大棗(タイソウ)とナツメ、この二つは基本的に同じ植物の果実ですが、「生薬としての呼び名」か「果実としての呼び名」かという点で大きく異なります。
実は、僕も薬膳を学び始めた頃、レシピにある「大棗」を探してスーパーを歩き回り、結局「ドライナツメ」を買って良いのか悩んだ経験があります。この記事を読めば、両者の定義の違いから、料理や体調に合わせた使い分け、さらには購入時の選び方まで、明確な基準を持つことができるでしょう。
それでは、まずは両者の決定的な違いから詳しく見ていきましょう。
結論|大棗とナツメの違いを一言でまとめる
植物としては同じ「ナツメ」ですが、乾燥させて生薬(漢方)として扱う場合を「大棗」、果実や一般食品として扱う場合を「ナツメ」と呼び分けます。特に品質や大きさが厳選されたものが大棗として流通する傾向にあります。
結論から言うと、大棗とナツメは同じ植物です。しかし、その用途と加工状態によって呼び名が変わります。
もっとも大きな違いは「役割」にあります。ナツメは果物として生食したり、ドライフルーツとしておやつ感覚で食べたりするものです。一方で、大棗は乾燥加工され、日本薬局方などの基準を満たしたものが「生薬」として扱われます。
以下の表で、主要な違いを整理しました。
| 項目 | 大棗(タイソウ) | ナツメ(棗) |
|---|---|---|
| 主な役割 | 生薬、漢方薬の原料、薬膳食材 | 果物、ドライフルーツ、菓子材料 |
| 状態 | 乾燥(蒸してから乾燥させることが多い) | 生、または乾燥 |
| 味の傾向 | 甘味が強く凝縮されている | リンゴのような酸味と甘味(生の場合) |
| 入手場所 | 漢方薬局、中華食材店 | スーパー、青果店、輸入食品店 |
料理レシピで「大棗」と書かれていれば、基本的には乾燥したナツメを使えば問題ありません。ただ、漢方薬としての厳密な効能を求める場合は、薬局で「大棗」として販売されているものを選ぶのが確実ですね。
定義・分類・原材料の違い|植物としては同じ?
どちらもクロウメモドキ科の落葉高木「ナツメ」の実です。日本薬局方において、乾燥させた果実が「タイソウ(大棗)」と定義されています。
植物学的には、どちらもクロウメモドキ科ナツメ属の「ナツメ(Ziziphus jujuba)」です。全く別の品種というわけではありません。
「大棗」という名前は、主に漢方や中医学の世界で使われます。文字通り「大きな棗(ナツメ)」という意味合いも含まれていますが、現在ではサイズにかかわらず、薬用として加工されたものを指すことが一般的です。
一方、「ナツメ」は植物そのものの名前であり、庭木として植えられたり、秋に実る果実そのものを指す言葉として広く使われています。日本でも古くから「万葉集」に登場するほど親しまれてきた植物ですね。
実は、中国では品種改良が進んでおり、生食用に適した品種や、乾燥加工に適した品種など数多くのナツメが存在します。しかし、日本国内で流通しているものは、そこまで厳密に品種分けされていないことが多く、用途(食用か薬用か)で呼び分けられているのが現状です。
味・香り・食感・見た目の違い
生の大棗(ナツメ)はシャキッとした食感でリンゴに似た味ですが、乾燥した大棗はねっとりとした甘味と弾力があり、プルーンや干し柿に近い風味になります。
味や食感については、「乾燥しているかどうか」で劇的に変わります。
生のナツメを食べたことはありますか?見た目は姫リンゴのようですが、食感もまさにリンゴそのもの。シャリシャリとしていて、爽やかな酸味と控えめな甘味があります。香りは青々しく、フルーティーですね。
一方、乾燥させた大棗(ドライナツメ)は、水分が抜けて糖分が凝縮されています。食感は皮が少し硬くなり、中はフカフカ、あるいはねっとりとしています。味は濃厚な甘味があり、干し柿やプルーン、デーツに似ていると表現されることが多いでしょう。
