「フレンチブルドッグ(フレブル)」と「ブルドッグ」、どちらも鼻ぺちゃ(短頭種)で筋肉質、シワのある顔がたまらなく愛嬌のある犬種です。しかし、この2犬種は「愛玩犬(小型犬)」と「中型犬」という決定的なサイズの違いがあり、そのルーツも飼育上の注意点も大きく異なります。
最も簡単な答えは、フレンチブルドッグはフランスで小型化された「愛玩犬」であり、ブルドッグはイギリス原産の「(元)闘犬」という背景を持つことです。この違いが、耳の形、体重、そして性格の傾向にも大きな差を生んでいます。
この記事を読めば、単純な見た目の見分け方から、それぞれの歴史的背景、飼育上の重要な注意点までスッキリと理解できます。あなたが将来家族に迎えるのは、陽気でコンパクトなフレンチブルドッグでしょうか?それとも、温和でどっしりと構えたブルドッグでしょうか?
まずは、両者の決定的な違いを比較表で押さえましょう。
【3秒で押さえる要点】
- サイズ:フレンチブルドッグは小型犬(8〜14kg)。ブルドッグは中型犬(23〜25kg)で、フレブルの約2倍の体重があります。
- 耳の形:フレンチブルドッグは「バットイア(コウモリ耳)」と呼ばれる大きな立ち耳。ブルドッグは「ローズイア」と呼ばれる小さく後ろに折れた垂れ耳です。
- 性格:フレブルは陽気で遊び好き。ブルドッグは温和でマイペースだが、非常に頑固な一面も持ちます。
| 項目 | フレンチブルドッグ(French Bulldog) | ブルドッグ(Bulldog) |
|---|---|---|
| 分類・系統 | 小型犬(愛玩犬グループ) | 中型犬(ノンスポーティンググループ) |
| サイズ(体高) | 28〜33cm | 31〜40cm |
| サイズ(体重) | 8〜14kg | オス:約25kg メス:約23kg |
| 耳の形 | バットイア(立ち耳) | ローズイア(垂れ耳) |
| 顔のシワ | 比較的浅め | 非常に深く、たるみ(デューラップ)が顕著 |
| 行動・性質 | 陽気、遊び好き、愛嬌がある、好奇心旺盛。家族に非常に忠実。 | 温和、堂々としている、マイペース、忍耐強い。愛情深いが、非常に頑固。 |
| 飼育難易度 | 高い(初心者も可能だが覚悟が必要)。短頭種の健康管理、頑固さへの理解が必須。 | 非常に高い(上級者向け)。健康管理、体重制御、強烈な頑固さのしつけが困難。 |
| 運動量 | 少ない〜中程度(激しい運動は不向き) | 少ない〜中程度(激しい運動は不向き) |
| 寿命 | 10〜12年 | 8〜10年 |
| かかりやすい病気 | 【共通】短頭種気道症候群、皮膚疾患、熱中症 【特有】椎間板ヘルニア、アレルギー | 【共通】短頭種気道症候群、皮膚疾患、熱中症 【特有】股関節形成不全、チェリーアイ、胃捻転 |
| 原産国 | フランス(イギリス原産の犬が基礎) | イギリス |
見た目とサイズの違い
最大の違いは「サイズ」と「耳」です。ブルドッグはフレンチブルドッグの約2倍の体重があり、がっしりしています。耳は、フレブルがピンと立った「バットイア」、ブルドッグが小さく折れた「ローズイア」と全く異なります。
この2犬種を実際に見比べると、その体格差に驚くはずです。
フレンチブルドッグは小型犬に分類され、体重は8kgから重くても14kg程度に収まります。対してブルドッグは中型犬に分類され、オスの平均体重は約25kgにも達します。フレンチブルドッグのほぼ2倍の重さであり、その肩幅の広さ、どっしりとした体格、独特のガニ股の歩き方は、中型犬の中でも圧倒的な重厚感を放っています。
そして、誰でも一瞬で見分けられる決定的な違いが「耳の形」です。
フレンチブルドッグの耳は、「バットイア(コウモリの耳)」と呼ばれ、付け根が広く先が丸い大きな耳がピンと立っています。これは彼らのトレードマークです。
一方、ブルドッグの耳は、「ローズイア」と呼ばれます。これは小さく、やや高い位置についており、後ろに向かって折れたたるみ方をしています。
顔のシワにも差があります。どちらもシワが深い犬種ですが、ブルドッグの方が皮膚のたるみが顕著で、特に首元の「デューラップ」と呼ばれるたるみはフレンチブルドッグよりも深く、豊かです。
