キャットフードとドッグフードの違いは?犬猫の兼用が絶対ダメな理由

「キャットフード」と「ドッグフード」、どちらも大切な家族のごはんですよね。

パッケージも似ているし、「ちょっとくらいならいいか」と犬にキャットフードを、猫にドッグフードを与えてしまいたくなる瞬間があるかもしれません。

しかし、それは非常に危険な行為です。

結論から言うと、犬と猫は必要とする栄養素が全く異なるため、キャットフードとドッグフードは似て非なるものです。特に猫は「真性肉食動物」であり、犬(雑食性の強い肉食動物)には不要なレベルの高タンパク・高脂肪、そして「タウリン」が必須です。

この記事では、なぜ兼用がダメなのか、その決定的な栄養素の違いと、万が一食べてしまった場合の対処法まで詳しく解説します。

【3秒で押さえる要点】

  • 必須栄養素:猫は「タウリン」を体内で作れませんが、犬は作れます。猫はタウリン欠乏で失明や心疾患のリスクがあります。
  • タンパク質・脂肪:猫は犬の約2〜3倍の高タンパク・高脂肪を必要とします。
  • 結論:犬にキャットフードを与え続けると肥満や内臓疾患のリスクが、猫にドッグフードを与え続けると深刻な栄養失調(特にタウリン欠乏症)になるため、兼用は絶対にダメです。
「キャットフード」と「ドッグフード」の主な違い
項目 キャットフード(猫用) ドッグフード(犬用)
対象動物の分類 真性肉食動物 肉食動物(雑食性に近い
タウリンの必要性 必須(体内で合成できないため添加) 不要(体内で合成できるため原則不要)
必要タンパク質量(目安) 非常に多い(犬の約2〜3倍) 猫に比べると少ない
必要脂肪量(目安) 多い 猫に比べると少ない
アラキドン酸の必要性 必須(体内で合成できないため添加) 不要(体内で合成できる)
ビタミンAの必要性 ビタミンA(レチノール)の形で摂取必須 β-カロテンから体内で合成できる
嗜好性(香り) 強い(匂いで食欲を刺激) 猫用に比べると穏やか
炭水化物(穀物) 少量でOK(エネルギー源として利用は可能) エネルギー源として重要

最大の違いは「必須栄養素」と「生物学的分類」

【要点】

最大の違いは、猫が「真性肉食動物」であるのに対し、犬は「雑食性の強い肉食動物」であるという点です。これにより、体内で合成できる栄養素(特にタウリン)が根本的に異なり、フードの設計思想が全く違います。

なぜキャットフードとドッグフードを分けなければならないのか?その答えは、犬と猫の生物学的な違いにあります。

猫は「真性肉食動物」です。
猫は、進化の過程で獲物の肉だけを食べることに特化してきました。そのため、肉からしか摂取できない特定の栄養素(タウリン、アラキドン酸、ビタミンAなど)を体内で合成する能力を失ってしまいました。これらの栄養素が食事から欠乏すると、文字通り命に関わります。

犬は「雑食性の強い肉食動物」です。
犬の祖先もオオカミ(肉食)ですが、人間と長く暮らすうちに、雑食(炭水化物など)にも適応してきました。そのため、猫が合成できないタウリンやビタミンA(β-カロテンから)などを体内で自ら作り出すことができます。

この「体内で作れるか、作れないか」という決定的な違いが、キャットフードとドッグフードの設計思想の根本的な違いとなっているのです。

原材料と成分の決定的な違い(タンパク質・タウリン・脂肪・ビタミン)

【要点】

キャットフードは、猫の要求(高タンパク・高脂肪)を満たし、必須栄養素(タウリン、アラキドン酸、ビタミンA)を必ず添加しています。ドッグフードは、犬の要求(中タンパク・中脂肪・炭水化物OK)に合わせて作られており、猫に必要なタウリンなどは添加されていません。

