日本の食卓を代表する青魚、「サバ」。
スーパーの鮮魚コーナーに行くと、「マサバ」と「ゴマサバ」という2種類の名前を見かけることがありますが、この二つの違いを正確にご存知ですか?
実はこの二つ、生物学的には異なる種類(別種)であり、見た目や脂のり、そして最も美味しい旬の時期が全く違うんです。
この記事を読めば、マサバとゴマサバの決定的な見分け方から、シメサバや塩焼きといった料理ごとの最適な使い分けまで、スッキリと理解できます。
これからは「今日は脂の乗ったシメサバが食べたいからマサバを、夏場にさっぱりと刺身で食べたいからゴマサバを」といったように、自信を持って選べるようになりますよ。まずは、二つの最も重要な違いから見ていきましょう。
結論|マサバとゴマサバの違いを一言でまとめる
マサバとゴマサバは、生物学的に異なる種類の魚です。最大の違いは「旬」と「脂のり」、そして「見た目(模様)」です。マサバは秋から冬に脂が乗る「寒サバ」が有名で、腹側が銀白色です。一方、ゴマサバは夏に旬を迎え(夏サバ)、腹側に明確な「ゴマ模様(黒い斑点)」があるのが特徴です。
どちらも同じサバ科サバ属の魚ですが、その特徴は明確に異なります。用途によって使い分けるのが、サバを最も美味しく楽しむコツですね。
まずは、この二つの基本的な違いを一覧表で確認してみましょう。
| 項目 | マサバ(真鯖) | ゴマサバ(胡麻鯖) |
|---|---|---|
| 分類 | スズキ系スズキ目サバ科サバ属(同属別種) | |
| 見た目の特徴 | 腹側が銀白色。背中の模様はハッキリ。 | 腹側に黒い斑点(ゴマ模様)がある。 |
| 断面(通称) | 平たい(平サバ) | 丸みを帯びている(丸サバ) |
| 主な旬 | 秋〜冬(寒サバ) | 夏(夏サバ)※通年脂が少なめ |
| 脂のり | 非常に多い(特に旬の時期) | マサバより少ない(さっぱり) |
| おすすめの料理 | シメサバ、塩焼き、味噌煮、刺身 | 刺身(ゴマサバ)、塩焼き、サバ節、サバ缶 |
| 価格帯 | 旬の時期は高価(特にブランドサバ) | マサバより安価な傾向 |
マサバとゴマサバの定義・分類・生態の違い
マサバとゴマサバは、どちらも「サバ科サバ属」に属しますが、学名が異なる生物学的な「別種」です。マサバは冷たい水を好み、ゴマサバは暖かい水を好むという生態的な違いがあります。
マサバ(真鯖)とは?
マサバ(学名:*Scomber japonicus*)は、日本近海で最も一般的に見られるサバです。「サバ」と言えば通常はこのマサバを指すことが多く、「真(まこと)のサバ」という意味合いで名付けられました。
日本海や太平洋の冷たい海域を好み、季節によって南北を回遊する魚です。秋になると産卵のために南下し、たっぷりと栄養を蓄えて脂が乗るため、「秋サバ」や「寒サバ」として珍重されます。
ゴマサバ(胡麻鯖)とは?
ゴマサバ(学名:*Scomber australasicus*)も、マサバと同じサバ属の魚ですが、生物学的には異なる種です。
マサバよりも暖かい海域を好み、太平洋側の南日本や東シナ海に多く生息しています。マサバほどの明確な季節回遊は行わず、一年を通して脂の量が比較的安定している(=マサバほど爆発的に脂が乗らない)のが特徴です。
福岡県の郷土料理「ごまさば」は、このゴマサバの鮮度の良いものを刺身にし、醤油やゴマなどで和えて食べる料理で、名前の由来にもなっています(ただし、現在では脂の乗ったマサバで作ることも多いようです)。
マサバとゴマサバの見た目の違い(見分け方)
最も簡単な見分け方は、魚の腹側を見ることです。黒い斑点がゴマのように散らばっていれば「ゴマサバ」、腹側がキレイな銀白色なら「マサバ」です。また、マサバは平たく、ゴマサバは丸っこい体型をしています。
スーパーで丸ごと一匹売られている場合、この二つを見分けるのは非常に簡単ですよ。
最大の違いは「腹部のゴマ模様」
名前の由来にもなっている通り、ゴマサバの腹部には、黒い小さな斑点がゴマを振りかけたように無数に散らばっています。
一方、マサバの腹側は、銀白色で模様がありません。
背中側の模様はどちらも似たような唐草模様(S字模様)ですが、マサバの方が模様がハッキリしている傾向があります。まずは「お腹にゴマがあるか、ないか」で判断するのが一番確実ですね。
ただし、鮮度が落ちるとゴマ模様が薄くなることがあるため、切り身の場合は判別が難しいこともあります。
