洗双糖(せんそうとう)とてんさい糖の最大の違いは、「原料がサトウキビか、甜菜(てんさい)か」という点にあります。
なぜなら、洗双糖は南国のサトウキビを原料としミネラルを多く残したコクのある砂糖であるのに対し、てんさい糖は北国の甜菜(ビート)を原料とし、お腹に優しいオリゴ糖を含んだまろやかな砂糖だからです。
この記事を読めば、健康のためにどちらの砂糖を選べば良いかが明確になり、梅仕事や日々の煮物料理でそれぞれの特性を活かした美味しい味付けができるようになりますよ。
それでは、まず両者の決定的な違いから詳しく見ていきましょう。
結論|洗双糖とてんさい糖の違いを一言でまとめる
洗双糖は「サトウキビ」から作られるミネラル豊富な粗糖で、コクと甘みが強いのが特徴です。てんさい糖は「甜菜(大根の一種)」から作られ、天然のオリゴ糖を含み、あっさりとした優しい甘みが特徴です。
まず、結論からお伝えしましょう。
この二つの砂糖の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、スーパーでの選び方に迷うことはなくなりますよ。
| 項目 | 洗双糖(せんそうとう) | てんさい糖(甜菜糖) |
|---|---|---|
| 主原料 | サトウキビ | 甜菜(てんさい/ビート) |
| 主な産地 | 鹿児島県(種子島など)、沖縄県 | 北海道 |
| 特徴成分 | ミネラル(カルシウム、鉄など) | 天然のオリゴ糖 |
| 味の傾向 | コクがあり、クセの少ない甘み | あっさりとして、まろやか |
| 東洋医学的視点 | 体を冷やす性質(※精製糖よりは穏やか) | 体を温める性質(根菜由来) |
一番大切なポイントは、「健康へのアプローチが異なる」ということですね。
ミネラル補給や料理にコクを出したいなら「洗双糖」、腸内環境を整えたい(オリゴ糖)や体を温めたいなら「てんさい糖」という選び方が一般的です。
原材料と産地の違い(サトウキビvs甜菜)
洗双糖は南国(鹿児島・種子島など)で育つサトウキビから作られ、精製度を抑えて結晶化させたものです。てんさい糖は寒冷地(北海道)で育つ甜菜(サトウダイコン)の根から糖分を抽出して作られます。
原料となる植物が全く異なるため、その性質や育つ環境も真逆です。
洗双糖:南国の太陽を浴びたサトウキビ
洗双糖の原料は、主に鹿児島県の種子島などで栽培されるサトウキビです。
竹のように背が高く育つイネ科の植物で、その茎に含まれる甘い汁を搾って作られます。
洗双糖は、サトウキビの搾り汁から不純物を取り除き、結晶化させた「粗糖(そとう)」の一種です。
白砂糖になる一歩手前の状態で、サトウキビ本来のミネラル分を適度に残しているため、薄い茶色をしています。
てんさい糖:北の大地で育つ根菜
てんさい糖の原料は、北海道で栽培される甜菜(てんさい)です。
見た目は大根やカブに似ているため「サトウダイコン」とも呼ばれますが、実はホウレンソウの仲間(ヒユ科)です。
寒さに耐えるために根に糖分を蓄える性質があり、その根を刻んで煮出し、糖分を抽出して作られます。
日本では北海道が唯一の産地であり、国産のてんさい糖といえば100%北海道産となります。
味・甘みの強さ・溶けやすさの違い
洗双糖は白砂糖に近いしっかりとした甘みとコクがあり、結晶が大きくザラザラしています。てんさい糖は甘さが穏やかで後味がスッキリしており、粒子が細かく溶けやすいものが多いです。
実際に舐めてみると、甘みの質や食感の違いがよく分かります。
洗双糖:万能なコクのある甘さ
洗双糖は、グラニュー糖や上白糖に比べて「コク」があります。
黒糖ほどクセが強くないので、料理の邪魔をせず、素材の味を引き立てながら深みを与えてくれます。
