ラグドールとヒマラヤンの決定的な違い!抱っこ好きとマイペース

「ヒマラヤン」と「ラグドール」、どちらも青い目とゴージャスな長毛が魅力の猫種ですが、実は「顔の形」と「抱っこした時の反応」が全く異なります

最も簡単な答えは、ヒマラヤンはペルシャ譲りの「鼻ぺちゃ顔」でのんびり屋、ラグドールは鼻筋が通った顔立ちで、抱っこすると脱力する「ぬいぐるみ(Ragdoll)」のような猫だということです。

この違いは、それぞれの成り立ち—ヒマラヤンは「ペルシャとシャムの交配」、ラグドールは「特定の猫からの人為的な作出」—に由来しています。この記事を読めば、単純な見た目の見分け方から、性格、飼育上の重要な注意点までスッキリと理解できます。

まずは、両者の決定的な違いを比較表で押さえましょう。

「ヒマラヤン」と「ラグドール」の主な違い
項目 ヒマラヤン(Himalayan) ラグドール(Ragdoll)
分類・系統 中型〜大型(ペルシャ×シャム) 大型(アメリカ原産)
サイズ(体重) 約3〜6kg 約4〜9kg(オスは10kg近くになることも)
顔の形 鼻ぺちゃ(エクストリームフェイス)が多い。鼻筋の通ったドールフェイスもいる。 鼻筋が通っている。丸みのあるくさび形。
体型 コビータイプ(丸くずんぐり、足が短い)。 ロング&サブスタンシャルタイプ(体が長く大きい)。
被毛(毛質) ダブルコート(長く密)。毛玉ができやすい。 シングルコート(ミディアムロング)(※諸説あり)。シルキーで絡まりにくい。
行動・性質 穏やか、おっとり、マイペース。人懐っこいが、騒がしいのは苦手。 非常に人懐っこい、犬のよう抱っこが大好き(脱力する)
飼育難易度 高い。毎日の被毛ケアと、鼻ぺちゃ特有の顔のケアが必須。 普通〜やや高い。毎日の被毛ケアと、遊ぶ時間の確保が必要。
寿命 10〜13年程度 12〜15年程度
かかりやすい病気 多発性嚢胞腎(PKD)、短頭種気道症候群、流涙症。 肥大型心筋症(HCM)、股関節形成不全。

【3秒で押さえる要点】

  • 顔:ヒマラヤンはペルシャ譲りの「鼻ぺちゃ顔」。ラグドールは「鼻筋が通った」顔立ち。
  • 性格:ヒマラヤンは「穏やかでマイペース」。ラグドールは「抱っこ大好き、犬のよう」な性格。
  • サイズ:どちらも大型だが、ラグドールの方が一回り大きく、体が長い

見た目とサイズの違い

【要点】

最大の違いは「顔」と「体型」です。ヒマラヤンはペルシャ譲りの「鼻ぺちゃ(エクストリームフェイス)」と丸くずんぐりした「コビータイプ」です。ラグドールは鼻筋が通っており、体が長く筋肉質な「ロング&サブスタンシャルタイプ」で、猫種の中でも最大級の大きさになります。

この2種を見分けるのは、実はとても簡単です。顔と体型に注目すれば一目瞭然です。

顔の形(鼻)

ヒマラヤンは、ペルシャ猫の血を色濃く引いているため、鼻が短くつぶれた「鼻ぺちゃ顔」(エクストリームフェイス)が特徴です。目が大きく丸く、顔全体が丸い印象を与えます。
ただし、ヒマラヤンには鼻筋が比較的通った「ドールフェイス」と呼ばれるタイプも存在するため、この点は注意が必要です。

対照的に、ラグドールは鼻が潰れておらず、スーッと通った鼻筋を持っています。顔の輪郭は丸みのあるくさび形で、ヒマラヤンのような「鼻ぺちゃ」感はありません。

体型とサイズ

体型も全く異なります。ヒマラヤンは、ペルシャ猫に準じた「コビータイプ」と呼ばれる体型です。これは、足や胴体が短く、全体的に丸くずんぐりとした、がっしりした体型を指します。体重は3kg〜6kg程度です。

