「菜種油(なたねあぶら)」と「キャノーラ油」。
スーパーの食用油コーナーで隣に並んでいることも多く、どちらも同じアブラナ科の植物から採れる油ですが、この二つには明確な違いがあります。
結論から言うと、キャノーラ油は、従来の菜種油の品種を改良して作られた、特定の菜種(キャノーラ種)から採れる油のことです。
つまり、キャノーラ油は菜種油という大きなカテゴリの中の一つ、ということになりますね。現在、日本の家庭で一般的に「なたね油」として流通している商品の多くが、この「キャノーラ油」を指しています。
この記事を読めば、なぜ品種改良が必要だったのか(エルシン酸の問題)、成分や風味の違い、そして料理での使い分けまでスッキリと理解できますよ。
菜種油とキャノーラ油の違いを比較表で早分かり
「菜種油」はアブラナ科の種子(菜種)から採れる油の総称です。一方、「キャノーラ油」は、菜種油の中でも、健康への懸念があったエルシン酸や、特有の風味の原因となるグルコシノレートを品種改良によって大幅に低減させた「キャノーラ種」という特定の品種から採れた油のみを指します。
まずは、伝統的な菜種油(和種)と、現在主流のキャノーラ油(洋種)の主な違いを一覧表で比較してみましょう。
| 項目 | 菜種油(和種・伝統的なもの) | キャノーラ油(洋種・改良品種) |
|---|---|---|
| 原材料 | アブラナ科の種子(和種) | アブラナ科の種子(キャノーラ種) |
| 分類 | 菜種油(総称) | 菜種油の一種 |
| エルシン酸 | 多く含む(約20~50%) | 基準値以下(2%未満) |
| グルコシノレート | 多く含む | 基準値以下 |
| 風味・香り | 独特の香り、青臭さ、ピリッとした辛味 | クセがなく淡白、無味無臭に近い |
| 主な用途 | 風味を活かす炒め物、伝統料理 | 揚げ物、炒め物、ドレッシング(万能) |
| 主な産地(日本市場) | 日本(国産) | カナダ、オーストラリア(輸入) |
菜種油とキャノーラ油の定義・原材料の違い
「菜種油」はアブラナ科植物の種子から採れる油の全体を指す言葉です。これに対し「キャノーラ油」は、その中でも特定の「キャノーラ種」という品種の種子のみを原料とした油を指します。
「菜種油」はアブラナ科の種子から採る油の総称
菜種油(なたねあぶら、Rape Seed Oil)とは、アブラナ科アブラナ属の植物(セイヨウアブラナ、在来ナタネなど)の種子(菜種)から圧搾・抽出して作られる植物油の総称です。
日本では古くから灯火用(行灯など)や食用として利用されてきました。
「キャノーラ油」は品種改良された菜種(キャノーラ種)の油
キャノーラ油(Canola Oil)は、菜種油の一種ですが、特定の品種「キャノーラ種」の種子を原料としたものだけを指します。
「キャノーラ」という名前は、品種改良を主導したカナダに由来し、「Canadian Oil, Low Acid(カナダの、低酸=エルシン酸が低い、油)」の頭文字などを組み合わせた造語です。
菜種油とキャノーラ油の歴史的背景(品種改良)
従来の菜種油(和種)には、心臓への影響が懸念される「エルシン酸」と、独特の風味を生む「グルコシノレート」が多く含まれていました。1970年代にカナダでこれらを大幅に低減させた品種「キャノーラ種」が開発され、世界的に普及しました。
なぜわざわざ「キャノーラ油」という新しい名前を付けて区別する必要があったのでしょうか。それには、従来の菜種油が抱えていた成分上の課題が関係しています。
従来の菜種油(和種)と「エルシン酸」の問題
古くから日本などで使われてきた在来種(和種)の菜種油には、「エルシン酸(エルカ酸)」という脂肪酸が約20~50%と多く含まれていました。
このエルシン酸は、動物実験において心臓疾患のリスクを高める可能性が指摘され、1970年代頃から世界的にその摂取を控える動きが広まりました。
また、「グルコシノレート」という成分も多く含んでおり、これが油に移行すると、独特の青臭さやピリッとした風味の原因となっていました。
カナダでの品種改良(キャノーラ種の誕生)
こうした背景から、カナダで国家的なプロジェクトとして品種改良が進められました。
その結果、1974年に「エルシン酸」と「グルコシノレート」の含有量を劇的に低減させた新しい品種が開発されました。これが「キャノーラ種」です。
現在、国際的な規格(コーデックス規格)では、エルシン酸の含有量が全脂肪酸の2%未満であることなどが「キャノーラ油」の定義とされています。
日本で現在「なたね油」や「サラダ油(なたね使用)」として安価に流通している商品のほとんどは、カナダやオーストラリアから輸入されたキャノーラ種(洋種)を原料とした「キャノーラ油」なんですね。
菜種油とキャノーラ油の栄養・成分の違い
キャノーラ油は、エルシン酸とグルコシノレートが基準値以下に抑えられています。また、酸化に強いオレイン酸が多く、必須脂肪酸であるオメガ3(α-リノレン酸)も他の植物油に比べて比較的多く含むのが栄養的な特徴です。
エルシン酸とグルコシノレートの含有量
前述の通り、キャノーラ油はエルシン酸とグルコシノレートの含有量が極めて低いのが最大の特徴であり、伝統的な菜種油(和種なたね油)との決定的な違いです。
これにより、健康面での懸念が払拭され、風味のクセもなくなりました。
脂肪酸組成(オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸)
