「ペルソナ」と「ターゲット」。マーケティングの企画書や会議で必ずと言っていいほど登場するこの二つの言葉、あなたは明確に使い分けられていますか?
結論から言えば、ターゲットは「属性で括られた集団」、ペルソナは「人格を持った架空の個人」です。
この記事を読めば、顧客設定の解像度が劇的に上がり、誰の心に響くメッセージを発信すればいいのか、もう迷わなくなるはず。
それでは、まず最も重要な違いを一覧表で見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「ペルソナ」と「ターゲット」の最も重要な違い
ターゲットは「年代・性別・居住地」などの属性で絞り込んだ「実在する集団」であり、ペルソナはその中から代表的な人物像をありありと描いた「架空の個人」です。幅広さと深さの違いとも言えます。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
「広さ」を見るか、「深さ」を見るか、という視点の違いが見えてくるはずです。
| 項目 | ターゲット(Target) | ペルソナ(Persona) |
|---|---|---|
| 定義 | 属性でセグメントされた集団 | 詳細な人格を持った架空の個人 |
| 具体性 | 抽象的(幅がある) | 具体的(深さがある) |
| 設定項目 | 年齢、性別、職業、年収など | 氏名、顔写真、価値観、悩み、生活習慣 |
| 目的 | 市場のボリュームを把握する | 顧客の感情や行動を深く理解する |
| イメージ | 「20代〜30代の働く女性」 | 「佐藤愛さん(28)、都内在住、趣味はヨガ」 |
| アプローチ | 「みなさん」への呼びかけ | 「あなた」への語りかけ |
表を見ると、ターゲットは「面」で捉え、ペルソナは「点」で捉えていることがわかりますね。
ターゲットが「狙うべき範囲」を決めるものなら、ペルソナは「その中心にいる人物の心」を覗き込むものと言えるでしょう。
なぜ違う?言葉の定義と深さからイメージを掴む
ターゲットは市場を切り分ける「属性(デモグラフィック)」を重視し、ペルソナは心理や行動背景といった「人格(サイコグラフィック)」を重視します。解像度の高さが決定的に異なります。
ここでは、それぞれの言葉が持つ本来の意味やイメージを深掘りしてみましょう。
なぜ使い分ける必要があるのか、その理由がストンと落ちるはずです。
ターゲット:狙うべき「的(まと)」
ターゲット(Target)は、直訳すると「標的」「的」です。
マーケティングにおいては、「自社の商品を買ってくれそうな層」を指します。
主に「20代男性」「首都圏在住」「年収400万円以上」といった、統計的なデータ(属性)を使ってグループ分けを行います。
これは市場規模(どれくらいの人数がいるか)を把握するのには役立ちますが、「その人がなぜ買うのか」という心の動きまでは見えにくいのが特徴です。
ペルソナ:仮面を被った「人格」
ペルソナ(Persona)は、ラテン語で「仮面」や「人格」を意味する言葉が語源です。
マーケティングでは、ターゲット層の中にいる「最も象徴的な一人の人物像」を指します。
名前、年齢はもちろん、「朝起きて最初にすること」「休日の過ごし方」「今抱えている仕事の悩み」「将来の夢」など、まるで実在する友人のように詳細なプロフィールを設定します。
ここまで具体的にすることで、作り手全員が「佐藤さん(ペルソナ)ならこう考えるよね」と共通認識を持ちやすくなるのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
メディアプランニングなど「どこに出すか」を議論する時はターゲット、クリエイティブやコンテンツなど「何を伝えるか」を議論する時はペルソナを使うのが効果的です。
実際の企画会議などでどのように使い分けられているのか、例文を見てみましょう。
この二つは対立するものではなく、段階によって使い分けるものです。
ビジネスシーンでのOK例文
- 「この新商品のターゲットは、健康意識の高い40代以上の男女です。」(市場の範囲)
- 「今回のWeb記事は、ペルソナの田中さんが通勤電車の中でスマホで読むことを想定して書こう。」(具体的な利用シーン)
- 「ターゲット設定だけだとブレるので、もっと詳細なペルソナを作ってチームの認識を合わせましょう。」(両者の連携)
間違えやすいNG例
- ×「今回のペルソナは、20代から50代の幅広い層です。」
これは矛盾していますね。
ペルソナは「特定の個人」まで絞り込むものなので、「幅広い層」という言葉とは相性が悪いのです。
もし幅広い層を狙う場合でも、代表的なペルソナを一人(または複数パターン)設定する必要があります。
「ペルソナ」と「ターゲット」の違いをマーケティング理論から解説
ターゲットは「STP分析」に基づく古典的な市場選定手法であり、ペルソナは「ユーザー中心設計(UCD)」やUXデザインから生まれた、共感と感情を重視する現代的な手法です。
もう少し専門的な視点から、この二つの違いを見てみましょう。