特に、生薬としての「大棗」は、蒸してから乾燥させる工程を経ることが多く、色が黒っぽく(あるいは濃い赤茶色に)なり、甘味と薬効がより高められています。そのままかじると、独特のコクのある甘味が口いっぱいに広がります。
料理に使う際、この強い甘味が砂糖代わりになることもあります。煮込み料理に入れると、とろりとした甘みとコクが出るのはこのためですね。
栄養・成分・健康面の違い|薬効はあるのか
大棗は漢方において「補気」「補血」「精神安定」の作用があるとされ、葛根湯などの漢方薬に配合されます。食品としてのナツメもミネラルや葉酸、食物繊維が豊富です。
健康面での違いは、やはり「薬としての効能が認められているか」という点に尽きます。
大棗は、日本薬局方に収載されている医薬品(生薬)です。漢方医学では「気(エネルギー)」を補い、胃腸の働きを整え、精神を安定させる作用があるとされています。例えば、風邪の引き始めに飲む「葛根湯」にも、体を温め、胃腸を守る目的で大棗が含まれています。
成分としては、サポニン、フルクトースなどの糖類、有機酸などが含まれています。特に「ジジフスサポニン」などの固有成分が、鎮静作用に関わっていると言われています。
一方、食品としてのナツメ(ドライフルーツ)も栄養価は非常に高いです。特に鉄分、カリウム、カルシウムなどのミネラル、葉酸、食物繊維が豊富で、女性の健康維持や貧血予防のおやつとして人気があります。
「1日に3個ナツメを食べれば年を取らない」という中国のことわざがあるほど、アンチエイジング食材としても注目されていますね。ただし、糖質も高めなので、食べ過ぎには注意が必要です。
使い方・料理での扱い方の違い
大棗は主に煮出し茶や薬膳スープ、参鶏湯(サムゲタン)の具材として煮込んでエキスを抽出します。ナツメ(ドライ)はそのままおやつとして食べるほか、刻んで菓子や料理のトッピングに使います。
キッチンでの使い分けですが、基本的には「煮出すか、そのまま食べるか」で考えると分かりやすいでしょう。
大棗(薬用・調理用ドライ)の使い方
乾燥して硬くなっている大棗は、水分を含ませて戻すか、長時間煮込んでエキスを抽出する使い方が適しています。
- 薬膳スープ・参鶏湯:丸ごと鍋に入れて煮込みます。鶏肉や生姜との相性が抜群です。
- なつめ茶:水からじっくり煮出して、煮汁を飲みます。実を崩して飲むとより甘みが増します。
- 煮物:角煮などに入れると、照りと自然な甘みが加わります。
ナツメ(食用・ソフトドライ・生)の使い方
おやつ用に加工されたドライナツメや、生のナツメは手軽さが魅力です。
- そのまま食べる:スナック感覚で。種があるので注意してください。
- コンポート・甘露煮:生のナツメは砂糖やワインで煮ると美味しいデザートになります。
- トッピング:ドライナツメを刻んで、ヨーグルトやシリアル、サラダに散らします。
薬膳料理を作る際、「大棗」が手に入らなければ、スーパーの中華食材売り場にある「乾燥ナツメ」で代用しても、風味や基本的な栄養価は十分に期待できます。
旬・産地・保存・価格の違い
生のナツメの旬は初秋のごく短い期間ですが、乾燥品は通年入手可能です。産地は中国産が主流で、国産(福井県など)は希少です。
入手性と価格についても触れておきましょう。
生のナツメは、日本では9月から10月頃にかけて収穫されますが、傷みやすいため市場に出回る期間は非常に短いです。見かけたら即買いのレア食材と言えますね。
乾燥した大棗(ナツメ)は通年手に入ります。産地は圧倒的に中国が多く、特に新疆ウイグル自治区などは良質なナツメの産地として有名です。韓国産のナツメも、肉厚で甘みが強いと評判です。
価格はピンキリですが、大粒で肉厚なもの、無農薬栽培のもの、そして「日本薬局方」の基準を満たした大棗は高価になります。一方、業務スーパーや輸入食品店で売られている袋入りの乾燥ナツメは、数百円程度と比較的リーズナブルです。
保存については、乾燥品は湿気を避ければ常温で長期保存が可能です。生の実や、煮出した後の大棗は冷蔵または冷凍で保存しましょう。
起源・歴史・文化的背景
