「チャンジャ」と「キムチ」、どちらも韓国料理店やスーパーでお馴染みの、赤くて辛い食べ物ですよね。
でも、この二つが全くの別物であることをご存知でしたか?
実は、チャンジャは魚の内臓を使った「塩辛」の一種であり、キムチは白菜などの野菜を使った「発酵漬物」なんです。
この記事を読めば、チャンジャとキムチの決定的な違いから、それぞれの文化的背景、美味しい食べ方までスッキリと理解できます。もう居酒屋のメニューで迷うことはありませんよ。
それでは、二つの違いを詳しく見ていきましょう。
結論|チャンジャとキムチの決定的な違い
チャンジャとキムチの最大の違いは、「主材料」と「分類」です。チャンジャはタラの胃袋などの内臓を使った「塩辛(チョッカル)」であり、コリコリした食感が特徴の珍味です。一方、キムチは白菜や大根などの野菜を塩漬けにし、ヤンニョム(薬味)で発酵させた「漬物」であり、シャキシャキした食感と発酵による酸味が特徴です。
同じように唐辛子で赤く味付けされていますが、片や「魚介の内臓」、片や「野菜」と、スタート地点が全く異なります。この違いが、食感や味わい、食べ方すべてに影響しているんですね。
まずは、二つの違いを一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | チャンジャ | キムチ |
|---|---|---|
| 分類 | 塩辛(チョッカル) | 漬物(発酵食品) |
| 主な主材料 | 魚の内臓(主にスケトウダラの胃袋・腸) | 野菜(主に白菜、大根、きゅうり) |
| 調理法 | 内臓を塩漬けし、ヤンニョムで和えて熟成 | 野菜を塩漬けし、ヤンニョムで和えて乳酸発酵させる |
| 主な食感 | コリコリ、プチプチ | シャキシャキ、しんなり |
| 主な味わい | 濃厚な旨味、塩辛さ、辛味、ごま油の風味 | 辛味、旨味、塩味、発酵による酸味 |
| 文化的役割 | 珍味、酒の肴、ご飯のお供 | 常備菜(パンチャン)、ソウルフード、料理の材料 |
定義と分類:「チャンジャ」と「キムチ」とは
「チャンジャ(창난젓)」は、韓国語で「タラの胃袋の塩辛」を意味する「チョッカル(塩辛)」の一種です。一方、「キムチ(김치)」は、野菜を塩とヤンニョムで漬け込み「乳酸発酵」させた、韓国を代表する漬物です。
「チャンジャ(창난젓)」とは?(内臓の塩辛・チョッカル)
チャンジャは、韓国の伝統的な水産発酵食品である「チョッカル(젓갈)=塩辛」の一種です。
韓国語では「チャンナンジョッ(창난젓)」と呼ばれます。「チャンナン(창난)」がスケトウダラの胃袋や腸(内臓)を、「ジョッ(젓)」が塩辛を意味します。
つまり、チャンジャとは「スケトウダラの内臓の塩辛」そのものを指す言葉なんですね。
スケトウダラの胃袋や腸を塩漬けにした後、水洗いして細かく刻み、唐辛子粉、ニンニク、ごま油、水あめなどを混ぜたヤンニョム(薬味だれ)で和えて熟成させたものです。
「キムチ(김치)」とは?(野菜の発酵漬物)
キムチは、言わずと知れた韓国の国民食であり、野菜を主材料とする発酵漬物です。
最も代表的なペチュキムチ(白菜キムチ)は、塩漬けにした白菜の葉の一枚一枚に、唐辛子粉、ニンニク、ショウガ、ネギ、そしてアミエビやイカなどの塩辛(チョッカル)を混ぜ込んだヤンニョムを丁寧に塗り込み、漬け込んで作られます。
キムチの最大の特徴は、この漬け込む過程で「乳酸発酵」することです。この発酵により、野菜の旨味と共に、特有の酸味と深い風味が生まれます。
主材料と調理法(作り方)の違い
チャンジャの主材料は「スケトウダラの内臓」であり、キムチの主材料は「白菜や大根などの野菜」です。また、キムチが「乳酸発酵」を必須の工程とするのに対し、チャンジャは主に塩とヤンニョムによる「熟成」が中心となります。
決定的な違いは「主材料」(魚の内臓 vs 野菜)
これが最も根本的な違いです。
チャンジャ:主役はあくまで「スケトウダラの内臓」です。動物性の材料ですね。
キムチ:主役は「白菜」「大根」「きゅうり」などの野菜です。植物性の材料がベースとなります。
「え、でもキムチにも塩辛が入ってるじゃないか」と思ったあなたは鋭いですね。
