「CSR」と「ESG」、ビジネスニュースや新聞で毎日のように目にする言葉ですよね。
どちらも「環境」や「社会」に配慮するイメージがありますが、あなたは明確に使い分けられていますか?
「えっ、どっちも似たような意味じゃないの?」と思ったあなた、実はその認識、少し危険かもしれません。
この二つの言葉は、「誰が」「何のために」見るかという視点の向きが決定的に異なります。
この記事を読めば、それぞれの言葉の定義からビジネスでの具体的な使い分け、さらにはSDGsとの関係までスッキリと理解でき、会議や商談で自信を持って発言できるようになります。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「CSR」と「ESG」の最も重要な違い
基本的には企業視点で「責任を果たす」のが「CSR」、投資家視点で「成長性を測る」のが「ESG」と覚えるのが簡単です。「CSR」は倫理的な活動、「ESG」は投資や経営の指標として使われます。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | CSR | ESG |
|---|---|---|
| 正式名称 | Corporate Social Responsibility (企業の社会的責任) | Environment, Social, Governance (環境・社会・ガバナンス) |
| 主語(誰の視点?) | 企業 | 投資家(およびステークホルダー) |
| 目的 | 社会的な責任を果たす、信頼の獲得 | 持続的な成長を測る、投資判断 |
| ニュアンス | 「社会によいことをする」(倫理・自発的) | 「リスクを下げ、成長する」(戦略・投資的) |
| 典型的な活動例 | 植林活動、地域の清掃、ボランティア | CO2排出削減、女性役員の登用、法令順守体制 |
一番大切なポイントは、CSRは「企業が主語」の活動であり、ESGは「投資家が主語」の評価指標であるということですね。
CSRは「利益の一部を使って社会貢献する」というニュアンスが含まれることもありますが、ESGは「将来の利益を生み出すための経営戦略」として捉えられます。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「CSR」はResponsibility(責任)という言葉通り、企業が社会に対して果たすべき義務や貢献を指します。一方「ESG」は3つの要素(環境・社会・統治)の頭文字であり、企業の持続可能性を分析するための“ものさし”のイメージです。
なぜこの二つの言葉に違いが生まれるのか、言葉の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「CSR」の成り立ち:Responsibilityが表す“責任”
CSRは「Corporate Social Responsibility」の略です。
直訳すると「企業の社会的責任」ですよね。
企業は利益を追求するだけでなく、従業員、消費者、地域社会などのステークホルダー(利害関係者)に対して、「責任ある行動をとるべきだ」という考え方がベースにあります。
「ノブレス・オブリージュ(位高ければ徳あり)」のような、企業としての倫理観や姿勢を問う言葉だとイメージすると分かりやすいでしょう。
「ESG」の成り立ち:3つの要素が表す“指標”
一方、ESGは以下の3つの単語の頭文字を取ったものです。
- Environment(環境):気候変動、資源枯渇など
- Social(社会):人権問題、労働環境、地域社会など
- Governance(ガバナンス):企業統治、法令順守、透明性など
これらは、投資家が「この会社は長く成長し続けられるか?」を判断するためのチェックリストのようなものです。
財務情報(売上や利益)だけでは見えないリスクや成長性を測るための「非財務情報」の指標、と考えるとイメージしやすいですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
自社の社会貢献活動をアピールしたいときは「CSR」、投資家に向けて経営の安定性や将来性を説明したいときは「ESG」を使います。文脈によって使い分けることで、相手に伝わる説得力が変わります。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
「誰に向けて」「何を伝えたいか」を意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:CSR】
- 地域の清掃活動や文化支援など、我が社はCSR活動に力を入れています。
- CSRレポートを発行し、日頃の社会貢献活動を株主や地域の皆様に報告します。
- 企業の信頼性を高めるために、CSRの方針を明確にする必要があります。
【OK例文:ESG】
- 海外の機関投資家から、当社のESGへの取り組みについて問い合わせが増えている。
- ESG投資の観点から、取締役会の多様性を確保することが急務だ。
- 脱炭素への投資はコストではなく、ESG経営の一環として将来の利益につながる。
このように、社会的な信頼を得たい文脈なら「CSR」、投資や経営戦略の文脈なら「ESG」がより正確な表現となりますね。
ニュースやメディアでの使い分け
メディアでの使われ方も見てみましょう。
【OK例文:CSR】
- あの大手メーカーが、CSRの一環として被災地への義援金を寄付した。
- 企業のCSRが問われる不祥事が相次いでいる。
【OK例文:ESG】
- 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が、ESG指数に基づく運用を開始した。
- ESGスコアの高い企業は、株価も安定して推移する傾向がある。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることが多いですが、プロとしては避けたい使い方を見てみましょう。
- 【NG】投資家向けに、わが社のCSRスコアを改善する計画を発表した。
- 【OK】投資家向けに、わが社のESGスコアを改善する計画を発表した。
スコア(点数)で評価され、投資判断に使われるのは主に「ESG」です。「CSRスコア」という言葉もなくはないですが、投資家の関心事はESG評価機関によるスコアであることが大半です。
【応用編】似ている言葉「SDGs」との関係性は?
