「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の違い、一言で言うと「企業がどこを目指し(Vision)、何を果たすために存在し(Mission)、どう行動するか(Value)」という視点の違いです。
この3つは「MVV」と総称され、企業の根幹を成す重要な概念ですが、混同したまま使っていると、組織の方向性がブレたり、社員への浸透が進まなかったりする原因になりかねません。
この記事を読めば、それぞれの言葉の明確な定義と相互関係、さらには最近注目の「パーパス」との違いまでスッキリと理解でき、自社の指針として自信を持って使い分けられるようになるでしょう。それでは、まず3つの要素の決定的な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「ミッション」と「ビジョン」と「バリュー」の最も重要な違い
ミッションは「存在意義(Why)」、ビジョンは「将来像(Where/What)」、バリューは「行動指針(How)」と整理すると明確です。これらは三位一体となって機能します。
まず、結論からお伝えしますね。
この3つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | ミッション (Mission) | ビジョン (Vision) | バリュー (Value) |
|---|---|---|---|
| 中心的な問い | Why(なぜ存在するのか?) | Where / What(どこを目指すのか?) | How(どう行動するのか?) |
| 定義 | 果たすべき使命・役割・存在意義 | 実現したい未来・中長期的な目標 | 大切にする価値観・行動基準 |
| 時間軸 | 過去〜現在〜未来(永続的) | 未来(中長期的) | 現在(日々の行動) |
| 変化の有無 | 基本的に不変 | 達成すれば更新される | 時代や環境に合わせて見直す |
このように並べてみると、それぞれの役割が明確に分かれていることに気づきませんか?
ミッションは企業の「心臓」として変わらぬ鼓動を刻み、ビジョンは「羅針盤」として進むべき方角を示し、バリューは「足」として日々の歩みを進めるためのもの、とイメージすると分かりやすいかもしれません。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
語源を辿ると、Missionは「送られた者(使命)」、Visionは「見ること(視界)」、Valueは「価値がある(強さ)」という意味を持ちます。原義を知ることで、言葉の持つニュアンスを深く理解できます。
それぞれのカタカナ語の語源を知ることで、その言葉が本来持っているニュアンスをより深く理解できるでしょう。
ミッション(Mission):送られた者たちの「使命」
「Mission」の語源は、ラテン語の「mittere(送る)」に由来します。
キリスト教の宣教師(missionary)が神の教えを広めるために各地へ「派遣」されたことから、「特別な任務」や「使命」という意味を持つようになりました。つまり、誰か(社会や顧客)のために、自らに課された「果たすべき役割」こそがミッションなのです。
ビジョン(Vision):ありありと見える「未来図」
「Vision」は、ラテン語の「visio(見ること)」が語源です。
「ビデオ(Video)」や「ビジュアル(Visual)」と同じルーツですね。単に見るだけでなく、まだ現実にはなっていない未来の光景を、あたかも目に見えるかのように描いたもの、それがビジョンです。「展望」や「構想」と訳されるのも納得ですよね。
バリュー(Value):強くあるための「価値基準」
「Value」の語源は、ラテン語の「valere(強い、価値がある)」です。
単なる「価値」という意味だけでなく、組織として「何を大切にするか」「どうあることが強い組織を作るか」という判断基準を指します。日々の行動や意思決定の際、迷ったときに立ち返るべき「価値観」と言えるでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
経済産業省などの実例を見ると、ミッションで「社会への貢献」、ビジョンで「組織のあり方」、バリューで「個人の姿勢」を定義していることが分かります。抽象的な概念を具体的な言葉に落とし込む良い手本です。
定義だけではイメージしにくい場合もあるかもしれません。ここでは、実際に公表されている組織のMVVを例に、その使い分けを見てみましょう。
実例:経済産業省のMVV
2024年3月に策定された経済産業省のMVVは、非常に明確で参考になります。
Mission(存在意義):国富の拡大
これは「何のために存在するのか」という究極の目的ですね。
Vision(目指す組織像):政策のプロッフェッショナル集団/現場と経営に強い組織/心理的安全性が高く、個々人が挑戦できる組織
ミッションを達成するために、「どのような組織であるべきか」という具体的な姿を描いています。
Values(大事にしたい価値観):社会課題解決のあくなき追求/徹底的な現場主義/多様性の尊重と対話
ビジョンを実現するために、職員一人ひとりが「日々どう行動すべきか」を示しています。
このように、上位の概念(Mission)から下位の行動(Values)へと一貫性を持って繋がっているのが、理想的なMVVの構造なのです。
【応用編】似ている言葉「パーパス(Purpose)」との違いは?
