オリーブオイルとサラダ油の違いとは?成分・風味・使い分け

「オリーブオイル」と「サラダ油」、どちらもキッチンに欠かせない油ですが、実は「風味の有無」と「低温での固まりやすさ」が決定的に違います。

健康に良いからといって、天ぷらを全てエキストラバージンオリーブオイルで揚げたら、部屋中が独特の香りに包まれてしまい、和食の繊細な風味が飛んでしまった……なんて経験はありませんか?

この記事を読めば、それぞれの特性を正しく理解して、料理のジャンルや目的に合わせて最適なオイルを選べるようになります。

それでは、まずその決定的な違いから詳しく見ていきましょう。

結論|オリーブオイルとサラダ油の違いを一言でまとめる

【要点】

オリーブオイルはオリーブの果実を搾った「風味豊かな油」で、低温で固まりやすい性質があります。サラダ油は種子などから抽出して精製した「無味無臭の油」で、JAS規格により0℃でも固まらないよう処理されており、生食(サラダ)にも適していることからその名がつきました。

まず結論から言うと、この二つは「個性を楽しむか、消すか」という役割の違いがあります。

オリーブオイル、特に「エキストラバージン」は、オリーブの実を搾っただけの「フレッシュジュース」のようなもので、特有の香り、苦味、辛味といった強い個性を持っています。

一方、サラダ油は、菜種や大豆などの原料から油を抽出し、不純物を取り除いて徹底的に精製した「クセのない油」です。

最も重要な違いを一覧表にまとめましたので、まずはここを押さえておきましょう。

項目オリーブオイルサラダ油
原料オリーブの果実菜種、大豆、とうもろこし等
風味フルーティーで独特な香り無味無臭
低温耐性冷蔵庫で白く固まる0℃でも固まらない(JAS規格)
主成分オレイン酸(酸化に強い)リノール酸(製品による)
主な用途パスタ、カルパッチョ、アヒージョ揚げ物、炒め物、マヨネーズ

僕も料理を始めたばかりの頃は、「サラダ油ってサラダ専用なの?」と不思議に思っていました。

実は、冷蔵庫で冷やしても固まらないからドレッシング(サラダ)に使っても口当たりが悪くならない、というのが名前の由来なんですね。

逆にオリーブオイルを冷蔵庫に入れると、白く粒状に固まってしまいます。

つまり、「風味を足したいならオリーブオイル、素材の味を邪魔したくないならサラダ油」という使い分けが基本になります。

定義とJAS規格の違い|「果実のジュース」か「精製された油」か

【要点】

オリーブオイルはオリーブ果実から物理的に油分を分離したもので、特にエキストラバージンは化学処理を行いません。サラダ油はJAS規格(日本農林規格)で定められた品位の一つで、脱色・脱臭などの精製度が高く、低温下でも透明度を保つことができる食用油の総称です。

この二つの違いを深く理解するには、それぞれの「生まれ」を知る必要があります。

「オリーブオイル」は、植物油の中では珍しく、種子ではなく「果実」から油を採ります。

果肉をすり潰して搾るというシンプルな製法が基本で、特に最高品質の「エキストラバージンオリーブオイル」は、化学的な処理を一切行わず、酸度が0.8%以下という厳しい基準をクリアしたものです。

言わば、オリーブの果汁そのものですね。

一方、「サラダ油」というのは、特定の植物の名前ではありません。

実は、農林水産省が定めるJAS規格(日本農林規格)における「グレード(品位)」の名称なんです。

菜種油、大豆油、とうもろこし油などを原料とし、不純物を徹底的に取り除く精製工程を経て作られます。

JAS規格では、「0℃の環境で5.5時間放置しても濁ったり固まったりしないこと」がサラダ油の条件とされています。

これは、冷たいドレッシングやマヨネーズに使った時に、油が分離したり固まったりして食感を損なわないための基準です。

つまり、サラダ油は「日本独自の高精製オイル」なんですね。

味・香り・凝固点の違い|個性派vs無味無臭

【要点】

オリーブオイルは品種や産地によって青リンゴや草のような香り、ピリッとした辛味があります。サラダ油は精製過程で香りや色を取り除いているため、ほぼ無味無臭です。また、オリーブオイルは低温(約10℃以下)で固まり始めますが、サラダ油は冷蔵庫でも液体のままです。