「SDGs」は世界全体が目指すべき「ゴール(目標)」です。そのゴールにたどり着くために、企業が取り組む活動が「CSR」であり、そのプロセスを投資家が評価する視点が「ESG」です。三者は「目標・活動・評価」の関係にあります。
「CSR」「ESG」と並んでよく聞くのが「SDGs(持続可能な開発目標)」ですよね。
これら3つの関係性は、以下のように整理すると分かりやすいですよ。
- SDGs(Goals):目指すべき「ゴール(目標)」
- ESG(Process/Measure):ゴールへ向かう企業のプロセスを測る「ものさし」
- CSR(Action):ゴールへ貢献するための企業の「活動そのもの」
例えば、「海の豊かさを守ろう(SDGsの目標14)」というゴールがあるとします。
これに対して、企業がプラスチックごみを減らす活動を行うのが「CSR」的な側面。
そして、その活動によって将来的な環境リスクを減らし、企業価値を高めていると投資家が評価するのが「ESG」の視点です。
全部つながっている話なんですね。
「CSR」と「ESG」の違いを学術的に解説
経営学やファイナンスの分野では、CSRは「利益相反」の議論(株主利益か社会貢献か)を含んでいましたが、ESGは「長期的利益の最大化」のための要素として統合的に捉えられています。つまり、社会への配慮が巡り巡って企業の利益になるという「価値共創」の概念がESGの根底にあります。
少し専門的な視点から、この二つの違いを掘り下げてみましょう。
かつて、ミルトン・フリードマンという経済学者は「企業の社会的責任とは、利益を増やすことである」と説きました。
つまり、CSR(社会貢献)にお金を使うことは、株主への配当を減らすことになりかねない、という対立構造があったのです。
しかし、現代のESGの考え方はこれを乗り越えています。
「環境や社会に配慮しない企業は、将来的に訴訟リスクやブランド毀損のリスクが高まり、結局は損をする」
逆に言えば、「ESGに配慮することは、長期的な企業価値(株価)を高めるための合理的な行動である」と捉えられるようになったのです。
この「リスク・リターン」の枠組みで語られるのがESGの大きな特徴であり、単なる善行としてのCSRとは一線を画す部分と言えるでしょう。
詳しくは経済産業省のESG投資に関するページなどでも、その重要性が解説されています。
僕が「ESG」の資料作成で大失敗した新人時代の体験談
あれは入社2年目、IR(投資家向け広報)の支援部署に配属されたばかりの頃の話です。
ある上場企業の「統合報告書」の作成をお手伝いすることになりました。僕は張り切って、その企業がいかに行政と連携して地域の夏祭りを盛り上げているか、社員がどれだけ熱心に近隣のゴミ拾いをしているか、というエピソードをこれでもかと盛り込みました。
「これなら、会社の温かさが伝わるはず!」
自信満々で提出した原稿でしたが、クライアントの担当役員の方からは渋い顔をされてしまいました。
「神宮寺さん、これは素晴らしい『CSR活動』の報告です。でも、今回の報告書を読むのは海外の機関投資家なんです。彼らが知りたいのは、ボランティアの汗と涙の物語ではなく、環境規制への対応が遅れて将来工場が止まるリスクがないか、という『ESG』の情報なんですよ」
顔から火が出るほど恥ずかしかったです。
僕は「良いことをしている会社」=「投資される会社」だと単純に思い込んでいたのです。しかし、投資家が見ているのは「持続可能性(サステナビリティ)」というシビアな現実でした。
「情熱」を伝えるのがCSRだとしたら、「冷静な計算」に基づいているのがESGなのかもしれない。
そう気づいてからは、活動の背景にあるリスク管理や経営戦略としての意味合いを必死に勉強しました。この失敗があったからこそ、今では相手が「誰」で「何」を求めているかを、常に考える癖がついたように思います。
「CSR」と「ESG」に関するよくある質問
Q. 中小企業ですが、ESGに取り組む必要はありますか?
A. はい、あります。上場企業のように株主からの直接的な圧力は少ないかもしれませんが、取引先である大企業から、サプライチェーン全体でのESG対応(CO2削減や人権配慮など)を求められるケースが急増しています。対応しないと取引が継続できなくなるリスクもあります。
Q. CSR活動はもう古いのですか?
A. いいえ、古くありません。地域社会との信頼関係を築くためのCSR活動は、企業の基盤として依然として重要です。ESGは投資家視点が強いですが、従業員のモチベーション向上や採用ブランディングの観点では、分かりやすいCSR活動が大きな効果を発揮します。
Q. 具体的に何から始めればいいですか?
A. まずは自社の活動を「整理」することから始めましょう。すでに行っている省エネ活動や、働きやすい職場づくりなどは、立派なESGの取り組みです。それらをESGの枠組み(E・S・G)に当てはめて言語化し、対外的に発信することが第一歩です。
「CSR」と「ESG」の違いのまとめ
「CSR」と「ESG」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 視点の違い:企業が主語で「責任」を果たすのがCSR、投資家が主語で「評価」するのがESG。
- 目的の違い:CSRは社会貢献や信頼獲得、ESGは持続的成長やリスク管理。
- SDGsとの関係:SDGsは「ゴール」、CSRは「活動」、ESGは「評価指標」。
言葉の背景にある「誰が見ているか」という視点を意識すると、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。さらにビジネス用語への理解を深めたい方は、マーケティング用語の違いをまとめたページもぜひチェックしてみてください。
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