この生物学的な違いに基づき、両者のフードには具体的に以下のような成分の違いがあります。

  1. タウリン(猫に必須)
    猫はタウリンを体内で合成できませんが、犬はできます。タウリンは心臓機能や視力の維持に不可欠なアミノ酸です。そのため、全てのキャットフードにはタウリンが「添加」されていますが、ドッグフードには原則として添加されていません。
  2. タンパク質と脂肪
    真性肉食動物である猫は、犬よりもはるかに多くのタンパク質と脂肪を必要とします。一般的に、キャットフードはドッグフードの約2〜3倍の高タンパク・高脂肪になるよう設計されています。
  3. アラキドン酸(猫に必須)
    猫は必須脂肪酸であるアラキドン酸を体内で合成できません(犬はできます)。そのため、キャットフードには動物性脂肪などからアラキドン酸が補給されています。
  4. ビタミンA
    犬は野菜などに含まれるβ-カロテンからビタミンAを合成できますが、猫はできません。猫はレチノール(動物性ビタミンA)の形で直接摂取する必要があるため、キャットフードにはビタミンAが添加されています。
  5. 炭水化物(穀物)
    犬は炭水化物をエネルギー源として効率よく利用できますが、猫はタンパク質や脂肪を主なエネルギー源とします。そのため、ドッグフードは炭水化物(穀物やイモ類)の比率がキャットフードよりも高い傾向にあります。

犬にキャットフードを与えてはいけない理由(栄養過多リスク)

【要点】

犬にとってキャットフードは「高タンパク・高脂肪・高カロリー」すぎます。たまに盗み食いする程度ならまだしも、日常的に与え続けると、肥満、腎臓・肝臓への過剰な負担、膵炎(すいえん)などを引き起こすリスクが非常に高くなります。

「うちの犬、キャットフードが大好きで…」という飼い主さんは多いかもしれません。猫の嗜好性を高めるために強く設計された香りや、高い脂肪分は、犬にとっても非常に魅力的です。

しかし、犬がキャットフードを食べ続けると、深刻な健康問題を引き起こします。
犬にとって、キャットフードは「栄養過多」なのです。

特に問題となるのが、過剰なタンパク質と脂肪です。これらを日常的に摂取し続けると、

  • カロリーオーバーによる肥満
  • タンパク質を分解する腎臓や肝臓への大きな負担
  • 高脂肪が引き金となる膵炎(すいえん)

といった、重篤な病気のリスクが格段に高まります。絶対に主食として与えてはいけません。

猫にドッグフードを与えてはいけない理由(栄養失調リスク)

【要点】

猫がドッグフードを食べ続けると、致命的な栄養失調に陥ります。特に「タウリン」が欠乏すると、失明(網膜萎縮)や心筋症(心臓病)など、取り返しのつかない病気を引き起こします。絶対に与えてはいけません。

犬がキャットフードを食べるのが「栄養過多」であるのに対し、猫がドッグフードを食べるのは「致命的な栄養失調」を意味します。こちらの方が、より短期間で深刻な事態に陥ります。

前述の通り、ドッグフードには猫にとっての必須栄養素が全く考慮されていません。

  • タウリン欠乏症:失明(網膜萎縮)や、心臓の筋肉が薄くなる拡張型心筋症を引き起こします。一度発症すると完治は困難です。
  • タンパク質・脂肪不足:猫が必要とするエネルギーを賄えず、痩せて体力が低下します。
  • アラキドン酸・ビタミンA不足:皮膚や被毛の健康が悪化し、免疫力も低下します。

猫はドッグフードの匂いをあまり好まないことが多いですが、万が一ドッグフードしか食べるものがない状況が続くと、上記のような深刻な栄養失調となり、命を落とす危険が非常に高いです。

「キャットフード」と「ドッグフード」の共通点(総合栄養食という概念)

【要点】

唯一の共通点は、どちらも「総合栄養食」として設計されていることです。ただし、それは「犬にとっての総合栄養食」と「猫にとっての総合栄養食」という意味であり、お互いに互換性はありません。

これだけ違いがあるキャットフードとドッグフードですが、共通点も存在します。
それは、どちらも「総合栄養食」であるという点です。(※一般食やおやつを除く)

「総合栄養食」とは、そのフードと水だけで、その動物(犬または猫)が特定のライフステージ(子犬/子猫、成犬/成猫など)において健康を維持するために必要な栄養素を、バランス良くすべて摂取できるように設計されたフードのことを指します。

この基準は、世界的にはAAFCO(米国飼料検査官協会)の基準が広く用いられており、日本ではペットフード公正取引協議会がその基準を採用しています。

つまり、「犬にとっての完璧なバランス」で設計されたのがドッグフードであり、「猫にとっての完璧なバランス」で設計されたのがキャットフードなのです。だからこそ、兼用は絶対にできないのです。

どっちを選ぶべき?(答え:専用品一択)

【要点】

これは「どちらを選ぶか」という選択の問題ではありません。犬には「ドッグフード」を、猫には「キャットフード」を必ず与えてください。これはペット飼育における絶対のルールです。

