Crow(カラス)とRaven(ワタリガラス)の決定的な違い!知能はどっちが上?

「Crow(クロウ)」と「Raven(レイヴン)」、どちらも全身が漆黒の鳥として知られ、非常に賢いイメージがありますね。

「どっちも黒くて大きなカラスでしょ?」—実は、その「大きさ」こそが、両者を見分ける最初のヒントです。

日本語では一般的に、Crowを「カラス(烏)」、Ravenを「ワタリガラス(渡鴉)」や「オオガラス(大烏)」と呼び分けます。両者は生物学的に「カラス科 カラス属」の仲間ですが、Raven(ワタリガラス)はCrow(私たちが都市部で見るカラス)よりも圧倒的に大きいのです。

この記事を読めば、そのサイズ感の違いから、飛んでいる姿(尾羽の形)、鳴き声、そして文化的なイメージまで、両者の決定的な違いがスッキリと理解できます。

【3秒で押さえる要点】

  • 分類:どちらも「カラス科カラス属」の仲間ですが、Raven(ワタリガラス)はCrow(ハシブトガラスなど)よりも顕著に大型です。
  • 見た目(尾羽):飛翔中、Crow(カラス)の尾羽は先端が扇形に開きますが、Raven(ワタリガラス)の尾羽は楔形(くさびがた)またはV字型に見えます。
  • 鳴き声と生態:Crowは「カーカー(Caw)」と澄んだ声で鳴き、都市部で大群を作ります。Ravenは「グォー」「クロンク(Croak)」と低くしわがれた声で鳴き、主にペアで行動し、より野生的な環境を好みます。
「Crow(カラス)」と「Raven(ワタリガラス)」の主な違い(一般的な傾向)
項目 Crow(カラス) Raven(ワタリガラス)
分類・系統 スズメ目 カラス科 カラス属(生物学的には非常に近い)
一般的な呼称 カラス(ハシブトガラス、ハシボソガラスなど) ワタリガラス、オオガラス
サイズ(全長) 中型(例:ハシブトガラス 約57cm) 大型(例:ワタリガラス 約60〜70cm)
くちばし 比較的標準的(種による) 非常に太く大きく、湾曲が強い
喉元の羽毛 滑らか 長く尖っており、ボサボサしている(Hackles)
尾羽の形(飛翔時) 扇形(まっすぐ、または丸い) 楔形(くさびがた)、V字型、ダイヤモンド型
鳴き声 「カー、カー」「カァー」(Caw) 「グォー」「ゴァー」「クロンク」(Croak / Glonk)
社会性(傾向) 都市部などで大群(Murders)を形成する ペア、または小家族単位で行動する
知能 どちらも鳥類で最高クラスの知能を持つ(道具の使用、問題解決能力など)
法規制(日本) 許可なく捕獲・飼育は原則禁止鳥獣保護管理法

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

最大の違いは「大きさ」と飛翔時の「尾羽の形」です。Raven(ワタリガラス)はCrow(カラス)より一回りも二回りも大きく、くちばしも太いです。飛んでいる時、Crowの尾羽は扇形に開きますが、Ravenは楔形(V字型)に見えるのが決定的な見分け方です。

もしあなたが北米やヨーロッパ、あるいは北海道で「やけに大きなカラスだな」と思ったら、それはRaven(ワタリガラス)かもしれません。

サイズ感:
私たちが日本(本州以南)の都市部で日常的に見かけるのは、主に「ハシブトガラス」や「ハシボソガラス」といったCrowの仲間です。彼らの全長は約50〜57cmほど。
一方、Raven(ワタリガラス)は全長が約60〜70cmにも達し、翼を広げると1.5メートル近くになる個体もいます。これは小型のワシ(イーグル)に匹敵する大きさで、並んで飛ぶと親子ほどの差があります。

くちばしと喉元:
Ravenはくちばしが非常に太く、がっしりとしており、上のくちばしが強く湾曲しています。また、喉元の羽毛(英語で”Hackles”と呼ばれます)が長く尖っており、鳴くときにボサボサと逆立つのが特徴的です。Crowの喉元は、これに比べると滑らかです。