性格・行動特性としつけやすさの違い
どちらも「頑固」な性質を共通して持ちますが、フレンチブルドッグは「陽気で遊び好きな愛玩犬」、ブルドッグは「温和でマイペースな番犬」という違いがあります。ブルドッグの頑固さは特に強烈で、しつけは上級者向けです。
見た目のいかつさとは裏腹に、どちらの犬種も家庭犬として非常に優れた性質を持っていますが、その表現方法は異なります。
フレンチブルドッグは、「陽気なコメディアン」と評されます。非常に愛嬌があり、好奇心旺盛で遊び好き。家族と一緒にいることを何よりも喜び、人を楽しませようとするかのようなコミカルな動きを見せます。まさに愛玩犬として改良されてきた歴史が偲ばれる性格です。
ただし、彼らもブルドッグの血を引いており、「ブルドッグ気質」と呼ばれる頑固な一面は健在です。賢いので物覚えは悪くありませんが、一度「嫌だ」と思うとテコでも動かないことがあります。しつけは褒めて伸ばすポジティブな方法が向いています。
一方のブルドッグは、「温和な哲学者」のような性格です。非常に堂々としており、マイペースで忍耐強いのが特徴。普段は物静かで、家族への愛情も深い犬種です。
しかし、彼らの「頑固さ(ブルドッグ・スタボーンネス)」は、フレンチブルドッグの比ではありません。一度ヘソを曲げると、文字通りテコでも動かなくなることがあり、その巨体を無理に動かすことは不可能です。闘犬だった歴史の名残から、自分が納得しない命令には従わないという強い意志を持っています。しつけには、飼い主の圧倒的な根気強さと、彼らの気質への深い理解が求められるため、犬の飼育上級者向けの犬種とされています。
寿命・健康リスク・病気の違い(短頭種特有の注意点)
どちらも短頭種(鼻ぺちゃ)であり、呼吸器系の問題と皮膚疾患、そして「暑さ」に極めて弱いという共通のリスクを持ちます。寿命はブルドッグ(8〜10年)の方がフレブル(10〜12年)より短い傾向にあります。
フレンチブルドッグとブルドッグを家族に迎える上で、最も重要で、共通する注意点が健康管理です。どちらも短頭種(たんとうしゅ)と呼ばれる、鼻が極端に短い犬種であり、特有の健康リスクを抱えています。
【短頭種共通の重大なリスク】
- 呼吸器系の弱さ:鼻の穴が狭い(鼻腔狭窄)ことが多く、呼吸がしづらい「短頭種気道症候群」という問題を抱えがちです。これが「ブヒブヒ」「ガーガー」というイビキや呼吸音の原因です。
- 体温調節が極めて苦手:犬は主にパンティング(舌を出してハァハァ呼吸する)で体温を下げますが、短頭種はこの呼吸が非効率なため、体に熱がこもりやすいです。特に夏場の熱中症は、短時間の留守番や散歩でも命取りになります。エアコンによる24時間の温度管理は必須です。
- 皮膚疾患:顔や体のシワに皮脂や汚れが溜まりやすく、細菌が繁殖して皮膚炎(膿皮症)を起こしやすいです。毎日のシワ掃除が欠かせません。
平均寿命は、フレンチブルドッグが10〜12年、ブルドッグが8〜10年と、ブルドッグの方が中型犬としてはやや短い傾向にあります。
また、それぞれの体型に由来する特有の病気もあります。
- フレンチブルドッグ:コンパクトな体型のため、背骨に負担がかかりやすく「椎間板ヘルニア」などの脊椎疾患に注意が必要です。
- ブルドッグ:体重が重く、がっしりした骨格のため「股関節形成不全」などの関節疾患や、目が飛び出しやすい「チェリーアイ(第三眼瞼腺突出)」のリスクがあります。
「フレンチブルドッグ」と「ブルドッグ」の共通点
最大の共通点は、どちらも「ブルドッグ」の血を引く短頭種であることです。そのため、呼吸器系の弱さ、体温調節の困難さ(特に暑さ)、皮膚のデリケートさ、そして頑固な気質を共有しています。
見た目のサイズや耳は異なりますが、この2犬種は多くの本質的な特徴を共有しています。
- 祖先が同じ:フレンチブルドッグは、ブルドッグ(の小型タイプ)がフランスに渡って改良された犬種であり、直系の祖先を共有しています。
- 短頭種であること:どちらも鼻が短い短頭種であり、前述した呼吸器系の弱さや体温調節の苦手さという宿命を背負っています。
- 皮膚のケアが必須:シワの多さの違いはあれど、どちらも皮膚がデリケートで、シワの間を清潔に保つ毎日のケアが不可欠です。