パーパスは「社会的な存在意義」を強調する点でミッションと似ていますが、より「社会との繋がり」や「公益性」に重きを置く傾向があります。MVVに代わる概念ではなく、ミッションの現代的な再定義として使われることが多いです。
近年、ビジネスシーンで急速に広まっている「パーパス(Purpose)」という言葉。「ミッションと何が違うの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、両者は非常に近い概念ですが、視点の「重心」が少し異なります。
ミッション:「企業が」何をしたいか、何をすべきか。(内発的・能動的)
パーパス:「社会において」なぜその企業が必要なのか。(外発的・社会との繋がり)
パーパスは「志」や「社会的な意義」をより強く打ち出す言葉として、SDGsやESG経営の文脈で注目されています。「我々は何者か?」という問いに対し、社会課題の解決とセットで答えるのがパーパスの特徴と言えるでしょう。
多くの企業では、従来のミッションをパーパスと言い換えたり、ミッションの上位概念としてパーパスを置いたりして、現代に合わせたアップデートを行っています。
「ミッション」と「ビジョン」と「バリュー」の違いを学術的に解説
経営学の巨人ピーター・ドラッカーは、事業の定義として「ミッション」「顧客」「顧客価値」の3つを問いました。現代のMVVもこの系譜にあり、組織が成果を上げるための必須ツールとして位置づけられています。
経営学の視点からMVVを見てみると、その重要性がより深く理解できます。
「マネジメントの父」と称されるピーター・F・ドラッカーは、その著書の中で経営者に3つの根源的な質問を投げかけました。
- われわれのミッションは何か?
- われわれの顧客は誰か?
- 顧客にとっての価値は何か?
ドラッカーは、リーダーシップとはカリスマ性ではなく、「ミッションを考え抜き、それを定義し、確立すること」だと説いています。
組織というものは、放っておくと内部の事情や日々の業務に埋没しがちです。だからこそ、MVVという言語化された「共通の旗印」を掲げることで、個々のベクトルを合わせ、社会に対して価値を提供し続けることが可能になるのです。学術的にも、MVVは単なるスローガンではなく、組織を機能させるための「マネジメントツール」として定義されています。
額縁に飾られた「言葉」が、熱を帯びた「指針」に変わった日
僕が以前、ある企業の広報担当として働いていた頃の話です。
その会社には、創業者が作った立派な「社是」がありました。応接室には達筆な文字で書かれた額縁が飾られていましたが、恥ずかしながら、僕を含めて社員のほとんどは、その内容を正確には言えなかったんです。
ある時、リブランディングのプロジェクトが立ち上がり、僕は「MVVの再策定」を担当することになりました。最初は「言葉を変えるだけで何が変わるんだ?」と懐疑的でした。しかし、若手社員から経営層まで巻き込んで、「自分たちは何のために集まっているのか?」「この会社で何を成し遂げたいのか?」を徹底的に議論しました。
深夜まで続く議論の中で、ある若手社員がポツリと言いました。
「僕、この会社の商品でお客さんが笑顔になる瞬間が、一番好きなんですよね」
その一言が、場の空気を変えました。それまで空虚だった「顧客満足」という言葉が、実感を伴う「喜びの共有」というバリューへと昇華された瞬間でした。
完成した新しいMVVは、決して高尚な言葉ではありませんでしたが、自分たちの想いが詰まった「生きた言葉」でした。それを発表した全社総会で、会場の空気が変わったのを肌で感じました。額縁の中の言葉が、社員一人ひとりの胸の中に飛び込んできたようでした。
言葉は、飾るものではなく、使うもの。
そして、自分たちの言葉で定義して初めて、それは組織を動かすエンジンになるのだと、この経験を通して痛感しました。
「ミッション」と「ビジョン」と「バリュー」に関するよくある質問
ここでは、MVVについてよく聞かれる疑問に、Q&A形式でお答えします。
Q. MVVはどの順番で作ればいいですか?
- 基本的には「ミッション(根幹)→ビジョン(未来)→バリュー(行動)」の順で考えるとスムーズです。なぜなら、自分たちの存在意義が決まらなければ、目指すべき未来も決まらないからです。ただし、強い想い(ビジョン)が先行する場合もあるので、行ったり来たりしながら整合性を取っていくのが現実的ですよ。
Q. 一度決めたMVVは変えてはいけないのですか?
- いいえ、そんなことはありません。特にビジョンやバリューは、時代の変化や企業の成長フェーズに合わせて見直すべきです。ミッションも、事業領域が大きく変わるような転換期には再定義が必要になるでしょう。大切なのは「今の自分たち」にフィットしているかどうかです。
Q. 小さな会社や個人事業主でもMVVは必要ですか?
- はい、むしろ小規模な組織こそ必要だと僕は思います。リソースが限られている分、「何をして、何をしないか」という判断基準(バリュー)や、進むべき方向(ビジョン)が明確でないと、迷走してしまうからです。迷った時の立ち返る場所として、作っておいて損はありません。
「ミッション」と「ビジョン」と「バリュー」の違いのまとめ
「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の違い、もう迷わずにイメージできるようになったのではないでしょうか。
最後にもう一度、それぞれの関係性を整理しておきます。
- ミッション:企業の心臓。「なぜやるのか(Why)」という普遍的な存在意義。
- ビジョン:企業の羅針盤。「どこへ行くのか(Where)」という具体的な未来像。
- バリュー:企業の筋肉。「どう動くのか(How)」という日々の行動指針。
これら3つが一貫して繋がったとき、組織は驚くほど強い力を発揮します。
言葉の意味を理解するだけでなく、ぜひあなたのチームや組織でも「私たちのMVVは何だろう?」と話し合ってみてください。その対話自体が、組織を強くする第一歩になるはずですから。
さらに詳しいマーケティング用語やビジネス用語の使い方については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
参考:経済産業省の MVV (ミッション・ビジョン・バリューズ )
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