尾羽の形(決定的な見分け方):
見逃しがちな最大のポイントは、飛んでいる時の「尾羽の形」です。
Crow(カラス)が尾羽を開くと、その先端は直線的か、緩やかな扇形になります。
対して、Raven(ワタリガラス)の尾羽は、真ん中の羽が長いため、開くと「楔形(くさびがた)」や「ダイヤモンド形」、あるいは浅いV字型に見えます。
もし空を飛ぶ黒い鳥を見かけたら、ぜひ尾羽の形に注目してみてください。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

鳴き声と社会性が明確に異なります。Crow(カラス)は「カーカー(Caw)」と比較的澄んだ声で鳴き、都市部で大群を作ります。Raven(ワタリガラス)は「グォー」「クロンク(Croak)」といった低くしわがれた声で、主にペアや小家族で行動します。

見た目だけでなく、彼らの「声」と「暮らしぶり」も全く異なります。

鳴き声:
Crow(カラス)の鳴き声は、私たちがよく知る「カー、カー(Caw)」という、比較的クリアで甲高い声です。
一方、Raven(ワタリガラス)の鳴き声は、「グォー」「ゴァー」「クロンク、クロンク」といった、非常に低く、しわがれた太い声です。喉の奥から響かせるようなその声は、Crowの鳴き声とは似ても似つかず、一度聞いたら忘れられないインパクトがあります。

社会性:
Crow、特に都市部のハシブトガラスやハシボソガラスは、非常に高い社会性を持ち、繁殖期以外は夕方になるとねぐらに集まり、数百羽、時には数千羽にもなる大群(英語で “a murder of crows” と呼ばれます)を形成します。
対照的に、Ravenは基本的にペア(つがい)とその子供たちという小家族単位で行動し、Crowのような巨大な集団を作ることは稀です。彼らはより縄張り意識が強く、独立独歩の生活を好む傾向があります。

知能と遊び:
どちらも鳥類の中で最高クラスの知能を持つことは共通しています。道具を使ったり、複雑な手順を覚えたり、人間の顔を認識したりする能力があります。
しかし、Ravenはその中でも特に知能が高く、遊び行動が非常に高度であることで知られています。例えば、雪の積もった斜面を何度も滑り降りて遊んだり、他の動物(オオカミなど)をからかうような行動をとったり、非常に複雑なパズルを解いたりする様子が観察されています。

生息域・分布・環境適応の違い

【要点】

Crow(カラス)は都市部から農耕地まで、人間の生活圏に広く適応しています。一方、Raven(ワタリガラス)はより野生的な環境を好み、日本では主に北海道の海岸線や山岳地帯に生息しています。

日本国内において、この2種に出会える場所はかなり異なります。

Crow(ハシブトガラスやハシボソガラス)は、日本全国のあらゆる環境に適応しています。特にハシブトガラスは都市部への適応が著しく、公園、街路樹、ゴミ集積所など、人間の生活圏を巧みに利用して生息しています。ハシボソガラスは、どちらかというと農耕地や河川敷など、より開けた場所を好む傾向があります。

一方、Raven(ワタリガラス)が日本で定常的に見られるのは、主に北海道です。彼らは冬鳥として大陸から渡ってくるほか、北海道の一部(道東や道北)では留鳥(一年中生息する鳥)として繁殖もしています。本州以南では、冬に迷鳥として稀に観察されることがありますが、基本的には見られません。
生息環境も、Crowのように都市部の中心部まで入り込むことは少なく、海岸線の断崖や、広大な原野、山岳地帯など、より手付かずの自然が残る場所を好みます。

危険性・衛生・法規制の違い

【要点】

どちらも「鳥獣保護管理法」により無許可での捕獲・飼育は禁止されています。Crow(カラス)は都市部でのゴミ漁りによる衛生問題や、繁殖期の威嚇行動が社会問題化しています。Ravenは人里から離れているため、人間との直接的な軋轢は少ないです。

Crow(カラス)とRaven(ワタリガラス)は、どちらも野生動物であり、法律によって保護されています。

日本に生息するカラス属の鳥はすべて、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」の対象です
これは環境省の管轄下にあり、都道府県知事の許可なく、捕獲すること、飼育すること、卵やヒナを採取することは、原則として固く禁止されています。(※ハシブトガラスとハシボソガラスは狩猟鳥獣に指定されていますが、これは許可を得た狩猟者が決められた期間・場所・方法でのみ捕獲できるという意味であり、ペット目的の捕獲はできません。)