一方のラグドールは、「ロング&サブスタンシャルタイプ」と呼ばれ、体が長く、骨太で筋肉質です。体重は4kg〜9kgにもなり、オスの中には10kg近くになる個体もいる、イエネコの中でも最大級の猫種です。
並べてみると、ラグドールの方がヒマラヤンよりも明らかに一回り大きく、体が長いことがわかります。

被毛(毛質)

どちらもゴージャスな長毛種ですが、毛質が異なります。
ヒマラヤンは、ペルシャ譲りの長く密なダブルコート(上毛と下毛の二重構造)を持っています。非常に毛量が多く、毛玉ができやすいため、お手入れは大変です。
ラグドールは、シルクのような手触りのミディアムロングの毛質です。一般的に、下毛(アンダーコート)が少ないシングルコートに近いとされており(※諸説あり)、ヒマラヤンに比べると毛が絡まりにくく、お手入れはしやすいと言われています。

性格・行動特性としつけやすさの違い

【要点】

性格は対照的です。ラグドールは「ぬいぐるみ」という名の通り、抱っこされると脱力するほどリラックスし、犬のように人懐っこく遊び好きです。ヒマラヤンはペルシャ譲りの穏やかさとおっとりした性格で、飼い主に甘えますが、騒がしい環境は苦手なマイペースな猫です。

見た目以上に、性格の違いは顕著です。

ラグドールの最大の特徴は、その名前の由来(Ragdoll=ぬいぐるみ)となった、「抱っこされると力を抜いてリラックスする」という性質です。もちろん個体差はありますが、多くのラグドールは人間への信頼感が非常に厚く、スキンシップが大好きです。
非常に穏やかで、鳴き声も小さく、飼い主に従順で「犬のような」性格と評されます。賢く、人懐っこいため、初めて猫を飼う人や、子供がいる家庭にも飼いやすい猫種とされています。

ヒマラヤンの性格は、両親であるペルシャとシャムの性質を受け継いでいます。基本的にはペルシャの温和さ、おっとりとしたマイペースな性格が強く出ています。運動もあまり好まず、静かな環境でのんびり過ごすことを好みます。
同時に、シャムの血も引いているため、飼い主には愛情深く、膝に乗ってくるなど人懐っこい一面も持ち合わせています。ただし、騒がしい環境は苦手で、神経質な部分もあるため、落ち着いた環境での飼育が向いています。

寿命・健康リスク・病気の違い

【要点】

どちらも遺伝性疾患に注意が必要です。ヒマラヤンはペルシャ由来の「多発性嚢胞腎(PKD)」、ラグドールは「肥大型心筋症(HCM)」のリスクが知られています。

平均寿命は、ヒマラヤンが10〜13年程度、ラグドールが12〜15年程度とされています。どちらも遺伝的に注意すべき病気があります。

ヒマラヤンは、ペルシャの血を濃く引いているため、ペルシャに多い遺伝性疾患である「多発性嚢胞腎(PKD)」に注意が必要です。これは、腎臓に嚢胞(水が溜まった袋)が多数でき、徐々に腎機能が低下していく病気です。遺伝子検査で発症リスクを確認できるため、迎える前に親猫の検査結果を確認することが推奨されます。
また、鼻ぺちゃの「エクストリームフェイス」の個体は、短頭種特有の呼吸器系の問題や、涙やけ(流涙症)にも注意が必要です。

ラグドールは、「肥大型心筋症(HCM)」という心臓病が好発する猫種として知られています。これは心臓の筋肉が厚くなり、機能が低下する病気です。メインクーンと同様に、ラグドールでもこの病気に関連する遺伝子変異が特定されており、遺伝子検査が可能です。また、体が大きいため「股関節形成不全」のリスクも指摘されています。

