シャンタンと鶏ガラの違い!使い分けと味の決定的な差

シャンタンと鶏ガラスープの素は、どちらも中華料理に使われる調味料ですが、決定的な違いは「味の完成度」と「油脂の有無」にあります。

なぜなら、シャンタンは豚や鶏のエキスに香味野菜やスパイス、油脂を配合した「万能調味料」であり、これ一つで味が決まるように作られているのに対し、鶏ガラスープの素はあくまで「だし」であり、他の調味料と合わせて使うことを前提としたシンプルな旨味が特徴だからです。

この記事を読めば、こってり本格中華を作りたい時と、あっさりしたスープを作りたい時の使い分けや、手元にない場合の代用テクニックまで詳しく分かります。

それでは、まず最も重要な違いから一覧で見ていきましょう。

結論|シャンタンと鶏ガラの違いを一言でまとめる

【要点】

最大の違いは「味の完結性」と「油脂」です。シャンタンは油脂とスパイスを含む「完成された調味料」で濃厚なコクがありますが、鶏ガラは鶏の旨味を中心とした「だし」であり、あっさりとしています。

「創味シャンタン」に代表されるペースト状の中華調味料と、顆粒状の「鶏ガラスープの素」。

どちらも中華料理には欠かせませんが、役割は大きく異なります。

以下の表に、それぞれの決定的な違いをまとめました。

項目シャンタン(創味シャンタン)鶏ガラスープの素
役割万能調味料(これだけで味が決まる)だし(ベースを作る)
形状ペースト(缶・チューブ)、粉末顆粒、粉末
主な成分豚・鶏エキス、油脂、香味野菜、スパイス鶏エキス、塩、デキストリン
味の傾向濃厚、こってり、コクがあるあっさり、シンプル、優しい
油脂たっぷり含まれるほとんど含まれない

一番のポイントは、「油脂の有無」によるコクの違いです。

シャンタンにはラードなどの動物性油脂が含まれているため、炒め物やスープに加えるだけで、プロの中華料理のような「こってり感」や「パンチ」が出ます。

一方、鶏ガラスープの素は油脂がほとんどないため、澄んだスープや和え物など、素材の色や味を活かしたあっさりした料理に向いています。

この違いを理解しておけば、「チャーハンが物足りない」「スープが脂っこすぎる」といった失敗は防げるでしょう。

原材料と製造・発酵工程の違い

【要点】

シャンタンは豚と鶏のエキスに、玉ねぎ、ニンニク、スパイス、そしてたっぷりの油脂を練り込んでペースト状にします。鶏ガラスープの素は、鶏肉や骨から煮出したエキスを乾燥させ、塩や糖類で味を整えて顆粒状にしたものです。

パッケージの裏側を見ると、その複雑さの違いが一目瞭然です。

どちらも「鶏」の要素は入っていますが、それ以外の構成要素が異なります。

シャンタンの原材料構成

「創味シャンタン」を例に見ると、原材料には「動物油脂」「植物油脂」が上位に来ており、その後に「畜肉エキス(豚・鶏)」「野菜エキス」「香辛料」などが続きます。

製造工程では、じっくり煮出したガラスープに、独自配合のスパイスや香味野菜、そして油脂を加熱しながら練り合わせていきます。

ペースト状になっているのは、この油脂が多く含まれているためであり、常温では半固形ですが、熱を加えるとすぐに溶けて香りが立つように設計されています。

もともと業務用として開発された経緯があり、プロが厨房で使う「スープの素(湯・タン)」を家庭でも再現できるように作られています。

鶏ガラスープの素の原材料構成

一方、一般的な鶏ガラスープの素は、「食塩」「デキストリン(でんぷんの一種)」「チキンエキス」が主な原材料です。

製造工程では、鶏ガラや肉から抽出したエキスを濃縮し、乾燥させて顆粒状にします。

油脂分は酸化しやすく保存性やサラサラした形状を保つのに不向きなため、極力抑えられているか、含まれていません。

そのため、お湯に溶かすだけで透明度の高い、純粋な鶏の旨味を持ったスープベースができあがります。

味付けの「土台」としての役割に特化していると言えます。

味・香り・色・濃度の違い

【要点】

シャンタンは白濁しており、油脂とスパイスの複合的な香りと、舌にまとわりつくような濃厚なコクがあります。鶏ガラは透明感があり、チキンのシンプルな香りと、すっきりとした塩味が特徴です。