断面と体高(平サバと丸サバ)
もう一つの見分け方として、魚を輪切りにした時の断面の形があります。
- マサバ:体が平べったい(側扁している)ため、断面は楕円形に近くなります。このことから「平サバ(ヒラサバ)」と呼ばれることもあります。
- ゴマサバ:マサバに比べて体が丸みを帯びているため、断面は円形に近くなります。こちらは「丸サバ(マルサバ)」と呼ばれます。
マサバとゴマサバの味・脂のり・食感の違い
味の最大の違いは「脂の量」です。マサバは旬(秋〜冬)になると全身に脂が乗り、とろけるような濃厚な味わいになります。ゴマサバは旬(夏)でも脂はさっぱりしており、身が締まった食感を楽しめます。
味と脂のり
マサバの真骨頂は、なんといっても旬の時期の圧倒的な脂のりです。「寒サバ」と呼ばれる冬のマサバは、全身が脂肪で真っ白になるほどで、その濃厚な旨味と甘みはトロにも匹敵すると言われます。
ゴマサバは、一年を通して脂のりが比較的少なく、さっぱりとした味わいです。「夏サバ」と呼ばれるように夏が旬とされますが、マサバの旬ほどの劇的な脂のりは期待できません。その分、魚本来の風味を強く感じることができます。
食感と身質
脂の量の違いは、食感にも影響します。
マサバは、脂が乗ると身質がきめ細かく、非常に柔らかく、しっとりとした食感になります。特にシメサバにした時の、酢で締まった皮目と、中のレアな身の脂が溶け合う感覚は格別です。
ゴマサバは、脂が少ない分、身がしっかりと締まっています。刺身で食べると、マサバにはないプリプリとした歯ごたえを感じられることがあります。
マサバとゴマサバの栄養・成分・健康面の違い
どちらもDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった良質な脂質を豊富に含みます。一般的に、脂質が多い旬のマサバの方が、DHA・EPAの含有量もゴマサバより多くなります。
サバは「青魚の王様」と呼ばれるほど栄養価が高い魚です。マサバもゴマサバも、私たちの健康維持に欠かせない栄養素を豊富に含んでいます。
- DHA(ドコサヘキサエン酸):脳の働きを活性化させると言われています。
- EPA(エイコサペンタエン酸):血液をサラサラにする効果が期待できます。
- ビタミンD:カルシウムの吸収を助けます。
- ビタミンB群:エネルギー代謝を助ける働きがあります。
文部科学省の「日本食品標準成分表」によると、旬のマサバ(まさば・生)は脂質の含有量が非常に多く、その分DHAやEPAの含有量もトップクラスです。
ゴマサバ(ごまさば・生)もDHA・EPAを豊富に含んでいますが、マサバ(特に旬のもの)と比較すると脂質の総量が少ないため、DHA・EPAの含有量もやや少なくなります。
旬・産地・価格の違い
最も大きな違いは「旬」です。マサバは脂が乗る「秋〜冬」が旬(寒サバ)であり、価格も高騰します。一方、ゴマサバは「夏」が旬(夏サバ)とされますが、価格はマサバに比べて安価で安定している傾向があります。
旬の違い|「秋サバ・寒サバ」のマサバ、「夏サバ」のゴマサバ
マサバ:
旬は明確で、秋から冬(10月〜2月頃)です。「秋サバ」「寒サバ」と呼ばれ、この時期のマサバは産卵前で最も脂が乗り、非常に高値で取引されます。大分県の「関さば」や神奈川県の「松輪サバ」など、ブランドサバとして確立されているものもこのマサバです。
ゴマサバ:
旬は夏(7月〜9月頃)とされています。マサバの漁獲量が減り、脂が落ちる夏場に美味しく食べられるため、「夏サバはゴマサバ」と言われることもあります。ただし、前述の通り、マサバの旬ほどの劇的な脂のりはなく、年間を通して味は比較的安定しています。
主な産地と価格帯
マサバは日本近海の広い範囲で獲れますが、特に三陸沖や九州北部などが有名です。旬のブランドサバは1匹数千円から一万円を超えることもあり、非常に高価です。
ゴマサバも日本近海で獲れますが、マサバより南の海域が中心です。マサバに比べて漁獲量が安定しており、脂のりも控えめなことから、価格はマサバよりも安価で安定していることが多いですね。
使い方・料理での扱い方の違い(シメサバ・サバ缶など)
脂のりが良く身が柔らかいマサバは、シメサバや塩焼き、味噌煮に最適です。脂が少なく身が締まっているゴマサバは、鮮度が良ければ刺身(ゴマサバ)に、またサバ節やサバ缶などの加工品原料としても多く使われます。
シメサバや生食(刺身)
