アカズムカデとトビズムカデの違いとは?頭の色と危険性で見分ける

「アカズムカデ」と「トビズムカデ」、どちらも日本で遭遇する可能性のある大型のムカデですね。

見た目が似ていて、どちらも非常に危険なイメージ。実は、アカズムカデはトビズムカデの一亜種(分類上の下位グループ)とされることが多いですが、その見た目と危険性には明確な違いがあります。

最も簡単な答えは、トビズムカデは「頭が赤く、胴体が黒(または濃紺)」なのに対し、アカズムカデは「頭も胴体も赤褐色(赤っぽい)」という点です。

この記事を読めば、その見分け方、毒の危険性、遭遇した場合の正しい対処法までスッキリと理解できます。

【3秒で押さえる要点】

  • 見た目:トビズムカデは「頭が赤、胴体が黒(濃紺)」。アカズムカデは「頭も胴体も赤褐色」。
  • サイズ:トビズムカデ(8〜15cm)の方が、アカズムカデ(7〜10cm)より大型になる傾向があります。
  • 危険性:どちらも猛毒。特にトビズムカデは日本最大級で、咬まれると激痛と強い腫れを引き起こします。
「アカズムカデ」と「トビズムカデ」の主な違い
項目 アカズムカデ トビズムカデ
分類 多足亜門 オオムカデ科
(トビズムカデの亜種とされる)
多足亜門 オオムカデ科
サイズ(体長) やや小さい(7〜10cm程度) 大型(8〜15cm、最大20cm超も)
体色(頭部) 赤褐色 鮮やかな赤色・朱色
体色(胴体) 赤褐色(頭部と同系色) 黒色、濃紺色、暗緑色(頭部と明確に異なる)
体色(脚) 赤褐色〜黄色 黄色〜オレンジ色
危険性 猛毒(咬まれると激痛・腫れ) 猛毒(最強クラス)(咬まれると激痛・腫れ・痺れ)
主な生息場所 屋外(森林、石の下、朽木の中) 屋外(森林、石の下)人家周辺、屋内に侵入

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

最大の違いは「色」です。トビズムカデは、頭が鮮やかな赤(朱色)で、胴体は黒や濃紺と、明確なツートンカラーです。一方、アカズムカデは、頭から胴体まで全体が赤褐色です。

もしムカデに遭遇してしまったら、まずはその色合いを(安全な距離から)確認してください。

トビズムカデ(飛頭蛮)は、その名の通り「頭が飛んでくる」と例えられるほどの俊敏さと凶暴さを持つムカデで、日本本土では最大級の種です。体長は8〜15cmほどですが、時に20cmを超える個体も発見されます。最大の特徴は、鮮やかな朱色の頭部と、黒々とした(あるいは濃紺や暗緑色の)胴体のコントラストです。脚は黄色やオレンジ色をしています。この「頭だけが赤い」というのが最大の見分けポイントです。

アカズムカデ(赤頭百足)は、体長7〜10cmほどで、トビズムカデよりは一回り小さい傾向があります。名前は「赤い頭のムカデ」という意味ですが、トビズムカデとの最大の違いは、頭部だけでなく胴体も赤褐色(赤茶色)である点です。トビズムカデのような明確なツートンカラーではなく、全体的に赤っぽい印象を受けます。脚も赤褐色や黄色です。

分類学上は、アカズムカデはトビズムカデの一亜種とされることが多く、非常に近縁な関係ですが、見た目の配色は明確に異なります。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

生態的な違いはほとんどありません。どちらも夜行性で、昆虫、クモ、ミミズなどを捕食する肉食性です。メスが卵や幼体を守る習性があります。

行動や生態に関しては、両者に大きな違いはありません。どちらも典型的なオオムカデ類の生態を持っています。

活動は主に夜行性で、昼間は落ち葉の下や石の下、朽木の中など湿った暗所に隠れています。夜になると徘徊し、昆虫類、クモ、ミミズ、ナメクジなど、自分より小さな動くものなら何でも捕食します。大型のトビズムカデは、時にはネズミの子供やコウモリさえも襲うことがある強力なハンターです。

どちらも不完全変態(蛹の時期を経ずに幼虫から成虫になる)をします。繁殖期になると、メスは土の中に掘った穴などに産卵し、その卵が孵化して幼体(赤ちゃんのムカデ)が自分で活動できるようになるまで、飲まず食わずで守り続ける習性があります。

