「ファイナンス」と「アカウンティング」の違い!MBA視点で学ぶお金のスキル

「ファイナンス」と「アカウンティング」、ビジネスの現場やMBA(経営学修士)のカリキュラムで必ず登場するこの2つの単語。

日本語に訳せば「財務」と「会計」ですが、カタカナ語として使われるときは、単なる事務処理以上の「企業価値を最大化するための戦略(ファイナンス)」と「ビジネスの状況を可視化する共通言語(アカウンティング)」というニュアンスで語られることが多いです。

「どっちも数字を扱う仕事でしょ?」と混同していると、経営会議での議論が噛み合わなかったり、キャリアプランを考える上で方向性を見誤ったりするかもしれません。

この記事を読めば、それぞれの言葉が持つビジネス上の役割と関係性、そして経営における「過去」と「未来」の視点の違いまでスッキリと理解でき、数字に強いビジネスパーソンとしての一歩を踏み出せるようになりますよ。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「ファイナンス」と「アカウンティング」の最も重要な違い

【要点】

「アカウンティング」は企業の活動をルールに従って記録・報告する「過去の健康診断」です。一方、「ファイナンス」はその情報を元に、資金調達や投資を行って企業価値を高める「未来の意思決定」です。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の決定的な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、ビジネスシーンでの理解はバッチリです。

項目アカウンティング (Accounting)ファイナンス (Finance)
中心的な役割ビジネスの状況を記録・報告する企業価値向上のために意思決定する
時間軸過去(実績の集計)未来(将来の予測と計画)
重視するもの利益 (Profit)、正確性現金 (Cash)、企業価値 (Value)
例え「ビジネスの共通言語」(翻訳機)「投資と調達の理論」(羅針盤)
主なアウトプット財務諸表(BS/PL/CS)資金計画、投資判断、株価対策

簡単に言えば、会社が「いくら儲かったか」をルール通りに計算して成績表を作るのが「アカウンティング」です。

一方で、その成績表や市場のデータを使って「これからどうやって会社を成長させるか、どこからお金を集めてくるか」を戦略的に考えるのが「ファイナンス」ですね。

つまり、「過去を記述するツール」がアカウンティング、「未来を切り拓く判断」がファイナンスと考えると分かりやすいでしょう。

なぜ違う?英語の語源とニュアンスからイメージを掴む

【要点】

Accountingは「Account(説明する・報告する)」に由来し、結果を説明する責任(アカウンタビリティ)を含みます。Financeは「Finish(終える・決済する)」に関連し、借金を終わらせる(返済する)=資金を調達・管理するという動的なお金の動きを表します。

なぜこの二つの言葉に視点の違いが生まれるのか、英語の語源やニュアンスを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「Accounting」のイメージ:説明責任を果たすための記録

Accountingの語源は「Account(計算する、説明する)」です。

「Accountability(説明責任)」という言葉があるように、株主や銀行などのステークホルダーに対して、「会社のお金がどう使われたか」を正しく説明・報告するというニュアンスが強いです。

そのため、厳格なルール(会計基準)に従って、正確に記録することが何よりも求められます。

「Finance」のイメージ:お金を融通し、価値を生む活動

Financeの語源は、ラテン語の「finis(終わり)」や古フランス語の「finer(支払って終わらせる)」にあると言われています。

ここから「借金を返済する」「決済する」という意味になり、転じて「必要な資金を調達し、管理・運用する」というダイナミックなお金の流れ全般を指すようになりました。

静的な記録ではなく、お金を動かして未来の価値(リターン)を生み出す、能動的な活動のイメージが含まれています。

具体的な利用シーンで使い分けをマスターする

【要点】

決算書の作成や監査対応、日々の経費精算などは「アカウンティング」の領域です。一方、M&Aの検討、銀行との融資交渉、株主への還元方針の策定などは「ファイナンス」の領域で語られます。

