ごま油とサラダ油の違いは風味と精製度!代用は可能?

ごま油とサラダ油の決定的な違いは、「独特の香ばしい風味があるか」と「精製度の高さ」にあります。

なぜなら、サラダ油は低温でも固まらないよう高度に精製された「無味無臭」の油であるのに対し、一般的なごま油はゴマを焙煎して搾った「豊かな香り」そのものを楽しむための油だからです。

この記事を読めば、揚げ物やドレッシングでどちらを使うべきか、健康を意識するならどちらを選ぶべきかといった、迷いやすいポイントが明確になります。

それでは、まず両者の基本的な違いを比較表で見ていきましょう。

結論|ごま油とサラダ油の違いを一言でまとめる

【要点】

ごま油は「ゴマ特有の香りとコク」が特徴で、風味付けや中華料理に適しています。サラダ油は「無味無臭でクセがない」のが特徴で、素材の味を邪魔せず、揚げ物や生食など万能に使えます。

僕たちが普段何気なく使っているこの2つの油ですが、役割はまるで正反対と言っても過言ではありません。

「油なんてどれも同じでしょ?」と思って適当に使ってしまうと、せっかくの料理が台無しになってしまうこともあります。

まずは、以下の比較表で全体像を把握しておきましょう。

項目ごま油(焙煎)サラダ油
主な原料ゴマ種子菜種、大豆、トウモロコシ等
味・香り香ばしいゴマの香り、コク無味無臭、クセがない
茶褐色(焙煎)、透明(太白)淡い黄色、透明に近い
主な用途風味付け、中華、韓国料理揚げ物、炒め物、ドレッシング
精製度風味を残すため低め低温で固まらないよう高い
価格帯やや高め手頃

表を見ると分かるように、ごま油は「個性を楽しむ油」、サラダ油は「黒子に徹する油」と言えます。

僕は炒め物をする時、仕上げに香りを出したいならごま油、素材の色や味をそのまま活かしたいならサラダ油と決めています。

ただ、ごま油にも「太白(たいはく)ごま油」という、生のゴマを搾った無色透明で香りのないタイプもあります。

これはサラダ油の高級な代用品として、お菓子作りなどにも使える優れものです。

一方、サラダ油は特定の植物油(菜種油や大豆油など)を高度に精製してブレンドしたもので、冷やしても固まらないのが定義です。

この「冷やしても固まらない」という点が、実はドレッシング作りで非常に重要なのですね。

次の章からは、それぞれの製造工程や成分について、もう少し詳しく掘り下げていきましょう。

原材料と製造・精製工程の違い

【要点】

ごま油はゴマ種子を焙煎して圧搾する製法が一般的で、香りを引き出します。サラダ油は菜種や大豆などを原料とし、脱ガム・脱酸・脱色・脱臭などの精製工程を経て、低温でも濁らない品質に仕上げられます。

油の個性の違いは、原料と作り方の違いから生まれます。

ごま油の製法:香りを引き出す職人技

一般的な茶色いごま油は、原料となるゴマを炒って(焙煎して)から油を搾ります。

この「焙煎」の度合いによって、色が濃くなったり、香りが強くなったりします。

深煎りなら香ばしく濃厚に、浅煎りならまろやかな香りになります。

一方、先ほど触れた「太白ごま油」は、ゴマを煎らずに生のまま搾ります。

そのため、ごま油特有の色や香りがなく、ゴマ本来のほのかな甘みだけが残るのです。

製法としては、圧力をかけて油を絞り出す「圧搾法」が主流で、手間がかかる分、素材の風味が色濃く残ります。

サラダ油の製法:徹底的な精製

サラダ油という名前は、特定の植物の名前ではありません。

日本農林規格(JAS)で定められた基準を満たした植物油の総称です。

原料は、菜種、大豆、トウモロコシ、ひまわり、綿実など。

これらを単独、またはブレンドして作られます。

最大の特徴は、「0℃の環境で5.5時間放置しても濁ったり固まったりしない」こと。

そのために、「脱ロウ(ワックス分を取り除く)」という工程を含め、徹底的に不純物を取り除く精製が行われます。

この精製工程によって、無味無臭でサラサラとした、どんな料理にも馴染む油が出来上がるのです。

味・香り・色・風味の違い

【要点】

ごま油は食欲をそそる焙煎香とコクがあり、料理の主役級の存在感を放ちます。サラダ油は油特有のクセを極限まで取り除いており、あっさりとした口当たりで素材の味を強調しません。