味と香りの違いは、料理の仕上がりを左右する重要な要素です。

オリーブオイルの魅力は、なんといってもその「個性」です。

フレッシュな若草の香り、熟した果実の甘み、喉を刺激するポリフェノールの辛味など、ワインのように銘柄によって味わいが異なります。

この風味が、シンプルな料理をレストランの味に変えてくれるのです。

対してサラダ油は、「無個性であること」が最大の武器です。

無味無臭でさらっとしているため、どんな食材とも喧嘩しません。

素材本来の味や香りを引き立てたい時、あるいは繊細な和食の出汁の香りを守りたい時には、サラダ油の「気配を消す力」が重宝します。

また、保存時の温度変化にも注目です。

オリーブオイルを冷蔵庫で保存して、「白く固まってしまった!」と焦ったことはありませんか?

これは主成分のオレイン酸の融点が高いため起こる自然現象で、品質には問題ありませんが、使う時に溶かす手間がかかります。

サラダ油なら冷蔵庫から出してすぐに使えるので、冷製料理には便利ですね。

料理での使い分け|イタリアンから揚げ物まで

【要点】

オリーブオイルはパスタ、カルパッチョ、アヒージョなど、油の風味自体を味わう料理に適しています。サラダ油は天ぷら、唐揚げ、シフォンケーキ、マヨネーズ作りなど、油の味を主張させたくない料理や、サクッと軽い食感に仕上げたい揚げ物に最適です。

では、具体的にどのような料理で使い分ければ良いのでしょうか。

オリーブオイルが合う料理:風味をプラスしたい時

オリーブオイルは「調味料」の一部として考えましょう。

  • パスタ(仕上げにかけるだけで香りが立つ)
  • カルパッチョ、カプレーゼ(生食でフレッシュさを楽しむ)
  • アヒージョ(具材にオイルの旨味を染み込ませる)
  • ソテー、ムニエル(香ばしさをプラスする)

加熱用には、香りが穏やかな「ピュアオリーブオイル」を使うのも一つの手です。

サラダ油が合う料理:素材を引き立てたい時

サラダ油は「熱媒体」や「潤滑油」として優秀です。

  • 天ぷら、フライ(サクサクと軽く揚がる)
  • 炒め物(野菜の色やシャキシャキ感を生かす)
  • お菓子作り(シフォンケーキなど、バターの香りをつけたくない時)
  • 自家製ドレッシング、マヨネーズ(冷やしても固まらない)

特にシフォンケーキのように、ふんわりとした食感と卵の風味を大切にしたいお菓子には、重くならず無臭のサラダ油がベストマッチです。

栄養面・健康効果の違い|オレイン酸とリノール酸

【要点】

オリーブオイルは「オレイン酸」を多く含み、悪玉コレステロールを下げる効果や酸化しにくい特長があります。サラダ油は原料によりますが「リノール酸」が多く含まれる傾向があり、必須脂肪酸ですが摂りすぎに注意が必要と言われています。カロリーはどちらも1gあたり約9kcalで同じです。

健康を意識するなら、脂肪酸の種類にも注目してみましょう。

オリーブオイルの主成分は「オレイン酸」です。

これは「オメガ9系」の脂肪酸で、酸化に強く、血液中の悪玉コレステロールを減らす働きがあると言われています。

加熱しても酸化しにくいので、実は加熱調理にも向いている健康的な油なんです。

一方、一般的なサラダ油(菜種油や大豆油の混合など)は「リノール酸」を多く含む傾向があります。

これは「オメガ6系」の必須脂肪酸で、体に必要な成分ではありますが、現代の食生活では過剰摂取になりがちで、摂りすぎると炎症などのリスクが高まるとの指摘もあります。

ただし、最近は「キャノーラ油(菜種油)」のようにオレイン酸を多く含むサラダ油も増えています。

「カロリー」に関しては、どちらも大さじ1杯で約110〜120kcalと変わりません。

オリーブオイルだから太らない、ということはないので、使用量には注意が必要ですね。

歴史・地域・文化的背景の違い|地中海の恵みと日本独自の規格

【要点】

オリーブオイルは地中海沿岸で数千年前から利用されてきた歴史ある油で、食文化の中心です。サラダ油は大正時代に日清オイリオが開発した日本独自の規格で、当時まだ珍しかった「生野菜(サラダ)を油と塩・酢で食べる」文化を広めるために名付けられました。

