「大麦」と「もち麦」。
どちらも健康志向の高まりから、白米に混ぜて食べる穀物として非常に人気がありますよね。ですが、この二つ、実は「同じもの」でもあり「違うもの」でもある、という少しややこしい関係なのをご存知でしたか?
結論から言うと、「もち麦」は「大麦」という大きな分類の中の一種です。
お米に「うるち米(普段のご飯)」と「もち米(お餅用)」があるように、大麦にも粘りの少ない「うるち性」と、粘りの強い「もち性」があり、この「もち性」の大麦を総称して「もち麦」と呼んでいます。
この記事では、大麦ともち麦の根本的な分類から、健康面で注目される栄養素、食感、そして使い分けまで、その違いを徹底的に比較解説します。
結論|大麦ともち麦の違いを一言で比較!
「大麦」はイネ科の穀物の総称です。大麦はデンプンの性質により「うるち性」と「もち性」に分けられ、この「もち性」の品種が「もち麦」と呼ばれます。最大の違いは食感で、もち麦は「もちもち・ぷちぷち」した食感が特徴です。また、もち麦は水溶性食物繊維「β-グルカン」を「うるち性」の大麦より豊富に含む傾向があり、健康効果が注目されています。
つまり、スーパーなどで単に「大麦」として売られている商品の多くは「うるち性」の「押麦(おしむぎ)」 であり、「もち麦」はそれとは異なる食感と栄養特性を持つ大麦の一種、ということですね。
二つの主な違いを、以下の比較表にまとめました。
| 項目 | 大麦(うるち性・押麦など) | もち麦(もち性) |
|---|---|---|
| 分類 | 大麦の一種 | 大麦の一種 |
| デンプンの性質 | うるち性(アミロースとアミロペクチン) | もち性(アミロペクチンが主体) |
| 食感 | パサパサ、さらり、プチプチ感 | もちもち、ぷちぷち |
| 主な用途 | 麦とろご飯、麦茶、ビール・焼酎の原料 | 麦ご飯、サラダのトッピング、スープの具材 |
| β-グルカン | 豊富 | うるち性より更に豊富な傾向 |
大麦ともち麦の定義・分類・原材料の違い
「大麦」はイネ科オオムギ属の穀物です。「もち麦」はその大麦をデンプンの特性で分類した際の「もち性」品種の総称です。お米における「うるち米」と「もち米」の関係と同じだと考えると分かりやすいです。
「大麦」とは?(穀物の総称)
「大麦」は、小麦や稲、トウモロコシなどと同じイネ科の穀物です。世界で最も古くから栽培されてきた穀物の一つとも言われています。
大麦は、用途や性質によって様々な分類がされます。
- 穂の形状による分類:二条大麦(ビール・焼酎用)と六条大麦(麦ご飯・麦茶用)
- 皮の剥けやすさによる分類:皮性(皮が実に貼り付いている)と裸性(皮が剥けやすい)
- デンプンの性質による分類:うるち性 と もち性
このうち、私たちが「麦ご飯」として食べるのは、主に「六条大麦」の「うるち性」または「もち性」です。
「もち麦」とは?(大麦のもち性品種)
「もち麦」は、上記の大麦の分類のうち、デンプンの性質が「もち性」である品種を指します。
お米と同様に、デンプンは「アミロース」と「アミロペクチン」の2種類で構成されています。
- うるち性(一般的な大麦):アミロースとアミロペクチンの両方を含む。粘りが少なく、パサパサ、さらりとした食感。
- もち性(もち麦):アミロースをほとんど含まず、アミロペクチンが主体。粘りが強く、もちもちとした食感。
つまり、「大麦」という大きなカテゴリの中に、「うるち麦」と「もち麦」がある、という関係性ですね。
【徹底比較】味・香り・食感・見た目の違い
最大の違いは「食感」です。もち麦は粘り気が強く「もちもち」「ぷちぷち」した満足感のある食感です。一方、うるち性大麦(押麦)は粘り気が少なく「さらり」「プチッ」とした軽い食感で、麦の香ばしさを強く感じられます。
デンプンの性質の違いは、そのまま食感の大きな違いとなって表れます。
最大の違い:食感(もちもち・ぷちぷち vs パサパサ・さらり)
もち麦
