澄ましバターとギーの違いとは?製法・風味・発煙点を徹底比較

「澄ましバター」と「ギー」、どちらもバターから作られるオイル状の食材ですが、この二つの明確な違いをご存知ですか?

どちらもバターコーヒーや健康的な調理油として注目されていますが、実は「風味」と「製造工程」に決定的な違いがあります。

結論から言うと、澄ましバターはバターから水分とタンパク質(乳固形分)を分離・除去した「純粋な乳脂肪」です。一方、ギーは、澄ましバターを作る工程で、分離したタンパク質をさらに「加熱して焦がし(褐色化させ)」、その香ばしい風味を油に移したものを指します。

この記事を読めば、二つの製法の違いから、発煙点、料理での最適な使い分けまでスッキリと理解できます。もう売り場で迷うことはありません。

それではまず、二つの違いが一目でわかる比較表から見ていきましょう。

結論|澄ましバターとギーの違いが一目でわかる比較表

【要点】

澄ましバターとギーの最大の違いは「製造工程における加熱(焦がし)の有無」と、それに伴う「風味」です。澄ましバターは乳固形分を焦がさずに取り除くため、クリアなバター風味です。一方、ギーは乳固形分を褐色になるまで加熱(焦がす)するため、ナッツやキャラメルのような香ばしい風味が最大の特徴です。どちらも水分やタンパク質が除去されているため、発煙点が高く、常温保存が可能です。

同じバターオイルでも、焦がすかどうかで全く別の食材になると言えますね。

項目澄ましバター(Clarified Butter)ギー(Ghee)
定義バターから水分・タンパク質を除去した純粋な乳脂肪バターから水分・タンパク質を加熱・焦がして除去した純粋な乳脂肪
主な製法バターを加熱し、水分を蒸発させ、固形分を焦がさずに濾すバターを加熱し、水分を蒸発させ、固形分を褐色に焦がし、濾す
味・香りクリアなバターの風味、雑味がないナッツやキャラメルのような香ばしい風味
主な発祥フランス(西洋料理)インド(南アジア料理、アーユルヴェーダ)
発煙点(目安)非常に高い(約250℃)非常に高い(約250℃)
乳糖・カゼイン製造過程でほぼ除去される製造過程でほぼ除去される
保存方法常温保存可能常温保存可能
主な用途高温のソテー、ムニエル、ソースのベース高温の炒め物、揚げ物、風味付け(カレー、バターコーヒー)

澄ましバターとギーとは?定義と製法の違い

【要点】

どちらもバターから不純物(水分・乳固形分)を取り除いた「バターオイル」です。澄ましバターは、乳固形分が焦げる前に取り除きますギーは、乳固形分をあえて焦がし(褐色化させ)、その香ばしい風味を油に移す点で、製法が明確に異なります。

バターには約80%の乳脂肪のほか、約15%以上の水分、そしてタンパク質(カゼイン)や乳糖などの乳固形分が含まれています。この「不純物」が、バターを焦げやすくしている原因です。

澄ましバターもギーも、この不純物を取り除いて純度を高めた油、という点では共通しています。

澄ましバター(Clarified Butter):バターを「澄ませた」純粋な油

澄ましバターは、主にフランス料理で「ブール・クラリフィエ(Beurre Clarifié)」と呼ばれる技法です。

作り方は、無塩バターを鍋に入れて弱火でゆっくりと加熱します。すると、水分が蒸発し、タンパク質などの乳固形分が泡となって表面に浮かんできたり、鍋底に沈殿したりします。

この浮かんできた泡や沈殿物(乳固形分)が焦げる前に、火から下ろし、上澄みの透明な油だけを静かにすくうか、フィルターで濾(こ)したものです。

文字通り、バターを「澄ませた」純粋な乳脂肪(バターオイル)です。

ギー(Ghee):バターを「焦がして精製した」純粋な油

ギーは、インドや南アジアで古くから使われているバターオイルです。アーユルヴェーダ(インド伝統医学)では、最も優れた油の一つともされています。

製造工程は澄ましバターと似ていますが、決定的な違いが一つあります。

バターを加熱して水分を飛ばし、乳固形分が沈殿した後、火から下ろさずにさらに加熱を続けます。すると、鍋底に沈殿したタンパク質や乳糖が「メイラード反応」を起こし、キツネ色から褐色に焦げていきます

この焦げた固形分からナッツやキャラメルのような香ばしい香りが油に移ったところで火を止め、フィルターで濾したものがギーです。

「焦がす(褐色化させる)」という工程の有無が、二つの最大の違いなのです。

味・香り・食感の決定的な違い

【要点】

澄ましバターは、バターのミルキーな風味を残しつつ、よりクリアで雑味のない味わいです。ギーは、乳固形分を焦がすことによって生まれる、ナッツやキャラメルのような独特の甘く香ばしい香りが最大の特徴です。

