「トータルリターン」と「利回り」、投資信託や株式投資を始めると必ず目にする言葉ですが、この二つの数字が全く別の意味を持っていることを正しく理解していますか?
結論から言うと、この二つの違いは「投資を始めてから現在までの『合計の損益』(トータルリターン)」と「1年あたりの『収益ペース』(利回り)」という、期間と単位の違いにあります。
「利回りが高いから買ったのに、トータルリターンはマイナスだった」という失敗は、投資初心者が最も陥りやすい罠の一つ。
この記事を読めば、証券会社の画面に並ぶ数字の本当の意味がスッキリと理解でき、見せかけの数字に惑わされずに本当に儲かる商品を選べるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから一覧表で詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「トータルリターン」と「利回り」の最も重要な違い
基本的には、投資期間全体での最終的な成績(金額または%)が「トータルリターン」、それを1年単位にならした収益率が「利回り」です。トータルリターンは「結果」、利回りは「効率・ペース」を表します。
まず、結論からお伝えしますね。
「トータルリターン」と「利回り」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、投資の成績表を正しく読めるようになります。
| 項目 | トータルリターン | 利回り(年利) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 投資期間全体の総合的な損益 | 1年あたりの収益率 |
| 対象期間 | 購入時 ~ 現在(または売却時) | 通常は「年間」換算 |
| 構成要素 | 値上がり益 + 分配金・配当金 | (収益 ÷ 投資元本)÷ 年数 |
| 単位 | 円(金額)または %(率) | %(率) |
| 役割 | 「結局いくら儲かったか」の確認 | 「投資効率が良いか」の比較 |
一番大切なポイントは、「トータルリターンは過去の実績(通知表)であり、利回りは他の商品と比較するためのスペック(偏差値)」というイメージの違いです。
特に投資信託の場合、法的には「トータルリターン通知制度」により、投資家に対して「実際にいくら損得したか」を金額で通知することが義務付けられています。
なぜ違う?言葉の定義と計算期間から役割を掴む
「トータルリターン」はキャピタルゲイン(値上がり)とインカムゲイン(配当)を足した合計です。「利回り」は一般的に年率を指し、投資効率を測る指標です。5年間の運用成績を見るならトータルリターン、銀行預金などと比較するなら利回りを使います。
なぜ二つの指標を使い分ける必要があるのか、それぞれの計算ロジックから紐解くとよくわかりますよ。
「トータルリターン」の定義:財布の中身の増減
トータルリターンは、文字通り「トータル(合計)」の「リターン(収益)」です。
以下の3つの要素を合計して計算します。
- 現在の評価額(いま売ったらいくらになるか)
- 受け取った分配金・配当金(これまでに貰った現金)
- (売却した場合)売却益
これら全てを足したものから「投資元本」を引けば、「結局、財布の中身はいくら増えたのか(減ったのか)」がわかります。
長期投資において、途中で受け取った分配金を含めて評価するために不可欠な指標です。
「利回り」の定義:1年あたりの成長スピード
一方、利回りは一般的に「年利回り」を指します。
例えば、5年間で50%増えた投資があったとします。
「50%儲かった」というのがトータルリターン(累積リターン)ですが、これだと「1年で50%」なのか「10年で50%」なのか分かりにくいですよね。
そこで、「1年あたり平均すると約10%増えたね」とならした数字が利回りです。
これにより、定期預金(年利0.002%)や他の投資商品と横並びで比較できるようになります。
具体的な計算例で「数値のズレ」をマスターする
100万円を3年間運用して、最終的に130万円(分配金含む)になった場合、トータルリターンは「+30%」、利回りは「年約9.1%(複利)」となります。期間が長くなるほど、この二つの数字の乖離は大きくなります。
言葉の違いは、具体的な数字で見ると一目瞭然です。
以下のケースでシミュレーションしてみましょう。
- 投資額:100万円
- 運用期間:3年間
- 3年後の資産価値:130万円(受け取った分配金も含む)
トータルリターン(累積)の計算
計算はシンプルです。
(130万円 - 100万円)÷ 100万円 × 100 = +30.0%
「3年間で30%増えました」というのがトータルリターンです。
利回り(年率)の計算
これを1年単位に直します(簡易的に複利計算)。
(1.3の3乗根 - 1)× 100 ≒ 約9.14%
「1年あたり約9.1%のペースで増えました」というのが利回りです。
このように、「+30%(トータル)」と「+9.1%(利回り)」は同じ結果を表していますが、見ている時間軸が違うのです。
【応用編】投資信託の「分配金利回り」と「トータルリターン」の罠
