シュニッツェルととんかつ、どちらも「肉に衣をつけて揚げた料理」としてお馴染みですよね。
ですが、いざ両者を比べると、その違いを明確に説明するのは難しいかもしれません。
結論から言うと、シュニッツェルはオーストリア発祥で薄く叩いた肉(主に子牛や豚)をバターやラードで焼くように揚げる料理、とんかつは日本発祥で厚切りの豚肉に粗いパン粉をつけてたっぷりの油で揚げる料理です。
この記事を読めば、シュニッツェルととんかつの定義から、決定的な調理法の違い、歴史的背景、そして味わいの違いまで、もう二度と迷うことなく使い分けられるようになります。
それでは、まず両者の最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
シュニッツェルととんかつの違いが一目でわかる比較表
まずは、シュニッツェルととんかつの最も重要な違いを一覧表にまとめました。これを見れば、両者がまったく異なる料理であることが一目でわかりますね。
| 項目 | シュニッツェル (Schnitzel) | とんかつ (Tonkatsu) |
|---|---|---|
| 発祥地 | オーストリア(特にウィーン) | 日本(東京) |
| 主な材料 | 子牛肉(ヴィーナー・シュニッツェル) または豚肉、鶏肉 | 豚肉(ロース、ヒレ) |
| 肉の厚さ | 非常に薄い(数ミリ程度に叩き伸ばす) | 厚い(1cm〜2cm以上が主流) |
| 衣 | 小麦粉、溶き卵、細かいパン粉 | 小麦粉、溶き卵、粗い生パン粉 |
| 調理法 | 焼くように揚げる(Sautieren) (フライパンで少なめのバターやラード) | たっぷりの油で揚げる(Deep-frying) (揚げ鍋でたっぷりの植物油) |
| 主な食べ方 | レモンを絞る。ジャム(リンゴンベリーなど)を添えることも。 | とんかつソースをかける。塩、辛子など。 |
| 付け合わせ | ポテトサラダ、パセリポテト、きゅうりのサラダなど | 千切りキャベツ、ご飯、味噌汁 |
シュニッツェルととんかつの違いとは?結論から解説
シュニッツェルは肉を「薄く叩き伸ばし」、フライパンで「焼くように揚げる」オーストリア料理です。一方、とんかつは肉を「厚切り」のまま、揚げ鍋で「たっぷりの油で揚げる」日本独自の料理です。調理法と肉の厚さが根本的に異なります。
シュニッツェルととんかつの最も核心的な違いは、「調理法」と「肉の厚さ」にあります。
シュニッツェルは、肉をハンマーのようなもので徹底的に叩き、紙のように薄く伸ばすことから始まります。そして、フライパンに多めに入れたバターやラード(豚脂)で、揚げるというよりは「焼く」に近い調理法(ソテー)で作られます。衣はサクサクと軽く、肉の薄さも相まって非常に軽快な食感が特徴です。
一方、とんかつは、豚肉を厚切りのまま(「カツ」を入れる程度で叩きません)、日本の生パン粉(粗いパン粉)をまとわせ、揚げ鍋に満たされた高温の油で「揚げる(ディープフライ)」料理です。衣はザクザクとした力強い食感で、中の肉は厚くジューシーに仕上がります。
つまり、シュニッツェルは「ソテー(焼き揚げ)」、とんかつは「フライ(揚げ物)」と、調理のカテゴリが異なるのです。
シュニッツェルととんかつは別物?定義と起源・発祥の違い
シュニッツェルはオーストリアの伝統料理「ヴィーナー・シュニッツェル」が原型です。一方、とんかつは明治時代にフランスの「コートレット」が日本に入り、ご飯に合うおかずとして独自に進化した日本料理です。
見た目が似ているため混同されがちですが、両者のルーツは全く異なります。
シュニッツェル(Schnitzel)とは?オーストリアの国民食
シュニッツェルは、ドイツ語圏、特にオーストリアを代表する伝統的な肉料理です。「Schnitzel」はドイツ語で「薄切り肉」や「カツレツ」を意味します。
最も有名で、原型とされるのが「ヴィーナー・シュニッツェル(Wiener Schnitzel)」です。「ウィーン風のカツレツ」という意味で、オーストリアの法律で「子牛肉」を使ったものだけがこの名前を名乗ることを許されています。
豚肉を使ったものは「シュニッツェル・ヴィーナー・アルト(Wiener Art)」(ウィーン風)や、単に「シュヴァイネシュニッツェル(豚シュニッツェル)」と呼ばれ、区別されています。本場ウィーンでは、皿からはみ出すほどの巨大なサイズで提供されることも珍しくありません。
