鉄と鉄分の明確な違い!「分」が付く理由は?

「鉄」と「鉄分」、どちらも貧血予防などでよく聞く言葉ですよね。

ですが、この二つの言葉の違いを正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。

実は、「鉄」は金属や元素そのものを指す科学的な用語であり、「鉄分」は食品に含まれる栄養素としての鉄を指す口語的(日常的)な表現という明確な違いがあります。

この記事を読めば、両者の厳密な違いはもちろん、栄養学で非常に重要な「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の違い、そして鉄分を効率よく摂取するための具体的な食品や食べ合わせまで、スッキリと理解できます。

それでは、まず最も重要な結論から見ていきましょう。

結論|鉄と鉄分の違いを一覧表で比較

【要点】

最も大きな違いは、「鉄(Fe)」が金属元素そのものを指すのに対し、「鉄分」は食品に含まれる「栄養素としての鉄」を指す日常的な言葉である点です。栄養素としての鉄分には、吸収率が異なる「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類が存在します。

「鉄」と「鉄分」の違いについて、最も重要なポイントを一覧表にまとめました。

項目鉄(てつ)鉄分(てつぶん)
指すもの金属元素(元素記号:Fe)栄養素(ミネラルの一種)
使われる文脈科学、化学、工業、建築など栄養学、食品、健康
言葉の性質学術的・専門的用語口語的・日常的表現
栄養学上の分類(分類なし)ヘム鉄、非ヘム鉄
具体例鉄骨、鉄鍋、鉄棒鉄分が豊富な食品、鉄分補給

このように、「鉄分」という言葉は、「水分」や「塩分」と同じように、食品や栄養の話をする際に使われる日本特有の表現なんですね。栄養学の専門的な文脈では、単に「鉄」と呼ばれるのが一般的です。

鉄と鉄分の定義・意味の違い

【要点】

「鉄」は元素記号Feで示される金属元素そのものです。一方、「鉄分」は「食品に含まれるミネラル成分としての鉄」を指す言葉で、特に栄養学や日常の食生活の文脈で使われます。

なぜこの二つの言葉が使い分けられるのか、それぞれの厳密な定義を見ていきましょう。

鉄(Fe)とは?(科学的な定義)

「鉄」とは、元素記号「Fe」で表される金属元素そのものを指します。

私たちの日常生活では、鉄骨や鉄筋、フライパンや鉄瓶、鉄道のレールなど、工業製品や建築材料としての「金属の鉄」をイメージすることがほとんどですよね。

これは化学や物理学の世界で使われる学術的な用語です。

鉄分とは?(栄養学的な定義)

一方、「鉄分」とは、食品に含まれている「栄養素(ミネラル)としての鉄」を指す、やや口語的な(日常会話的な)表現です。

「水分(食品に含まれる水)」「塩分(食品に含まれる食塩)」といった言葉と同じ使われ方で、「鉄の成分」という意味合いで広く浸透しています。

厚生労働省などの公的な栄養指導文書では、この栄養素を単に「鉄」と表記することがほとんどですが、日常会話や食品パッケージでは「鉄分補給」「鉄分豊富」といった表現の方が一般的ですね。

つまり、指している物質は同じ「Fe」ですが、それを「材料・金属」として見るか、「栄養素」として見るかで言葉を使い分けているのです。

【重要】栄養素としての「鉄分」の2つの種類

【要点】

栄養素としての鉄分は、吸収率が大きく異なる2種類に分類されます。動物性食品に含まれる「ヘム鉄」は吸収率が高い(15〜25%)ですが、植物性食品に含まれる「非ヘム鉄」は吸収率が低い(2〜5%)のが特徴です。

ここからは、私たちが食品から摂取する「鉄分(栄養素としての鉄)」について、非常に重要な分類を解説します。

鉄分は、その化学的な構造と吸収のされ方によって、「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類に分けられます。この違いを理解することが、効率的な鉄分補給の鍵となります。

ヘム鉄とは?(特徴と吸収率)

ヘム鉄は、肉や魚などの動物性食品に多く含まれる鉄分です。

具体的には、血液の色素である「ヘモグロビン」や、筋肉の色素である「ミオグロビン」を構成する成分として存在しています。

最大のメリットは、体に非常に吸収されやすいことです。摂取した量の約15〜25%が体内に吸収されると言われており、非常に効率の良い鉄分です。

非ヘム鉄とは?(特徴と吸収率)