確かに、キムチのヤンニョムには旨味の素としてアミエビの塩辛(セウジョッ)など、少量のチョッカル(塩辛)が使われます。しかし、それはあくまで「味付け・発酵促進剤」としての役割です。
チャンジャは、塩辛そのものが主役であり、キムチは野菜が主役で、塩辛は脇役、という明確な違いがあります。
調理工程の違い:「発酵」の役割
どちらもヤンニョムで和えて熟成させますが、その目的が少し異なります。
チャンジャは、まず内臓を塩漬けにして保存性を高め、それを唐辛子やニンニク、ごま油などで味付けして「熟成」させます。内臓自体が持つ酵素による自己消化も進みますが、キムチのような活発な乳酸発酵を主目的とはしていません。
キムチは、塩漬けした野菜にヤンニョムを和えた後、低温でじっくりと「乳酸発酵」させるのが鍵です。この発酵プロセスを経ることで、単なる「野菜の唐辛子和え」ではなく、酸味と旨味が調和した「キムチ」になるのです。
味付け・食感・見た目の比較
チャンジャは魚介の濃厚な旨味と塩辛さ、ごま油の風味が特徴で、食感は「コリコリ」「プチプチ」しています。キムチは野菜の甘みに加え、発酵による「酸味」と旨味、唐辛子の辛味が特徴で、食感は「シャキシャキ」しています。
味付けの違い(ヤンニョムは共通だが…)
どちらも唐辛子、ニンニク、塩辛(またはそのエキス)などを使うため、辛くて旨味があるという点では共通しています。
しかし、決定的な味の違いは「酸味」と「風味」です。
キムチは、乳酸発酵が進むにつれて爽やかな「酸味」が出てくるのが最大の特徴です。この酸味が、辛味や塩気と一体となって、キムチ特有の深い味わいを生み出します。
チャンジャは、発酵による酸味はほとんどありません。その代わり、内臓特有の濃厚な旨味と塩気、そして味付けに使われるごま油の香ばしい風味が際立ちます。キムチに比べ、より塩辛く(塩辛なので当然ですが)、濃厚な味わいです。
食感の違い(コリコリ vs シャキシャキ)
主材料が全く異なるため、食感は誰でも明確に区別できます。
チャンジャ:タラの胃袋や腸ならではの、「コリコリ」「クニクニ」「プチプチ」とした弾力のある食感が魅力です。この食感がヤミツキになる、というファンも多いですよね。
キムチ:白菜や大根の「シャキシャキ」「パリパリ」とした野菜のみずみずしい食感が基本です。もちろん、発酵が進むとしんなりとした食感に変化していきます。
栄養・カロリー・健康面の違い
キムチは野菜が主材料のため食物繊維が豊富で、発酵によって生まれる植物性乳酸菌も摂取できます。チャンジャは魚の内臓から作られるため、動物性タンパク質やビタミン類が含まれますが、塩分はキムチよりも高い傾向にあります。
栄養面でも、主材料の違いがそのまま反映されます。
キムチの栄養
キムチは、何と言っても「発酵食品」であることが最大の強みです。生きたまま腸に届きやすい植物性乳酸菌が豊富に含まれています。また、白菜などの野菜がベースなので、食物繊維やビタミンC、βカロテンなども摂取できます。
チャンジャの栄養
チャンジャは、魚の内臓が主材料のため、動物性のタンパク質や、脂溶性のビタミン(ビタミンA、D、Eなど)を含んでいます。しかし、「塩辛」であるため、塩分濃度はキムチよりもかなり高い傾向にあります。食べ過ぎには注意が必要ですね。
カロリーについては、チャンジャはごま油や水あめを多く使うため、白菜キムチに比べると高めになることが多いです。
韓国文化での位置づけと食べ方
キムチは韓国の食卓に欠かせない「常備菜(パンチャン)」であり、そのまま食べるほか、チゲや炒め物の「材料」としても使われるソウルフードです。一方、チャンジャは「珍味」であり、毎日の食卓に並ぶものではなく、主にご飯のお供や酒の肴(アンジュ)として楽しまれます。
チャンジャ(ご飯のお供・酒の肴)
チャンジャは、韓国において「パッパンチャン(밥반찬=ご飯のおかず)」や「アンジュ(안주=酒の肴)」として確固たる地位を築いています。
その濃厚な旨味と塩気、辛味は、白いご飯との相性が抜群です。また、コリコリした食感とピリ辛な味付けは、焼酎(ソジュ)やマッコリなどのお酒のアテとしても最高ですね。
