ペットとして人気の「フェレット」と、日本の野山に生息する「イタチ」。どちらも胴長短足で素早い、よく似た動物です。
「イタチを捕まえてフェレットみたいに飼えないの?」なんて思うかもしれませんが、それは絶対にNGです。
この二種は、「ペット(家畜)」と「野生動物」という決定的な違いがあり、特にイタチは法律で厳しく保護されています。この記事を読めば、その見分け方から、なぜイタチを飼ってはいけないのか、その法的な理由までスッキリと理解できます。
【3秒で押さえる要点】
- 関係性:フェレットは「家畜(ペット)」。イタチは「野生動物」です。
- 法律:フェレットはペットとして飼育可能。イタチは「鳥獣保護管理法」で保護され、無許可の捕獲・飼育は違法です(特にメスは狩猟も禁止)。
- 性格:フェレットは人懐っこく好奇心旺盛。イタチは警戒心が強く気性が荒い野生動物です。
| 項目 | フェレット(Ferret) | イタチ(Weasel) |
|---|---|---|
| 分類・系統 | ネコ目 イタチ科 イタチ属 (ヨーロッパケナガイタチの家畜種) | ネコ目 イタチ科 イタチ属 (ニホンイタチ、シベリアイタチなど) |
| 人との関わり | ペット(家畜) | 野生動物(害獣としての一面も) |
| 法規制 | 飼育可能(ペット) | 鳥獣保護管理法により保護 無許可の捕獲・飼育は禁止 (メスは狩猟も禁止) |
| サイズ(体長) | オス:30〜40cm メス:25〜35cm(個体差大) | オス(ニホンイタチ):27〜37cm メス(ニホンイタチ):16〜25cm |
| サイズ(体重) | オス:1.0〜2.0kg メス:0.5〜1.0kg(個体差大) | オス(ニホンイタチ):0.6〜1.0kg メス(ニホンイタチ):0.3〜0.5kg |
| 毛色 | 多様(セーブル、アルビノ、シルバーミット、ブレイズなど多彩なカラーバリエーション) | 茶褐色、赤褐色(冬に白くなるオコジョやイイズナも近縁種) |
| 性格・行動特性 | 人懐っこい、好奇心旺盛、遊び好き (家畜化されているため) | 警戒心が非常に強い、気性が荒い (野生動物) |
| 寿命 | 約6〜10年 | 約1〜3年(野生下) |
| 危険性・衛生 | インフルエンザウイルス(人獣共通)、特有の臭腺(手術で除去する場合が多い) | ダニ・ノミ類、感染症のリスク。 気性が荒く、噛まれる危険。 |
見た目とサイズの違い
フェレットはペット用に品種改良されているため、毛色が非常に多彩です。イタチは基本的に茶褐色です。また、イタチはオスとメスの体格差が非常に大きい(オスがメスの倍近い)ですが、フェレットの体格差はイタチほど極端ではありません。
一見そっくりな両者ですが、よく見ると違いがあります。最もわかりやすいのは「毛色」です。
フェレットはペットとして長く品種改良されてきたため、毛色(カラーバリエーション)が非常に豊富です。イタチに似た茶色(セーブル)のほか、白(アルビノ)、シルバー、グレー系(ブレイズ)など、様々な模様や色の個体がいます。
イタチ(ニホンイタチやシベリアイタチ)は、基本的に野生種としての茶褐色・赤褐色です。顔の中心部が濃い褐色になっているのが特徴です。(※イタチの仲間のオコジョやイイズナは冬に白くなりますが、ここでいうイタチとは異なります)
サイズ感も異なります。イタチは性差が非常に激しく、オスはメスの倍近い大きさになります。メスは非常に小さく、体長16cmほどしかないこともあります。
一方、フェレットもオスの方がメスより大きいですが、イタチほどの極端な体格差はありません。全体的に見ると、ペットとして流通しているフェレットは、野生のイタチ(特にオス)よりも体が大きく、ずっしりとしている傾向があります。
性格・行動特性(人馴れ)の違い
決定的な違いは「人への馴れ」です。フェレットは何千年もの家畜化の歴史により、非常に人懐っこく、好奇心旺盛で遊び好きです。イタチは野生動物そのもので、警戒心が非常に強く、気性も荒いです。
ここが「ペット」と「野生動物」の決定的な違いです。
フェレットは、ヨーロッパケナガイタチを原種とし、何千年もの間、人間の手によって家畜化されてきた動物です(元々はウサギ狩りなどの猟に使われていました)。そのため、人間に対する警戒心は薄く、非常に人懐っこい性格をしています。
好奇心が極めて旺盛で、狭い場所にもぐり込んだり、飼い主とじゃれ合って遊んだりすることを好みます。その知能は犬や猫に匹敵するとも言われ、コミュニケーションを取ることができるペットです。