「ヒマラヤン」と「ラグドール」の共通点

【要点】

どちらも人為的に作出された歴史を持ち、シャム猫(サイアミーズ)の遺伝子を受け継いでいます。そのため、毛色(ポインテッド)と目の色(ブルー)が共通しています。

全く異なる歴史を持つように見えて、実は重要な共通点があります。

  1. ポインテッドの毛色:どちらもシャム猫(サイアミーズ)の血を引いているため、耳、顔、手足、尻尾の先端だけに色が入る「ポインテッド」という毛色パターンを持ちます。
  2. 青い目:ポインテッドの遺伝子と関連し、目の色は美しい「ブルー」に限られます。
  3. 人為的な作出:どちらも自然発生した猫種ではなく、人間が特定の目的(ヒマラヤンはペルシャにポイント柄を、ラグドールは抱っこできる猫を)を持って作出した猫種です。
  4. 穏やかな性格:性格は異なりますが、「穏やかで、人とのスキンシップを好む」という愛玩猫としての素養は共通しています。

歴史・ルーツと性質の関係

【要点】

ヒマラヤンは1930年代に「ペルシャの体にシャムの模様」を定着させるために作出されました。ラグドールは1960年代にアメリカで、抱っこすると脱力する性質を持つ猫「ジョセフィーヌ」を基礎に作出されました。

この2種の成り立ちは、その性格の違いを明確に示しています。

ヒマラヤンの歴史は、1920年代〜1930年代にさかのぼります。「ペルシャ猫の豪華な被毛と体型」と「シャム猫の美しいポインテッド柄と青い目」の両方を持つ猫を作出するため、ブリーダーたちが人為的に交配を開始しました。その結果、1950年代に猫種として公認されました。
近年では、多くの猫種登録団体(CFAなど)でヒマラヤンを独立した猫種としてではなく、「ペルシャ猫の毛色(カラー)部門の一つ」として扱っています。つまり、ヒマラヤンは「ポインテッド柄のペルシャ猫」そのものなのです。

ラグドールの歴史はもっと新しく、1960年代のアメリカ・カリフォルニアで始まりました。アン・ベイカーというブリーダーが、近所で飼われていた「ジョセフィーヌ」という名の白く美しい長毛の雌猫を基礎に作出したとされています。
ジョセフィーヌとその子猫たちは、抱き上げると体がぬいぐるみ(Ragdoll)のように脱力するという共通の性質を持っており、ベイカーはこのユニークな特徴を持つ猫たちを選抜して繁殖させました。この「抱っこ好き」という性質は、まさにラグドールという猫種が確立された目的そのものなのです。

どっちを選ぶべき?ライフスタイル別おすすめ

【要点】

ヒマラヤンは、静かな環境で猫とのんびり過ごし、毎日の毛玉取りや顔のケアを厭わない人向けです。ラグドールは、猫と積極的に遊び、犬のように抱っこしたり構ったりしたい人向けです。

どちらも非常に魅力的ですが、お手入れの手間と、猫に求める関わり方で選ぶべき相手が変わってきます。

【ヒマラヤンがおすすめな人】

  • 静かで落ち着いた環境で、猫とのんびり過ごしたい
  • ペルシャ猫の「鼻ぺちゃ顔」が大好きだ
  • 毎日のブラッシング(毛玉対策)と、涙やけのケアを欠かさず行える
  • 猫とは付かず離れず、マイペースな関係性を好む
  • 遺伝病(PKD)のリスクを理解し、信頼できるブリーダーを探せる

【ラグドールがおすすめな人】

  • 猫を「犬のように」可愛がりたい、積極的にスキンシップを取りたい
  • 猫を抱っこするのが大好き
  • 大型猫が十分に運動できるスペースを確保できる
  • 初めて猫を飼うが、穏やかで人懐っこい猫種を探している
  • 遺伝病(HCM)のリスクを理解し、信頼できるブリーダーを探せる

僕が出会った「ヒマ」と「ラグ」の“重さ”の違い(体験談)