製造工程の違いは、そのまま風味の違いに直結します。

澄ましバター:クリアなバターの香り

澄ましバターは、焦がす工程がないため、ギーのような強い香ばしさはありません

バターから水分や固形分が取り除かれているため、バター本来のクリーミーな香りは残しつつも、よりクリアで雑味のない、純粋なバターの風味がします。料理に使っても、バターのように焦げた匂いが出ず、素材の味を上品に引き立てます。

ギー:ナッツのような香ばしい風味

ギーの個性は、その圧倒的な「香り」にあります。前述の通り、タンパク質を焦がす(メイラード反応)ことで生まれる、ナッツ、ローストアーモンド、キャラメル、あるいはビスケットのような甘く香ばしい独特の芳香が特徴です。

この香りは非常に強く、料理に加えるだけで一気にエスニックな風味や深いコクを与えることができます。

食感は、どちらも常温ではバターより柔らかい半固形状(気温が低いと固まる)で、気温が高いと液体状になります。

栄養・成分・発煙点(煙が出る温度)の違い

【要点】

栄養面での最大の違いは、どちらも「乳糖(ラクトース)」と「カゼイン(タンパク質)」が製造工程でほぼ除去される点です。そのため、乳糖不耐症やカゼインに敏感な人でも摂取しやすいと言われています。また、不純物がないため、発煙点(約250℃)が非常に高く、高温調理に最適です。

ギーと澄ましバターは、成分と特性が非常に似通っています。

乳糖(ラクトース)とカゼインの有無

通常のバターには、微量の乳糖(ラクトース)とタンパク質(カゼイン)が含まれています。これが、乳製品でお腹がゴロゴロする(乳糖不耐症)人や、カゼインにアレルギー反応を示す人の問題となることがあります。

澄ましバターもギーも、製造工程でこれらの水分や乳固形分を分離・除去するため、乳糖とカゼインはほぼ含まれません

そのため、乳糖不耐症の人でも安心して使いやすいオイルとされています(※重度のアレルギーの場合は医師にご相談ください)。

発煙点(スモークポイント)の違い

これが調理における最大のメリットです。

通常のバターは、タンパク質などの不純物が含まれているため、約175℃という低い温度で焦げ始め、煙が出てしまいます(発煙点が低い)。

一方、澄ましバターとギーは、これらの不純物をほぼ100%取り除いた純粋な乳脂肪です。そのため、発煙点が約250℃と非常に高くなります。これは、揚げ物にも使えるサラダ油(約240℃以上)に匹敵する高さです。

高温で加熱しても焦げ付きにくく、酸化しにくい、非常に安定した調理油と言えます。

料理での最適な使い分け|「澄ます」か「香ばしく」か

【要点】

使い分けの鍵は「香ばしさが欲しいかどうか」です。澄ましバターはクリアな風味を活かし、フレンチのソテーやソースベースに最適です。ギーはその強い香ばしさを活かし、カレーの仕上げや炒め物、バターコーヒーに使うと、料理に深いコクと香りを加えられます。

どちらも「高温調理に使える」点は共通していますが、その「香り」の個性を活かして使い分けるのが正解です。

澄ましバターがおすすめの料理(ソテー・ソース)

「バターの風味は欲しいが、焦がしたくない」という西洋料理のニーズに最適です。

  • ムニエル、ソテー:魚や肉のソテーに最適。通常のバターのように焦げ付かず、きれいな焼き色とクリアなバター風味を与えます。
  • オランデーズソース:卵黄と澄ましバターで作るフレンチソースの定番。澄ましバターを使うことで、雑味がなく滑らかに仕上がります。
  • お菓子作り:フィナンシェなど、バターの焦げを避けたい焼き菓子に。

ギーがおすすめの料理(炒め物・風味付け)

「高温で炒める」かつ「ナッツのような香ばしい香りが欲しい」場合に最強です。

  • カレーの仕上げ:最後にギーを少量たらす(テンパリング)と、香りが劇的に豊かになります。
  • 炒め物:野菜炒めやチャーハンに使うと、いつもの料理がエスニックなごちそうに変わります。
  • バターコーヒー:コーヒーに加えると、深いコクとナッツのような香ばしさがプラスされます。
  • トースト:そのまま塗るだけで、キャラメルフレーバーのトーストのように楽しめます。

