「シャルトリュー」と「ブリティッシュショートヘア」、どちらも丸い顔とずんぐりした体型が愛らしく、特にブルー(灰色)の毛色はそっくりで、見分けるのが難しい猫種です。
実は毛色、目の色、そして何よりその歴史的背景と性格が大きく異なります。この記事を読めば、単純な見た目の見分け方から、それぞれの性格、飼育上の重要な注意点までスッキリと理解できます。
あなたが家族に迎えるのは、フランスの微笑む賢猫でしょうか?それともイギリスのマイペースな紳士(淑女)でしょうか?
【3秒で押さえる要点】
- 毛色(最重要):シャルトリューは「ブルー(灰色)」のみ。ブリティッシュはブルーが有名ですが、白、黒、縞、三毛など非常に多彩な毛色を持ちます。
- 目の色:シャルトリューは「ゴールド〜カッパー(銅色)」のみ。ブリティッシュは毛色に準じますが、ブルーの個体は「カッパー」が主流です。
- 性格:シャルトリューは賢く温和で「犬のような猫」とも呼ばれます。ブリティッシュは穏やかで自立心が強く、マイペースな「英国紳士」タイプです。
| 項目 | シャルトリュー(Chartreux) | ブリティッシュショートヘア(British Shorthair) |
|---|---|---|
| 分類・系統 | フランス原産・セミコビータイプ | イギリス原産・コビータイプ |
| サイズ(体重) | オス:4〜7kg メス:3〜5kg |
オス:4〜8kg メス:3〜6kg |
| 毛色 | ブルー(灰色)のみ | ブルーが有名だが、全色公認(白、黒、クリーム、縞、三毛など多彩) |
| 目の色 | ゴールド〜カッパー(銅色)のみ | 毛色に準じる(ブルーの場合はカッパーが多い) |
| 毛質 | ダブルコート。羊毛(ウール)のようで、撥水性がある。 | ダブルコート。短く密生し、ビロードのような手触り。 |
| 顔つき | 「微笑む猫」と呼ばれる丸顔。マズル(鼻口部)はやや長め。 | 「チェシャ猫」のモデル説。マズルが短く、頬が丸く発達している。 |
| 行動・性質 | 温和、賢い、従順。「犬のような猫」と呼ばれる。あまり鳴かない。 | 穏やか、自立心が強い、マイペース。静かで騒がしくない。抱っこはあまり好まない傾向。 |
| 飼育難易度 | 比較的飼いやすい(中級者向け)。換毛期のブラッシングが必須。 | 比較的飼いやすい(中級者向け)。毛が密なためブラッシングが必須。 |
| 寿命 | 12〜15年 | 12〜15年 |
| かかりやすい病気 | 多発性嚢胞腎(PKD)、尿路結石、皮膚疾患 | 肥大型心筋症(HCM)、尿路結石、皮膚疾患 |
見た目とサイズの違い
最大の見分け方は「毛色」です。シャルトリューはブルー(灰色)しか認められていませんが、ブリティッシュはブルー以外にも白、黒、縞模様など非常に多彩です。体型はどちらも丸くがっしりしていますが、ブリティッシュの方がより丸く、頬が発達しています。
この2種が混同される最大の理由は、どちらも「ブルー(灰色)の丸顔の猫」というイメージが強いからです。しかし、決定的な違いがあります。
まず、シャルトリューの毛色は「ブルー(青みがかった灰色)」のみです。他の毛色はスタンダードとして認められていません。目の色も「ゴールドからカッパー(銅色)」のみと定められています。
一方、ブリティッシュショートヘア(以下、ブリティッシュ)は、ブルーの毛色(「ブリティッシュブルー」と呼ばれ有名)が代表的ですが、スタンダードとしてはほぼ全ての色とパターンが認められています。白、黒、クリーム、レッド(茶)、縞模様(タビー)、バイカラー(2色)、キャリコ(三毛)など、非常にバリエーション豊かです。
体型は、どちらも筋肉質でがっしりとした中型〜大型の猫です。猫の体型分類では、ブリティッシュは典型的な「コビー」タイプ(丸くどっしりした体型)に、シャルトリューはそれより少し胴長短足な「セミコビー」タイプに分類されます。
ブリティッシュの方がより顔が丸く、マズル(鼻口部)が短く、頬が「マシュマロチーク」と呼ばれるほど丸く発達しているのが特徴です。シャルトリューも丸顔ですが、ブリティッシュに比べるとマズルがやや長く、その口角が上がった表情から「微笑む猫」と呼ばれています。
毛質も異なります。シャルトリューの毛はダブルコートで、羊毛(ウール)のようにモコモコしており、水を弾く性質があります。ブリティッシュの毛もダブルコートですが、より短く密生しており、その手触りはビロードやカーペットに例えられます。
性格・行動特性としつけやすさの違い
どちらも非常に穏やかで物静かな猫種です。シャルトリューは賢く従順で、飼い主の言うことをよく理解し、まるで犬のようだと評されます。ブリティッシュはより自立心が強くマイペースで、ベタベタされるよりは飼い主のそばで静かに過ごすことを好みます。
