「この場所は立ち入り禁止です」と言いたいとき、あなたは英語でどう表現しますか?
もし相手が親しい友人ならまだしも、ビジネスパートナーや公的な文書で言葉を選び間違えると、思わぬ誤解やトラブルを招くかもしれません。
この記事を読めば、状況に応じた「禁止」の正しい使い分けが身につき、洗練された大人の英語表現ができるようになります。
それでは、まず最も重要な「prohibit」と「forbid」の違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「prohibit」と「forbid」の最も重要な違い
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の決定的な違いは、「誰が(何が)」禁止しているかという点にあります。
以下の比較表で整理しましたので、ざっくりと全体像を掴んでください。
| 項目 | prohibit(プロヒビット) | forbid(フォービッド) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 法や規則による公的な禁止 | 個人的・直接的な命令による禁止 |
| 禁止の主体 | 法律、ルール、当局 | 人(親、医者、上司など) |
| ニュアンス | フォーマル、硬い、客観的 | インフォーマル~やや硬い、主観的 |
| 主な構文 | prohibit A from doing | forbid A to do |
| 使用シーン | 契約書、看板、社内規定 | 家庭、診察室、個人的な会話 |
一言で言えば、ルールとしてダメなのが「prohibit」、私がダメだと言っているのが「forbid」と覚えると分かりやすいですね。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
言葉の持つ「コアイメージ」を理解するために、少しだけ語源に触れてみましょう。
丸暗記するよりも、背景にあるストーリーを知ることで、記憶への定着率がグッと高まりますよ。
prohibit:前でガシッと押さえ込む
「prohibit」はラテン語に由来します。
- pro-(前に)
- hibere(habere:保つ、持つ)
この二つが組み合わさり、「(入ってこないように)前で保持する」「阻止する」という意味になりました。
まるで警備員が入り口で立ちはだかり、物理的にストップをかけているような、強力で物理的・客観的な阻止のイメージが浮かびませんか?
だからこそ、法律や規則といった「動かせない力」による禁止に使われるのです。
forbid:言葉で強く命じる
一方、「forbid」は古英語に由来します。
- for-(完全に、強調の意)
- bid(命じる)
つまり、「絶対にするなと命じる」という意味です。
こちらは物理的な阻止というよりは、「言葉による強い命令」です。
「お父さんがダメと言ったらダメ!」というような、人と人との直接的な関係性の中で発せられる禁止のニュアンスが含まれているのは、このためですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
では、実際にどう使い分ければよいのか、具体的なシーン別の例文で見ていきましょう。
特にビジネスシーンでは、相手に与える印象が大きく変わるので注意が必要です。
prohibitを使った例文(ビジネス・公的)
「prohibit」は、個人の感情ではなく「ルールだから」という客観的な事実を伝えるのに最適です。
- Smoking is prohibited in this area.
(このエリアでの喫煙は禁止されています。)
※看板やアナウンスでよく見る定番表現です。 - Our company policy prohibits employees from accepting expensive gifts.
(社内規定により、従業員が高価な贈り物を受け取ることは禁止されています。)
※「私が断っているのではなく、会社のルールなんです」と角を立てずに断る際に便利です 。
forbidを使った例文(日常・個人的)
「forbid」は、権威ある人(親、医者、上司など)が、相手に対して直接的に禁止する場合に使います。
- My doctor forbade me to drink alcohol.
(医者に飲酒を止められました。)
※医者と患者という個人的な関係での指示です。 - I forbid you to go out tonight!
(今夜は外出禁止だ!)
※親が子供に叱るような、強い調子になります 。
【注意】ビジネスでのNG例
部下や同僚に対して注意する際、「I forbid you to use smartphone.(スマホの使用を禁ずる)」と言ってしまうと、まるで「王様が家来に命じている」ような、非常に高圧的で古臭い響きになります。
ビジネスでは「Please refrain from using…(~はご遠慮ください)」や、ルールとして伝える「Using smartphones is prohibited…」を使うのがスマートな大人の対応ですね。
【応用編】似ている言葉「ban」との違いは?