非ヘム鉄は、野菜、穀物、豆類、海藻などの植物性食品に多く含まれる鉄分です。

また、卵や乳製品に含まれる鉄分も非ヘム鉄に分類されます。

ヘム鉄と比べた際の最大の違いは、吸収率が低いことです。摂取した量の約2〜5%程度しか吸収されないとされています。

ただし、非ヘム鉄は他の栄養素との「食べ合わせ」によって、吸収率を格段にアップさせることができます(詳しくは後述します)。

鉄分の体内での働きと健康面での重要性

【要点】

鉄分の最も重要な働きは、血液中のヘモグロビンの成分となり、呼吸で取り込んだ酸素を全身の細胞に運搬することです。不足すると酸素が全身に行き渡らず、貧血による倦怠感や立ちくらみ、頭痛などを引き起こします。

鉄分は、成人の体内に約3〜5g存在し、そのうち約70%が血液中の赤血球に含まれる「ヘモグロビン」の成分となっています。

鉄分の主な働きは以下の通りです。

  1. 酸素の運搬(最重要)
    ヘモグロビンの中心的な構成要素として、肺から取り込んだ酸素と結合し、それを全身のあらゆる組織や細胞に送り届ける役割を担います。
  2. エネルギー生成の補助
    細胞がエネルギーを生み出す(代謝する)過程でも、鉄は重要な役割を果たしています。
  3. 筋肉での酸素貯蔵
    約10%は筋肉中の「ミオグロビン」として存在し、筋肉が運動する際に必要な酸素を貯蔵します。

もし鉄分が不足すると、ヘモグロビンが正常に作られなくなります。その結果、全身に十分な酸素を運べなくなり、「鉄欠乏性貧血」を引き起こします。

貧血の主な症状には、以下のようなものがあります。

  • 動悸、息切れ
  • 倦怠感、疲れやすさ
  • 立ちくらみ、めまい
  • 頭痛、集中力の低下
  • 顔色が悪くなる

特に月経のある女性や、成長期の子供、妊婦・授乳婦の方は鉄分が不足しやすいため、意識的な摂取が推奨されています。(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「鉄」

鉄分(ヘム鉄・非ヘム鉄)を多く含む食品

【要点】

ヘム鉄は「レバー」「赤身の肉(牛肉、まぐろ、かつお)」などに豊富です。非ヘム鉄は「ほうれん草」「小松菜」「ひじき」「大豆製品(納豆、豆腐)」などに多く含まれています。

では、具体的にどのような食品に鉄分が多いのでしょうか。「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分けて、代表的な食品を紹介します。

ヘム鉄が豊富な食品例

ヘム鉄は、色の濃い(赤い)動物性食品に豊富です。

  • 肉類:豚レバー、鶏レバー、牛レバー、牛赤身肉(ヒレ、もも)
  • 魚介類:かつお、まぐろ(赤身)、いわし(丸干し)、あさり、しじみ

非ヘム鉄が豊富な食品例

非ヘム鉄は、色の濃い野菜や豆類、海藻類に豊富です。

  • 野菜類:ほうれん草、小松菜、枝豆、切り干し大根
  • 豆類・穀類:納豆、豆腐、豆乳、きな粉、レンズ豆
  • 海藻類:ひじき(乾)、あおのり
  • その他:卵黄、ごま

鉄分の吸収率を高める食べ合わせ・調理法

【要点】

吸収率の低い「非ヘム鉄」は、「ビタミンC」や「動物性たんぱく質」と同時に摂取することで吸収率が大幅に向上します。逆に、タンニン(お茶)やフィチン酸(玄米)は吸収を妨げるため、食事と時間を空けるのが理想です。

前述の通り、非ヘム鉄は吸収率が低いのが難点です。しかし、食べ合わせを工夫することで、その吸収率を格段に上げることが可能です。

【吸収率を「高める」組み合わせ】

  1. 非ヘム鉄 + ビタミンC
    ビタミンC(ピーマン、ブロッコリー、柑橘類、レモン汁など)は、非ヘム鉄を吸収されやすい形に変える働きがあります。ほうれん草のおひたしにレモン汁をかけるのは、非常に理にかなった食べ方ですね。
  2. 非ヘム鉄 + 動物性たんぱく質
    肉や魚に含まれるたんぱく質も、非ヘム鉄の吸収を助けます。野菜炒めに豚肉を加える、ひじきの煮物に鶏肉を入れるといった工夫が効果的です。