アミロペクチン由来の強い粘りにより、ご飯に混ぜて炊くと「もちもち」感が生まれます。また、食物繊維が豊富なため、「ぷちぷち」とした独特の歯ごたえがあるのも特徴です。冷めても固くなりにくく、お弁当などにも向いています。
大麦(うるち性・押麦)
粘り気が少ないため、ご飯に混ぜて炊くと「さらり」とした軽い食感になります。人によっては「パサパサする」と感じることもありますが、この食感が「麦とろご飯」のとろろと非常に相性が良いのです。
見た目の違い(押麦と丸麦)
もち麦
「丸麦(まるむぎ)」といって、精麦(皮を削る)しただけの、丸い粒のまま売られていることが多いです。中央に黒い線(黒条線)が残っているのが特徴です。
大麦(うるち性)
「押麦(おしむぎ)」として売られているのが一般的です。これは、うるち性大麦が硬く吸水しにくいため、食べやすくするために一度蒸してからローラーで平たく押しつぶしたものです。この加工により、吸水性が高まり、白米と一緒に炊きやすくなります。
栄養・成分・健康面の違い(β-グルカン)
「もち麦」が健康食品として注目される最大の理由は、水溶性食物繊維「β-グルカン(ベータグルカン)」の含有量が、一般的なうるち性大麦に比べて約1.5倍も多い傾向があるためです。β-グルカンには、食後の血糖値上昇抑制、コレステロール値の低減、腸内環境の改善といった健康機能性が報告されています。
「もち麦」が注目される理由:水溶性食物繊維「β-グルカン」
大麦は、うるち性・もち性ともに食物繊維が非常に豊富です。
特に注目されているのが、水溶性食物繊維の一種である「β-グルカン」です。
農林水産省や消費者庁の情報によれば、大麦β-グルカンには以下のような健康機能性が報告されています。
- 食後の血糖値上昇抑制:β-グルカンがデンプンを包み込み、消化・吸収を穏やかにします。
- コレステロール値の低減:体内のコレステロールや胆汁酸を吸着して体外に排出します。
- 腸内環境の改善(腸活):善玉菌のエサとなり、腸のぜんどう運動を活発にします。
そして、「もち麦(もち性)」は、このβ-グルカンを一般的な「うるち性」の大麦よりも約1.5倍も多く含む品種が多いのです。
栄養成分の比較表
一般的なうるち性大麦(押麦)ともち麦の栄養成分(100gあたり)の比較目安です。
| 項目 | 大麦(押麦・うるち性) | もち麦(もち性) |
|---|---|---|
| カロリー | 約320〜340 kcal | 約320〜340 kcal |
| 食物繊維(総量) | 約9〜10 g | 約12〜14 g |
| 水溶性食物繊維 | 約3〜4 g | 約6〜8 g |
| (うち β-グルカン) | (約3〜6 g) | (約6〜12 g) |
※数値は「日本食品標準成分表2020年版」や各種製品データを参考にした目安です。品種により含有量は大きく異なります。
使い方・料理での扱い方の違い
「もち麦」は、そのもちもち・ぷちぷちした食感を活かし、白米に混ぜて炊くのはもちろん、茹でてサラダやスープ、ハンバーグの具材として使うのがおすすめです。「うるち麦(押麦)」は、粘りが少なくさらりとした食感が特徴で、「麦とろご飯」との相性が抜群です。
「もち麦」のおすすめの使い方(ご飯、サラダ)
もち麦は、その食感と健康効果(β-グルカン)を活かした使い方が適しています。
- もち麦ご飯:白米に1〜3割程度混ぜて炊くだけで、もちもち・ぷちぷちした食感が楽しめます。
- 茹でもち麦:もち麦を15〜20分ほど茹でて冷凍保存しておくと、サラダのトッピングや、スープの具材、ハンバーグのかさ増しなどに手軽に使えます。
「うるち麦(押麦)」のおすすめの使い方(麦とろご飯)
うるち麦(押麦)は、伝統的な麦ご飯の味わいを楽しむのに適しています。
- 麦とろご飯:粘り気が少ない押麦は、とろろ(山芋)の粘り気と非常によく合います。とろろが押麦ご飯にサラッと絡み、最高の「のどごし」を生み出します。
- グラノーラ:押麦は平たく加工されているため、オーブンで焼きやすく、自家製グラノーラのベースとしても使いやすいです。