シメサバ(きずし)には、圧倒的にマサバが向いています。特に旬の脂が乗ったマサバを酢で締めると、脂の甘みと酢の酸味が絶妙に調和し、とろけるような食感になります。
ゴマサバは、鮮度が抜群であれば「ゴマサバ」という郷土料理のように生(刺身)で食べられます。さっぱりとした身質と歯ごたえが特徴です。
※注意:サバ類には寄生虫(アニサキス)がいる可能性が非常に高いです。生食やシメサバにする場合は、信頼できる鮮魚店で購入するか、一度−20℃で24時間以上冷凍処理するなど、専門的な知識を持って扱う必要があります。
焼き魚・煮付け(塩焼き・味噌煮)
マサバは脂が多いため、塩焼きにすると皮はパリパリ、身はふっくらジューシーに仕上がります。味噌煮にしても、濃厚な脂が味噌ダレと絡み合い、格別の美味しさです。
ゴマサバは脂が少ないため、塩焼きや味噌煮にすると、マサバに比べて少しパサついた食感になりやすい傾向があります。調理の際は、油を足したり、煮る時間を短くしたりする工夫が必要です。
サバ缶や加工品
スーパーで売られている「サバの水煮缶」や「サバの味噌煮缶」。この原料として使われるのは、実はマサバが多いですが、ゴマサバも使われています。
ゴマサバは脂が少なく身が締まっているため、加工しても形が崩れにくく、缶詰の原料に適している側面があります。また、サバ節(削り節)などの原料としてもゴマサバが活躍しています。
体験談|シメサバで実感した脂の違い
僕も以前、釣りが趣味の友人から「サバが釣れたから」と、マサバとゴマサバを両方もらったことがあります。その時はまだ違いをよく知らず、両方ともシメサバに挑戦してみたんです。
見た目はゴマサバの方がお腹に斑点があって分かりやすかったですね。マサバはずんぐりとして平たく、ゴマサバはシュッと丸い感じでした。
同じ時間、同じ塩と酢で締めて、翌日食べ比べてみたところ……驚きました。
マサバのシメサバは、包丁を入れただけで脂がじっとりと滲み出てくるほど。口に入れると、酢の酸味を感じた直後に、マサバの強烈な脂の甘みが追いかけてきて、まさにとろける美味しさでした。
一方、ゴマサバのシメサバは、身がキュッと締まっていて、食感がしっかりしています。脂はほとんど感じず、酢の味が前面に出る、さっぱりとした仕上がりになりました。「これはこれでお酒の肴には良いけれど、シメサバの醍醐味はマサバの方にあるな」と痛感しましたね。
この経験から、料理によって魚の種類を選ぶことの重要性を学びました。特にサバは、その違いが顕著に出る魚だと感じています。
マサバとゴマサバに関するFAQ(よくある質問)
マサバとゴマサバについて、よくある疑問にお答えしますね。
スーパーで「サバ」としか書かれていない切り身はどっちですか?
これは難しい問題ですね。切り身だと腹の模様が見えないため、判別は困難です。ただし、一般的な傾向として、旬の時期(秋〜冬)に出回る脂の乗った切り身はマサバの可能性が高く、それ以外の時期や、価格が安価な場合はゴマサバの可能性も考えられます。脂のサシの入り方で見分けるのが一番ですが、最終的にはお店の人に聞くのが確実です。
「関サバ」はマサバですか?ゴマサバですか?
大分県佐賀関で獲れる有名なブランドサバ「関さば」は、「マサバ」です。豊後水道の速い潮流で育つため、身が締まりつつも上質な脂が乗っているのが特徴です。
アニサキスはどちらのサバに多いですか?
アニサキスは、マサバにもゴマサバにも寄生する可能性があります。どちらが多いという明確なデータはありませんが、サバを生で食べる際は、魚の種類に関わらず、鮮度管理と適切な処理(内臓の速やかな除去、目視確認、冷凍処理など)が絶対に必要です。信頼できるお店以外での生食は避けるのが賢明です。
まとめ|マサバとゴマサバ、どちらを選ぶべきか?
マサバとゴマサバの違い、これで完璧に使い分けられますね。
この二つは名前こそ似ていますが、旬も脂のりも全く異なる「別種」の魚です。
「とろける脂の旨味」を味わいたい時、シメサバや塩焼き、味噌煮でサバの魅力を存分に楽しみたいなら、マサバ(特に秋〜冬)を選びましょう。
「さっぱりとした味わい」や「プリプリした食感」を楽しみたい時、または夏場にサバの刺身を食べたいなら、ゴマサバがおすすめです。
それぞれの個性を理解すれば、あなたのサバ料理のレパートリーは格段に広がります。ぜひスーパーの鮮魚コーナーで、腹の「ゴマ模様」に注目して、選んでみてくださいね。
この他にも、様々な食材・素材の違いについて解説していますので、ぜひご覧ください。