どちらも「緑色のお茶の粉末」である「粉末緑茶」と「抹茶」。
見た目がそっくりなため、同じものだと思っていませんか?
粉末緑茶と抹茶の最も決定的な違いは、「元の茶葉(原材料)」と「製造方法」です。
粉末緑茶は、私たちが普段急須で淹れる「煎茶」を粉砕機(ミル)で粉末にしたものです。
一方、抹茶は、日光を遮って特別に栽培した「碾茶(てんちゃ)」という専用の茶葉を「石臼(いしうす)」で挽いたものです。
原材料も製法も全く異なるため、当然、味・香り・栄養成分、そして価格も大きく異なります。
この記事を読めば、二つの粉末状のお茶の違いが明確になり、用途に応じて正しく使い分けられるようになります。
それでは、まず二つの原材料の違いから詳しく見ていきましょう。
結論|粉末緑茶と抹茶の最も重要な違い
粉末緑茶と抹茶は、「原材料の茶葉」と「粉末にする製法」が根本的に異なります。抹茶は、日光を遮って育てた旨味の強い「碾茶(てんちゃ)」を「石臼」で挽いたものです。一方、粉末緑茶は、日光を浴びて育った渋味のある「煎茶」などを「粉砕機(ミル)」で細かくしたものです。
原材料と栽培方法の違い
抹茶の原料「碾茶」は、「覆下栽培」で日光を遮断して育てられます。これにより旨味成分「テアニン」が増加します。粉末緑茶の原料「煎茶」は、日光を浴びて育つため、渋味成分「カテキン」が豊富になります。
どちらも同じ「チャノキ」の葉から作られますが、その育て方が全く違います。
粉末緑茶の原材料(主に煎茶)
粉末緑茶の原材料は、主に「煎茶(せんちゃ)」です。
煎茶は、日本で最も一般的に飲まれているお茶で、茶葉が育つ間、太陽の光をたっぷり浴びて育ちます。
日光を浴びると、茶葉の中の旨味成分(テアニン)が、渋味成分(カテキン)に変化します。そのため、煎茶は「渋味」と「旨味」のバランスが取れた、キリッとした味わいになるのが特徴です。
抹茶の原材料(碾茶)
抹茶の原材料は、「碾茶(てんちゃ)」と呼ばれる、抹茶専用に作られるお茶です。
碾茶は、玉露と同じく「覆下栽培(おおいしたさいばい)」という特別な方法で育てられます。
決定的な違い「覆下栽培」の有無
「覆下栽培」こそが、抹茶(碾茶)と粉末緑茶(煎茶)を分ける最初の決定的な違いです。
覆下栽培では、収穫前の約20日間以上、茶畑全体をヨシズやワラ、黒いネットなどで覆い、日光を遮断します。
光合成を制限された茶葉は、旨味成分(テアニン)が渋味成分(カテキン)に変化するのを抑えられます。その結果、碾茶はカテキンの生成が少なく、テアニンを豊富に含んだ、濃厚な旨味とまろやかな甘みを持つ茶葉になるのです。
製造工程の違い
抹茶は「揉まず」に乾燥させた碾茶を「石臼」で挽き、粒子が丸く細かくなります。粉末緑茶は「揉んだ」煎茶を「粉砕機」で粉末にするため、粒子が比較的大きく角張っています。
育て方だけでなく、収穫した後の「粉末にするまで」の工程も全く異なります。
粉末緑茶の製法(煎茶を粉砕)
粉末緑茶の原料である煎茶は、収穫後に蒸した後、「揉む」工程(揉捻)を経て、針のような細長い形状に乾燥させます。
この完成した「煎茶」を、工業用の粉砕機(ボールミルやジェットミルなど)を使って、高温・短時間で一気に粉末状にします。
機械で粉砕するため、粒子は比較的大きめ(抹茶の約10倍以上)で、形状も角張っているのが特徴です。
抹茶の製法(碾茶を石臼で挽く)
抹茶の原料である碾茶は、収穫後に蒸した後、一切「揉みません」。揉まずにそのまま乾燥炉で乾燥させ、茎や葉脈を取り除きます。
このパリパリになった「碾茶」を、「石臼(いしうす)」で非常にゆっくりと丁寧に挽いていきます。
石臼でゆっくり挽くことで、摩擦熱の発生を最小限に抑え、抹茶特有の鮮やかな色と香りを保ちます。1台の石臼で1時間に挽ける抹茶は、わずか数十グラム程度と言われています。この工程により、粒子が非常に細かく(数ミクロン)、丸みを帯びた形状になります。
味・香り・色・泡立ちの違い
抹茶は、石臼挽きによるクリーミーな泡立ちと、覆下栽培由来の濃厚な「旨味・甘み」が特徴です。粉末緑茶は、煎茶由来のキリッとした「渋味・苦味」が特徴で、色は黄緑色、抹茶ほどは泡立ちません。
原材料と製法が違えば、当然、最終的な味わいも大きく異なります。
味と香り:渋みの粉末緑茶、旨味の抹茶
粉末緑茶:
煎茶をそのまま粉にしているため、煎茶特有のキリッとした「渋味」と「苦味」がガツンと感じられます。香ばしさもありますが、抹茶のような独特の甘い香り(覆下香)はありません。
抹茶:
碾茶由来の豊富なテアニンにより、苦味が少なく、まろやかで濃厚な「旨味」と「甘み」が際立ちます。また、「覆下香(おおいかこう)」と呼ばれる、青のりにも似た独特の甘く芳醇な香りを持っています。
色と泡立ち:黄緑色の粉末緑茶、鮮やかな緑の抹茶
粉末緑茶:
煎茶の色と同じく、黄色みがかった緑色(黄緑色)をしています。粒子が比較的大きく角張っているため、お湯に溶けにくく、ダマになりやすいです。また、茶筅で点ててもクリーミーには泡立ちにくいです。
抹茶:
覆下栽培により葉緑素が多いため、鮮やかで深い緑色をしています。粒子が非常に細かく丸いため、お湯と混ざりやすく、茶筅で点てることでクリーミーできめ細かな泡が立ちます。
栄養・成分・カフェインの違い
どちらも「茶葉を丸ごと」摂取するため、お湯に溶け出さない脂溶性ビタミンや食物繊維も摂れる点は共通です。ただし、成分のバランスが異なり、抹茶は「テアニン(旨味)」が、粉末緑茶は「カテキン(渋味)」がより豊富です。
急須で淹れるお茶と違い、粉末緑茶も抹茶も「茶葉を丸ごと」飲むことになります。
そのため、お湯には溶け出しにくい脂溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンE、ビタミンK)や食物繊維、クロロフィルといった栄養素も全て摂取できるのが最大のメリットです。
ただし、原材料の栽培方法が異なるため、含まれる成分のバランスが異なります。
- 粉末緑茶(煎茶ベース):日光を浴びているため、「カテキン(渋味)」の含有量が抹茶より多い傾向にあります。抗酸化作用をより多く期待するならこちらが向いています。
- 抹茶(碾茶ベース):日光を遮っているため、「テアニン(旨味・甘み)」の含有量が豊富です。リラックス効果を期待するならこちらが向いています。
なお、カフェインについては、どちらも茶葉を丸ごと摂取するため、急須で淹れたお茶よりも多くなります。
飲み方・用途・価格の違い
抹茶は茶道で「点てる」ほか、高級な菓子やラテに使われ高価です。粉末緑茶は手軽に「溶かす」飲み方が主で、お茶漬けや安価な菓子、回転寿司のお茶などに使われ、安価です。
飲み方と用途(お茶漬け vs 茶道)
粉末緑茶:
主な用途は「手軽に溶かして飲む」ことです。お湯や水にサッと溶ける(厳密には分散する)ため、急須が必要ありません。
また、煎茶の風味を手軽に加えられるため、お茶漬けの素、ふりかけ、クッキー、安価な業務用アイスなど、幅広く食品加工にも使われます。
抹茶:
伝統的には茶道で「点(た)てる」飲み物です。
その濃厚な旨味と鮮やかな緑色から、抹茶ラテ、高級な和菓子(上生菓子)や洋菓子(アイス、チョコレート)の材料として、風味と色付けの両方の目的で使われます。
価格の違い
栽培と製法にかかる手間が全く違うため、価格にも大きな差があります。
粉末緑茶は、煎茶を機械で粉砕するだけなので、比較的安価です。
抹茶は、「覆下栽培」という手間のかかる育て方をした「碾茶」を、さらに「石臼」で時間をかけてゆっくり挽くため、製造コストが非常に高く、高価になります。
比較一覧表|粉末緑茶と抹茶の違い
| 項目 | 粉末緑茶 | 抹茶 |
|---|---|---|
| 原材料 | 煎茶(せんちゃ)が主 | 碾茶(てんちゃ) |
| 栽培方法 | 露地栽培(日光を浴びる) | 覆下栽培(日光を遮る) |
| 製造方法 | 茶葉を揉む → 粉砕機で粉末化 | 茶葉を揉まない → 石臼で粉末化 |
| 味 | 渋味・苦味が強い、香ばしい | 旨味・甘みが強い、まろやか |
| 香り | 煎茶の香り | 覆下香(青のりのような甘い香り) |
| 色 | 黄緑色、くすんだ緑色 | 鮮やかな緑色(青緑色) |
| 泡立ち | 泡立ちにくい | クリーミーに泡立つ |
| 主な成分 | カテキンが多い | テアニンが多い |
| 価格 | 安価 | 高価 |
| 主な用途 | 手軽に飲む、お茶漬け、回転寿司のお茶 | 茶道(点てる)、抹茶ラテ、高級菓子 |
体験談|回転寿司で飲む「粉茶」の正体は?