- 頑固な気質:「ブルドッグ気質」と呼ばれる頑固さは、両犬種に共通する特徴です。
- 運動は「適度」に:筋肉質ですが、呼吸器への負担が大きいため、激しい運動や長時間の運動には向きません。重量挙げ選手がマラソンをしないのと同じです。毎日の適度な散歩(涼しい時間帯に)で十分です。
- 出産が困難:どちらも胎児の頭部が大きいため、自然分娩が難しく、多くの場合で帝王切開が必要となります。
歴史・ルーツと性質の関係
ブルドッグは、イギリスで牛と戦う闘犬(ブル・ベイティング)として生まれました。闘犬禁止後、その攻撃的な性質が取り除かれ温和になりました。フレンチブルドッグは、そのブルドッグがフランスに渡り、パグなどと交配されて小型の「愛玩犬」として確立された犬種です。
この2犬種の性格の違いは、それぞれの「歴史(仕事)」の違いを知るとはっきりと理解できます。
ブルドッグ(イングリッシュ・ブルドッグ)は、イギリス原産です。ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種紹介によると、その歴史は13世紀頃の「ブル・ベイティング(牛いじめ)」という見世物のための闘犬にまで遡ります。彼らは牛の鼻先に噛みつき、テコでも離さない獰猛さと忍耐強さを求められました。
しかし、1835年にこのブル・ベイティングが法律で禁止されると、闘犬としての仕事を失ったブルドッグは絶滅の危機に瀕します。その後、愛好家たちの手によって攻撃的な気質は意図的に取り除かれ、外見のいかつさとは裏腹に、非常に温和で忍耐強い、現代の家庭犬としての「ブルドッグ」が誕生しました。彼らのマイペースさと頑固さは、かつての闘犬のプライドの名残とも言えます。
フレンチブルドッグの歴史は、このブルドッグと深く繋がっています。ブル・ベイティングが禁止された頃、イギリスのノッティンガムでレース職人たちが、小型のブルドッグ(トイ・ブルドッグ)をネズミ捕りや愛玩犬として飼っていました。
その後、産業革命の影響で職人たちがフランスに移住する際、この小型ブルドッグたちを一緒に連れて行きました。フランスに渡った彼らは、そこでパグやテリアなどと交配され、さらに小型化・愛玩犬化が進みます。特に、それまでブルドッグでは好まれなかった「バットイア(コウモリ耳)」がパリの貴婦人や芸術家たちの間で「個性的でカワイイ!」と大流行。これがフレンチブルドッグという犬種の確立に繋がりました。つまり、彼らは生まれながらの「愛玩犬」なのです。
どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ
どちらの犬種も「健康管理(特に温度と皮膚)」に莫大な手間と費用がかかることを覚悟できる人が大前提です。フレンチブルドッグは、集合住宅でも飼育可能で、陽気な相棒が欲しい人向け。ブルドッグは、中型犬のスペースと、その強烈な頑固さを受け入れられる上級者向けです。
「鼻ぺちゃが好き!」という理由だけで、この2犬種を選ぶのは非常に危険です。彼ら特有のニーズを満たせるか、冷静にご自身のライフスタイルと照らし合わせてください。
【フレンチブルドッグがおすすめな人】
- 夏場は24時間エアコンをつけっぱなしにできる(必須)
- 毎日、顔のシワや体の皮膚をチェックし、清潔に保つケアを欠かさない人
- 集合住宅(アパート・マンション)でも飼育を検討している人(ただし、イビキや興奮時のフガフガ音は響く可能性があります)
- 陽気で遊び好き、コミカルな動きで家族を笑わせてくれるパートナーが欲しい人
- 頑固な一面も「個性」として受け入れ、根気強くしつけができる人
【ブルドッグがおすすめな人】
- 夏場は24時間エアコンをつけっぱなしにできる(必須)
- 毎日、顔や首、体中の深いシワをめくって掃除することを厭わない人
- 中型犬(体重25kg超)を飼育できる十分なスペース(一軒家が望ましい)がある人
- 温和で物静か、どっしりと構えた犬が好きな人
- 犬の「テコでも動かない」強烈な頑固さを、ユーモアと忍耐力で受け流せる「上級者」
- 皮膚疾患や関節疾患など、将来的に高額な医療費がかかる可能性を覚悟できる人
