L以上を硬水と大別することも多いです)

日本の水道水や国産ミネラルウォーターの多くは、硬度が100mg/L以下の「軟水」に分類されます。一方、ヨーロッパ、特にフランスやドイツなどで採水される水は、硬度が300mg/Lを超えるような「非常な硬水」も珍しくありません。

「鉱水であり、かつ硬水」という水も存在する

ここで最初の結論に戻ります。

例えば、フランス産の有名なミネラルウォーター「コントレックス」を例に見てみましょう。

  • 分類軸1(水源):特定の水源から採水した地下水(ミネラルを含む)なので「鉱水」(※日本のガイドライン上はナチュラルミネラルウォーター)です。
  • 分類軸2(硬度):硬度は約1468mg/Lと非常に高いため「硬水」(非常な硬水)です。

このように、二つの「こうすい」は両立する概念なんですね。

成分と味・香りの違いを比較

【要点】

「鉱水」の味は、溶け込んでいるミネラルの種類と量によって決まります。「硬水」は、カルシウムとマグネシウムが多いため、口当たりが重く、わずかな苦味や渋みを感じることがあります。一方、「軟水」はミネラルが少なく、まろやかでクセのない味が特徴です。

二つの「こうすい」は、その定義の違いから、味や香りにも特徴が出ます。

鉱水(鉱泉水・鉱物質)の成分と味の特徴

「鉱水」や「鉱泉水」は、地層から溶け出したミネラル(鉱物質)を含むことが特徴です。

含まれるミネラルの種類(ナトリウム、カリウム、シリカなど)やそのバランスによって、味の印象は大きく変わります。例えば、ナトリウムが多いとわずかに塩味を感じたり、シリカが多いとまろやかさを感じたりすることがあります。

ただし、これはあくまで「硬度(カルシウム・マグネシウム量)」とは別の話です。

硬水(マグネシウム・カルシウム)の成分と味の特徴

味に最も直接的に影響するのは「硬度」です。

硬水(硬度が高い水)

カルシウムやマグネシウムが豊富に含まれています。これらが多くなると、水に「重さ」や「硬さ」が感じられるようになります。

特にマグネシウムは苦味(にがり成分)を持つため、硬度が高すぎると飲みにくさや独特の風味を感じることがあります。ヨーロッパの水を飲んで「重い」と感じるのは、このためですね。

軟水(硬度が低い水)

ミネラル含有量が少ないため、口当たりが軽く、まろやかでクセがありません。日本の水が「おいしい」と感じられる理由の一つは、この軟水の特徴によります。

健康・美容・料理での上手な使い分け

【要点】

「鉱水」はミネラル補給に適していますが、どのミネラルが豊富かは製品によります。「硬水」はカルシウム・マグネシウム補給や、肉のアク抜きに適しています。一方、クセのない「軟水」は、日本の料理全般(特に出汁や炊飯)、緑茶、ウイスキーの水割りなどに最適です。

「鉱水」か「硬水」か、どちらが良いかは目的によって全く異なります。特に重要なのは「硬度」による使い分けです。

「鉱水」が適しているシーン

「鉱水」はミネラルを含むため、水分補給と同時にミネラル補給もしたい場合に適しています。

ただし、前述の通り「鉱水」=「硬水」ではありません。日本の「鉱水」は軟水であることが多いため、「硬水」特有のマグネシウムやカルシウムを補給したい場合は、成分表示をしっかり確認する必要があります。

「硬水」が適しているシーン

  1. ミネラル補給(健康・美容)
    アスリートやダイエット中の方、美容意識の高い方が、不足しがちなカルシウムやマグネシウムを手軽に補給するのに適しています。マグネシウムには胃腸の働きを活発にする作用も期待できると言われていますね。
  2. 洋風の煮込み料理
    肉の煮込み料理に使うと、硬水に含まれるカルシウムが肉のタンパク質と結合し、アクとして出やすくなるため、スープが澄み仕上がると言われています。パスタを茹でる際にも、コシが出やすいとされます。

注意点:硬水は胃腸に負担をかけることがあるため、お腹が弱い方や乳幼児のミルク作りには適していません。

料理における使い分けのポイント

「硬水」が適さない料理は、必然的に「軟水」(日本の多くの鉱水や水道水)が適していることになります。

硬水(ヨーロッパ産など)軟水(日本産など)
味の特徴重い、苦味・渋みを感じるまろやか、クセがない
適した料理肉のアク抜き、パエリア、パスタ和食全般(出汁)炊飯、煮物
適した飲み物特になし(飲用・ミネラル補給)緑茶・紅茶、コーヒー、ウイスキーの水割り