実際にキッチンで使い分ける際、最も意識すべきなのがこの「風味」の違いです。

ごま油:料理の仕上げの魔法

ごま油の最大の魅力は、なんといってもその香りですよね。

中華料理店やラーメン屋の前を通った時に漂ってくる、あの香ばしい匂い。

あれだけでお腹が空いてきます。

味にはコクと微かな苦味があり、これが料理に深みを与えます。

例えば、ただの冷奴に醤油とごま油を少しかけるだけで、立派なおつまみに変身します。

色は美しい琥珀色をしており、料理にツヤと彩りを添える効果もあります。

サラダ油:名脇役の徹し方

対してサラダ油は、主張しないことが美徳です。

舐めてみても、油のまったりとした感触はありますが、味や香りはほとんど感じません。

色は非常に薄い黄色、あるいはほぼ透明です。

この「クセのなさ」のおかげで、マヨネーズやドレッシングを作るときに、酢や卵、スパイスの風味をストレートに表現できるのです。

もし香りの強いごま油でマヨネーズを作ったら、それはもう「ごまペースト」のような味になってしまうでしょう。

素材の繊細な味を楽しみたい天ぷらや、バターの香りを活かしたいお菓子作り(バターの補助として使う場合)には、サラダ油のようなクセのない油が適しています。

料理での使い分け・相性の良い食材

【要点】

ごま油はナムル、餃子、炒め物の仕上げなど「香りを足したい時」に最適です。サラダ油は揚げ物、ドレッシング、シフォンケーキなど「油の重さを感じさせたくない時」や「冷やして食べる料理」に向いています。

では、具体的なシーンでどう使い分けるのが正解なのでしょうか。

僕の失敗談も交えてお話ししますね。

ごま油が活躍するシーン

  • 中華・韓国料理全般:炒め物、スープ、和え物(ナムル)など。
  • 風味付け(仕上げ):ラーメン、餃子の焼き油、冷奴。
  • こってりさせたい時:きんぴらごぼうなど、和食でもコクを出したい時に使えます。

特に餃子を焼く時、最後に鍋肌からごま油を回し入れると、パリッとした焼き目と共に最高に食欲をそそる香りが付きます。

これはサラダ油では出せない魅力です。

サラダ油が活躍するシーン

  • 揚げ物:天ぷら、フライ、唐揚げ。カラッと軽く揚がります。
  • 生食(ドレッシング):冷やしても固まらないため、カルパッチョやサラダに最適です。
  • お菓子作り:シフォンケーキやマフィンなど。バターの代わりに使うと、しっとり軽く仕上がります。

僕は以前、シフォンケーキを作る時にサラダ油を切らしていて、「油ならなんでもいいだろう」と焙煎ごま油を使ったことがあります。

結果は…大失敗でした。

ふわふわのケーキから漂う中華料理の香り。

脳が混乱する味になってしまいました。

お菓子作りには、無味無臭のサラダ油か、製菓用の太白ごま油を使うべきですね。

健康面・カロリー・酸化安定性の違い

【要点】

カロリーは大さじ1あたり約111kcalでどちらも同じです。ごま油は抗酸化成分「セサミン」を含み酸化に強いのが特徴。サラダ油はリノール酸などが主成分ですが、加熱に強く酸化しにくいよう調整されています。

「サラダ油よりごま油の方が健康に良さそう」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。

実際のところはどうなのでしょうか。

カロリーは同じ

まず大前提として、カロリーはどの油もほぼ同じです。

1gあたり約9kcal。

大さじ1杯で約111kcalになります。

「ごま油は健康に良いから太らない」ということはありませんので、使いすぎには注意が必要です。

成分と酸化安定性

ごま油には、ゴマ特有の成分「セサミン」や「セサモリン」が含まれています。

これらは強い抗酸化作用を持っており、活性酸素の働きを抑える効果が期待されています。

また、油自体も酸化しにくく、常温で保存しても比較的長持ちします。

昔の人が保存食にごま油を使っていたのも納得ですね。

サラダ油は、原料によって成分が異なりますが、一般的にはリノール酸やオレイン酸が含まれています。

最近では、血中のコレステロールを下げる効果が期待される成分を多く含む「特定保健用食品(トクホ)」のサラダ油も販売されています。

精製度が高いため、不純物が少なく加熱しても煙が出にくいというメリットもあります。

どちらが極端に体に悪いということはありませんが、やはり「油は油」。

バランスよく摂取することが大切でしょう。

詳しくは厚生労働省の栄養・食生活に関する情報なども参考にしてみてください。

歴史・地域・文化的背景の違い

【要点】

ごま油は古代エジプトや中国など世界中で古くから利用されてきた歴史ある油です。サラダ油は大正時代に日本で開発された、「生野菜にそのままかけて食べられる高品質な油」というコンセプトの製品です。

この2つの油、歴史の深さが全く違います。

ごま油の長い歴史

ごま油の歴史は古く、紀元前3000年頃のエジプトですでに使われていたと言われています。

日本にも仏教伝来と同じ時期に伝わり、精進料理の揚げ油として重宝されました。

江戸時代には、天ぷらが屋台料理として流行しましたが、この時の揚げ油としてもごま油が使われていました。

当時の天ぷらは、ごま油の香ばしさが食欲をそそる、庶民のご馳走だったのです。

サラダ油は日本生まれ

一方、サラダ油という言葉は、実は日本で生まれたものです。

大正13年(1924年)、日清オイリオが「日清サラダ油」を発売したのが始まりです。

当時、欧米では生野菜に酢と塩、そして油をかけて食べる習慣(サラダ)がありましたが、当時の日本の油は精製度が低く、生で食べるには風味が強すぎたり、冷やすと固まったりしていました。