キャノーラ油は、脂肪酸組成のバランスが良いことでも知られています。
- オレイン酸(オメガ9):約60%と豊富に含まれます。オリーブオイルにも多い脂肪酸で、酸化しにくく(熱に強く)、血中の悪玉コレステロールを下げる働きがあるとされています。
- リノール酸(オメガ6):約20%。必須脂肪酸ですが、現代人は摂りすぎの傾向があります。
- α-リノレン酸(オメガ3):約10%。必須脂肪酸で、体内でEPAやDHAに変換されます。他の主要な植物油(大豆油、コーン油など)と比べて含有量が多いのが特徴です。
菜種油とキャノーラ油の味・風味・色の違い
キャノーラ油は、品種改良によりグルコシノレートが除去されているため、風味がほとんどなく、無味無臭に近いのが特徴です。色は淡い黄色をしています。
一方、伝統的な和種の菜種油(玉締め圧搾法などで作られたもの)は、グルコシノレート由来の独特の香ばしい風味や、わずかな青臭さ、ピリッとした辛味を感じることがあります。色はキャノーラ油よりも濃い黄色や琥珀色をしていることが多いですね。
使い方・料理での扱い方の違い
クセのないキャノーラ油は、揚げ物、炒め物、ドレッシングまで幅広く使える「万能油」です。一方、伝統的な菜種油(和種)は、その独特の風味を活かして、料理のアクセントとして使うのに向いています。
キャノーラ油:クセがなく加熱料理に万能
キャノーラ油は風味が淡白でクセがないため、あらゆる料理に使える万能油です。
特にオレイン酸が豊富で酸化安定性が高く、熱に強いため、揚げ物や炒め物に最適です。素材の味を邪魔しないので、ドレッシングやマヨネーズ、お菓子作りのベースオイルとしても幅広く使われています。
従来の菜種油(和種):独特の風味を活かす
国産の在来種などを原料にした伝統的な菜種油は、その独特の香ばしさや風味を活かす使い方が向いています。
例えば、野菜の炒め物や和え物、きんぴらごぼうなどに使うと、料理にコクと個性を与えてくれます。ただし、風味が強いため、繊細な味付けの料理やお菓子作りには向かない場合があります。
体験談:揚げ物で実感するキャノーラ油の「クセのなさ」
僕も以前、料理好きの知人から国産の「和種なたね油」をいただいたことがあります。色が濃く、独特の香ばしい香りがするのが印象的でした。
その油で野菜の天ぷらを揚げてみたところ、衣にしっかりとした風味とコクが加わり、「昔ながらの天ぷら」という感じで非常に美味しかったのを覚えています。ただ、同時に素材(野菜)の香りよりも油の香りが勝ってしまう感覚もありました。
後日、いつものキャノーラ油で同じ天ぷらを揚げてみると、油の香りはほとんどせず、野菜そのものの甘みや香りがストレートに感じられました。カラッと軽く揚がり、いくらでも食べられそうな仕上がりです。
この経験から、「料理に油の風味を加えたい時は和種なたね油」、「素材の味を活かしたい時はキャノーラ油」という使い分けを明確に意識するようになりました。キャノーラ油の「クセのなさ」は、家庭料理において最大の長所なのだと実感しましたね。
菜種油とキャノーラ油に関するよくある質問
「なたね油」と「キャノーラ油」は全く同じものですか?
キャノーラ油は菜種油の一種です。現在、日本のスーパーなどで「なたね油」や「サラダ油(なたね)」として販売されている家庭用商品のほとんどは「キャノーラ油」です。ただし、こだわりの食材店などでは、品種改良前の伝統的な「和種なたね油」も販売されています。厳密には「なたね油」という総称の中に「キャノーラ油」と「和種なたね油」などがある、と理解するのが正確ですね。
キャノーラ油は体に悪いと聞きましたが本当ですか?
キャノーラ油は、かつて健康への懸念が指摘されたエルシン酸を、品種改良によって基準値以下まで低減させています。また、酸化に強いオレイン酸や、必須脂肪酸のオメガ3(α-リノレン酸)も含んでいます。他の油と同様、摂りすぎは良くありませんが、適切に摂取する分には安全な油と考えられています。一部で遺伝子組み換え原料の使用を懸念する声もありますが、市場に流通しているものは国の安全基準審査を経ています。
キャノーラ油は加熱に強いですか?
はい、加熱に強い油です。キャノーラ油の主成分であるオレイン酸(オメガ9)は、二重結合が一つしかない一価不飽和脂肪酸であり、酸化安定性が高いのが特徴です。そのため、揚げ物や炒め物など、高温での加熱調理に非常に向いています。
まとめ:菜種油とキャノーラ油の違いを知って使い分けよう
菜種油とキャノーラ油の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
「菜種油」という大きな枠の中に、品種改良によって健康懸念成分を取り除き、万能に使えるようにした「キャノーラ油」がある、というのが結論です。
- 菜種油(和種):伝統的な品種。エルシン酸やグルコシノレートを含む。独特の風味が特徴。
- キャノーラ油(洋種):菜種油の一種。品種改良で上記成分を低減。クセがなく熱に強い万能油。
現在、私たちが家庭で「なたね油」として使っているものの多くは、カナダやオーストラリアから輸入された原料を使った「キャノーラ油」です。そのクセのなさと加熱への強さが、日本の家庭料理を支えていると言えますね。
品種改良の歴史や植物油の成分についてさらに詳しく知りたい場合は、農林水産省の広報誌『aff(あふ)』の特集記事なども非常に参考になりますよ。
「違いラボ」では、他にも様々な食材・素材の違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧ください。