「もろこし」と「とうもろこし」、この二つの言葉、皆さんは同じものだと思っていませんか?
地域によっては「とうもろこし」のことを「もろこし」と呼ぶことも多いため、混同されがちです。
しかし、実は「とうもろこし(コーン)」と、穀物の一種である「もろこし(タカキビ、コーリャン)」は、植物学的に全くの別物なんです。
この記事を読めば、なぜ「とうもろこし」が「もろこし」と呼ばれるようになったのかという語源の謎から、二つの植物の見た目、味、栄養価、そして全く異なる用途まで、スッキリと理解できます。
それではまず、この二つの複雑な関係性から見ていきましょう。
結論|「もろこし」と「とうもろこし」の違いを一言でまとめる
「もろこし」という言葉は、①「とうもろこし」の略称として使われる場合と、②「タカキビ(高黍、コーリャン)」という別の穀物を指す場合の二通りがあります。植物としては、「とうもろこし(イネ科トウモロコシ属)」と「もろこし(イネ科モロコシ属)」は全く異なる植物です。
日常会話で「焼きもろこし」と言う時は①の「とうもろこし」を指し、雑穀米に入っている「もろこし」は②の「タカキビ」を指します。この使い分けの曖昧さが、混乱の元になっているんですね。
この二つの「植物として」の違いを、比較表にまとめました。
| 項目 | とうもろこし(トウモロコシ) | もろこし(タカキビ、コーリャン) |
|---|---|---|
| 植物分類 | イネ科 トウモロコシ属 | イネ科 モロコシ属 |
| 主な別名 | コーン、唐黍(とうきび) | 高黍(タカキビ)、コーリャン |
| 見た目(実) | 皮に包まれた太い軸に大粒の実が並ぶ | 茎の先端にススキのような穂がつき、小粒の実が多数実る |
| 主な味・食感 | 甘みが強い、ジューシー、プチプチ | 淡泊、やや渋み、プチプチ・もちもち |
| 主な用途 | 野菜(生食、加熱)、コーンスターチ、飼料 | 穀物(雑穀米、粉食)、飼料、アルコール原料 |
「もろこし」は「とうもろこし」の略称?語源と名称の違い
「とうもろこし」は、漢字で「唐黍」と書きます。これは「唐(中国や外国)から来た黍(きび)」という意味です。古く日本では「きび」のことを「もろこしきび」と呼んでおり、そこから「とうもろこし」という名が付きました。このため、「とうもろこし」を省略して「もろこし」と呼ぶ地域も多いのです。
なぜ、全く別の植物である「とうもろこし」が「もろこし」と呼ばれるのでしょうか?
その答えは、語源にあります。
日本には古来から「きび(黍)」という穀物がありました。この「きび」の別名の一つが「もろこしきび」でした。その後、16世紀にポルトガル人によってアメリカ大陸原産の「とうもろこし」が伝えられます。
この新しい作物が、従来の「きび(もろこしきび)」に似ていたこと、そして外国(唐)から来たということから、「唐の黍(もろこしきび)」=「とうもろこし」と呼ばれるようになったのです。
このため、特に東日本や北海道などでは、今でも「とうもろこし」のことを「とうきび」や、略して「もろこし」と呼ぶ文化が根強く残っています。
植物としての「とうもろこし」と「もろこし(タカキビ)」の決定的違い
「とうもろこし(コーン)」と「もろこし(タカキビ)」は、どちらもイネ科の植物ですが、属が異なります。とうもろこしはトウモロコシ属、もろこしはモロコシ属です。実のつき方が全く異なり、とうもろこしは茎の途中に大きな穂を、もろこしは茎の先端にススキのような穂を付けます。
日常会話では混同されがちですが、植物としては全くの別物です。
植物学的な分類の違い(トウモロコシ属 vs モロコシ属)
どちらもイネ科の植物で、夏の高温・乾燥に強いという共通点はありますが、分類が異なります。
- とうもろこし:イネ科 トウモロコシ属(学名: *Zea mays*)