そこで、「サラダ料理などに生でかけても美味しく食べられる、高品質な精製油」として開発されたのがサラダ油なのです。

つまり、サラダ油という名前自体が、「生食できるほどクセがない」という品質保証の証だったわけですね。

今でこそ当たり前に使っていますが、当時の技術革新の結晶だったのです。

体験談・実際に使い分けてみた印象と失敗談

僕が料理に目覚めた頃、油の使い分けでちょっとした発見がありました。

ある日、家で天ぷらパーティーをすることになったんです。

張り切ってスーパーに行き、特売のキャノーラ油(サラダ油の一種)を買ってきました。

揚げたての天ぷらはサクサクで美味しかったのですが、何か物足りない。

お店で食べるような「ご馳走感」が薄かったんです。

後日、天ぷらの名店の本を読んでいると、「揚げ油には太白ごま油をブレンドする」と書いてありました。

「これだ!」と思い、次はサラダ油と焙煎していない太白ごま油を半々で割って揚げてみたんです。

すると、驚くほど仕上がりが変わりました。

決してゴマの匂いがプンプンするわけではないのに、衣のコクと風味が段違いに良くなったのです。

「油で味が変わる」ということを実感した瞬間でした。

逆に、失敗談もあります。

ペペロンチーノを作ろうとした時、オリーブオイルを切らしていました。

「油ならなんでもいいか」と、手元にあった茶色いごま油で作ってしまったのです。

ニンニクと唐辛子、そして強烈なごま油の香り。

出来上がったのはイタリアンではなく、完全に「具のない中華風油そば」でした。

美味しくないわけではないのですが、パスタとしての正解からは程遠い味。

やはり、料理の国籍や目指す風味に合わせて油を選ぶことは、基本中の基本だと痛感しました。

それからは、サラダ油は「ベース」、ごま油は「味付け」という意識で使い分けています。

特にナムルを作る時は、ごま油の質で味が決まるので、少し良い値段のものを買うようにしています。

数百円の差で、お店の味に近づけるなら安いものですよね。

FAQ(よくある質問)

Q. サラダ油がない時、ごま油で代用しても大丈夫?

A. 揚げ物や炒め物なら代用可能ですが、料理全体が「ごま油風味」になることを覚悟してください。和食や洋食、お菓子作りで繊細な味を出したい時には不向きです。太白ごま油(無色透明なもの)なら、クセがないのでサラダ油の代わりに問題なく使えますよ。

Q. 開封した油はどれくらい持ちますか?保存方法は?

A. 開封後は空気に触れて酸化が進むので、1〜2ヶ月を目安に使い切るのが理想です。直射日光の当たらない、涼しい暗所(シンク下など)で保存しましょう。ごま油は抗酸化成分のおかげで比較的持ちが良いですが、香りが飛ぶ前に使い切りたいですね。

Q. 健康のためにそのまま飲むならどっち?

A. どちらもカロリーは高いので、飲むことはあまりおすすめしません。健康目的で油を摂るなら、オメガ3脂肪酸を含む亜麻仁油やえごま油の方が適しています。ごま油やサラダ油は、あくまで調理用として適量を楽しむのが良いでしょう。

まとめ|目的別おすすめの使い方

ごま油とサラダ油、それぞれの特徴と使い分けは見えてきましたか?

最後に、迷った時の選び方の基準を整理しておきましょう。

  • 中華・韓国料理、風味付けなら「ごま油」
    ナムル、麻婆豆腐、餃子、炒め物の仕上げなど。香りとコクをプラスしたい時に最強の調味料です。
  • 揚げ物、ドレッシング、お菓子作りなら「サラダ油」
    天ぷら、フライ、シフォンケーキ、マヨネーズなど。素材の色や味を邪魔せず、あっさりと仕上げたい時に最適です。
  • ワンランク上の揚げ物やお菓子なら「太白ごま油」
    サラダ油のように使えて、さらに油切れが良く、冷めても美味しい上品な仕上がりになります。

油は料理の縁の下の力持ちであり、時には主役にもなる重要な存在です。

「なんとなく」で選んでいた油を、料理に合わせて意図的に選べるようになると、あなたの料理の腕は確実にワンランクアップします。

ぜひ、今日の夕飯作りから意識してみてください。

きっと、「あれ?今日の料理、なんか美味しい!」と家族に言わせることができるはずですよ。

他にも様々な調味料の違いについて知りたい方は、調味料のまとめ記事も参考にしてみてくださいね。

あなたのキッチンライフが、香り豊かで美味しいものになりますように。