ニュースなどでよく耳にする「ban」についても触れておきましょう。
「prohibit」と似ていますが、「ban」にはより強い「社会的・道徳的な追放」のニュアンスが含まれます。
例えば、「核兵器の禁止(ban on nuclear weapons)」や「特定国からの入国禁止(travel ban)」のように、世論や道徳的判断によって「悪」とされたものを締め出す際によく使われます 。
「prohibit」は単に「法律でダメと書かれている」という事務的な響きがあるのに対し、「ban」は「社会から排除する」という強い意志を感じさせる言葉です。
「prohibit」と「forbid」の違いを学術的に解説
ここで少し専門的な視点から、文法構造の違い(構文)について解説します。
TOEICや受験英語でも頻出のポイントですが、実はこの構文の違いが、それぞれの単語の「拘束力」の性質を表しているとも言えます。
From doing vs To do
- prohibit A from doing
「Aが~するのを(物理的に)防ぐ・妨げる」というニュアンスです。「prevent A from doing」と同じ形を取ることから、行為そのものを遠ざけるイメージがあります 。 - forbid A to do
「Aに~しないよう(言葉で)命じる」というニュアンスです。「tell A to do」や「order A to do」と同じ不定詞を取ることから、相手の意志に働きかける命令の形と言えます 。
現代のコーパス言語学の研究(実際の使用例の統計分析)でも、公的な文書やニュースでは「prohibit」が圧倒的に多く、小説や会話文では「forbid」が好まれる傾向がはっきりと出ています。
「I forbid you」と言ってしまい凍りついた会議室
これは僕が海外駐在員として働き始めたばかりの頃の、冷や汗が出るような失敗談です。
現地のスタッフが、会議中に頻繁にスマホをチェックしているのが気になっていました。
真面目な議論の場だったので、僕はビシッと言ってやろうと思い、辞書で覚えたての「forbid」を使ってこう言い放ったのです。
「I forbid you to use your phone in this meeting.(会議中のスマホ使用を禁ずる!)」
その瞬間、会議室の空気がピキッと凍りつきました。
スタッフたちは驚いた顔で顔を見合わせ、気まずそうに沈黙してしまったのです。
後で現地の同僚に、「その言い方だと、まるで君が僕たちの父親か、数世紀前の独裁者みたいに聞こえるよ」と笑いながら(でも真剣に)指摘されました。
「こういう時は、”Company policy prohibits mobile phones…” と言うか、単に “Please put your phone away.” と言えばいいんだよ」と教わり、顔から火が出るほど恥ずかしかったのを覚えています。
この経験から、僕は「言葉の選択は、単なる意味の違いではなく、相手との距離感や立場の違いそのものである」ということを痛感しました。
あなたには同じ失敗をしてほしくありません。権限を振りかざすのではなく、状況に合わせた言葉選びを心がけてくださいね。
「prohibit」と「forbid」に関するよくある質問
ここでは、prohibitとforbidに関するよくある疑問にQ&A形式でお答えします。
Q. 看板でよく見る「No Smoking」と「Smoking Prohibited」の違いは?
A. フォーマル度の違いだよ。
「No Smoking」は一番一般的で分かりやすい表現。「Smoking Prohibited」はより硬く、法的拘束力があるような場所(病院や政府施設など)で使われることが多いね。
Q. 「God forbid」ってどういう意味?
A. 「とんでもない!」「まさか!」という意味の決まり文句だよ。
直訳すると「神がそれを禁じ給う」だけど、実際には悪いことが起きないように願ったり、相手の不吉な発言を否定したりするときに使うんだ。日常会話ではこのフレーズで「forbid」を聞くことが一番多いかもしれないね。
Q. 結局、迷ったらどっちを使えばいい?
A. ビジネスなら「not allowed」が無難!
えっ?と思うかもしれないけど、「prohibit」も「forbid」も強い言葉だから、日常や通常のビジネス会話なら「You are not allowed to…」や「Please refrain from…」を使うのが一番安全で丁寧だよ。
「prohibit」と「forbid」の違いのまとめ
いかがでしたか?最後に、今回の内容を振り返ってみましょう。
「prohibit」と「forbid」は、どちらも「禁止」を表しますが、その背景にある力の性質が全く異なります。
- prohibit:法律やルールによる公的で客観的な禁止。「from doing」の形をとる。
- forbid:権威ある人からの個人的で直接的な禁止。「to do」の形をとる。
言葉の持つ「温度感」を理解して使い分けることができれば、あなたの英語力は一段と深みを増すはずです。
もし、さらに英語由来の言葉の微妙なニュアンスの違いについて知りたい場合は、以下の記事も参考にしてみてください。
▶ 英語由来語の違いまとめ:ニュアンスを正しく理解して使いこなそう
言葉の背景を知ることは、その言葉を使う人々の文化や考え方を知ることでもあります。
ぜひ、今日の知識を次回の英会話やメール作成で活かしてみてくださいね。
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