ここまで読んでいただければ、この問いの答えは明らかですね。
「どっちを選ぶべき?」という選択肢は存在しません。

犬を飼っているなら「ドッグフード」一択です。
猫を飼っているなら「キャットフード」一択です。

これは、ペットの健康と命を守るための、飼い主としての絶対的な責任であり、ルールです。

僕が間違えて愛犬に猫のご飯をあげてしまった時の話(体験談)

実は僕、犬と猫を両方飼っていた時期に、一度だけ大失敗をしたことがあります。
朝、寝ぼけていて、犬用の皿にキャットフードを、猫用の皿にドッグフードを注いでしまったのです。

先に気づいたのは猫でした。猫はドッグフードの匂いを嗅いだ瞬間、「これじゃない!」とでも言うようにプイッと横を向き、僕の足にスリスリして「いつもの(美味しい方)をよこせ」と抗議してきました。

一方、犬は……僕が間違いに気づいた時には、目を輝かせてキャットフードを完食していました。よほど美味しかったのでしょう。
「まあ、一食くらい大丈夫だろう」と高をくくっていたのですが、その日の午後、犬は見事にお腹を壊してしまいました。幸い、一過性のもので済みましたが、動物病院の先生には「犬にとって猫のご飯はご馳走だけど、毒でもあるんですよ!特に膵臓が弱い子は、たった一回で急性膵炎を起こすこともあるから絶対にダメ!」と、こっぴどく叱られました。

あの時の愛犬の苦しそうな顔と、猫の「(犬のご飯なんて)食べられるか!」という冷たい視線は、今でも忘れられません。

「キャットフード」と「ドッグフード」に関するよくある質問

Q: ちょっとくらいなら食べても大丈夫ですか?

A: 犬がキャットフードを1〜2粒盗み食いした程度なら、即座に健康を害する可能性は低いです。しかし、それが習慣化すると肥満や内臓疾患のリスクが高まります。猫がドッグフードを食べるのは、たとえ少量でも栄養不足につながるため、一口も食べさせないようにするべきです。

Q: 犬も猫も飼っている場合(多頭飼い)の注意点は?

A: 食事場所と時間を完全に分けることが鉄則です。犬がジャンプできない高い場所に猫の食事場所を設置する、または別の部屋で食べさせ、食べ終わるまで見届けるなどの工夫が必要です。特に犬が猫のご飯(高タンパク・高脂肪)を盗み食いしないよう、厳重に管理してください。

Q: なぜキャットフードの方が匂いが強いのですか?

A: 猫は犬に比べて「匂い」で食べ物を判断する傾向が強いためです。猫の嗜好性(食いつき)を高めるために、キャットフードはより強く、美味しそうな香り(魚や肉の匂い)がつけられていることが多いです。犬が惹かれてしまうのも無理はありません。

Q: 「犬猫用」のおやつは与えても大丈夫ですか?

A: 「犬猫用」として市販されているおやつ(ジャーキーや煮干しなど)は、総合栄養食ではありません。あくまで「副食」や「間食」であり、栄養バランスの補完にはなりません。与えすぎは栄養バランスを崩す原因になりますが、パッケージの指示に従い、一日の摂取カロリーの10%〜20%程度に留めるのであれば、犬猫兼用のおやつを与えても大きな問題はありません。ただし、アレルギーには注意してください。

「キャットフード」と「ドッグフード」の違いのまとめ

キャットフードとドッグフードの違いは、単なる味や形の違いではなく、犬と猫という異なる生物種の「命を支えるための設計図」そのものの違いでした。

  1. 生物学的な違い:猫は「真性肉食動物」、犬は「雑食性の強い肉食動物」。
  2. 必須栄養素の違い:猫は「タウリン」や「ビタミンA」などを体内で作れないが、犬は作れる。
  3. 成分の違い:キャットフードは、猫に必要なタウリン等を添加し、高タンパク・高脂肪に設計されている。
  4. 危険性(犬):犬がキャットフードを食べ続けると、栄養過多で肥満や内臓疾患、膵炎のリスクがある。
  5. 危険性(猫):猫がドッグフードを食べ続けると、タウリン欠乏症(失明、心疾患)など致命的な栄養失調になる。

大切な家族である愛犬・愛猫の健康を守るため、「犬にはドッグフード、猫にはキャットフード」という大原則を必ず守りましょう。他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。

参考文献(公的一次情報)