とんかつ(Tonkatsu)とは?日本で進化した洋食
とんかつは、幕末から明治時代にかけて日本に入ってきた西洋料理「カツレツ(コートレット)」が原型です。
フランス語の「côtelette(コートレット)」は、骨付きの背肉を意味し、当時は牛肉や鶏肉を使い、シュニッツェルのようにフライパンで焼く(ソテー)調理法が主流でした。
このカツレツが、日本人の好みに合わせて独自の変化を遂げます。1899年(明治32年)に東京・銀座の「煉瓦亭」が、ソテーではなく「揚げる」調理法を考案し、豚肉を使った「ポークカツレツ」を提供し始めたのが、現代のとんかつの原型と言われています。
その後、厚切りの肉を使い、パンではなく「ご飯と味噌汁」に合うおかずとして定着。「豚」と「カツレツ」を合わせて「とんかつ」と呼ばれるようになり、日本独自の国民食として完成しました。
主な材料と調理法の違い
シュニッツェルは「子牛肉」を数ミリに叩き伸ばし、細かいパン粉をつけます。とんかつは「豚肉」を厚切り(1〜2cm)のまま、粗い生パン粉をつけます。この材料と下ごしらえの違いが、食感の決定的な差を生みます。
両者の違いを最も際立たせているのが、材料と調理法のプロセスです。
材料の違い:子牛肉 vs 厚切り豚肉
前述の通り、シュニッツェルの本流である「ヴィーナー・シュニッツェル」は子牛肉(仔牛のもも肉)しか使えません。子牛肉は柔らかく、風味が繊細なため、薄く伸ばしても美味しく仕上がります。もちろん、現代では豚肉や鶏肉(チキンシュニッツェル)も広く使われていますが、あくまで原型は子牛肉です。
一方、とんかつは「豚肉」が主役です。ロース肉の脂の旨味や、ヒレ肉の柔らかさなど、部位ごとの特徴を活かすため、肉は1cmから2cm以上の厚切りで使われるのが一般的です。肉を叩いて薄く伸ばすことは、基本的にはありません。
調理法の違い:焼くように揚げる vs たっぷり揚げる
調理法は、両者を決定的に分けるポイントです。
シュニッツェルの調理法(ソテー)
シュニッツェルは、フライパンに多めのバターやラードを熱し、その中で肉を「泳がせる」ように焼きます。これはフランス料理でいう「ソテー(Sautieren)」に近い調理法です。
- 肉を専用のミートハンマーで数ミリの薄さになるまで叩き伸ばします。
- 塩・胡椒で下味をつけ、小麦粉、溶き卵、きめの細かいパン粉の順につけます。
- フライパンにバターやラード(またはサラダ油)を1〜2cmほど入れ、160℃〜170℃程度に熱します。
- シュニッツェルを入れ、フライパンを絶えず揺すりながら、衣に油をかけ続けます。これにより、衣が波打つように美しく仕上がります。
- 両面がきつね色になったら完成です。
とんかつの調理法(ディープフライ)
とんかつは、揚げ鍋(フライヤー)にたっぷりの油を満たし、その中に肉を沈めて揚げる「ディープフライ」です。
- 厚切りの豚肉に塩・胡椒で下味をつけます(筋切りをすることも多いです)。
- 小麦粉、溶き卵、粗めの生パン粉の順につけます。この粗いパン粉が、とんかつ特有のザクザクした食感を生みます。
- 揚げ鍋にたっぷりの植物油(ラードをブレンドすることも)を入れ、170℃〜180℃程度に熱します。
- 肉を油に沈め、中までじっくりと火を通します(低温と高温の二度揚げをする店も多いです)。
- 衣が剣先に立ち、きつね色になったら油を切り、食べやすい大きさに包丁でカットして完成です。
味付け・食感・見た目の違い
シュニッツェルは衣が薄くサクサクで、肉自体の味をレモンでさっぱりと楽しみます。とんかつは衣が厚くザクザクで、肉のジューシーさを濃厚なとんかつソースと共に楽しみます。
材料と調理法が違えば、当然、味わいや食感、そして見た目も大きく変わってきます。
シュニッツェル:サクサク軽い食感とレモン
シュニッツェルは、見た目が非常に大きく薄いのが特徴です。衣は細かく、肉に密着しており、食感は「サクサク」と非常に軽くクリスピーです。
味付けの基本は、添えられたカットレモンを絞ること。バターやラードで焼いた衣の風味と、レモンの酸味が、子牛肉(または豚肉)の繊細な旨味を引き立てます。ソースをドバドバかけることはありません。
本場では、コケモモ(リンゴンベリー)のジャムが添えられることもあり、肉の塩気とジャムの甘酸っぱさのコントラストを楽しみます。