生息域・分布・環境適応の違い

【要点】

どちらも北海道南部以南の日本全国に分布し、湿った屋外環境を好みます。ただし、トビズムカデの方が人家周辺への適応力が高く、ゴキブリなどの餌を求めて屋内に侵入することがあり、遭遇率が高いです。

トビズムカデもアカズムカデも、日本全国(北海道南部〜沖縄)の森林や草地、畑の周辺などに広く分布しています。どちらも湿気を好み、石や倒木、落ち葉の下、土の中などに潜んでいます。

両者の大きな違いは、人間との距離感です。アカズムカデは、比較的、森林など自然度の高い環境を好む傾向があります。

一方、トビズムカデは、人家の周辺環境(庭の植木鉢の下、ブロック塀の隙間、床下など)にも非常によく適応しています。彼らは餌となるゴキブリやクモ、コオロギなどを求めて、家屋内に侵入してくることが珍しくありません。キッチン、風呂場、トイレ、そして寝室で遭遇するケースも多く、人間との遭遇率の高さが、その危険性をさらに高めています。

危険性・衛生・法規制の違い

【要点】

どちらも猛毒を持っています。特にトビズムカデは日本最大級であり、毒性も非常に強力です。咬まれる(※刺すのではなく毒牙で咬む)と激痛、腫れ、痺れを引き起こし、アナフィラキシーショックで死亡する危険性もあります。

これが最も重要な違いであり、共通点でもあります。アカズムカデもトビズムカデも、強力な毒牙を持つ危険な生物です。

彼らは毒針で「刺す」のではなく、頭部にある一対の鋭い牙(顎肢:がくし)で「咬み」、そこから毒液を注入します。毒の主成分は、タンパク質分解酵素やヒスタミンなどで、咬まれると以下のような激しい症状を引き起こします。

  • 激しい痛み:灼熱痛や電撃痛と表現されるほどの激痛が走ります。
  • 強い腫れ:咬まれた箇所がパンパンに腫れ上がります。
  • 痺れ、発熱、頭痛:症状が広がると、痺れや発熱、めまい、吐き気などを伴うことがあります。

特に危険なのは、ハチ毒と同様の「アナフィラキシーショック」です。過去にムカデに咬まれたことがある人が再度咬まれると、アレルギー反応により血圧低下や呼吸困難を引き起こし、最悪の場合、死に至るケースも報告されています。厚生労働省なども、夏場の害虫として注意を呼びかけています。

一般的に、体が大きいトビズムカデの方が、毒の量も多く危険性が高いとされています。もし咬まれてしまったら、すぐに43℃〜46℃程度の熱めのお湯で患部を洗い流し(または浸し)、毒の主成分であるタンパク質を変性(不活性化)させ、速やかに皮膚科を受診してください。

彼らは病原菌を媒介する衛生害虫ではありませんが、その危険性から「有毒害虫」または不快害虫として扱われます。

文化・歴史・人との関わりの違い

【要点】

ムカデは古来より、その見た目と毒から「恐怖の象徴」であると同時に、毘沙門天の使いとして「神聖な存在」ともされてきました。特にトビズムカデはその代表格です。アカズムカデも同様ですが、トビズムカデほど文化的に強くは認識されていません。

ムカデ(百足)は、そのグロテスクな外見、神出鬼没さ、そして強力な毒により、古くから日本人にとって畏怖の対象でした。

その一方で、ムカデは「後退しない(前にしか進まない)」という俗信から、戦国武将の武具(甲冑や旗印)のモチーフとして好まれました。また、仏教においては財宝の神である「毘沙門天(びしゃもんてん)の使い」ともされ、金運や勝利の象徴として神聖視される側面も持っています。

こうした文化的なイメージの多くは、日本最大級で最も目撃例の多い「トビズムカデ」によって形成されたと考えられます。「アカズムカデ」も同じムカデとして同様に扱われますが、トビズムカデほど強く文化的な象徴として取り上げられることは少ないようです。

「アカズムカデ」と「トビズムカデ」の共通点

【要点】

アカズムカデはトビズムカデの亜種(または非常に近縁な種)であるため、共通点は非常に多いです。どちらもオオムカデ科の大型種であり、猛毒を持ち、夜行性・肉食性で、湿った場所を好みます。

違いを比較してきましたが、両者は生物学的に非常に近い(または亜種)関係にあるため、共通点の方が多いくらいです。

  1. 分類:どちらもオオムカデ科(Scolopendridae)に属する近縁種です。
  2. 危険性:どちらも強力な毒牙を持つ猛毒のムカデです。
  3. 生態:どちらも夜行性で、肉食性(昆虫や小動物を捕食)です。
  4. 形態:どちらも多数の脚(トビズムカデやアカズムカデは通常21対=42本)を持ちます。
  5. 生息環境:どちらも屋外の湿った暗所(石の下、落ち葉の下、朽木の中)を好みます。
  6. 繁殖:どちらもメスが卵や幼体を守る習性があります。

体験談:恐怖!あの黒くて赤い頭のムカデの正体は?