【吸収率を「妨げる」組み合わせ】

逆に、鉄分の吸収を阻害してしまう成分もあります。

  • タンニン:コーヒー、紅茶、緑茶などに多く含まれます。食事中や食後すぐに飲むのは避け、時間を空けるのが賢明です。
  • フィチン酸:玄米や豆類の外皮に多く含まれます。
  • シュウ酸:ほうれん草に多く含まれますが、アク抜き(下ゆで)をすることで除去できます。

体験談|鉄分不足の指摘と食生活の見直し

僕自身、数年前に健康診断で「隠れ貧血(フェリチン低値)」、つまり鉄分の蓄えが少ない状態だと指摘されたことがあります。

当時は、立ち上がった時にクラッとしたり、午後に強い倦怠感を感じたりすることが多かったのですが、「疲れだろう」と見過ごしていました。

このままではいけないと思い、まずは食生活の見直しから始めました。

それまでは苦手で避けていたレバー(ヘム鉄)を、週に一度は食べるように習慣化。また、ほうれん草や小松菜(非ヘム鉄)を食べる際は、必ずブロッコリーやピーマン(ビタミンC)と一緒に炒めたり、食後にみかんやキウイ(ビタミンC)を食べたりする「食べ合わせ」を徹底しました。

非ヘム鉄はビタミンCと一緒に摂る。この知識が本当に役立ちましたね。

次の年の健康診断では、貯蔵鉄の数値も見事に基準値内に回復。立ちくらみや倦怠感も、いつの間にか感じなくなっていました。

この経験から、単に「鉄分」を摂るだけでなく、「鉄」の種類(ヘム鉄・非ヘム鉄)と「吸収率」を意識することがいかに重要かを痛感しました。

鉄と鉄分に関するよくある質問(FAQ)

質問1:「鉄分」の「分」ってどういう意味があるのですか?

「鉄分」の「分」は、「成分」や「養分」の「分」と同じで、「その物質に含まれる特定の要素」という意味合いで使われていますね。水分(水としての成分)や塩分(塩としての成分)と同じように、「鉄としての栄養成分」を指す言葉として定着した口語表現です。

質問2:鉄瓶や鉄のフライパンを使うと鉄分補給になりますか?

はい、なります。調理器具から溶け出す鉄は「非ヘム鉄」に分類されますが、微量ながらも食品に鉄分が移行し、摂取量を増やすことができます。特に鉄瓶でお湯を沸かすと、お茶やコーヒーに含まれるタンニンの影響を受けにくい「二価鉄」という形で溶け出すため、効率的とされていますよ。

質問3:ヘム鉄と非ヘム鉄、どちらを摂るのが良いですか?

どちらもバランス良く摂るのが理想です。吸収率だけ見ればヘム鉄が優れていますが、非ヘム鉄もビタミンCなどと組み合わせれば吸収率を高められます。動物性食品(ヘム鉄)と植物性食品(非ヘム鉄)を偏りなく食べる「バランスの良い食事」を心がけることが最も重要ですね。

まとめ|鉄と鉄分を理解して正しく摂取しよう

「鉄」と「鉄分」の違い、そして栄養素としての鉄分(ヘム鉄・非ヘム鉄)について、理解が深まったでしょうか。

今回のポイントを改めてまとめます。

  1. 「鉄」は元素記号Fe:科学的な文脈で使われる金属元素そのものを指します。
  2. 「鉄分」は栄養素:食品に含まれるミネラルとしての鉄を指す、日常的・口語的な表現です。
  3. 鉄分は2種類:吸収率の高い「ヘム鉄(動物性)」と、吸収率が低い「非ヘム鉄(植物性)」があります。
  4. 吸収率が鍵:非ヘム鉄は、「ビタミンC」や「動物性たんぱく質」と一緒に摂ることで吸収率が劇的にアップします。

この違いを知っておくだけで、日々の食生活で貧血を予防し、健康を維持するための「賢い選択」ができるようになります。

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