料理の仕上がりをイメージするために、味と香りの違いを詳しく見ていきましょう。

油脂とスパイスによる濃厚さ

シャンタンを少量舐めてみると、まず強い塩気と旨味、そして油脂のまろやかさを感じます。

後味にはニンニクや生姜、胡椒などのスパイスの風味が残り、食欲を刺激します。

お湯に溶かすと白濁したスープになり、表面に脂が浮くのが特徴です。

この脂が料理にコクと艶を与え、「お店の味」に近づける重要な要素となっています。

すっきりとした素材の旨味

対して、鶏ガラスープの素は、シンプルで雑味のない鶏の旨味が中心です。

塩味もしっかりついていますが、スパイス感や脂っこさはほとんどありません。

お湯に溶かすと、透き通った黄金色のスープになります。

このクリアな味わいは、他の調味料(醤油、塩、ごま油など)と組み合わせた時に、相手の良さを引き立てる「名脇役」としてのポテンシャルを持っています。

料理での使い分け・相性の良い食材

【要点】

シャンタンは「チャーハン」や「餃子」「八宝菜」など、コクとパンチを出したい本格中華に向いています。鶏ガラは「わかめスープ」や「ナムル」「中華粥」など、あっさりした味わいや、ごま油などで後から風味を足したい料理に最適です。

それぞれの持ち味を活かせば、中華料理のレパートリーは格段に広がります。

「こってり」か「あっさり」か、作りたい料理の方向性で選びましょう。

味がこれ一つで決まるシャンタンの使い方

シャンタンは、複数の調味料を配合する手間を省き、一発で味を決めたい料理に使います。

【シャンタンが適している料理】

  • チャーハン:ラードのようなコクが加わり、パラッと香ばしく仕上がります。
  • 野菜炒め・八宝菜:淡白な野菜に濃厚な旨味と脂が絡み、ご飯が進む味になります。
  • 餃子の種:肉汁に深みとコクを与え、ジューシーになります。
  • ラーメンスープ・タンメン:お湯で溶くだけで、専門店のような濃厚なスープになります。
  • 鍋料理:シャンタン鍋は、具材の旨味と合わさり最強のスープになります。

特にペーストタイプは、炒め物の際に鍋肌で少し焦がすようにすると、香ばしさが際立ちます。

味のベースを作る鶏ガラの使い方

鶏ガラスープの素は、素材の色や味を活かしたい時や、自分で味を調整したい料理に使います。

【鶏ガラスープの素が適している料理】

  • 中華スープ(わかめ・卵):透明感のある美しいスープに仕上がります。
  • ナムル・和え物:油脂がないため、冷めても脂が固まらず、さっぱりと食べられます。
  • 中華粥:お米の甘みを邪魔せず、優しい出汁の風味を添えます。
  • だし巻き卵(中華風):卵の色をきれいに保ちつつ、旨味をプラスできます。
  • トマトと卵の炒め物:素材の味を活かした、優しい味付けになります。

物足りない場合は、最後に「ごま油」や「ラー油」を垂らすことで、好みの風味に仕上げることができます。

健康面・塩分・保存性の違い

【要点】

カロリーと脂質は、油脂を多く含むシャンタンの方が圧倒的に高いです。塩分はどちらも高いので注意が必要ですが、鶏ガラの方が使用量を調整しやすいです。保存性は、シャンタン(缶)は開封後要冷蔵で数ヶ月、鶏ガラ(顆粒)は常温で長期保存が可能です。

健康を気にする方にとっては、脂質と塩分が気になるポイントでしょう。

まずカロリーと脂質ですが、これは明らかにシャンタンの方が高くなります。

製品にもよりますが、シャンタンは成分の多くが油脂であるため、使いすぎるとカロリーオーバーになりがちです。

ダイエット中の方や脂質を抑えたい方は、鶏ガラスープの素を選び、必要に応じて少量の良質な油(オリーブオイルやごま油)を足すのが賢い方法です。

塩分については、どちらも濃度が高いため、入れすぎには注意が必要です。

ただし、シャンタンはペースト状で計量が難しく(スプーンですくうため)、ついつい多めに入ってしまいがちです。

保存に関しては、鶏ガラスープの素(顆粒)は湿気にさえ気をつければ常温で長期保存ができ、非常に便利です。

一方、シャンタン(特に缶タイプ)は開封後は冷蔵庫での保存が必須です。

賞味期限は比較的長いですが、冷蔵庫内で場所を取る点や、冷えて固くなると使いにくい点は考慮しておくべきでしょう。

最近では、使いやすいチューブタイプのシャンタンも普及しており、こちらは冷蔵庫のドアポケットに収納しやすく便利です。

歴史・地域・文化的背景の違い

【要点】

シャンタンは1961年に京都の創味食品が業務用として開発したのが始まりで、長らくプロ専用の調味料でした。鶏ガラスープの素は、家庭で手軽に中華料理を作るニーズに応えて普及しました。両者とも日本の食卓に合わせて進化した調味料です。