オリーブオイルの歴史は古く、紀元前から地中海地方で作られてきました。

「地中海式ダイエット」として世界無形文化遺産にも登録されているように、現地の食生活とは切っても切れない関係にあります。

一方、サラダ油の歴史は日本で始まりました。

大正13年(1924年)、日清製油(現・日清オイリオグループ)が「日清サラダ油」を発売したのが最初です。

当時、日本では油といえば揚げ物や灯火用に使われるもので、生で食べる習慣はありませんでした。

欧米の「生野菜にドレッシング(油・酢・塩)をかけて食べる」という食文化を紹介するために、生でも美味しく食べられる精度の高い油として「サラダ油」と名付けられたのです。

つまり、サラダ油という名前には「生で食べてほしい」というメーカーの想いが込められていたんですね。

体験談・シフォンケーキを作って香りを比較してみた

お菓子作りが好きな僕は、ある時、興味本位でシフォンケーキの油を変えて実験してみました。

シフォンケーキは通常、サラダ油を使います。

それを、あえて風味豊かな「エキストラバージンオリーブオイル」で作ってみたのです。

焼き上がりは、ふっくらとして見た目には変わりありません。

しかし、一口食べてみると……。

「うーん、草っぽい?」

口に入れた瞬間に、オリーブオイル特有の青々とした香りが広がり、卵やバニラの繊細な香りを完全にかき消してしまいました。

生地も少し重たく感じられ、いつもの「ふわしゅわ」感がありません。

これはこれでおつまみケーキ(ケークサレ)としてはアリかもしれませんが、デザートとしては失敗でした。

次に、基本通り「サラダ油」で作ったバージョン。

やはり、こちらは美味しい。

油の主張が全くないので、卵の優しい甘さと小麦の香ばしさがダイレクトに伝わってきます。

食感も軽く、いくらでも食べられそうです。

この経験から学んだのは、「主役を引き立てるためには、黒子に徹する油が必要だ」ということです。

無味無臭であることは、決して欠点ではなく、立派な機能の一つなのだと痛感しました。

FAQ(よくある質問)

Q. 揚げ物にオリーブオイルを使っても大丈夫ですか?

A. はい、大丈夫です。オリーブオイルは酸化に強く、加熱しても劣化しにくいため、揚げ物にも適しています。カラッと揚がり、冷めても油っぽくなりにくいのが特徴です。ただし、エキストラバージンなどの高価なオイルを大量に使うのはコストがかかるため、ピュアオリーブオイルや、サラダ油とブレンドして使うのがおすすめです。

Q. サラダ油の代わりにオリーブオイルでお菓子を作れますか?

A. 作れますが、風味が変わります。パウンドケーキやマフィンなど、どっしりとしたお菓子には向いていますが、シフォンケーキなどの繊細な風味を楽しむお菓子には、オリーブオイルの香りが強すぎることがあります。「太白ごま油」のような無味無臭の油ならサラダ油の代用として最適です。

Q. オリーブオイルは加熱すると栄養がなくなりますか?

A. オリーブオイルの主成分であるオレイン酸は熱に強いので、加熱調理しても健康効果は期待できます。ただし、エキストラバージンオリーブオイルに含まれる微量な香り成分や一部の酵素などは、高温で飛んでしまう可能性があります。風味を最大限楽しむなら生食、健康オイルとして使うなら加熱もOKと考えると良いでしょう。

まとめ|料理の主役か黒子かで選ぼう

ここまでオリーブオイルとサラダ油の違いについて見てきましたが、いかがでしたでしょうか。

最後に、それぞれの使い分けを改めて整理しておきます。

  • 油の風味や香りを料理のアクセントにしたいなら「オリーブオイル」
  • 素材の味を邪魔せず、あっさりと仕上げたいなら「サラダ油」

この法則さえ覚えておけば、キッチンで油選びに迷うことはもうありません。

健康のためにオリーブオイルを使うのも素晴らしいですが、時にはサラダ油の「無個性という個性」を頼ってみるのも、料理上手の秘訣です。

ぜひ、作るメニューに合わせて最適なオイルを選び、日々の食卓をより美味しく彩ってくださいね。

調味料や食材についてもっと詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてみてくださいね。

調味料の違いまとめ|料理の味を決める基本の使い分け