マーケティングの歴史的背景を知ると、なぜ今ペルソナが重要視されるのかが見えてきます。
STP分析とターゲット
フィリップ・コトラーが提唱した「STP分析」は、マーケティングの基本中の基本です。
- Segmentation(セグメンテーション):市場を分ける
- Targeting(ターゲティング):狙う市場を決める
- Positioning(ポジショニング):立ち位置を決める
ここで言うターゲットは、「集団」としての効率性を重視しています。
マスメディア(テレビCMなど)が主流だった時代は、この「属性によるターゲティング」だけで十分な成果が出せました。
UXデザインとペルソナ
一方、ペルソナという概念は、元々はソフトウェア開発の現場(アラン・クーパーが提唱)から生まれました。
「ユーザーにとって使いやすい製品」を作るためには、ユーザーの行動や心理を深く理解する必要があります。
現代のように価値観が多様化し、モノが売れない時代においては、「みんな」に向けたメッセージは誰にも刺さりません。
「たった一人(ペルソナ)」を深く満足させることで、結果的に似たような価値観を持つ多くの人(ターゲット)を惹きつける。
これが、現代マーケティングにおける勝利の方程式なのです。
「30代男性」というターゲット設定で大失敗した僕の話
僕がまだ駆け出しのマーケターだった頃、ある男性向け化粧品のプロモーションを担当しました。
僕は自信満々でこう設定しました。
「ターゲットは30代男性。仕事に脂が乗ってきて、身だしなみが気になり始める層だ!」
そして、「30代からの男の身だしなみ」というキャッチコピーで広告を出したのです。
結果は、惨敗でした。
クリック率は低く、商品は全く売れません。
悩んだ僕は、実際に商品を買ってくれた数少ないお客様にインタビューをすることにしました。
すると、ある一人の男性がこう言ったんです。
「いやあ、最近部下の女子社員に『肌疲れてますね』って言われてショックでさ…。清潔感がないと嫌われると思って買ったんだよ」
その瞬間、僕の頭の中で「ターゲット:30代男性」という無機質な文字が消え飛びました。
代わりに、「部下の何気ない一言に傷つき、おじさん扱いされたくないと焦っている田中さん(35歳)」という生々しい人物像(ペルソナ)が浮かび上がったのです。
僕は急いで広告コピーを変えました。
「『疲れてる?』と言わせない。部下の視線を変える、男の肌ケア」
反応は劇的に変わりました。
「30代男性」という記号に向けてボールを投げても、誰も受け取ってくれません。
でも、「田中さん」という一人の人間に向けて語りかければ、田中さんと同じ悩みを持つ何千、何万という人たちが「これは俺のことだ!」と振り向いてくれる。
ペルソナを作る意味は、まさにここにあるのだと痛感した出来事でした。
「ペルソナ」と「ターゲット」に関するよくある質問
ここでは、ペルソナとターゲットの違いについて、よくある疑問にQ&A形式で答えていきます。
Q. ペルソナは一人に絞る必要がありますか?
A. 基本的には一人(メインペルソナ)を詳細に設定するのがベストです。ただし、商品が複数の異なるニーズに対応する場合(例:自分用とギフト用など)は、サブペルソナとして2〜3パターン作ることもあります。
Q. ペルソナを絞りすぎると、顧客を取りこぼしませんか?
A. 多くの人が抱く不安ですが、逆です。絞り込むことでメッセージが鋭くなり、結果的に似た属性の人たち(ターゲット層)にも強く響くようになります。「誰にでも刺さる言葉」は存在しません。
Q. ターゲットとペルソナ、どっちを先に決めるべき?
A. 通常は「ターゲット」を決めてから、その中から典型的な人物像として「ペルソナ」を抽出します。まず市場の大枠(20代女性向けなど)を決めないと、ペルソナがニッチになりすぎるリスクがあるからです。
「ペルソナ」と「ターゲット」の違いのまとめ
「ペルソナ」と「ターゲット」の違い、詳しく見てきましたが、いかがでしたでしょうか。
最後に、これまでの内容を改めて整理しておきます。
ターゲットは「市場の広さ」を捉え、ペルソナは「顧客の深さ」を捉える。
どちらが良い・悪いではなく、マーケティングの段階に応じて使い分けることが成功への近道です。
- ターゲット:属性で括られた集団。「誰に売るか」の範囲を決める時に使う。
- ペルソナ:人格を持った架空の個人。「どう伝えるか」の内容を決める時に使う。
- 重要なポイント:ターゲットの中にペルソナがいる。ペルソナに刺されば、ターゲット全体が動く。
もしあなたが「企画がなんとなくありきたりだ」「メッセージが誰にも響いていない気がする」と感じているなら、一度「ターゲット」の眼鏡を外して、「ペルソナ」という虫眼鏡で顧客を覗き込んでみてください。
そこにいる「たった一人」の悩みが見えたとき、あなたのビジネスは大きく動き出すはずですよ。
さらに詳しいマーケティング用語やビジネスの知識については、以下のリンクも参考にしてみてください。
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