とんかつ:ザクザク食感と濃厚ソース
とんかつは、粗い生パン粉を使っているため、衣が剣のように立ち、「ザクザク」「ガリガリ」とした力強い食感が特徴です。衣が肉の旨味と肉汁を閉じ込める役割も果たしています。
最大の特徴は、濃厚なとんかつソースをかけて食べることでしょう。ウスターソースをベースに野菜や果物を加えてとろみをつけたこのソースは、厚切りの豚肉の脂の甘みと、ご飯(白米)との相性を計算して作られた日本独自のものです。
もちろん、最近では肉の質にこだわり、塩やワサビ醤油で食べさせる専門店も増えていますが、基本はソース文化の料理と言えます。
栄養・カロリー・健康面の違い
シュニッツェルは子牛肉を使う場合、高タンパク・低脂質ですが、バターやラードで焼くため脂質は高めです。とんかつは豚肉(特にロース)を使うと脂質が多く高カロリーになりがちですが、ビタミンB1が豊富です。どちらも揚げ物・焼き物であるため、カロリーは高めです。
シュニッツェルととんかつ、どちらも油を使う料理のため、カロリーや脂質が気になる方も多いですよね。
シュニッツェルの栄養価(ヴィーナー・シュニッツェルの場合)
原型であるヴィーナー・シュニッツェルは、子牛肉を使います。子牛肉は一般的な牛肉や豚肉に比べ、高タンパクでありながら脂質が少なく、鉄分やビタミンB群が豊富です。
ただし、調理法に注意が必要です。フライパンでバターやラードを使って焼くため、そこで多くの脂質を吸収します。特にバターは飽和脂肪酸が多いため、食べる量には注意が必要でしょう。
とんかつの栄養価(豚ロースの場合)
とんかつは豚肉、特にロース肉を使う場合、脂質の量が多くなり、高カロリーになりがちです。しかし、豚肉にはビタミンB1が非常に豊富に含まれています。ビタミンB1は糖質の代謝を助け、エネルギーを生み出すのに不可欠な栄養素で、疲労回復にも役立ちます。
調理法はたっぷりの油で揚げるディープフライですが、衣がしっかりと油を吸うため、総じて高カロリー・高脂質な料理であることは間違いありません。
健康面で言えば、どちらも「ごちそう」として楽しむものであり、日常的に大量に食べるのは控えた方が賢明かもしれませんね。
地域・文化・人気度の違い
シュニッツェルはオーストリアやドイツの国民食で、レストランの定番メニューです。一方、とんかつは日本独自の洋食として定着し、専門の定食屋から家庭料理まで幅広く愛されています。
ヨーロッパでのシュニッツェル
シュニッツェルは、オーストリア、ドイツ、スイスなどドイツ語圏の国々で非常にポピュラーな料理です。特にウィーンでは、カフェやレストランのメニューに必ずと言っていいほど載っており、観光客だけでなく地元の人々にも愛されるソウルフードとなっています。
ドイツでは豚肉を使ったシュニッツェルが主流で、マッシュルームソースをかけた「イェーガーシュニッツェル(狩人風)」など、様々なバリエーションが存在します。
日本でのとんかつ
とんかつは、日本で洋食が独自の進化を遂げた代表例です。ラーメンやカレーライスと並び、日本の「国民食」の一つと言っても過言ではありません。
「とんかつ専門店」という業態が存在すること自体が、日本でのとんかつの地位を物語っていますよね。熱々のご飯、千切りキャベツ、豚汁(またはしじみの味噌汁)とセットで提供される「とんかつ定食」は、ランチや夕食の定番メニューとして確固たる地位を築いています。
また、カツ丼、カツカレー、カツサンドなど、とんかつを応用したメニューも非常に多く、日本の食文化に深く根付いています。
【体験談】ウィーンと東京で感じた「似て非なるカツ」の衝撃
僕も以前は、シュニッツェルととんかつの違いを深く理解していませんでした。「シュニッツェルって、要するにヨーロッパ版の薄いとんかつでしょ?」くらいに思っていたんです。
その認識が完全に覆されたのが、数年前にオーストリアのウィーンを訪れた時のことです。
現地の有名なレストランで、名物の「ヴィーナー・シュニッツェル」を注文しました。運ばれてきたのは、お皿からあふれんばかりの巨大な「わらじ」のようなカツレツ。その大きさにまず圧倒されました。
ナイフを入れてみると、衣は驚くほど薄く、サクッというより「パリッ」に近い軽やかな音。中の子牛肉は信じられないほど薄く叩きのめされていて、肉の厚みはほとんど感じません。衣と肉が一体化しているかのようです。