言葉の違いは、具体的なビジネスシーンで確認するのが一番ですよね。

外資系企業や経営企画の現場では、この使い分けが非常に重要です。

アカウンティング(会計)を使うシーン

「正しく記録し、報告する」場面で使われます。

【OK例文】

  • 今期の決算に向けて、アカウンティングファーム(監査法人)と打ち合わせをする。
  • 管理アカウンティング(管理会計)を導入して、部門ごとの採算を見える化する。
  • グローバル展開にあたり、国際アカウンティング基準(IFRS)への対応が急務だ。

ファイナンス(財務)を使うシーン

「お金を集め、投資し、価値を上げる」場面で使われます。

【OK例文】

  • 新規プロジェクトの資金調達について、ファイナンス部門と連携する。
  • M&A(企業の合併・買収)を行う際の企業価値評価(バリュエーション)は、ファイナンスの知識が必要だ。
  • コーポレートファイナンスの理論に基づき、配当政策を見直す。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることもありますが、ビジネスの文脈としては不自然な表現です。

  • 【NG】毎日の交通費精算は、ファイナンスの重要な仕事だ。
  • 【OK】毎日の交通費精算は、アカウンティング(経理)の重要な仕事だ。

日々の細かい記録や精算業務は、戦略的な「ファイナンス」ではなく、実務的な「アカウンティング(経理)」の範疇です。

  • 【NG】決算書を作って税務署に提出するのは、ファイナンスの役割だ。
  • 【OK】決算書を作って税務署に提出するのは、アカウンティング(財務会計・税務会計)の役割だ。

制度に従った報告書の作成は「アカウンティング」です。「ファイナンス」はその決算書を「使う」側ですね。

【応用編】似ている言葉「ブックキーピング(簿記)」との違いは?

【要点】

「ブックキーピング(Bookkeeping)」は「帳簿記入」のことで、日々の取引を記録する単純作業を指します。これがアカウンティングの基礎となり、アカウンティングの情報を用いてファイナンスが行われる、という階層構造になっています。

アカウンティングのさらに基礎となるのが「ブックキーピング(簿記)」です。

これら3つの関係性を整理すると、ビジネスにおけるお金の管理の全体像が見えてきます。

3つの包含関係イメージ

  • ブックキーピング(Bookkeeping):日々の取引を帳簿につける作業。「入力」のフェーズ。
  • アカウンティング(Accounting):帳簿を集計・分析し、決算書として報告する。「情報化・報告」のフェーズ。
  • ファイナンス(Finance):報告された情報を元に、未来の資金戦略を立てる。「意思決定・実行」のフェーズ。

英語圏のことわざに「Accounting is the language of business.(会計はビジネスの共通言語である)」というものがあります。

アカウンティングが「言語」だとすれば、ブックキーピングは「文字の書き方(文法)」、ファイナンスはその言語を使って「詩を書く(価値を創造する)」ことと言えるかもしれません。

「ファイナンス」と「アカウンティング」の違いを専門的に解説(BS・PLと時間軸)

【要点】

アカウンティングはPL(損益計算書)重視で、「過去の利益」を正しく計算することに注力します。ファイナンスはBS(貸借対照表)重視で、右側(負債・純資産)でコストの安い資金調達を考え、左側(資産)で収益性の高い投資を考えることで、企業価値の最大化を目指します。