原産は中国で、数千年の歴史があります。日本へは奈良時代以前に伝来し、薬用としてだけでなく、茶道具(棗)の名前の由来にもなっています。
ナツメの歴史は古く、原産地の中国では数千年前から栽培されていたと言われています。「桃栗三年柿八年、棗(なつめ)は金になりかねる」なんて言葉も日本にはありますが、これは成長が早く実をつけるが、木材として使えるようになるには時間がかかる、という意味合いで使われたりします(地域によって解釈は様々ですが)。
日本への伝来は奈良時代以前とされ、万葉集にもその名が見られます。平安時代の延喜式には、薬用として栽培されていた記録も残っています。
面白いのは、茶道で使う抹茶を入れる容器「棗(なつめ)」です。この容器の形がナツメの実に似ていることから、そう呼ばれるようになったというのは有名な話ですね。日本人にとっても、古くから馴染み深い植物だったことがうかがえます。
中国や韓国では、結婚式などの祝いの席でナツメが振る舞われることがあります。ナツメは「早生(早産)」に通じる音を持つことから、子孫繁栄の縁起物としても大切にされているのです。
薬膳ライフでの失敗と発見|僕の体験談
僕が初めて本格的に「サムゲタン」を作ろうとした時のことです。張り切って漢方薬局へ行き、「大棗」を買ってきました。薬剤師さんが奥から出してくれたその袋には、立派な赤黒い実が入っていて、いかにも効きそうな香りがしました。
家に帰り、レシピ通りに鶏肉や高麗人参と一緒にコトコト煮込みました。出来上がったスープは、大棗の甘みが溶け出して、滋味深い味わい。体の中からポカポカと温まるのを実感しました。
「これは美味しい!」と感動し、翌日、余った大棗をそのままおやつとしてかじってみたのです。ところが、これが思いのほか硬く、皮が口に残って食べにくい……。「あれ?ドライフルーツのナツメって、もっとサクサクしてなかったっけ?」
後で知ったのですが、僕が以前食べたことがあったのは、フリーズドライ加工されたスナック用の「ナツメチップス」だったのです。漢方用の大棗は、あくまで「煮出す」ことが前提の加工がされているものが多いんですね。
「目的によって選ぶべきナツメの状態が違う」ということを、身を持って学んだ出来事でした。それからは、煮込み料理には肉厚な大棗を、おやつにはサクサクのナツメチップスをと、使い分けるようにしています。
皆さんも、購入する際はパッケージの裏面や売り場を確認して、「調理用」なのか「そのまま食べる用」なのかを見極めると、失敗が少ないですよ。
よくある質問
Q. 乾燥ナツメは洗ってから使うべきですか?
A. はい、さっと水洗いすることをおすすめします。表面の汚れやほこりを落とすためです。特に煮込み料理に使う際は、洗ってから鍋に入れましょう。
Q. 1日に何個くらい食べていいのですか?
A. 1日3個〜5個程度が目安と言われています。栄養豊富ですが糖分も含まれるので、食べ過ぎはお腹が緩くなったりカロリー過多になる可能性があります。
Q. 生のナツメはどこで買えますか?
A. 秋の収穫時期(9月〜10月頃)に、道の駅やJAの直売所、一部の百貨店で見かけることがあります。最近はネット通販で予約注文するのが確実かもしれませんね。
まとめ|目的に合わせて選ぼう
大棗とナツメ、呼び名は違えど元は同じ恵みです。しかし、その加工法や流通の経緯によって、適した使い方が異なります。
- 本格的な薬膳や漢方薬として使いたいなら:漢方薬局などで「大棗」を選びましょう。
- 手軽なおやつや料理のアクセントにしたいなら:スーパーや輸入食品店で「ドライナツメ」を選びましょう。
どちらも女性に嬉しい成分がたっぷり詰まっています。「大棗」という名前を難しく考えず、まずはドライフルーツのナツメから日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
もっと詳しい食材の違いや、他のドライフルーツとの比較については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。