特に和食の「出汁」や「炊飯」は、軟水でないと旨味成分がうまく抽出されなかったり、お米がパサついたりすると言われています。日本の食文化は、まさに軟水によって育まれてきたんですね。

日本とヨーロッパにおける「こうすい」の文化的背景

【要点】

日本の大地は火山灰土壌が多く、水が地中に留まる時間が短いため「軟水」が主流です。一方、ヨーロッパは石灰岩土壌が多く、水がゆっくりとミネラルを吸収しながら流れるため「硬水」が主流です。この水質の違いが、それぞれの食文化(和食の出汁文化、洋食の煮込み文化)に大きな影響を与えています。

なぜ日本とヨーロッパでこれほど硬度が違うのでしょうか?

それは、地形と地質の違いにあります。

日本の水(主に軟水)

日本は国土が狭く、山から海までの傾斜が急です。また、地層は火山灰土壌が中心です。雨水が地中に浸透してから湧き出るまでの時間が短いため、ミネラルが溶け込む時間も短くなります。その結果、ミネラル含有量の少ない「軟水」が主流となるわけです。

ヨーロッパの水(主に硬水)

ヨーロッパは広大な平野が多く、地層は石灰岩(カルシウムが豊富)の層が厚く広がっています。雨水はゆっくりと時間をかけて地中を流れ、その間に石灰岩からカルシウムやマグネシウムを豊富に吸収します。そのため、「硬水」の地域が非常に多いのです。

この水の違いが、和食(軟水で出汁を取る文化)と洋食(硬水で肉を煮込む文化)という、食文化の根本的な違いを生み出したとも言われています。

「こうすい」選びで混乱した体験談

僕も以前、健康管理に目覚めたばかりの頃、「水は『こうすい』が良い」という情報を鵜呑みにして混乱した経験があります。

「こうすい」が良い、とだけ聞いていたので、スーパーで「鉱水」と書かれた国産のミネラルウォーターをたくさん買い込みました。しかし、いくら飲んでも特に体の変化は感じられませんでした。

それもそのはず、僕が求めていたのは「マグネシウム補給」で、それは「硬水」の特徴だったのです。僕が買っていた国産の「鉱水」は、成分表示を見ると硬度30mg/Lほどの「軟水」でした。

「鉱水(こうすい)」=「硬水(こうすい)」ではない。この当たり前の事実に気づくまで、ずいぶんとかかってしまいました。

この経験から、水を買うときは必ず裏面のラベルを見て、「品名」(ナチュラルミネラルウォーターなど)と「硬度」(mg/L)の両方を確認するようになりました。目的意識を持って選ぶことが本当に大切ですよね。

「鉱水」と「硬水」に関するよくある質問(FAQ)

Q1. 「鉱水」でありながら「軟水」である水はありますか?

はい、あります。日本の国産ミネラルウォーターの多くがそれに該当します。例えば、「サントリー天然水(奥大山)」の品名は「鉱水(ナチュラルミネラルウォーター)」ですが、硬度は約20mg/Lの「軟水」です。水源が「鉱水」であり、性質が「軟水」ということですね。

Q2. 「硬水」は飲みにくいと聞きますが、なぜですか?

硬水に含まれるマグネシウムイオンに苦味があるためです。また、カルシウムやマグネシウムが多いと、口当たりが重く感じられます。軟水に慣れている日本人は、特に飲みにくさを感じやすいと言われています。

Q3. 日本の水道水は「鉱水」ですか?

いいえ、分類が異なります。「鉱水」は農林水産省のガイドラインに基づく「ミネラルウォーター類」の分類です。水道水は「水道法」に基づいて管理されており、原水はダムや河川の「地表水」が多いため、「鉱水(地下水)」とは区別されます。ただし、水道水にも硬度はあり、日本の水道水は全国平均で約50mg/L程度の「軟水」です。

まとめ|「鉱水」と「硬水」は目的で選ぶ

「鉱水」と「硬水」、二つの「こうすい」の違いを解説しました。

「鉱水」は水源による分類「硬水」は成分(硬度)による分類であり、全く別の基準の言葉であることがお分かりいただけたと思います。

水を選ぶ際は、品名が「鉱水」かどうかよりも、「硬度」がいくつなのかを確認することが、味や用途のミスマッチを防ぐ上で最も重要です。

  • 和食や飲み物、赤ちゃんのミルク:硬度100mg/L以下の「軟水」
  • ミネラル補給や洋風煮込み:硬度120mg/L以上の「硬水」

この基準を参考に、ご自身の目的や体質に合った水を選んでみてくださいね。

様々な「飲み物・ドリンクの違い」を知ることも、食生活を豊かにする第一歩になりますよ。