もう少し専門的な視点から、この違いを掘り下げてみましょう。

財務諸表(決算書)との関わり方を見ると、両者のスタンスの違いが明確になります。

アカウンティングの視点:PLと過去の実績

アカウンティングは、主に「PL(損益計算書)」に重きを置きます。

「1年間でこれだけ売り上げて、これだけ経費がかかって、これだけ利益が出た」という「過去の成績」を正確に測定することが最大のミッションです。

ここでは「利益(Profit)」が主役です。

ファイナンスの視点:BSと未来のキャッシュ

一方、ファイナンスは「BS(貸借対照表)」「CS(キャッシュフロー計算書)」を重視します。

BSの右側(どうやってお金を集めたか)を見て、「銀行借り入れと株式発行、どっちのコストが安いか?」を考えます(最適資本構成)。

BSの左側(集めたお金を何に使っているか)を見て、「この工場への投資は将来どれだけの現金を産むか?」を考えます(投資意思決定)。

ここでは帳簿上の利益ではなく、実在する「現金(Cash)」と「未来の価値」が主役です。

詳しくは日本公認会計士協会のウェブサイトなどで、会計と監査の役割について確認してみるのも良いでしょう。

MBA留学で「アカウンティング」と「ファイナンス」の壁に直面した体験談

僕が社会人留学でMBA(経営学修士)のコースに通い始めた頃の話です。

日本で経理の実務経験があった僕は、「数字には自信がある」と思っていました。

最初の「アカウンティング(財務会計)」の授業では、仕訳や決算書の作成など、馴染みのある内容ばかりで、「なんだ、楽勝じゃないか」と高を括っていました。

しかし、次の学期で「コーポレート・ファイナンス」の授業が始まると、景色が一変しました。

「このプロジェクトのNPV(正味現在価値)を計算し、投資すべきか判断せよ」

「現在の株価は妥当か? WACC(加重平均資本コスト)を用いて理論株価を算出せよ」

飛び交う言葉は、僕が知っている「正確に記録する」世界とは全く別の、「不確実な未来を予測し、価値を計算する」世界でした。

「先生、この将来の売上予測はあくまで仮定ですよね? 正確な数字じゃないと計算できません」

僕がそう質問すると、教授はニヤリと笑って言いました。

「それが会計士(Accountant)とバンカー(Financier)の違いだ。会計は過去の事実を1円単位で合わせる。ファイナンスは未来の可能性をロジックで説明するんだ。ビジネスリーダーに必要なのは、正確な過去よりも、妥当な未来を描く力だよ

この言葉に、僕は頭をガツンと殴られたような衝撃を受けました。

それまでは「数字が合うこと」が正義だと思っていましたが、「数字を使ってどう意思決定するか」こそが経営の本質なのだと気づかされたのです。

この経験から、「アカウンティングは地図、ファイナンスは羅針盤」だということを深く学びました。地図(現状把握)がなければ現在地はわかりませんが、羅針盤(方向決定)がなければ目的地にはたどり着けないのです。

「ファイナンス」と「アカウンティング」に関するよくある質問

CFO(最高財務責任者)に必要なのはどっちのスキルですか?

CFOには両方のスキルが高いレベルで求められますが、経営戦略に関わるという点では「ファイナンス」の視点がより重要視されます。アカウンティングで現状を把握し、ファイナンスで企業の成長戦略を描くのがCFOの役割です。

簿記の資格があればファイナンスも分かりますか?

簿記は主に「アカウンティング(特に財務会計)」のスキルです。ファイナンスの基礎(資金調達など)も一部含みますが、企業価値評価や投資理論などは別の学習が必要です。ファイナンスを学ぶなら「証券アナリスト」などの資格が近いです。

個人の家計管理で言うとどうなりますか?

家計簿をつけて収支を把握するのが「アカウンティング」。その結果を見て、住宅ローンを借り換えたり、NISAで資産運用をしたりして将来の資産を最大化しようとするのが「ファイナンス」です。

「ファイナンス」と「アカウンティング」の違いのまとめ

「ファイナンス」と「アカウンティング」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 視点の違い:「アカウンティング」は過去の記録、「ファイナンス」は未来の決定。
  2. 役割の違い:「アカウンティング」は説明責任(報告)、「ファイナンス」は価値向上(戦略)。
  3. 重視する数字:「アカウンティング」は利益、「ファイナンス」は現金(キャッシュ)。
  4. 関係性:アカウンティングの情報を使って、ファイナンスを行う。

「アカウンティング」はビジネスを語るための共通言語であり、「ファイナンス」はその言語を使って未来のストーリーを描く技術です。

この二つの武器を使いこなせば、ビジネスの「過去・現在・未来」を自由に行き来し、より的確な判断ができるようになるはずです。

これからは自信を持って、数字を操るビジネスパーソンとして活躍していきましょう。もし、他にも専門用語の使い分けで迷うことがあれば、業界用語の違いまとめなども参考にしてみてください。

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