「これは、僕の知っているカツじゃない…」
恐る恐るレモンをたっぷり絞って口に運ぶと、バター(おそらくラードも混ざっていたでしょう)の芳醇な香りと、衣の軽快な食感、そして子牛肉の繊細な旨味がレモンの酸味で引き締まり、まったく重さを感じさせません。これは「揚げ物」というより、上質な「焼き物」の感覚でした。
帰国後、僕は無性にとんかつが食べたくなりました。東京のとんかつ専門店を訪れ、いつもの「上ロースかつ定食」を注文。出てきたのは、黄金色に輝く、衣が剣のように立った分厚いとんかつです。
箸で一切れ持ち上げると、ずっしりとした重み。断面からは肉汁が滲み出ています。濃厚なとんかつソースをかけ、一口。ザクッ!という力強い衣の食感の直後、厚い豚ロースの甘い脂と肉の旨味がジュワッと口の中に広がります。
「そう、これだ!これがとんかつだ!」
シュニッツェルが「衣と酸味の軽快なハーモニー」だとしたら、とんかつは「衣と肉とソースが一体となった重厚なハーモニー」です。ウィーンでの体験があったからこそ、とんかつがいかに「肉の厚み」と「衣の食感」、そして「ソースとの一体感」を重視した、日本独自の素晴らしい料理であるかを再認識できました。
どちらも素晴らしい料理ですが、その目指す方向性は全く違う。まさに「似て非なるカツ」の代表格だと痛感した体験でしたね。
シュニッツェルととんかつに関するよくある質問
ここでは、シュニッツェルととんかつの違いに関してよく寄せられる質問にお答えします。
シュニッツェルって、ミラノ風カツレツとは違うんですか?
はい、よく似ていますが異なります。イタリアの「コトレッタ・アッラ・ミラネーゼ(ミラノ風カツレツ)」も、ヴィーナー・シュニッツェルと同様に子牛肉を叩いて薄くし、バターで焼くように揚げる料理です。
大きな違いは、ミラノ風カツレツは衣にチーズ(パルミジャーノ・レッジャーノなど)を混ぜることがある点です。また、ヴィーナー・シュニッツェルほど徹底的に薄く叩き伸ばさない場合もあります。両者の関係については諸説ありますが、非常に近い親戚のような料理と言えますね。
家でシュニッツェルを作るコツはありますか?
一番のコツは、肉をとにかく薄く叩くことです。豚肉や鶏むね肉を使う場合でも、ラップをかぶせて上から肉叩きや瓶の底などで均一に5mm以下になるまで叩き伸ばしてください。
また、揚げる際はフライパンに1cm以上の油(サラダ油やオリーブオイルで構いません)を熱し、フライパンを揺すりながら衣に油をかけ続けると、衣が波打つようにカリッと仕上がりますよ。
とんかつにレモンだけかけて食べるのはアリですか?
もちろんアリです!特に最近は、豚肉の品質にこだわったとんかつ店が増えており、「まずは塩でお肉の甘みを楽しんでください」と推奨するお店も多いです。
塩やレモンは、豚肉本来の旨味や脂の甘さをダイレクトに感じさせてくれます。濃厚なソースもとんかつの醍醐味ですが、シュニッツェルのようにレモン(や塩)だけでさっぱりと味わうのも、また違った美味しさの発見がありますよ。
まとめ:シュニッツェルととんかつ、今日の気分はどっち?
シュニッツェルととんかつの違い、明確にご理解いただけたでしょうか。
両者の違いをまとめると、以下のようになります。
- シュニッツェル:オーストリア発祥。子牛肉や豚肉を極限まで薄く叩き、細かいパン粉をつけ、フライパンで「焼くように揚げる」。レモンでさっぱりと食べる軽い食感の料理。
- とんかつ:日本発祥。豚肉を厚切りのまま、粗い生パン粉をつけ、たっぷりの油で「揚げる」。濃厚なソースでご飯と共に食べる、ジューシーで力強い食感の料理。
もしあなたが、「今日は軽やかに、サクサクとした衣と肉の繊細な味わいを楽しみたい」という気分なら、シュニッツェルがぴったりです。
逆に、「今日はガツンと、厚い肉の旨味とザクザクの衣、そして濃厚なソースのハーモニーを白米とかきこみたい!」という気分なら、迷わずとんかつを選ぶべきですね。
どちらも、それぞれの国の食文化が生んだ素晴らしい「カツ料理」です。この違いを知ることで、ヨーロッパのレストランでも、日本のとんかつ屋でも、より深くその味わいを楽しめるようになるはずです。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な「料理・メニューの違い」について詳しく解説しています。ぜひそちらもご覧ください。