結晶の粒はやや大きめで、ザラメのような見た目をしています。
そのため、冷たい飲み物などには少し溶けにくい場合がありますが、煮込み料理などで加熱するとしっかり溶けて馴染みます。
てんさい糖:優しく上品な甘さ
てんさい糖の甘みは、非常に穏やかで上品です。
「甘さが足りないかな?」と感じることもあるくらい、あっさりとしています。
口の中に甘ったるさが残らず、スッと消えるような後味です。
市販のてんさい糖は、薄い茶色の細かい粉末状のものが多く、ヨーグルトに混ぜたり、お菓子作りに使ったりと、溶けやすくて使い勝手が良いのも特徴ですね。
料理での使い分け・相性の良い食材
洗双糖は「梅仕事(梅シロップ)」や「煮物」など、コクを出したい料理や長期保存したいものに向いています。てんさい糖は「焼き菓子」や「普段の料理」など、優しい甘さに仕上げたい時や、体を気遣うレシピに最適です。
どちらも万能に使えますが、それぞれの長所を活かす使い分けがあります。
洗双糖の得意分野
洗双糖は、何と言っても「梅仕事」に最適です。
梅シロップや梅酒を作る際、氷砂糖の代わりに洗双糖を使うと、ミネラル由来のコクが加わり、琥珀色の美しいシロップが出来上がります。
また、煮物や佃煮、照り焼きなど、しっかりとした甘みと照りを出したい和食にも相性抜群です。
ジャム作りにもおすすめで、果実の風味を損なわずにコクをプラスしてくれます。
てんさい糖の得意分野
てんさい糖は、クッキーやパウンドケーキなどの「焼き菓子」によく使われます。
焼き色が綺麗につきやすく、素朴で優しい味わいに仕上がります。
また、甘さがくどくないので、コーヒーや紅茶に入れたり、ドレッシングや酢の物に使ったりと、日常のあらゆるシーンで活躍します。
パン作りに使うと、イースト菌の発酵を助け、しっとりとした焼き上がりになります。
健康面・ミネラル・オリゴ糖の違い
洗双糖は精製度を抑えているため、カリウムやカルシウムなどのミネラルが白砂糖より多く含まれています。てんさい糖はミネラルに加え、腸内のビフィズス菌の餌になる「ラフィノース(オリゴ糖)」が含まれているのが最大の特徴です。
健康を意識して、白砂糖から切り替える人が多いのがこの二つの砂糖です。
洗双糖のミネラルパワー
洗双糖は、サトウキビの絞り汁を煮詰めて不純物を取り除いた後、表面を洗って(精製を抑えて)作られます。
そのため、完全に精製されたグラニュー糖や上白糖に比べ、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのミネラル分が残っています。
黒糖ほどではありませんが、ミネラルを適度に摂取したい方には良い選択肢です。
てんさい糖のオリゴ糖と温め効果
てんさい糖には、天然のオリゴ糖が含まれています。
オリゴ糖は腸まで届いて善玉菌を増やす助けになるため、お腹の調子を整えたい方に人気があります。
また、東洋医学やマクロビオティックの考え方では、暑い地域で育つサトウキビは体を冷やし、寒い地域で育つ根菜である甜菜(てんさい)は「体を温める」とされています。
そのため、冷え性が気になる方はてんさい糖を選ぶことが多いですね。
製造工程と「精製度」の話
洗双糖は「粗糖」と呼ばれる段階のもので、白砂糖になる前の「原石」のような状態です。てんさい糖(茶色いもの)は、蜜を含んだまま煮詰めて乾燥させたもので、精製度は低めです。どちらも「含蜜糖」の要素を持っています。
「茶色い砂糖=体に良い」というイメージがありますが、その茶色の理由が少し異なります。
洗双糖の「洗う」プロセス
洗双糖という名前は、結晶の表面についた蜜を遠心分離機で振り落とし、少量の水で「洗う」工程を2回繰り返すことから来ていると言われています(諸説あり)。