性格面でも、この2種は似ているようで異なる魅力を持っています。
シャルトリューは、非常に賢く、状況判断能力に優れ、飼い主に順応する性格です。あまり鳴かない(鳴いても声が小さい)ことでも知られ、「サイレント・キャット」の異名も持ちます。温和で忍耐強く、他の猫や子供、犬ともうまくやっていけるとされています。その賢さと従順さから、名前を呼ぶと来たり、投げたおもちゃを持ってきたりすることも覚えやすく、「犬のような猫」と評されることも多いです。
一方のブリティッシュも、非常に穏やかで物静かな猫種です。感情表現は控えめで、騒がしく走り回ることは少ないです。「不思議の国のアリス」に登場する「チェシャ猫」のモデルになったという説もあるほど、ミステリアスでマイペースな魅力があります。
シャルトリューとの大きな違いは、その「自立心の強さ」です。ブリティッシュは飼い主に忠実ですが、ベタベタと抱っこされたり、過度にかまわれたりするのは好まない傾向があります。飼い主が読書をしているそばで静かに丸まっているような、適度な距離感を好む「英国紳士(淑女)」のような性格と言えるでしょう。
しつけやすさについては、どちらも非常に賢く物分かりが良いため、飼いやすい猫種と言えます。攻撃性も低く、鳴き声も小さいため、集合住宅での飼育にも向いています。
寿命・健康リスク・病気の違い
平均寿命は12〜15年程度と、猫の平均寿命と同等です。遺伝性疾患として、シャルトリューは腎臓の病気(PKD)、ブリティッシュは心臓の病気(HCM)に注意が必要です。どちらも太りやすい体質のため、体重管理が重要です。
シャルトリューとブリティッシュの平均寿命は、どちらも12〜15年程度とされており、猫全体の平均寿命と大きな差はありません。
ただし、それぞれに注意すべき遺伝性疾患(好発疾患)が知られています。
シャルトリューは、「多発性嚢胞腎(PKD)」という遺伝性の腎臓病のリスクがあることが知られています。これは腎臓に嚢胞(水が溜まった袋)が多数発生し、徐々に腎機能が低下していく病気です。遺伝子検査でリスクを調べることが可能です。
ブリティッシュは、「肥大型心筋症(HCM)」という心臓病が好発する猫種として知られています。これは心臓の筋肉が厚くなり、心臓の機能が低下する病気で、特にオスで発症リスクが高いとされています。
どちらの猫種も、丸くがっしりした体型を維持するために食欲旺盛な個体が多く、肥満になりやすい傾向があります。肥満は関節や心臓、泌尿器系に負担をかけるため、日頃からの食事管理と運動量の確保が非常に重要です。
「シャルトリュー」と「ブリティッシュ」の共通点
どちらもヨーロッパ(フランス・イギリス)で古くから愛されてきた歴史ある猫種です。穏やかで物静かな性格、丸顔でがっしりした体型、そして「ブルー(灰色)」の毛色が代表的であるという点が、この2種が混同されやすい大きな共通点です。
これまで違いを強調してきましたが、もちろん共通点も多く、それがこの2種が「そっくり」と言われる理由です。
- ブルーの毛色が代表的:シャルトリューはブルーのみですが、ブリティッシュも「ブリティッシュブルー」が最も有名です。この青灰色の美しい毛色が、両者のイメージを強く結びつけています。
- 体型と顔立ち:どちらも丸顔で、筋肉質でがっしりとした「コビー」または「セミコビー」タイプの体型をしています。
- 穏やかで物静かな性格:どちらの猫種も攻撃性が低く、あまり鳴かず、非常に穏やかな性格で知られており、飼いやすい猫種とされています。
- 歴史的な交配:両種とも第二次世界大戦中に絶滅の危機に瀕し、種の保存のためにブリーダーが他の猫種と交配させた歴史があります。この過程で、シャルトリューとブリティッシュブルーが交配された時期があり、それが外見の類似性に影響を与えたとも言われています。
歴史・ルーツと性質の関係
シャルトリューは、16世紀頃からフランスのシャルトリュー派修道院で、ネズミを捕る「ワーキングキャット」として飼育されてきた歴史を持ちます。ブリティッシュは、ローマ人がイギリスに持ち込んだ猫が起源とされ、イギリスで最も古い土着の猫種と言われています。
シャルトリューの歴史は古く、一説には16世紀頃、フランスのシャルトリュー派修道院の修道士たちによって、ネズミ捕りのための猫として飼育・繁殖されてきたと言われています。
その美しい毛並みと「微笑む猫」と呼ばれる表情、そしてネズミ捕りとしての優れた能力、物静かさから「修道院の猫」として大切にされてきました。賢く、状況判断に優れ、従順な性格は、このワーキングキャットとしての歴史に由来すると考えられます。
一方、ブリティッシュショートヘアのルーツはさらに古く、約2000年前にローマ人がイギリスに侵攻した際に連れてきた猫が、イギリスの土着の猫と交配して誕生したと言われています。イギリスで最も古い猫種とされ、長い間、ネズミ捕りや家庭猫としてイギリス国民に愛されてきました。