起源・価格・正しい保存方法

【要点】

澄ましバターはフランス料理で、ギーはインド料理やアーユルヴェーダで発展しました。どちらもバターから水分を飛ばして作るため、元のバターよりも高価になります。最大の利点は「常温保存」が可能であることです。水分を含まないため腐敗しにくく、冷暗所での長期保存に適しています。

起源:
澄ましバター(ブール・クラリフィエ)は、ソースやソテーを基本とするフランス料理の技術として発展しました。一方、ギーはインドやパキスタン、ネパールなど南アジアで数千年前から使われており、高温多湿な気候でもバターを長期保存するための知恵として生まれ、アーユルヴェーダ(インド伝統医学)では神聖な油ともされています。

価格:
どちらも、原料のバターから水分(約15%以上)や固形分を取り除いて作るため、元のバターよりも重量が減ります。その加工の手間も含め、一般的なバターよりも高価になります。特に「グラスフェッドバター」を原料にしたギーは、最高級品として扱われます。

保存方法:
これが最大の利点の一つです。
通常のバターは水分やタンパク質を含むため、冷蔵しないとすぐにカビが生えたり腐敗したりします。
しかし、澄ましバターとギーは、腐敗の原因となる水分やタンパク質をほぼ100%除去しています。そのため、フタをしっかり閉めていれば、直射日光を避けた冷暗所で「常温保存」が可能です。インドでギーが発展したのも、この優れた保存性のおかげですね。

【体験談】バターコーヒーで知った「焦がし」の風味の違い

僕も一時期、バターコーヒーに凝っていたことがあり、その時に澄ましバターとギーの両方を試しました。

最初は、バターが焦げるのが嫌で、自分で「澄ましバター」を作ってコーヒーに入れていました。確かに、バターよりもクリアで雑味がなく、MCTオイルとの馴染みも良い気がしました。でも、どこか物足りなさも感じていたんです。

そんな時、インド料理店で食べたカレーの仕上げにかけられていた「ギー」の香りに衝撃を受けました。「なんだこの甘くて香ばしい香りは!」と。

すぐに市販のギーを購入し、翌朝のバターコーヒーに入れてみました。ブレンダーで撹拌すると、いつものコーヒーが、まるでナッツ系のフレーバーラテか、キャラメルマキアートのような芳醇な香りに激変しました。

同じバターオイルなのに、タンパク質を「焦がす」か「焦がさない」か、ただそれだけの工程の違いで、こんなにも風味が変わるのかと驚きました。澄ましバターは「素材(バター)の風味を活かす」オイル、ギーは「焦がした香ばしさをプラスする」オイルなのだと、明確に理解できた体験でしたね。

澄ましバターとギーに関するよくある質問

Q1. 結局、澄ましバターとギーの一番の違いは何ですか?

A1. 「風味」です。ギーは製造工程で乳固形分を「焦がす」ため、ナッツやキャラメルのような香ばしい香りがします。澄ましバターは焦がさないため、クリアなバターの香りがします。

Q2. バターコーヒーにはどちらがおすすめですか?

A2. どちらも使えますが、好みによります。クリーミーでクリアなバター風味がお好みなら「澄ましバター」(または通常のグラスフェッドバター)。ナッツのような香ばしい風味とコクをプラスしたいなら「ギー」がおすすめです。

Q3. 澄ましバターやギーは自宅で作れますか?

A3. はい、どちらも作れます。無塩バターを鍋で弱火にかけ、水分を蒸発させます。白い泡(タンパク質)が浮き、鍋底に沈殿し始めたら、それを焦がさずに濾(こ)せば「澄ましバター」です。そのまま加熱を続け、沈殿物が茶色く色づき、香ばしい香りが立ってきたら火を止め、濾せば「ギー」が完成します。

まとめ|澄ましバターとギー、用途で選ぶのが正解

澄ましバターとギーの違い、スッキリ整理できたでしょうか。

どちらもバターから不純物を取り除いた素晴らしいオイルですが、その個性は明確に異なりました。

  • 澄ましバター
    乳固形分を焦がさないクリアなバター風味
    用途:フランス料理のソテー、ムニエル、ソースのベースなど。
  • ギー(Ghee)
    乳固形分を焦がすナッツのような香ばしい風味
    用途:インド料理(カレー)、炒め物、バターコーヒーの風味付けなど。

共通しているのは、発煙点が約250℃と高く乳糖・カゼインがほぼフリーで、常温保存が可能という点です。

「クリアな風味で高温調理」をしたいなら澄ましバター、「香ばしい風味を足したい」ならギー。このシンプルな使い分けで、あなたの料理はもっと豊かになるはずです。

どちらもバターという身近な食材・素材からできています。ぜひ、その奥深い風味の世界を楽しんでみてください。