起源・歴史・文化的背景
大麦は世界で最も古い穀物の一つです。日本では、弥生時代には栽培が始まり、米の裏作として長く日本の食文化を支えてきました。伝統的に食べられてきたのは「うるち性」の押麦です。「もち性」のもち麦は、昔から存在はしていましたが、その健康機能性(β-グルカン)が科学的に注目されたのは2000年代以降であり、近年の健康ブームによって急速に人気が高まりました。
「大麦(うるち性)」の麦ご飯は、特に米が貴重だった時代に、米の消費を抑えるための「かて飯」として、また脚気(かっけ)予防(ビタミンB群が豊富なため)として、古くから日本の食卓を支えてきた存在です。
「麦とろご飯」 が今も愛され続けているのは、その素朴で香ばしい味わいが日本人の記憶に刻まれているからでしょう。
一方、「もち麦」は、その「もちもち」した食感が白米と違和感が少なく食べやすいこと、そして何よりも「β-グルカン」という健康成分が豊富に含まれていること が科学的に証明されたことにより、2010年代以降に「健康食品」として爆発的なブームとなりました。
【体験談】麦とろご飯ともち麦ご飯、食べ比べの衝撃
僕にとって「大麦」といえば、子供の頃に食べた「麦ご飯」の記憶でした。
それは「押麦」 が入ったご飯で、白米に比べて少しパサパサしていて、麦の独特の匂いがある、正直あまり得意ではないものでした。唯一、とろろをかけて「麦とろご飯」 にした時だけは、あのパサパサ感がとろろと絡んで美味しく食べられたのを覚えています。
しかし数年前、健康ブームで「もち麦」が流行り始めた時、半信半疑で試してみたんです。炊き上がったご飯を見て、まず「押麦」のように平たくない、丸い粒 であることに驚きました。
そして一口食べて、二度目の衝撃を受けました。「も、もちもちする!ぷちぷちだ!」
僕が知っている「大麦(押麦)」のパサパサ感はどこにもなく、むしろ白米の食感を邪魔せず、心地よい歯ごたえと満足感をプラスしてくれていたのです。「もち麦」は「うるち麦(押麦)」とは全くの別物なのだと、この時初めて実感しました。
同じ「大麦」という名前でも、品種(うるち性・もち性)と加工(押麦・丸麦)が違うだけで、ここまで食感が変わるのかと、穀物の奥深さを知った体験でしたね。
大麦ともち麦に関するFAQ(よくある質問)
ここでは、大麦ともち麦に関してよくある疑問にお答えします。
結局、大麦ともち麦は同じものですか?
「もち麦」は「大麦」の一種です。お米に「うるち米」と「もち米」があるように、大麦にも「うるち性」と「もち性」があり、「もち性」の品種を「もち麦」と呼びます。
押麦(おしむぎ)ともち麦の違いは何ですか?
「押麦」は「うるち性」の大麦を食べやすく平たく加工したもの で、食感は「さらり・パサパサ」です。「もち麦」は「もち性」の大麦で、食感は「もちもち・ぷちぷち」です。
健康やダイエット目的なら、どっちが良いですか?
「もち麦」をおすすめします。もち麦は、水溶性食物繊維「β-グルカン」をうるち性大麦より豊富に含む傾向があり、血糖値の上昇抑制や腸内環境の改善効果 がより期待できます。また、もちもちした食感は満腹感を得やすく、食べ過ぎ防止にもつながります。
まとめ|健康目的なら「もち麦」、伝統の味なら「うるち麦」
大麦ともち麦の違い、スッキリしましたでしょうか。
どちらも栄養豊富な「大麦」ですが、その個性は大きく異なりました。
- 大麦(うるち性・押麦):「うるち性」の品種。粘りが少なく「さらり・パサパサ」した食感。麦とろご飯に最適 。
- もち麦:「もち性」の品種。粘りが強く「もちもち・ぷちぷち」した食感。「β-グルカン」がより豊富で、健康・ダイエット向き。
健康や美容のために食物繊維を積極的に摂りたい方、ご飯のもちもち感を損なわずに満足感を得たい方には「もち麦」がおすすめです。
昔ながらの麦とろご飯や、さらりとした麦の香ばしさを楽しみたい方には「大麦(押麦)」がおすすめです。
ぜひ、この違いを理解して、あなたの食生活に合った「大麦」を選んでみてくださいね。