- もろこし(タカキビ):イネ科 モロコシ属(学名: *Sorghum bicolor*)
植物学上は、「属」レベルで異なる、遠い親戚のような関係です。
見た目(実のつき方)の違い
この二つは、畑での姿を見れば一目瞭然です。
とうもろこし(トウモロコシ)
太い茎の途中(葉の付け根)に、皮に包まれた雌穂(しすい)ができます。私たちが食べるのは、この雌穂の軸にびっしりと並んだ大粒の「実(種子)」です。茎の先端には雄穂(ゆうすい)と呼ばれるススキのような穂ができますが、ここには実はなりません。
もろこし(タカキビ)
茎の先端に、ススキやイネのような円錐花序(えんすいかじょ)と呼ばれる穂ができます。この穂に、無数の小さな「実(種子)」がびっしりと実ります。見た目はイネやアワ、キビに近い穀物の姿です。
味・食感・香りの違い
味も全く異なります。とうもろこし(スイートコーン)は糖度が高く、ジューシーで強い甘みが特徴です。一方、もろこし(タカキビ)は穀物であり、甘みはほとんどなく淡泊で、プチプチ・もちもちとした食感が特徴です。
とうもろこし(スイートコーン)
私たちが一般的に「とうもろこし」として食べているのは、品種改良された「スイートコーン(甘味種)」です。
非常に糖度が高く、ジューシーで強い甘みがあります。香りは特有の甘い香りがします。食感は、一粒一粒の皮が弾ける「プチプチ感」が特徴です。
もろこし(タカキビ)
「もろこし(タカキビ)」は、主食にもなる「穀物」です。
甘みはほとんどなく、味わいは淡泊です。白米や他の雑穀と一緒に炊くことで、プチプチ、あるいはモチモチとした独特の食感がアクセントになります。品種によってはわずかな渋みや苦みを感じることもあります。
栄養・成分・健康面の違い
とうもろこしは炭水化物を主体に、ビタミンB1、B2、E、食物繊維をバランスよく含みます。もろこし(タカキビ)は穀物として、白米に比べてタンパク質、脂質、食物繊維、ミネラル(鉄、カルシウム)が豊富です。また、ポリフェノールやGABAも含む点が注目されています。
分類や用途が違うため、栄養面の特徴も異なります。
とうもろこし(スイートコーン)
主成分は炭水化物(糖質)ですが、野菜としてはタンパク質も含む方です。ビタミンB1、B2、Eや、不溶性の食物繊維もバランスよく含んでいます。特に胚芽(粒の根元)部分に栄養が豊富です。
もろこし(タカキビ)
雑穀米として白米と比べた場合、タンパク質、脂質、食物繊維、カルシウム、鉄分、ビタミンB1などが非常に豊富です。また、色素には抗酸化作用のあるポリフェノールを含み、GABA(ギャバ)などの機能性成分も含まれることから、健康食材として見直されています。
使い方・料理での扱い方の違い
用途は明確に「野菜」と「穀物」に分かれます。とうもろこしは茹でたり焼いたりするほか、サラダ、スープ、炒め物など「野菜」として使われます。もろこし(タカキビ)は「穀物」として、雑穀米に加えたり、粉にして団子やパン生地に混ぜたりして使われます。
とうもろこし(野菜としての利用)
スイートコーンは「野菜」として扱われるのが一般的です。
- 茹でとうもろこし、焼きとうもろこし
- サラダ(コーンサラダ、コールスロー)
- スープ(コーンポタージュ)
- 炒め物(バターコーン)
- 加工品:コーンスターチ(デントコーン)、ポップコーン(爆裂種)、飼料(デントコーン)
もろこし(タカキビ)(穀物としての利用)
もろこし(タカキビ)は「穀物」として扱われます。
- 雑穀米:白米に混ぜて炊き、食感と栄養をプラスします。
- 粉食:粉に挽いて、きびだんごの原料(「きび」の代用)、パンや麺類の生地に混ぜ込む。
- その他:中国の「白酒(パイチュウ)」の原料、飼料、バイオエタノール原料、茎葉は乾燥させて「もろこし(ほうき)」の材料にもなります。
旬・産地・価格の違い
とうもろこし(スイートコーン)の旬は夏(6月~9月)で、北海道や千葉県が一大産地です。一方、もろこし(タカキビ)は穀物として、乾燥品が通年流通しており、岩手県などで栽培されています。