僕が田舎の祖母の家で体験した、忘れられない恐怖の思い出があります。夏の夜、トイレに行こうと縁側を歩いていた時のことです。足元で「カサカサッ!」と大きな音がしました。

懐中電灯で照らすと、そこにいたのは…頭が不気味なほど真っ赤で、胴体は黒光りし、黄色い脚をウネウネと動かす巨大なムカデでした。体長は10cmを優に超えていたと思います。その禍々(まがまが)しい色彩と、こちらを威嚇するように持ち上げられた頭部に、僕は金縛りにあったように動けなくなりました。

それが、僕と「トビズムカデ」との初めての遭遇でした。祖母にその話をすると、「ああ、そりゃトビズじゃ。ゴキブリ食べに来るだよ。咬まれたらえらいことになるで、絶対触るなよ」と教えられました。

後日、国立科学博物館のサイトなどで調べ、「アカズムカデ」という、頭も胴体も赤っぽい種類もいることを知りました。しかし、僕が遭遇したあの強烈な「赤と黒のコントラスト」を持つトビズムカデの恐怖は、アカズムカデの画像を見ても薄れませんでした。人家周辺で最も出くわしやすく、最も危険なムカデ…それがトビズムカデなのだと、身をもって体験しました。

「アカズムカデ」と「トビズムカデ」に関するよくある質問

Q: アカズムカデとトビズムカデ、どっちが危険ですか?

A: どちらも猛毒で非常に危険です。ただし、トビズムカデの方が体が大きく、毒の量も多いとされるため、より危険度が高いと言えます。また、トビズムカデの方が人家周辺への侵入例が多く、遭遇率が高い点でも注意が必要です。

Q: ムカデに咬まれたら(刺されたら)どうすればいいですか?

A: ムカデは「刺す」のではなく「咬み」ます。もし咬まれたら、すぐに43℃〜46℃程度の熱めのお湯で患部を洗い流すか、お湯に浸してください。ムカデの毒(タンパク質)は熱に弱いため、毒の働きを弱めることができます。その後、速やかに皮膚科などの病院を受診してください。アナフィラキシーショックの兆候(めまい、吐き気、呼吸困難など)が出た場合は、すぐに救急車を呼んでください。

Q: 家にムカデを入れない対策はありますか?

A: ムカデはわずかな隙間から侵入します。家の基礎や窓サッシの隙間を塞ぐ、換気口にネットを張るなどの物理的な対策が有効です。また、餌となるゴキブリを駆除すること、家の周りの落ち葉や石、朽木などを片付けて隠れ場所を減らすことも重要です。市販のムカデ専用の殺虫剤(粉剤など)を家の基礎周りに撒くのも効果的です。

Q: ムカデはゴキブリを食べますか?

A: はい、食べます。ムカデは強力な肉食ハンターであり、ゴキブリは彼らにとって重要な餌の一つです。家の中でムカデを見かけた場合、餌となるゴキブリが潜んでいる可能性があります。

「アカズムカデ」と「トビズムカデ」の違いのまとめ

アカズムカデとトビズムカデは、亜種関係にあるともされる近縁な種ですが、その見た目(特に色)と遭遇率には明確な違いがあります。

  1. 色の違い:アカズムカデは「全体が赤褐色」。トビズムカデは「頭が赤、胴体が黒」。
  2. サイズの違い:トビズムカデの方が大型化する傾向がある。
  3. 危険性の違いどちらも猛毒だが、トビズムカデの方が大型で毒量も多く、より危険とされる。
  4. 遭遇率の違い:トビズムカデの方が人家周辺に適応しており、屋内で遭遇する危険性が高い

どちらの種であっても、見かけたら絶対に素手で触らず、安全な距離を保ってください。もし咬まれた場合は、熱めのお湯で応急処置をし、速やかに医師の診察を受けましょう。他の「生物その他」の仲間たちの違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。

参考文献(公的一次情報)

  • 厚生労働省「健康・医療」 – 有毒生物に関する一般的な注意喚起
  • 国立科学博物館「かはく」 – 昆虫・多足類の分類や生態に関する情報
  • 環境省「自然環境・生物多様性」 – 日本の在来生物に関する情報