イタチは、野生動物そのものです。警戒心が非常に強く、臆病であると同時に、肉食獣としての気性の荒さ、獰猛(どうもう)さも兼ね備えています。
もし人間に捕獲された場合、パニックになって激しく抵抗し、鋭い歯で噛みついてくる危険性があります。彼らにとって人間は恐怖の対象であり、フェレットのように「しつけ」をしたり「懐かせる」という概念は通用しません。
危険性・衛生・法規制の違い
イタチは「鳥獣保護管理法」により、許可のない捕獲や飼育が厳しく禁止されています。特にイタチのメスは「非狩猟獣」であり、狩猟期間中であっても捕獲が禁止されています。フェレットはペットとして飼育可能ですが、人獣共通感染症(インフルエンザなど)のリスクはあります。
もし野生のイタチを見かけても、絶対に捕獲しようとしてはいけません。
イタチの法規制と危険性
イタチ(ニホンイタチ、シベリアイタチ)は、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」によって保護されている野生動物です。
- 都道府県知事の許可なく捕獲・飼育することは法律違反であり、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
- たとえ狩猟免許を持っていても、イタチのオスは「狩猟鳥獣」ですが、イタチのメスは「非狩猟獣」に指定されており、一年中捕獲が禁止されています。これは、メスを保護することで生態系(ネズミの捕食など)のバランスを保つためとされています。
- 衛生面でも、野生のイタチはダニやノミ、その他の病原菌を持っている可能性が高く、噛まれれば怪我だけでなく感染症のリスクもあります。
フェレットの法規制と衛生
フェレットは家畜であるため、鳥獣保護管理法の対象外であり、ペットとして飼育することが可能です。
ただし、フェレットは人獣共通感染症である「インフルエンザウイルス」に感染することが知られています(人からフェレットへ、フェレットから人へ)。また、肛門腺から特有の強い臭気を出すため、ペットとして流通する個体は、多くの場合、あらかじめ臭腺の除去手術が施されています。
「フェレット」と「イタチ」の共通点
どちらも「ネコ目 イタチ科 イタチ属」に分類される非常に近縁な動物です。胴長短足の体型、5本指の足、肉食性が強い雑食性、そして肛門腺(臭腺)から強い臭気を出す習性など、多くの生物学的特徴を共有しています。
見た目が似ているのも当然で、フェレットとイタチは生物学的に非常に近い「親戚」です。
- 分類:どちらもネコ目(食肉目) イタチ科 イタチ属に属します。フェレットの原種(ヨーロッパケナガイタチ)とニホンイタチは同じ属の仲間です。
- 体型:狭い穴にもぐり込むのに適した、胴が長く足が短い「胴長短足」の体型をしています。
- 食性:どちらも肉食性が強い雑食性です。野生下ではネズミやカエル、昆虫、果実などを食べます。
- 臭腺:どちらも敵に襲われた際などに、肛門付近にある臭腺(肛門腺)から強い悪臭の分泌液を出します。「イタチの最後っ屁」と呼ばれるものです。
歴史・ルーツと性質の関係
フェレットは、ヨーロッパケナガイタチを原種とし、約2000年以上前からウサギ狩りなどのために人間が家畜化してきた歴史があります。そのため人間に従順な性質が選抜されてきました。イタチ(ニホンイタチなど)は、一度も家畜化されたことのない純粋な野生動物であり、野生の警戒心と気性をそのまま保持しています。
両者の決定的な違いである「性格」は、その「歴史」に起因します。
フェレットは、ヨーロッパケナガイタチを原種として、紀元前から人間によって飼いならされてきた家畜です。その主な目的は、ウサギやネズミを巣穴から追い出すための「狩り」の手伝いでした。狭い巣穴に潜り込める体型と、獲物を追う習性を利用していたのです。
この長い家畜化の歴史の中で、人間にとって扱いやすい(=比較的温和で人間に従順な)個体が選ばれて繁殖されてきた結果、現在のペットとしての人懐っこい性格が形成されました。
イタチ(ニホンイタチやシベリアイタチ)は、そのような家畜化の歴史を一切経ていません。彼らは常に日本の自然界で、自ら獲物を狩り、外敵から身を守って生き延びてきた純粋な野生動物です。
そのため、人間を「敵」または「危険な存在」として認識し、警戒し、時には激しく防衛するという、野生動物として当たり前の本能を持ち続けています。
どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ
まず大前提として、イタチをペットとして「選ぶ」という選択肢は存在しません(法律で禁止されています)。ペットとして迎えられるのはフェレットのみです。フェレットは、好奇心旺盛で非常に活発なため、毎日ケージから出して遊んであげる時間を確保できる人に向いています。
「どっちを飼おうかな?」と迷っている方へ、まず最も重要なことをお伝えします。
イタチ(ニホンイタチなど)をペットとして飼うことはできません。
前述の通り、鳥獣保護管理法により、許可のない捕獲・飼育は厳しく禁止されており、法律違反となります。もし家の屋根裏などで被害が出ている場合は、専門業者や自治体に相談して追い出してもらう(忌避)か、法に基づいた捕獲許可申請 が必要です。
したがって、ペットとして「選ぶ」対象となるのはフェレットのみです。
【フェレットがおすすめな人】
- 犬や猫のように、ペットと積極的に触れ合い、遊びたい人。
- 毎日必ずケージから出して、部屋の中で遊ばせる時間(最低1時間以上)を確保できる人。
- 好奇心旺盛なフェレットが入り込みそうな、部屋の狭い隙間などを徹底的に塞ぐ安全対策ができる人。
- 特有の体臭や、専用フード・温度管理(暑さに弱い)など、フェレット特有の飼育知識を学ぶ意欲がある人。
- 寿命が6〜10年と、イタチ(野生下で1〜3年)より長いため、長期間責任を持って飼育できる人。
ペットショップのフェレットと野生のイタチ(体験談)
僕がペットショップで見たフェレットは、ハンモックで丸くなって寝ているか、仲間とじゃれ合って転げ回っているかで、非常にリラックスしていました。店員さんがケージを開けると、興味津々に鼻をクンクンさせながら寄ってきて、その人懐っこさに驚きました。
一方、僕が田舎で目撃したイタチは「閃光」のようでした。
夕暮れ時、田んぼのあぜ道を車で走っていると、何かが猛スピードで道路を横切りました。茶色く、細長い体。間違いなくイタチです。僕が車を停めて目で追った時には、もう排水溝の中に消えていました。その間、わずか1〜2秒。野生で生きる動物の、一切の無駄がない動きと、人間を寄せ付けない圧倒的な警戒心を感じました。
あのペットショップでのんびり寝ていたフェレットと、あぜ道を疾走したイタチ。姿形は似ていても、彼らが生きている世界と、人間に向ける視線は全く別物なのだと痛感した体験です。
「フェレット」と「イタチ」に関するよくある質問
Q: フェレットとイタチは交配できますか?
A: フェレットの原種であるヨーロッパケナガイタチと、ニホンイタチは属が同じ(イタチ属)ですが、種が異なります。交配は可能かもしれませんが、特定外ラリー生物対策の観点や遺伝的撹乱を防ぐためにも、意図的な交配は絶対に行うべきではありません。また、フェレットが野生化して在来種のイタチと交雑することが懸念されています。
Q: 野生で弱っているイタチを見つけたら保護してもいいですか?
A: 保護してそのまま飼育することは鳥獣保護管理法違反になります。イタチのメスは捕獲自体が禁止されています。もし明らかに怪我をしているなど、やむを得ない場合は、素手で触らず、まずは速やかに最寄りの自治体(市役所など)の鳥獣保護担当課や、都道府県の保護センターに連絡し、指示を仰いでください。
Q: フェレットもイタチも臭いですか?
A: どちらもイタチ科特有の臭腺(肛門腺)を持っており、驚いた時などに強い臭いを出します。ただし、ペットのフェレットは、販売前に臭腺の除去手術が施されていることがほとんどです。それでも体臭自体がなくなるわけではありません。
「フェレット」と「イタチ」の違いのまとめ
フェレットとイタチは、似て非なる、全く異なる立場の動物です。
- 決定的な違い:フェレットは「家畜(ペット)」。イタチは「野生動物」です。
- 法律の違い:イタチは「鳥獣保護管理法」で保護され、無許可の捕獲・飼育は法律違反です。特にメスは狩猟も禁止されています。
- 性格の違い:フェレットは人懐っこい。イタチは警戒心が強く獰猛です。
- 見た目の違い:フェレットは毛色が多彩で体が大きめ。イタチは茶褐色で、メスはオスより極端に小さいです。
もし害獣としてイタチの被害に遭っている場合でも、環境省が管轄する法律の対象となるため、必ず専門家や自治体に相談してください。ペットとして迎えたい場合は、フェレットという素晴らしいパートナー候補について、その生態をよく学んでから検討しましょう。他の哺乳類の動物たちの違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。
スポンサーリンク