危険性や衛生面では、特に都市部に適応したCrow(カラス)との軋轢が問題となります。

  • ゴミ漁りと衛生問題:カラスがゴミ集積所を荒らし、生ゴミを散乱させることで、景観の悪化や悪臭、さらには病原菌を媒介する衛生害獣としての側面が問題視されています。
  • 繁殖期の威嚇:春から初夏にかけての繁殖期、特に巣立ち直後のヒナがいる場合、親ガラスはヒナを守るために非常に攻撃的になります。巣の近くを通る人間に対し、鳴き声を上げたり、頭上をかすめて飛んだり、時には後頭部を蹴ったりする威嚇行動をとることがあります。

Raven(ワタリガラス)は、主に人里離れた場所に生息するため、Crowのような人間との直接的なトラブルは少ないですが、家畜の死骸を処理するなど、生態系におけるスカベンジャー(腐肉食者)としての重要な役割も担っています。

文化・歴史・人との関わりの違い

【要点】

文化的なイメージが大きく異なります。Crow(カラス)は日本神話(ヤタガラス)で神聖な導き手とされる一方、「カラスの行水」やゴミ問題などで身近だが不吉なイメージも併せ持ちます。Raven(ワタリガラス)は北欧神話や北米先住民の神話で、知恵の神や創造神、あるいはトリックスターとして非常に重要な役割を担います。

漆黒の姿と高い知能を持つカラス属の鳥は、世界中の神話や伝承に登場しますが、CrowとRavenではその描かれ方に顕著な違いがあります。

Crow(カラス)
日本において、カラスは二重のイメージを持っています。神話に登場する「八咫烏(ヤタガラス)」は、神武天皇を導いた神聖な鳥として、現在も日本サッカー協会のシンボルマークに使われています。
一方で、「カラスの行水(入浴が短いこと)」や「カラスの勝手(自分勝手なこと)」といった言葉や、その黒い姿、ゴミを漁る姿から、不吉なもの、厄介なものとしてのイメージも強く根付いています。

Raven(ワタリガラス)
Ravenは、特に北半球の文化において、Crow以上に強力で神聖な存在として描かれる傾向があります。
北欧神話では、最高神オーディンの両肩に「フギン(思考)」と「ムニン(記憶)」という2羽のRavenが止まっており、世界中から集めてきた情報をオーディンに伝える知恵の象徴です。
北米の先住民(ネイティブ・アメリカン)の多くの神話では、Ravenは世界を創造した神、あるいは人間に火や太陽をもたらしたトリックスターとして、非常に重要な役割を担っています。
また、エドガー・アラン・ポーの詩「大鴉(The Raven)」では、不吉な来訪者として描かれるなど、その圧倒的な存在感と知性が、畏怖や神秘性の対象となってきました。

「Crow」と「Raven」の共通点

【要点】

最大の共通点は、どちらも「スズメ目カラス科カラス属(Corvus)」に属する非常に近しい仲間であることです。外見が黒く(一部例外あり)、雑食性で、鳥類の中で最高レベルの知能を持つ点が共通しています。

これまで違いを強調してきましたが、彼らは生物学的に非常に近い「親戚」であり、多くの共通点を持っています。

  1. 生物学的分類:最大の共通点は、どちらも「スズメ目 カラス科 カラス属Corvus)」に分類される鳥類であることです。
  2. 高い知能:どちらも「道具を使う」「未来を計画する」「人間の顔を識別する」「複雑な問題を解決する」など、鳥類離れした高い認知能力を持つことが科学的に証明されています。
  3. 雑食性(スカベンジャー):どちらも非常に雑食性であり、木の実や昆虫から、人間の出すゴミ、動物の死骸まで何でも食べます。この性質により、生態系における重要な「掃除屋(スカベンジャー)」としての役割を担っています。
  4. 法的な保護:日本国内において、どちらも「鳥獣保護管理法」によって等しく保護されている野生動物です。

漆黒の鳥、その賢さの秘密(体験談)