僕たちが回転寿司店でよく目にする、湯呑みに入れてお湯を注ぐあの緑色の粉末。あれは「抹茶」だと思っていませんか?
僕も昔はそう信じていました。でも、この違いを知ってから改めて味わってみると、その正体がよく分かります。
まず、色が鮮やかな緑ではなく、少し黄色がかった緑色をしています。そして、味わいはどうでしょう?旨味やまろやかさよりも、ガツンとした渋味と香ばしさが先に立ちますよね。これはまさに「煎茶」の風味です。
そして何より、あれだけの量を無料で提供できるのは、高価な「抹茶」ではコスト的に考えにくいです。
そうです。あの粉末の多くは「粉末緑茶」(あるいは、製造工程で出る「粉茶」と粉末緑茶のブレンド)なのです。
脂っこいネタを食べた後に飲むと、あのカテキンの渋味が一気に口の中をリセットしてくれます。手軽にカテキンを丸ごと摂取できるという点では、非常に合理的で優れた提供方法だと、今では感心しながら飲んでいます。
よくある質問(FAQ)
粉末緑茶を茶筅(ちゃせん)で点てたら抹茶になりますか?
いいえ、なりません。点てることはできますが、抹茶のようには泡立ちません。粉末緑茶は粒子が大きく角張っているため、抹茶のようにきめ細かくクリーミーな泡にはならず、味も煎茶の渋味が際立ちます。原材料と製法が違うため、全くの別物ですね。
栄養価が高いのはどちらですか?
どちらも茶葉を丸ごと摂取できるため、非常に栄養価が高いです。どちらが「より良い」かは目的によります。カテキン(抗酸化作用)を多く摂りたいなら粉末緑茶、テアニン(リラックス・旨味)を多く摂りたいなら抹茶がおすすめです。
「粉茶」と「粉末緑茶」は違いますか?
はい、全く違います。「粉末緑茶」は煎茶の葉を意図的に粉末にしたものです。一方、「粉茶(こなちゃ)」は、煎茶や玉露を製造する過程でこぼれ落ちた、茶葉の細かく砕けた「かけら」や「粉」を集めたものです。粉末ではないため、急須で淹れて飲みますが、成分が非常に出やすいため、お寿司屋さんの「あがり」として重宝されます。
まとめ|粉末緑茶と抹茶、どう使い分けるべきか?
粉末緑茶と抹茶は、どちらも茶葉の栄養を丸ごと摂取できる優れた飲み物ですが、その背景にある「格」や「手間」は大きく異なります。
それぞれの個性を理解して、シーンに合わせて賢く使い分けましょう。
- 「粉末緑茶」がおすすめな人・時
手軽さと価格を重視する時。カテキンの渋味でスッキリしたい時。料理やお茶漬けなどに手軽に使いたい時。
- 「抹茶」がおすすめな人・時
濃厚な旨味とまろやかな甘み、豊かな香りを楽しみたい時。リラックスしたい時。お菓子作りや抹茶ラテに、鮮やかな緑色と本格的な風味を使いたい時。
原材料名に「抹茶」と書かれていても、安価な加工品の場合は、緑色を濃くするために「クロレラ」などが添加されていることもあります。本物の抹茶の風味を求めるなら、信頼できるお茶専門店のものを選ぶのが確実ですね。
「違いラボ」では、他にも様々な飲み物・ドリンクの違いについて詳しく解説しています。