日本では、クリームチーズと和えたり、ごま油をかけたりして、居酒屋の「珍味」メニューとして人気を博しています。
キムチ(常備菜・パンチャン)
キムチは、韓国の食文化そのものと言っても過言ではありません。ほぼ全ての食事で「パンチャン(반찬=おかず)」として食卓に並びます。
そのまま食べるのはもちろんですが、キムチの真価はその汎用性にあります。
- キムチチゲ(キムチ鍋)
- キムチポックムパプ(キムチチャーハン)
- トゥブキムチ(豆腐キムチ)
- キムチジョン(キムチチヂミ)
など、他の食材と組み合わせることで、無限の料理バリエーションを生み出します。特に、発酵が進んで酸っぱくなった古漬けのキムチ(ムグンジ)は、煮込み料理に使うと最高の出汁と旨味を発揮します。
チャンジャを鍋やチャーハンのメイン具材にすることは稀ですが、キムチは「料理の材料」としても一級品なのです。
【体験談】居酒屋の珍味と食卓の常備菜—僕が感じた「役割」の違い
僕がこの二つの違いをはっきりと意識したのは、学生時代の居酒屋アルバイトと、韓国旅行での経験がきっかけでした。
アルバイト先の居酒屋では、「チャンジャとクリームチーズ」というメニューが大人気でした。僕も賄いで初めて食べた時、タラの胃袋だと聞いて驚きました。あの独特のコリコリ感と、唐辛子の辛味、ごま油の風味、そして内臓の濃厚な旨味。クリームチーズのまろやかさが加わると、まさにお酒が止まらなくなる「珍味」でした。
そのイメージがあったので、韓国旅行に行った際も、チャンジャは「特別な日に食べる高級品なのかな?」と思っていたんです。
しかし、実際にソウルの食堂に入ると、どのテーブルにも当たり前のようにキムチが(しかも無料で)置かれていました。白菜キムチだけでなく、カクテキ(大根キムチ)やオイキムチ(きゅうりキムチ)など種類も豊富。
そして、友人の家でご馳走になった家庭料理では、メインのチゲ(鍋)にも、横の炒め物にもキムチが使われていました。まさに「キムチ無しでは始まらない」という感じです。
対してチャンジャは、食堂のパンチャン(おかず)の小皿として出てくることはあっても、キムチのように主役級の扱いではありません。あくまで数あるパンチャンの中の一つ、あるいは市場の塩辛専門店で買う「ご飯のお供」という位置づけでした。
この経験から、チャンジャは「食感と旨味を楽しむアクセント(珍味)」であり、キムチは「食卓のベースとなる発酵食品(常備菜)」なのだと、その役割の決定的な違いを実感しましたね。
チャンジャとキムチに関するよくある質問(FAQ)
チャンジャもキムチも「ヤンニョム」を使いますよね?
その通りです!どちらも唐辛子粉、ニンニク、塩辛(またはエキス)、水あめ(砂糖)などを使った「ヤンニョム(薬味だれ)」で味付けされます。これが、二つが似ていると感じる一番の理由ですね。ただし、チャンジャはごま油で風味付けすることが多いなど、細かい配合は異なります。
チャンジャも発酵食品ですか?
チャンジャも「塩辛」なので、内臓の酵素による自己消化や、ヤンニョムと混ざることでの「熟成」は起こります。広義の発酵食品と言えます。しかし、キムチのように活発な「乳酸発酵」による酸味が生まれるプロセスとは異なりますね。
カクテキ(大根キムチ)はチャンジャの仲間ですか?
いいえ、カクテキは「キムチ」の仲間です。主材料が「大根(野菜)」であり、ヤンニョムで和えて乳酸発酵させて作るので、キムチの一種(大根キムチ)に分類されますよ。
まとめ|チャンジャは「珍味の塩辛」、キムチは「発酵漬物」
チャンジャとキムチの違い、もう完璧ですね。
チャンジャは「魚の内臓の塩辛(チョッカル)」で、コリコリした食感と濃厚な旨味が特徴の珍味です。
キムチは「野菜の発酵漬物」で、シャキシャキした食感と乳酸発酵による酸味が特徴の常備菜です。
ヤンニョムで味付けされる点は共通していますが、主材料が「内臓」か「野菜」かという決定的な違いがあります。
これからは、ご飯のお供やお酒の肴には「チャンジャ」を、毎日の健康的なおかずや料理の材料としては「キムチ」を、と自信を持って使い分けてみてください。
韓国料理には、他にもたくさんの魅力的なメニューがあります。ぜひ料理・メニューの違いカテゴリで、さらなる発見を楽しんでくださいね。