僕が都市部の公園を歩いていると、Crow(カラス)の驚くべき賢さを目の当たりにすることがあります。硬いクルミをくわえて飛び立ち、道路のアスファルトに落として割ろうとするのは序の口。中には、信号が赤になって車が止まるのを見計らってクルミを道路に置き、車が発進してそれを轢くのを待って、再び信号が赤になってから安全に中身を取りに戻る、という個体までいるそうです。まさに「生活の知恵者」と呼ぶべき適応力です。

一方、Raven(ワタリガラス)の知性には、どこか「遊び心」と「哲学的」な雰囲気を感じます。以前、雪深い地域のドキュメンタリーで見たのですが、数羽のRavenが雪の積もった屋根の斜面で、何度も何度も背中から滑り降りては、また登って滑る、という行動を繰り返していました。それは獲物を獲るためでも、生きるためでもない、明らかに「楽しいから」やっている「遊び」でした。

Crowの賢さが「いかに効率よく生きるか」という現実的な知恵だとすれば、Ravenの賢さは「いかにこの世界で楽しむか」という、より高度な知性や好奇心のように僕には映りました。どちらも同じカラス属でありながら、Crowは「都市の策略家」、Ravenは「荒野の哲学者」といった、異なる魅力を持っていると感じた体験です。

「Crow」と「Raven」に関するよくある質問

Q: 日本でRaven(ワタリガラス)は見られますか?

A: はい、見られます。ただし、主な生息域は北海道です。冬に大陸から渡ってくる冬鳥として、または道東・道北の一部では留鳥として生息・繁殖しています。本州以南で観察されることは非常に稀です。

Q: 結局、CrowとRavenはどちらが賢いのですか?

A: どちらも鳥類の中で最高レベルの知能を持っています。Crow(カラス)は都市環境への適応や道具使用で知られますが、一般的にRaven(ワタリガラス)の方が、より複雑な問題解決能力、計画性、遊び行動を示すとされ、「より賢い」というイメージが強いです。脳の大きさの対比でも、Ravenの方が大きいとされています。

Q: Crow(カラス)をペットとして飼うことはできますか?

A: 日本の野生のカラス(Crow)は、鳥獣保護管理法により、許可なく捕獲・飼育することは固く禁止されています。もし傷ついたヒナを見つけても、拾ってはいけません。親鳥が近くにいることがほとんどです。心配な場合は、各都道府県の鳥獣保護担当窓口に相談してください。

Q: ヤタガラス(八咫烏)はCrowですか?Ravenですか?

A: ヤタガラスは日本神話に登場する伝説上の鳥であり、特定の種(CrowかRavenか)を指すものではありません。一般的には、日本で身近に見られるCrow(カラス)、特に「ハシブトガラス」がそのイメージの原型になっていると考えられています。

「Crow(カラス)」と「Raven(ワタリガラス)」の違いのまとめ

Crow(カラス)とRaven(ワタリガラス)、どちらもカラス属の賢い鳥ですが、その違いは非常に明確でした。

  1. 分類と呼称:「Crow(カラス)」と「Raven(ワタリガラス)」はどちらもカラス属の仲間ですが、生物学的な分類ではなく、主に大きさや慣習で呼び分けられています。
  2. 大きさの違い:RavenはCrowよりも明らかに大きく、ワシタカ類に匹敵するサイズです。
  3. 見た目の違い:Ravenはくちばしが太く、喉元の羽毛が長く、飛翔時の尾羽が扇形ではなく「楔形(V字型)」になるのが最大の見分け方です。
  4. 生態の違い:Crowは「カーカー」と鳴き大群を作りますが、Ravenは「グォー」と低い声で鳴き、ペアや小家族で行動します。
  5. 分布の違い:日本では、Crow(ハシブトガラスなど)は全国の都市部にも生息しますが、Raven(ワタリガラス)は主に北海道の野生的な環境に生息します。
  6. 法律(最重要):どちらも鳥獣保護管理法で守られており、許可なく捕獲・飼育することは禁止されています。

もし北海道を旅する機会があれば、都市部で見かけるカラスよりも一回りも二回りも大きな黒い鳥が、楔形の尾羽で空を飛んでいる姿を探してみてください。それが本当のRaven(ワタリガラス)かもしれません。

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