これにより、不純物は取り除きつつも、ミネラル分を含んだ蜜の膜を適度に残した状態になります。
精製された白砂糖と、未精製の黒糖の「いいとこ取り」をしたような砂糖と言えます。
てんさい糖の色の秘密
市販されている茶色のてんさい糖は、糖蜜を含んだまま乾燥させて作られています。
この茶色は、製造工程での加熱によって生じる色と、原料由来の色です。
ちなみに、てんさい糖の原料からも真っ白な「上白糖」や「グラニュー糖」を作ることは可能ですが、健康志向の商品として販売されている「てんさい糖」は、あえてミネラルやオリゴ糖を残したタイプが主流です。
体験談・梅シロップ作りで感じた違い
僕は毎年、初夏になると梅シロップを仕込むのですが、ある年、「洗双糖」と「てんさい糖」で作り比べてみたことがあります。
まず、洗双糖で漬けた梅シロップ。
出来上がりは美しい琥珀色で、味は濃厚なコクがありました。
梅の酸味に負けない力強い甘みがあり、炭酸で割っても味が薄まらず、しっかりとした「梅ジュース」を楽しめました。
「これぞ、おばあちゃんの味!」というような、懐かしくて深い味わいでした。
次に、てんさい糖で漬けた梅シロップ。
こちらは少し茶色が濃く濁ったような色合いになりました(てんさい糖の種類にもよりますが)。
味は非常にまろやかで、角のない優しい甘さ。
ただ、洗双糖に比べると少し発酵しやすかったのか、泡が出やすかった記憶があります。
味もあっさりしているので、梅の酸味が際立って感じられました。
この経験から、「保存性を高めてコクを楽しみたいなら洗双糖、すぐに飲みきって優しい味にしたいならてんさい糖」という使い分けをするようになりました。
個人的には、梅シロップには洗双糖のコクがベストマッチだと感じています。
洗双糖とてんさい糖に関するよくある質問
Q. 洗双糖はどこで買えますか?
A. 一般的なスーパーでは取り扱いが少ない場合があります。自然食品店や製菓材料店、または生活クラブなどの生協、ネット通販で入手するのが確実です。「粗糖」や「島ザラメ」という名前で売られているものも近い性質を持っています。
Q. てんさい糖は溶けにくいですか?
A. 市販の粉末タイプのてんさい糖は比較的溶けやすいですが、上白糖に比べると少し粒感を感じることがあります。冷たい飲み物に入れる場合は、少し溶け残りが出ることもあるので、シロップ状にして使うか、よくかき混ぜる必要があります。
Q. 白砂糖の代わりに使う時の分量は?
A. どちらも白砂糖(上白糖)とほぼ同じ甘さか、わずかに甘みが穏やかです。基本的にはレシピ通りの分量(1:1)で置き換えて問題ありません。甘さを控えめにしたい場合は、味を見ながら調整してください。
まとめ|目的別おすすめの使い方
洗双糖とてんさい糖、それぞれの個性を理解すれば、健康も美味しさも手に入ります。
最後に、迷った時の選び方の基準をまとめておきますね。
- 洗双糖(サトウキビ由来・ミネラル豊富)がおすすめな人・シーン
- 料理にコクと深みを出したい時(煮物、照り焼き)
- 梅シロップや果実酒を作りたい時
- ミネラルを自然に摂取したい人
- クセのない、万能な茶色い砂糖を探している人
- てんさい糖(甜菜由来・オリゴ糖配合)がおすすめな人・シーン
- お腹の調子を整えたい人(オリゴ糖)
- 冷え性が気になり、体を温める食材を選びたい人
- 焼き菓子を優しい甘さに仕上げたい時
- あっさりとした上品な甘さを好む人
「コクの洗双糖、優しさのてんさい糖」。
このイメージを持って、あなたのライフスタイルに合う方を選んでみてください。
どちらも白砂糖にはない自然な風味があり、料理の味をワンランク上げてくれる頼もしい存在ですよ。
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