「創味シャンタン」の歴史は古く、1961年に業務用の中華万能調味料として発売されました。

当時は「創味シャンタンDX」という名前で、プロの料理人が使う秘密の味として愛用されていました。

一般家庭向けには、OEM供給されていた「ウェイパァー(味覇)」の中身として知られていましたが、契約終了に伴い、2015年から「創味シャンタン」ブランドで家庭用市場に本格参入しました。

一方、鶏ガラスープの素は、高度経済成長期以降、家庭で手軽に中華料理を楽しむために各メーカーが開発しました。

本来、鶏ガラを何時間も煮込んで取るスープを、お湯を注ぐだけで再現できる簡便さが受け、日本の家庭の常備調味料として定着しました。

どちらも、本場中国の味をベースにしつつ、日本人の味覚や家庭での使いやすさに合わせて進化してきた、日本独自の調味料文化と言えるでしょう。

体験談・実際に使ってみた印象

僕も以前は、「中華だしなんてどれも同じだろう」と思って、鶏ガラスープの素だけを常備していました。

ある日、自宅でチャーハンを作ったのですが、どうしてもお店のような「ガツン」とくる味が再現できず、何か物足りなさを感じていました。

塩コショウを足しても、醤油を焦がしても、あの奥深いコクが出ないのです。

そこで、評判の良かった缶入りの「創味シャンタン」を買ってみることにしました。

スプーンですくって熱いフライパンに入れた瞬間、ジュワッと脂が溶けて、中華料理店のような食欲をそそる香りが立ち上りました。

出来上がったチャーハンを食べて驚きました。

「これだ!求めていたのはこの味だ!」

米一粒一粒に脂と旨味がコーティングされ、噛むほどに濃厚なコクが広がります。

今まで鶏ガラと塩コショウで作っていたチャーハンとは、別次元の完成度でした。

しかし、その後に作った「わかめスープ」では逆のことが起きました。

シャンタンで作ったスープは、確かに美味しいのですが、少し脂っこく、味が濃すぎると感じたのです。

食後の口直しには、鶏ガラスープの素で作った、透き通ったあっさりスープの方が断然合うと気づきました。

それ以来、炒め物や餃子など「おかず」系にはシャンタン、スープや和え物など「添え物」系には鶏ガラ、という使い分けが僕の中での鉄則になりました。

両方常備しておくと、中華料理の幅がグッと広がって楽しいですよ。

FAQ(よくある質問)

シャンタンがない時、鶏ガラで代用できますか?

代用可能ですが、あっさりしすぎる可能性があります。鶏ガラスープの素に、ごま油やラード(油脂)、ニンニク、生姜(香味野菜)、少量の醤油やオイスターソースを足すと、シャンタンの濃厚なコクに近づけることができます。

鶏ガラがない時、シャンタンで代用できますか?

代用できますが、味が濃く脂っこくなりやすい点に注意です。使用量を控えめにし、塩で味を整えるのがコツです。また、冷製料理に使うと脂が白く固まることがあるので、温かい料理に使うか、少量のお湯で溶いてから使いましょう。

ウェイパァー(味覇)とシャンタンの違いは何ですか?

現在の「創味シャンタンDX」は、かつての「味覇」の中身と同じものです。現在の「味覇」は別の製造元が作っており、味の傾向は似ていますが、成分や風味が若干異なります。一般的にはどちらも同じ「ペースト状の中華万能調味料」として使えます。

まとめ|目的別おすすめの使い方

シャンタンと鶏ガラスープの素、似ているようで役割ははっきりと分かれています。

最後に、迷ったときの選び方を整理しておきましょう。

  • お店のような本格チャーハンや炒め物を作りたい時:コクとパンチのある「シャンタン」を選びましょう。
  • あっさりしたスープや和え物を作りたい時:素材の味を活かす「鶏ガラスープの素」がおすすめです。
  • こってり味が好きな人:油脂の旨味が効いた「シャンタン」が満足度高いでしょう。
  • カロリーや脂質が気になる人:油脂が少ない「鶏ガラスープの素」を選び、油分は自分で調整しましょう。

どちらも日本の食卓を支える素晴らしい調味料です。

「大は小を兼ねる」で片方だけで済ませることもできますが、適材適所で使い分けることで、あなたの料理は間違いなくワンランクアップします。

ぜひ、その日のメニューや気分に合わせて、ベストなパートナーを選んでみてください。

さらに詳しい調味料の情報については、調味料のまとめ記事も参考にしてみてくださいね。