僕が友人宅で出会ったヒマラヤンの「メルくん」は、まさに「動く宝石」でした。彼は僕が訪問してもソファのクッションから動かず、ただ青い目でじっとこちらを観察していました。飼い主が抱き上げると、一瞬だけ身を任せますが、すぐに「降ろせ」とばかりに身じろぎします。彼の興味は僕よりも、窓の外を飛ぶ鳥にあるようでした。彼を抱いた時の重さは、見た目通りの「ずっしり」とした中型猫の重さでした。

一方、別の友人宅のラグドール「レオくん」は、僕が玄関に入った瞬間から足元にスリスリ。リビングで座るやいなや、当然のように膝によじ登ってきました。彼を抱き上げると、本当に「フニャッ」と全身の力が抜け、腕の中で液体になったかのようにだらーんとするのです。これがラグドールの「脱力」か!と感動しました。そして何より、その「重さ」。ヒマラヤンのメルくんより一回りも二回りも大きく、7kgオーバーの彼は、まるで小型犬を抱いているかのような「ズッシリ」とした重みがありました。

同じ長毛・青い目でも、抱き心地と心の距離感が全く違う2匹でした。

「ヒマラヤン」と「ラグドール」に関するよくある質問

Q: 結局、どっちが大きいのですか?

A: ラグドールの方が圧倒的に大きいです。ヒマラヤンは中型〜大型のコビータイプ(ずんぐり型)ですが、ラグドールは体が長く骨太な大型種で、オスは9kgを超えることも珍しくありません。

Q: 抜け毛のお手入れはどちらが大変ですか?

A: ヒマラヤンの方が大変です。ヒマラヤンは長く密なダブルコート(二重毛)のため、非常に毛玉ができやすく、毎日のブラッシングが必須です。ラグドールはシングルコート(またはそれに近い)で毛質がシルキーなため、比較的絡まりにくいですが、それでも長毛種なので毎日のお手入れは必要です。

Q: 鼻ぺちゃじゃないヒマラヤンもいるって本当ですか?

A: はい、います。伝統的なペルシャ猫の顔立ちを受け継いだ、鼻筋が比較的通っているタイプを「ドールフェイス」と呼びます。鼻が極端につぶれたタイプは「エクストリームフェイス」と呼ばれます。日本国内ではドールフェイスのヒマラヤンも多く見られます。

Q: ラグドールと「ラガマフィン」の違いは何ですか?

A: ラガマフィンは、ラグドールから派生した猫種です。ラグドールのブリーダーのやり方に反発したブリーダーたちが、ラグドールをベースに他の猫種(ペルシャなど)を交配させて作出したのがラガマフィンです。ラグドールがポインテッドカラーとブルーの目しか認められないのに対し、ラガマフィンはあらゆる毛色や目の色が認められるのが大きな違いです。

「ヒマラヤン」と「ラグドール」の違いのまとめ

ヒマラヤンとラグドールは、どちらも青い目とポインテッド柄を持つ美しい長毛種ですが、そのルーツと特徴は正反対とも言えます。

  1. 顔が違う:ヒマラヤンは「鼻ぺちゃ」の丸顔(ペルシャ系)。ラグドールは「鼻筋が通った」くさび形の顔。
  2. 性格が違う:ヒマラヤンは「穏やかでマイペース」な性格。ラグドールは「犬のように人懐っこく、抱っこが大好き」な性格。
  3. 体格が違う:ヒマラヤンは丸くずんぐり(コビータイプ)。ラグドールは体が長く巨大(ロング&サブスタンシャルタイプ)。
  4. 毛質が違う:ヒマラヤンは長く密な「ダブルコート」。ラグドールはシルキーな「シングルコート(に近い)」。
  5. 遺伝病リスクが違う:ヒマラヤンはペルシャ由来の「PKD(多発性嚢胞腎)」。ラグドールは「HCM(肥大型心筋症)」。

もし家族として迎えることを検討するなら、「毎日のブラッシング」はどちらも必須ですが、ヒマラヤンはそれに加えて「顔のケア」、ラグドールは「十分な遊び時間」が必要です。ぜひ、他のペット・飼育に関する違いについても、他の記事をご覧ください。

参考文献(公的一次情報)