「不思議の国のアリス」に登場する「チェシャ猫」のモデルがブリティッシュ(特にブリティッシュブルー)であるという説は有名で、そのマイペースでどっしりと構えた性格は、まさにチェシャ猫のイメージと重なります。
どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ
どちらも穏やかで飼いやすい猫種ですが、性格の好みで選ぶと良いでしょう。賢く、犬のようにコミュニケーションを取りたいならシャルトリュー。猫とは適度な距離感を保ち、静かに暮らしたいならブリティッシュが向いています。どちらも抜け毛は多めです。
シャルトリューとブリティッシュは、どちらも初心者にとって飼いやすい素晴らしい猫種です。最終的には、あなたのライフスタイルや猫に求める関わり方で決めると良いでしょう。
【シャルトリューがおすすめな人】
- ブルーの毛色とカッパーの目の組み合わせに強く惹かれる
- 「犬のような」賢さや従順さを猫に求める
- 名前を呼んだら来てくれるような、コミュニケーションを楽しみたい
- あまり鳴かない、静かな猫が良い
- ダブルコートの換毛期(春・秋)に、こまめなブラッシングをできる
【ブリティッシュショートヘアがおすすめな人】
- ブルーだけでなく、白、黒、縞模様など、多彩な毛色・柄から選びたい
- 猫とはベタベタせず、適度な距離感(マイペースさ)を保ちたい
- どっしりと落ち着いた、騒がしくない猫が良い
- 抱っこはあまりできなくても、そばにいてくれるだけで満足
- 密生した毛並みを維持するため、こまめなブラッシングをできる
僕が出会った「シャルトリュー」と「ブリティッシュ」の“毛並み”の違い
僕は猫カフェやペットショップで多くの猫と触れ合ってきましたが、この2種ほど「見た目は似てるのに、触ると全然違う!」と驚いた猫はいません。
ブリティッシュショートヘア(特にブルー)は、まさに「高級なビロード」です。指が沈み込むほど毛が密生していて、触れると「フカフカ」でありながら「スベスベ」という、非常にリッチな感触があります。まるで手入れの行き届いた高級絨毯を撫でているような満足感です。
一方、シャルトリューの毛並みは、触れると「モコッ」としていて、少し硬めの「高級ウール」のセーターを触っている感覚に近いです。ブリティッシュのようなスベスベ感というよりは、密度が高く、少しゴワッとした(良い意味で)弾力を感じます。水を弾くというのも納得の、頼もしい毛質です。
ブリティッシュが「装飾的な美しさ」を持つ毛並みなら、シャルトリューは「機能的なたくましさ」を感じる毛並み。もし触り比べる機会があれば、ぜひこの「質感」の違いに注目してみてください。
「シャルトリュー」と「ブリティッシュ」に関するよくある質問
Q: ロシアンブルーとの違いは何ですか?
A: ロシアンブルーもブルーの毛色が特徴ですが、体型が全く違います。シャルトリューやブリティッシュが丸くがっしりした「コビー」タイプなのに対し、ロシアンブルーは手足や胴が細く長い「フォーリン」タイプです。目の色も、ロシアンブルーは鮮やかなエメラルドグリーンのみです。
Q: どちらも太りやすいですか?
A: はい、どちらもがっしりした体型で、食欲旺盛な個体が多いため、太りやすい傾向にあります。特にブリティッシュはずんぐりした体型が魅力ですが、肥満になりやすいため、成猫になってからは食事管理と運動量の確保が非常に重要です。
Q: 鳴き声はうるさいですか?
A: いいえ、どちらの猫種も「サイレント・キャット」と呼ばれるほど、あまり鳴かないことで有名です。特にシャルトリューは、鳴いても「ニャッ」というより「プッ」というような小さな声しか出さない個体も多いと言われています。
「シャルトリュー」と「ブリティッシュ」の違いのまとめ
シャルトリューとブリティッシュショートヘア。とてもよく似ていますが、知れば知るほど奥深い違いがある2犬種です。
- 色の違い(最重要):シャルトリューは「ブルーの毛色+カッパーの目」のみ。ブリティッシュはブルー以外にも白、黒、縞など「多彩な毛色と目の色」があります。
- 体型の違い:どちらも丸くがっしりしていますが、ブリティッシュの方がより丸顔で頬が発達しています。
- 性格の違い:シャルトリューは賢く従順な「犬のような猫」。ブリティッシュは自立心が強くマイペースな「英国紳士」。
- 歴史の違い:シャルトリューはフランスの「修道院の猫」、ブリティッシュはイギリスの「チェシャ猫」のルーツとされています。
どちらも穏やかで飼いやすい、素晴らしいパートナーであることに違いはありません。あなたのライフスタイルに合うのはどちらか、じっくり検討してみてくださいね。他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。