毎月分配型の投資信託などで見かける「分配金利回り」が高いからといって、儲かっているとは限りません。元本を取り崩して分配金を出している場合(タコ足配当)、分配金利回りは高くても、基準価額が下がってトータルリターンはマイナスになることがあります。
投資信託選びで最も危険なのが、「分配金利回り」だけを見て買ってしまうことです。
例えば、「年利15%相当の分配金!」と宣伝されているファンドがあったとします。
しかし、そのファンドの運用成績が悪く、実際には利益が出ていない場合、ファンドはあなたの預けた元本を削って分配金を支払います(特別分配金)。
これは、自分の銀行口座からお金を引き出して「お小遣いだ!」と喜んでいるのと同じです。
この場合、以下のようになります。
- 分配金利回り:15%(高配当に見える)
- トータルリターン:-5%(実は損している)
「利回りが高いのに資産が減っていく」という怪奇現象の正体はこれです。
だからこそ、本当の実力を知るには必ず「トータルリターン」を確認しなければならないのです。
「トータルリターン」と「利回り」の違いを投資判断・評価の視点から解説
「利回り」は投資前の“期待”や商品比較に使います(例:AファンドとBファンドどっちが効率いい?)。「トータルリターン」は投資後の“結果”確認や保有継続の判断に使います(例:これまでの運用は成功だったか?)。
ここでは少し専門的に、投資のフェーズごとの使い分けを深掘りしてみましょう。
買う前(比較検討フェーズ):利回り
これから投資する商品を選ぶときは、「利回り(年率)」を参考にします。
「過去3年の平均利回り」や「目標利回り」を見ることで、他の商品や市場平均(インデックス)と比較し、投資効率が良いか判断します。
買った後(保有・売却フェーズ):トータルリターン
実際に保有している商品を評価するときは、「トータルリターン」を見ます。
証券会社のマイページなどで「トータルリターン」を確認し、「元本に対してこれだけ増えた(減った)」という事実を把握します。
特にNISAなどで長期保有する場合、途中の価格変動(基準価額)だけ見ていると、再投資された分配金の効果を見落としてしまうため、トータルリターンでの評価が必須です。
詳しくは日本証券業協会のサイトなどで、トータルリターン通知制度の仕組みを確認してみるのも勉強になりますよ。
僕が「利回り」だけを見て投資信託を買い、資産を減らした体験談
僕も投資を始めたばかりの頃、この「利回り」の数字マジックに引っかかった苦い経験があります。
ランキングサイトで「分配金利回り20%」という驚異的な投資信託を見つけました。
「銀行に預けるより1000倍も増えるじゃん!」と興奮し、退職金の一部を突っ込みました。
毎月振り込まれる分配金を見て、「不労所得だ!」と喜んでいたのも束の間。
1年後に口座残高(評価額)を見ると、購入時より30%も減っていたのです。
「えっ、なんで? 毎月お金もらってたのに?」
慌てて計算してみると、受け取った分配金(+20%分)を足しても、基準価額の下落(-30%分)を補えず、トータルリターンはマイナス10%でした。
まさに「自分の足を食べて満腹になっていたタコ」だったのです。
この経験から、「『利回り』は客寄せパンダになることがあるが、『トータルリターン』は嘘をつかない」ということを痛感しました。
それ以来、銘柄を選ぶときは必ず「基準価額の推移」と「トータルリターン」をセットで確認するクセがつきましたね。
「トータルリターン」と「利回り」に関するよくある質問
トータルリターンがマイナスになることはありますか?
はい、あります。投資した元本よりも、現在の評価額と受け取った分配金の合計が少なくなっている状態です。「含み損」を抱えている状態と言えます。
「騰落率(とうらくりつ)」とはどう違うのですか?
「騰落率」は、ある期間(1ヶ月、1年など)で基準価額が何%動いたかを示すものです。分配金を再投資したと仮定して計算されることが多く、実質的にはその期間の「トータルリターン(率)」とほぼ同じ意味で使われます。
結局、どちらの数字を信じればいいですか?
自分の資産が本当に増えているかを知りたいなら「トータルリターン」を信じてください。「利回り(特に分配金利回り)」はあくまで参考情報であり、商品の健全性を保証するものではありません。
「トータルリターン」と「利回り」の違いのまとめ
「トータルリターン」と「利回り」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は期間の違い:全期間の合計が「トータルリターン」、1年あたりのペースが「利回り」。
- 役割の違い:トータルリターンは「結果(通知表)」、利回りは「比較(スペック)」。
- 注意点:分配金が高いだけの「見せかけの高利回り」に注意。
- 判断基準:本当の損益を知りたいなら、必ずトータルリターンを見る。
言葉の意味だけでなく、その裏にある「お金の増減の仕組み」まで理解しておけば、見せかけの数字に騙されることなく、着実に資産を増やすことができます。
これからは自信を持って、ご自身のポートフォリオを評価していってくださいね。
もし、他にも専門用語の使い分けで迷うことがあれば、業界用語の違いまとめなども参考にしてみてください。
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