どちらの犬種も、ジャパンケネルクラブ(JKC)などの犬種情報をよく読み、その犬種の特性を熟知した信頼できるブリーダーから迎えることを強くお勧めします。
「ブヒ」の魅力と「ズシン」という重み(体験談)
僕はドッグカフェや公園で、多くのフレンチブルドッグとブルドッグに出会ってきました。彼らの魅力は、本当に対照的です。
フレンチブルドッグは、まさに「弾丸小僧」。目が合うと、「ブヒッ!フガッ!」と独特の鼻息を鳴らしながら、短い足で猛ダッシュしてきます。おもちゃを投げれば狂ったように遊び、疲れると突然電池が切れたように床でイビキをかいて寝る。そのオン・オフの激しさと、全身で「楽しい!」を表現する姿は、見ているだけで笑顔になってしまいます。
一方、ブルドッグは「動かざること山の如し」。彼らはカフェの隅で、まるで置物のように「ズシン」と座っています。僕が近づいても、ゆっくりと目を向けるだけ。しかし、そのシワだらけの顔を優しく撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らし(本当に犬か?と思う音です)、信頼してくれたかのように体重を預けてきます。その25kgの「命の重み」と、見た目からは想像もつかない穏やかな瞳のギャップに、僕はいつも心を鷲掴みにされてしまいます。
フレブルの魅力が「予測不能な陽気さ」なら、ブルドッグの魅力は「すべてを受け入れる温和さ」なのかもしれません。
「フレンチブルドッグ」と「ブルドッグ」に関するよくある質問
Q: どっちがうるさい(吠えやすい)ですか?
A: どちらも愛玩犬・家庭犬として改良されてきたため、無駄吠えは少ない犬種とされています。ただし、フレンチブルドッグは好奇心旺盛で興奮しやすいため、要求吠えや興奮吠えが出やすい傾向があります。ブルドッグは物静かですが、縄張り意識から番犬として低い声で吠えることがあります。
Q: どっちが運動量が多いですか?
A: どちらも多くの運動量を必要としません。むしろ、呼吸器系への負担が大きいため、激しい運動は避けるべきです。フレンチブルドッグは遊び好きなので、室内でのボール遊びなどを好み、ブルドッグはマイペースにゆっくりと散歩することを好みます。どちらも涼しい時間帯に、適度な散歩(1回15分〜30分を1日2回程度)で十分です。
Q: 夏の飼育で一番気をつけることは何ですか?
A: 「温度管理」と「散歩の時間」です。エアコンの24時間稼働は必須です。暑い日の日中の散歩は絶対にやめてください。アスファルトの熱で火傷するだけでなく、数分で熱中症になり命を落とします。散歩は早朝や夜の涼しい時間帯に限定してください。
Q: ブルドッグって今でも闘犬なんですか?
A: いいえ、違います。現在のブルドッグは、19世紀に闘犬が禁止されて以降、攻撃的な性質を完全に取り除くように改良された、非常に温和で忍耐強い「家庭犬」です。闘犬だった頃の面影は、そのいかつい外見と、頑固な性格にわずかに残るのみです。
「フレンチブルドッグ」と「ブルドッグ」の違いのまとめ
フレンチブルドッグとブルドッグ、どちらも「ブルドッグ」という名前がついていますが、その違いは非常に明確です。
- サイズが決定的に違う:フレンチブルドッグは「小型犬」、ブルドッグは「中型犬」で、体重は約2倍違います。
- 耳の形が違う:フレンチブルドッグは「バットイア(立ち耳)」、ブルドッグは「ローズイア(垂れ耳)」です。
- 性格の方向性が違う:フレブルは「陽気な愛玩犬」、ブルドッグは「温和で頑固な番犬」の気質を持ちます。
- ルーツが違う:ブルドッグはイギリスの闘犬が起源。フレンチブルドッグはそのブルドッグがフランスで愛玩犬として小型化された犬種です。
- 共通の宿命(最重要):どちらも短頭種であり、暑さに極めて弱く、呼吸器系・皮膚のケアが必須です。
もし家族として迎えることを検討するなら、この「短頭種特有の健康リスク」への生涯にわたるケアを絶対に怠らない覚悟が必要です。その上で、あなたのライフスタイルに合う、最高の「ブヒ」仲間を見つけてくださいね。他のペット・飼育に関する違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。