とうもろこし
旬は夏。6月から9月にかけて、産地をリレーしながら収穫されます。主な産地は北海道、千葉県、茨城県などです。野菜として広く流通しており、価格も比較的安価です。
もろこし(タカキビ)
穀物であるため、収穫は秋ですが、乾燥させたものが「雑穀」として一年中流通しています。日本では岩手県などで栽培されていますが、世界的にはアメリカ、ナイジェリア、インドなどが大生産国です。価格は雑穀米の一つとして標準的です。
体験談|夏祭りの「とうもろこし」と食卓の「もろこし」
僕にとって、この二つの言葉は全く異なる風景を思い起こさせます。
「もろこし」と聞くと、まず頭に浮かぶのは、地元・北海道の夏祭りです。屋台で売られている「焼きもろこし」。醤油が焦げる香ばしい匂いと、熱々の実にガブリとかじりついた時の、あの弾けるような甘さ。これは間違いなく「とうもろこし」のことですよね。「もろこし」という呼び名には、どこか懐かしい響きがあります。
一方、「もろこし(タカキビ)」との出会いは、大人になってからでした。
健康を意識して雑穀米を食べるようになった時、原材料名に「もちきび、もちあわ、ひえ、もろこし」と書かれているのを見つけました。炊きあがったご飯の中にある、赤茶色でプチプチした小さな粒。これが穀物の「もろこし」かと知りました。
とうもろこしのような甘さやジューシーさは全くありませんが、白米だけでは味わえない、噛むほどに旨味が出るような素朴な味わいと、プチプチ・もちもちとした食感がとても新鮮でした。
今では、夏に食べる甘い「もろこし(とうもろこし)」と、毎日食べるご飯に入っている「もろこし(タカキビ)」は、僕の中では全く別の、どちらも欠かせない食材になっています。
もろこしととうもろこしに関するよくある質問
Q1. 結局、「もろこし」と言われたら、どちらを指しますか?
A1. 文脈によります。「焼きもろこし」「もろこし畑」のように、日常会話や農業の文脈で使われる場合は、「とうもろこし」の略称であることがほとんどです。一方、雑穀米や健康食品、世界の穀物生産の話で出てくる場合は、「タカキビ(コーリャン)」という別の穀物を指します。
Q2. 「きびだんご」の「きび」は、とうもろこしやタカキビと関係ありますか?
A2. 「きび(黍)」は、また別のイネ科キビ属の穀物です。とうもろこしの語源(もろこしきび)になった植物ですね。きびだんごは本来この「きび」で作りますが、現代では「タカキビ(もろこし)」の粉が使われることもあります。とうもろこし(コーン)とは関係ありません。
Q3. ポップコーンはどちらから作るのですか?
A3. ポップコーンは「とうもろこし」の一種である「爆裂種(ポップ種)」という専用の品種から作られます。「もろこし(タカキビ)」では作れません。
まとめ|「もろこし」と「とうもろこし」は全くの別物
「もろこし」と「とうもろこし」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
多くの日本人が「もろこし」という言葉を「とうもろこし」の略称として使っていますが、植物学的には「もろこし(タカキビ)」という全く別の穀物が存在するという、少しややこしい関係でした。
最後に、二つの植物の違いをまとめます。
- とうもろこし(コーン)
→ イネ科トウモロコシ属。茎に大きな穂がなる。「野菜」として食べられ、非常に甘い。 - もろこし(タカキビ)
→ イネ科モロコシ属。茎の先端にススキ状の穂がなる。「穀物」として食べられ、淡泊でもちもちしている。
これからは雑穀米の袋を見たとき、「あ、これはタカキビのことだな」と自信を持って見分けられますね。
当サイト「違いラボ」では、他にも様々な「穀物・豆類の違い」について詳しく解説しています。興味のある方はぜひご覧ください。